イッテンアカタチ    Acanthocepola limbata    1997年1月 水深18m
水深80m〜100mに棲息すると言われているが、三保では20m付近で見ることができる。 一見不気味に見えるが、臆病でおとなしい。
この写真はイッテンアカタチが巣穴の上でプランクトンを捕食中に、私が巣穴を胸で覆い隠す ように占領してしまった結果、逃げ場所を失って私の周りをウロウロしだした時撮ったものである。 巣穴に逃げ込む前に、巣穴を占領できるとは思わなかったし、仮に成功しても、巣穴を離れ逃げてい くものと思っていた。ところが、意外なことに逃げもせず、スキあらば穴に入ろうと、時には体当た りまでするのであった。イッテンアカタチも驚いたことだろうが、意外な展開に私も驚いたのであっ た。しばらく攻防が続いた後諦め顔になり、途方に暮れたようすでふらふらと当ても無く離れて行っ た。さすがに気の毒になった。私はこれまた連れ戻せるなどとは思ってもいなかったが、後を追いか け、半べそをかく子供をなだめるがごとく、傍らに寄り添い、巣穴にエスコートしたのであった。
なぜこんなことを自分がしたのか、ハッキリとは覚えていない。少しでも近寄りたいと少しず つ寄っていって、かなり近くまで来てしまった瞬間、発作的にやってしまったのだろうと思う。
とにかく私とこんなふうに遊んでくれたイッテンアカタチは、このイッテンアカタチだけである。 ペットに持つような親近感を抱いてしまった。魚にも喜怒哀楽があると確信した時でもある。
  
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