[寸評]
早くも馳星周の第4作。
前3作に比べ構成が比較的ストレートで、序盤からラストまで雪崩を打つように話が一気に突き進む。
相変わらず警察の影がほとんど無いのは不思議だが、強引に引っ張る作者の力技は圧倒的。
一方、暴力描写もさらに吐き気を催すほどにエスカレートしており、序盤で読むのを止める人もいるのでは。
これだけ筆力のある作者なのだから、絶望や憎悪の世界を通り越して単なる狂気の世界に入る前にそろそろ別種の作品もお願いしたいです。
[寸評]
超面白本、大陸冒険活劇ロマン「頭弾」の続編。
前作同様柴火や伊達らの熱い活躍にはしびれるし展開も速く娯楽性十分。
登場人物が皆手抜きなく描かれ、戦闘シーンも迫力がある。
だが今回新たに加わった川島芳子に魅力が感じられないのは残念。
また、後半ついに馬賊の頭領となった柴火の活躍をもっと読みたかったのに、このラストは私にはとてもつらい。
なお本書を読む前に必ず「頭弾」を読みましょう。
[寸評]
「あどれさん」というのはフランス語で「青年」という意味。
武家を飛び出しながら何か中途半端にしか生きられない宗八郎はいつの世の若者にも通じる姿。
当時の社会の変貌ぶりが興味深く、昨日まで剣術の稽古に励んでいた源之介が、武士のプライドを捨て去られ、洋装の軍服姿でフランス軍教官から行進や匍匐前進で埃まみれにさせられるあたりも面白い。
終盤を除きさほどドラマチックな物語とはいえないが、楽しめる。
[寸評]
恥ずかしながらエド・マクベインが現役とは知りませんでした。
なにせ35年も前の黒沢明の映画「天国と地獄」の原作者というくらいなのだから。
本作はミステリ史上初の昏睡探偵という謳い文句で、意識不明者がどのように推理に係わるか楽しみだったが、思いのほかその趣向が効いていない。
結末もよく分からないうちに終わってしまった感じ。
しかし手慣れた筆で、ペーパーバックとしては水準の面白さでした。
[寸評]
競馬シリーズの第36作。
ミステリー色はやや薄め。
事件が起こり、それへの対応が綴られ、また事件が起こり・・・の繰り返し。
ベンの成長していく様が見どころらしいが、このベンが17才にして冷静で沈着、洞察力に富み、大人の女性への対応にはユーモアも併せ持つという日本では考えられない人物で、もう話の最初から十分すぎるくらい成長してるよ。
ベンも父も障害を見事に乗り越え順風満帆に人生を進んでいく物語は、飽きもしないがあとには何も残らない感じでしたね。
[あらすじ]
日系ブラジル人のマーリオは、夢を求めて日本に来たが今は売春クラブの運転手。
借金を返すために金を奪おうとして店の女を殺した。
オリンピックのサッカーでブラジルが日本に負けた腹いせに日本人のサポーターを殺した。
マーリオは坂道を転がるように狂気と絶望の底へ。
女の死体の処理を頼んだ中国人にやくざとの麻薬取引の通訳を頼まれ、金の横取りを計画する。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
30年代前半の満州。
10代半ばで馬賊の修行をたたき込まれた柴火(さいか)は抗日義勇軍の一員だったが、今は賞金付きのお尋ね者となっていた。
錦州の抗日組織に身を寄せた柴火は、川島芳子という男装の麗人率いる安国軍という傭兵集団の軍資金を奪うことに。
一方、満州国軍司令官の伊達は日本でも中国でもない大亜細亜主義、真の五族協和の夢の実現に向け兵を動かしていた。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
黒船来航後の幕末の江戸。
久保田宗八郎は武家の二男。武芸が達者だったが、剣術の稽古が休みの日にふと観た芝居に興味を持ち、人気作者の新七に弟子入りしてしまい芝居小屋に入り浸る。
一方、旗本の二男、片瀬源之介は幕府の武官の家の婿養子になることが決まっていながら、父が死んでしまい、家を継ぐべき兄が放蕩者で家に寄りつかず、身柄は宙に浮いていた。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
弁護士のマシュー・ホープがあるバーの入口で撃たれ、昏睡状態が続く。
どうやらバーで人と待ち合わせていたらしい。
マシューの仕事を請け負ってきた私立探偵のウォレンと助手のトューツ、マシューの友人のブルーム刑事は事件を解明するため最近の彼の足取りを遡る。
そして興行主の依頼を受け、サーカスの会場用地の取得に乗り出していたことを突き止める。
[採点] ☆☆☆
[あらすじ]
プロ騎手を目指していた17才のベンは、ある日突然にオーナーから麻薬常用者との身におぼえのない非難を受け厩舎を追放される。
厩舎の外で待っていた車で連れて行かれた先には久しぶりに会う父がいた。
下院議員の補欠選挙に出ることを決意したという父から、ベンは選挙活動の手助けを頼まれる。
選挙区に入り順調に選挙活動を続ける父に銃弾が放たれる。
[採点] ☆☆☆
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▲ 「天国と地獄」
エド・マクベインの「キングの身代金」を脚色したサスペンス映画。
製靴会社重役の子供と間違えられて運転手の子供が誘拐されるもので、このころの黒沢作品は本当にすごい。
この「小さな娘がいた」の中では、ブルーム刑事が関係者の証言の食い違いに映画「羅生門」のようだ、と嘆息する場面が出てきます。