戦後間もない頃、当地の浅間神社の春の大祭は約六百米近い門前町の両側にビッシリと縁日商人さんの店が立ち並び大変な賑わいでした。この縁日商人さんの口上が大変面白く、よくお祭りに通ったものでした。
“負けた負けたは大東亜戦争、カッタカッタと下駄の音、火事と喧嘩は江戸の華、野狐三次が男なら、俺も男だ!まけとこう!”こんな調子でした。華やかな祭り、人々の笑いの中にもほのかなペーソスを誘うものがありました。
昭和四十四年より山田洋次監督による映画「寅さんシリーズ」が始まり主演の渥美清さんの名調子の縁日商人の口上と、四十八の作品にマドンナとして出演された美しい名女優さん達の名演技に評判をよびました。寅さんの口上も“天に軌道のある如く、人それぞれ運命の星を持っています…。”“七ツ長野の善光寺、八ツ谷中の奥寺で、竹の柱に萱の屋根、手鍋さげても、わしゃ行きまする。信州信濃の新そばよりもわたしゃあなたのそばがいい…。”“やけのやん八、日焼けのなすび、色は黒くて喰いつきたいが、わたしゃ入れ歯で歯が立たないよ…。”等爆笑をさそいましたが、これらの口上は江戸落語から出たものと云われています。
渥美清さんが亡くなられ、映画「寅さんシリーズ」も終わりましたが、何とBS(衛星放送)ショッピングの中に四角い顔でない美男美女の大勢の寅さんが健在なのです。寅さんも顔まけの立て板に水を流す如く商品の紹介を一気にまくしたてる女性「こりゃ便利だ」「こりゃ安い」とちゃんとサクラまでおいでになるのです。そして最後に「只今より三十分以内にお電話・FAXでご注文の方に限り二個○千円の所、更に一個おまけして三個、更に便利な××をおつけします。さあ今すぐお電話を!」と絶叫します。「本日限り」「ご当地限定」「数量に限りがあります。」に弱い人の心理を巧について寅さんよりも上手です。
さて、五月の一番茶から九月の四番茶まで、今年の静岡茶の生産は終了し、静岡県及び業界団体のの努力により、すべて安心・安全が確認されました。秋より冬へお茶の本当においしい季節となりました。茶業者は寅さん流の販売方法はとりません。ご安心の上ご注文の程お待ち申し上げます。(SG)
|