[寸評]
これはなかなか元気の出る話であった。 あまりにも健気で前向きなヒロインにはちょっとがんばりすぎ、という感じだが、どうせ作り話。 がんばれ!真理子である。 変に理屈をつけた謎解きや突拍子もないSF的なラストもなく、一人の女性の奮闘ぶりを描いたドラマとして素直にいい小説、と感じる。 途中で親友の池ちゃんを出すと後が苦しいと思って読み進めたが、ラストにちょこっと顔を出させるところもいい。
[寸評]
アメリカの田舎町の話なのに妙に懐かしさを覚えてしまう。 特に少年が自転車と一体化して走り回る様は、小さい自転車に乗って誰よりも速く走れると思いこんでいた昔の自分の姿とだぶらせて、もう涙が出るほど同化してしまう。 想像力豊かな少年の心が見事に描かれており、いろいろな話を詰め込みながら、物語の冒頭の事件もしっかりと解決させるマキャモンの筆力には感動もの。 満点!
[寸評]
こんなすごい奴いるか?というくらいの日本版「ダイハード」。 以前雪山で友人を置き去りにしてしまいその心の傷を背負って、というあたりはいかにも日本的で、その婚約者が偶然人質に入ってしまうというのも、やや作りすぎ。 が、とにかくアクションの連続でぐいぐい引っ張られてしまう。 また、テロリストに妻子を殺された男がうまく絡みドラマ性が増している。 ただ、警察や国の対応の描き方が定石通りなのはちょっと残念。
[寸評]
読み終わって、新宿鮫の存在感の薄さに少々がっかり。 話はけっして面白くないことはない。 新宿の風俗もよく描けている(らしい)。 しかしもっとストレートに鮫島警部のアクションが読みたかった。 恋人の晶や上司の桃井、鑑識の藪などのおなじみの脇役陣も今回は出番が少なく、植物防疫官の甲屋だけがあまりにいい味を出しすぎて一人目立ったのみ。 巷では、この作者の「天使の牙」が評判が良いらしいが、私はあれも好かん。 主人公の2人を作りすぎている。
[寸評]
いやはやすごいホラー小説で、読む者の身体までドロドロになるような感覚にさせられる。 作者は薬学の大学院生と言うことで、専門知識も十分だろうが、難解な言葉を並べて読み手が離れてしまわない程度に話がうまく構成されており、後半はスプラッタホラーの領域に入って、これでもか、というところまでやってくれる。 作者は静岡市の瀬名の出身の方だそうだが、次作が楽しみだ。