「片頭痛の薬を飲んでいるけれど、あまり効かない」「薬の種類が多すぎて何が違うのかわからない」という声をよく耳にします。実は、薬によってターゲットにしている「痛みのポイント」が全く異なります。
最新の治療を知るために、まずは片頭痛が起きる仕組みと、それぞれの薬の役割を整理してみましょう。
片頭痛のメカニズムには、脳で最も大きな知覚神経である**「三叉神経」**が深く関わっています。
何らかの刺激で三叉神経が興奮する。
神経の末端から**CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)**という物質が放出される。
このCGRPが脳の血管に結合すると、血管が拡張し、周囲に強い炎症が起きる。
その刺激が再び脳に伝わり、「ズキズキとした痛み」として認識される。
これが、現在最も有力とされる**「三叉神経血管説」**です。
私たちがよく使う薬は、この「伝達ルート」のどこをブロックするかで分類されます。
役割: 炎症を抑え、痛みの物質をブロックする。
仕組み: 痛み全般に関わる「プロスタグランジン」の生成を抑えます。
限界: 片頭痛特有の「CGRPによる血管拡張や神経炎症」を直接止める力は弱いため、ひどい片頭痛には効果が限定的な場合があります。
役割: 片頭痛の「特効薬(頓服)」。
仕組み: 拡張してしまった血管を収縮させ、三叉神経からのCGRP放出自体を抑え込みます。
課題: 痛みがピークに達してからでは効きにくいことや、血管を収縮させる作用があるため、心疾患がある方は慎重な投与が必要です。(副作用に注意が必要)
役割: 片頭痛が起きる「土台」をブロックする。
仕組み: CGRPが血管や神経に結合するための**「受け皿(受容体)」に先回りして蓋(ブロック)**をします。
強み: そもそもCGRPが作用できない環境を作るため、血管を無理に収縮させることなく、高い予防効果を発揮します。。

これまでの予防薬は、もともと血圧の薬やてんかんの薬を「転用」したものが多く、眠気やふらつきなどの副作用が課題でした。 最新の**「アクイプタ」や「ナルティーク」**(ゲパント系薬剤)は、片頭痛専用に設計された内服薬です。
ピンポイントな作用: 血管を拡張させ痛みを引き起こすCGRPの受容体を直接ブロックします。
早い効果: 従来の予防薬が効果実感まで1?2ヶ月かかっていたのに対し、数日?1週間で効果を感じ始める方が多いのが特徴です。
内服の利便性: 注射薬(抗体製剤)と同等の高い予防効果を、飲み薬で得られるようになりました。
CGRPの役割: 片頭痛発作時に血中で濃度が上昇し、血管拡張や神経炎症を引き起こす神経ペプチド。これが痛みの「鍵」であることが国際的な研究で確立されています。
ゲパントの分類: 従来のトリプタン(収縮作用あり)と異なり、血管を収縮させないため、心血管系の疾患を持つ患者さんにも使いやすいというエビデンスがあります。
予防の定義: 月に4回以上の発作がある、または生活に著しい支障がある場合に予防療法が推奨されています(日本頭痛学会ガイドライン準拠)。
大変に効果的で、慢性の片頭痛に悩む方にはとても魅力的な選択肢です。2025年まではゲパント系の薬剤は内服ではなく1か月ごとに注射で投与されていたので、治療のハードルが高いのが難点ではありましたが、内服のゲパント系の薬剤が登場したので、治療のハードルがとても低くなります。各製剤の用法と薬価を下の図に載せます| 薬剤名 | 用法 | 1回薬価 | 1日換算(約) |
| アクイプタ錠 60mg | 1日1回 | 1,461.60円 | 1,461.60円 |
| ナルティークOD錠 75mg | 2日に1回 | 2,923.20円 | 1,461.60円 |
| エムガルティ(注射) | 4週に1回 | 45,165円 | 約1,613円 |
| アジョビ(注射) | 4週に1回 | 39,022円 | 約1,394円 |
| アイモビーグ(注射) | 4週に1回 | 38,980円 | 約1,392円 |
| 項目 | 従来の予防薬(例:デパケン、インデラル等) | 最新の予防薬(例:アクイプタ、ナルティーク等) |
| 1日あたりの薬価 | 約20円 ? 60円 | 約1,460円 |
| 1ヶ月(3割負担) | 約200円 ? 600円程度 | 約13,150円程度 |
| 特徴 | お財布への負担が非常に少ない。 | 費用はかかるが、片頭痛への特異性が高い。 |
「これまでの予防薬は、副作用が辛くてやめてしまった」という方が少なくありません。新薬は副作用の「質」が異なります。
眠気・ふらつき: 脳の活動を全体的に抑える薬が多いため、日中の活動に支障が出ることがありました。
体重増加: 代謝への影響や食欲増進が見られるものがありました。
徐脈・低血圧: 心拍数や血圧を下げる作用があるため、もともと血圧が低い方は使いにくい面がありました。
便秘・吐き気: 消化器系の症状が報告されていますが、多くは軽度で、体が慣れるとともに落ち着くケースが一般的です。
眠気: 従来薬ほど強くはありませんが、一部の方で見られることがあります。
安全性: 血管を収縮させる作用がないため、心血管系の持病がある方でも選択肢に入りやすくなっています。
これまでの薬剤は、服用するタイミングによって効果が無かったり、副作用で、眠気、ふらつき、血圧低下がありましたが、ゲパント系の薬剤は副作用が少なく予防薬の一面もあり、使用しやすくなりました。ただし1か月にかかる費用は1万円を超えており、気軽に飲み続けるには高すぎる金額です。しかし片頭痛に悩まされている患者さんにとっては救世主ともいえる効果がありますので、もしつらい頭痛に悩まされているのであれば一度脳神経外科を受診することをおすすめします。

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