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33  vol.12 三碗の才
2021.10.28 Thu.
 今年の夏は日本全国記録破りの猛暑が続き地球の自転が少しずれて日本列島が熱帯地方になったのではと冗談が出る程でしたが、彼岸を境に諺通り急速に秋も深まり、早や木枯しの季節を迎えました。夏の間は、さっぱりした香り味のお茶が求められていましたが、寒さと共に濃い目の熱いお茶が本当においしい時季となりました。お茶の方もすっかり熟成して充分に味がのってご注文をお待ちしています。
 ある咄家さんのお話……。前座の方は楽屋では師匠さん、兄弟子さん達の着物のお世話や高座すんだ師匠のお見送り等で大変忙しいそうです。中でも先輩方にお出しするお茶はある師匠はぬるくて薄めのお茶、ある師匠は濃くて熱めのお茶とそれぞれ師匠、兄弟子さん達の好みがあり、それをしっかり覚えて粗相のない様気配りをするそうです。演技の修練もさる事ながら、この世界も上にのぼりつめるのは大変だと思いました。
 豊臣秀吉と石田三成にもお茶にまつわる面白いエピソードがあります。
 近江国長浜城主になった秀吉は領内巡視の途中ある寺に立ち寄りました。その寺で応待に出た小坊主が若き日の三成で、秀吉がお茶を所望したところ小坊主はぬるいお茶を茶わんたっぷりについで出しました。一気にそれを飲んだ秀吉が二杯目を所望したところ、やや熱いお茶が半分程つがれていました。さらにおかわりをして、三杯目を飲み終えたとき、秀吉はこの小坊主を自分の小姓として取り立てることにきめたそうです。三杯目には熱いお茶が茶わんに少し入っていました。
 一杯目は乗馬しての巡視でのどが渇いているだろうと、ぬる目のお茶をタップリ。二杯目はやや熱めのお茶を量を減らし、最後にお茶をゆっくり味わって戴くため熱いお茶を少し出したのでした。
 これはお茶のもてなし一つでも心をこめると相手の心をキャッチ出来ると云う「三碗の才」と云はれる名高い逸話です。
 お茶はそのすぐれた栄養素と共に人と人との心をつなぐ大切な役目も果たしています。
 お茶のおいしい季節、白銀屋銘茶をどうぞ!


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