誰も書かなかった簿記入門
第6版
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簿記とは何か

簿記の目的(なぜ簿記が必要なのか)

 意外に思われるかもしれませんが、家計簿や小遣い帳をつけることも、簡易な簿記の一種です。
簿記の特徴は、一定の目的のために、その収支等を帳簿に記録することです。
 例えば会社員の家庭の家計簿ならば、会社から受け取った給料とその使い道を帳簿に記録するもの
であり、小遣い帳は、もらった小遣いとその使い道を帳簿に記録するものといった具合です。
 どちらも家計や小遣いを管理する目的で収支を記録しますが、これからお話しする簿記は、企業(会
社や個人商店)が、事業活動によって得た「もうけ」や事業活動の結果変化した「財産の状態」を知ると
いう目的のために、事業活動によって生じた収支等を帳簿に記録する方法です。
 大雑把に言えば、売り上げから仕入れやその他の支払いを差し引いてもお金が残れば、もうけがあっ
たということになります。
 また、財産の状態とは、現金や商品がいくらあるのか、あるいは借金がいくらあるのかなど、企業の
財布の中身がどうなっているのかということです。
 簿記を使って知ることが出来るもうけと財産の状態は、会社であれば社長などの役員、個人商店であ
れば店主が、会社や店を経営していくための内部資料として利用できますが、それ以外にも、株主、銀
行、税務署など外部に対してもうけと財産の状態を知らせることも重要な目的です。

 ・会社は、株主に対して毎年もうけと財産の状態を記載した報告書を作成して開示し、もうけがあれば
  配当金を支払います。株主は、その報告書を見て、株を保有し続けるか売却するかの判断などに利
  用します。
       
 ・銀行は、企業に対して貸し付けを行う際には、もうけと財産の状態を記載した報告書の提出を求め、
  返済する能力があるかどうかの判断に利用します。
 
 ・税務署は、企業が税金の申告書を提出する際、税金の計算のもとになったもうけと財産の状態を記
  載した報告書の添付を義務付けています。
 
 これらの報告書は、企業の状況を判断する重要な手がかりとなるため、それがあやふやなものである
となれば、企業そのものが信用できないと判断されてしまいます。
 企業は、事業活動によって生じた収支等を、簿記のルールに従って帳簿に記録することによって、も
うけと財産の状態を記載した報告書を作成することができます。