昨年十二月、角川書店の富士見L文庫より道具小路先生著「千年茶師の茶房録」という小説が出版されました。
この小説は静岡を舞台にお茶をモチーフにした作品で、将来に夢のない大学生が神社隣にある茶店で常連客との触れ合いを通じて自分の夢を見つけ出すファンタジックなお話です。そして作品中の茶店「お茶の燎」のモデルになったのが当店「白銀屋」なのです。身にあまる光栄、大変に名誉なことであります。
昨年三月の寒い日、とある青年が来店しました。お買い上げいただいた帰り際、「実は僕は小説家なんです」とのお話。秋に出版予定の小説があり、自分のイメージにぴったりなので当店を雛形にして書かせて欲しいとの申し出。店名は出さないとの事でしたが快諾させていただき、後日取材を受けました。
夏頃、出版決定とのご連絡、また巻末に店名を記載する旨承諾のお電話をいただきました。発売を楽しみにしておりましたところ、十月に作品タイトルが決定、やや遅れての十二月十五日発売の運びとなりました。
早速拝読させていただきましたが、静岡の街の様子が非常に細かく描かれており、お茶に関しても道具先生御自身大変勉強されたようで、かなり専門的に記述されています。特筆すべきは「闘茶会」=茶審査技術競技会について詳しく描かれていることです。「闘茶会」を題材にした小説はこれが始めての作品ではないかと思います。
また店名は出ていませんが、作品中に当店を彷彿させる小ネタが所々散りばめられています。@表紙のイラストA創業三百四十年、十五代目B茶審査技術七段C駿河随一香味絶佳D金座町、金座製茶場の山本E深蒸し茶専門店、銘柄等々、ご配慮・心遣いが感じられます。
いよいよ今年もお茶のおいしい季節となりました。作品のモデルにしていただいた事を誇りにそれに恥じぬよう、これからもおいしいお茶をお客様へお届けすべく誠実に商売をして行く所存であります。白銀屋の銘茶でどうぞよいお年をお迎えください。
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