<試聴とエージング>
試聴とエージングは比較的長い期間を必要とする作業です。製作/調整が完了したアンプは音を出せる状態になったわけですが、ここまでの作業はアンプの静特性に基づいた作業であり、アンプ本来の目的である「音楽の再生」に関る、言わば動的な作業が、これから始まるわけです。エージングを行い、試聴を重ね、各部の微調整と、音質に関わるパーツを自分の耳で選び、試行錯誤を繰り返すことによって、自分のためのアンプが完成します。
・ノイズの確認
調整作業が完了し、物理的には何処にもおかしなところがないことを確認したアンプに、いよいよスピーカーを接続し、電源を投入します。このとき、入力側のRCA端子にはなにも接続しません。この状態で、スピーカーから異音がするようであれば、アンプは発振しているか、ハムノイズを出しています。発振やノイズの確認には、オシロスコープやミリバルといった測定器を使用するのですが、これらの測定器は大変高価であり、また、それらがなくても特に問題がない程度の作業は出来ます。
発振の場合は様々な音の出方をしますが、「トットットット・・・」という連続的な音がする場合は、モーターボーティングといって、出力トランスの不良やカップリングコンデンサの容量超過が原因として考えられます。また、「ピー・・・」とか「ギャー・・・」といった、形容しがたい音がする場合は、信号経路がループ(正帰還)を形成していることが考えられます。この場合は、入出力の信号線による配線不良などが考えられます。
ハムノイズは、「ブーン」といった連続音として現れます。これは商用電源(100V)の交流電圧に起因するノイズで、静岡県の富士川を境にそれより東側の地域では50Hzの高調波、西側の地域では60Hzの高調波がスピーカーから聞えてくることになります。本機は、すべて傍熱管によるアンプであり、ヒータは直流点火なので、ハムノイズは、ほとんど聞えないはずですが、スピーカーに耳を近づけると、ごくわずかに聞えてくるはずです。ハムノイズを完全に除去することは大変困難であり、音楽を聴いていて特に問題がないのであれば、ある程度はしかたがないとするほかありません。
その他、ごく希に「サー・・・」といったラジオのノイズのような音がする場合がありますが、これは抵抗自体が出しているノイズが考えられます。この場合は、雑音を発している抵抗を交換します。
・音質のチェック
入力端子にCDなどのソースを接続して音を出します。ここまでの作業が問題なく完了していれば、ちゃんとした(?)音が聴こえてくるハズです。明らかに歪んだ音がする場合には、もう一度調整作業からやり直してみます。厳密には、歪みの測定にも特殊な計測機器等が必要となるのですが、聴感上問題がなければ善しとします。
この段階では、スピーカーから流れてくる音楽は「硬い音」に聴こえるはずです。これはまだ、アンプの各部が電気的にも機械的もに「こなれていない」ためで、電源を入れて音楽を聴いて行く度に徐々に「硬さ」がとれ、このアンプ本来の音がしてくることになります。この作業を「エージング」と言い、自動車の慣らし運転によく似ています。このエージングには、毎日8時間通電して2時間ほどCDをかけた状態で、約一ヶ月程度の期間を要します。
 エージング中の本機
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