◎96年5月



[あらすじ]

 39才の小学校の音楽教員小牧瑞穂は、夫、一人息子と平凡でかつ自分なりに充実した日々 を送っているが、40才を前に何か焦りを感じている。学生時代は2人の男と別荘で合奏の練 習合宿をしたこともある。その時の一人が自殺し、奇妙な演奏の入ったカセットテープを自分 に残していた。やがて彼女の周りで奇怪な出来事が起こる。

[採点] ☆☆☆

[寸評]

 捨ててもあらわれるテープはけっこう怖い。でも全体にはホラーというほど怖くない。 作者、登場人物が私と同年代で、彼らの気持ち、漠然とした焦りはよく分かる。 よって「中年がんばろう小説」かというと
「スキップ」ほど元気づけられない。 瑞穂の夫があまりに物わかりが良すぎるし、2人の男の不思議な関係やその2人の男の間で揺れた瑞穂の気持ちがいまいち理解できない。 自殺した男は成仏できたのかな。



[あらすじ]

 主人公広田悦至は17才。夏休みに昔のガールフレンドが自殺する。通夜に出向いた彼は見 知らぬ女子高生に「人殺し」と決めつけられてしまう。その女の子友崎涼子と自殺した宮沢由 実果、そして自分が同じ幼稚園の同級生であったという妙な因縁に心を動かされ、強気な涼子 に辟易しながら由実果の死の真相を探っていく。

[採点] ☆☆★

[寸評]

 これは図書館で借りたのですが、書店に並んでいる本の帯になんと「青春ミステリーの金字塔」とあるのを見てたまげた。 逆効果じゃないかなぁ。内容は非常に軽い。トリックもないに等しい程度。 涼子のキャラクタは面白いが主人公に魅力なし。 会話で話をつないでいるのだが、日本人ってこんなにべらべら話すか。 特に17才の男と母親なんて必要なこと以外しゃべらないのが普通なのでは・・・。



[あらすじ]

 1997年の香港の中国返還を題材にした国際謀略小説。なぜイギリスは香港返還を承諾し たのか、その謎を根底に、返還の決定を覆す密約文書をめぐって日本人外交官、アカデミー賞 受賞のアジア系アメリカ人女優、日本の世界的電気機器企業社長、CIAなどが入り乱れる。

[採点] ☆☆☆★

[寸評]

 新人のデビュー作とは思えぬ非常にスケールの大きな作品で、かつ題材もきわめてホットでしたが、小説として楽しめたかというとウーン・・・。 終盤の主人公達の北京入りに向けてもっと盛り上がっていいはずが、胸が躍らない感じ。 あくまで冷たい国際謀略小説か、逆に徹底した娯楽作にした方が良かったのでは。 影の実力者が裏で糸を引いているというのもありがちなパターンだね。



[あらすじ]

 万里は親友園子に拝み倒され、台風のまっただ中に園子が熱をあげている大学助教授の別荘 に向かうが、助教授はおらず、山崩れで別荘に閉じこめられてしまう。そこで、万里は偶然か ら6人の男女をドミノ倒しのように殺してしまう。一方、園子は何者かに殺されていた。誰が 園子を殺したか。自分の罪もその者にかぶせようと万里は推理を展開する。

[採点] ☆☆☆

[寸評]

 前作
「七回死んだ男」が抜群に面白かったので少々期待しすぎたかな。 ドミノ倒し殺人とラストの意外性は結構なものでしたが、嵐の別荘に居合わせることになった怪しい連中の真の理由が強引すぎる。 前半の万里と園子の会話がダラダラ長い。 前作同様、登場人物の名前が凝りすぎていて読みづらい等々、不満が多くなってしまいました。


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