[寸評]
正月そうそうなんとも妖しげな題でゾクゾクしながら読み始めたが、内容は書名とはあまり関連はありません。
主軸の失踪した女弁護士捜しの話はたいした広がりはない。
しかし全編にわたってとばしまくる強烈に下品なジョークで笑わせながら、主人公の白人と黒人の友情、警察署長との交流等
がさりげなく描かれ、とてもいい味を出している。
グローブタウンで半死半生の目に合わされ、死ぬほど怯えながらなお立ち向かっていく2人に拍手!
[寸評]
最初の2,3作は結構笑えたし楽しめました。
しかし、趣向は変われど10編以上も同じような展開が続くとだんだん作者の乗りについていけず、さめていくような・・・。
どの作品も読者がうんうんとうなずきながら作者と一緒に楽しむ雰囲気なのですが、読者の気持ちまで書いているあたりはちょっと調子に乗りすぎのようで。
1編が20ページ程度ですが、もう少し長ければ中身がぐんと濃くなったのではと思います。
[寸評]
なかなかいい味のハードボイルドです。
「不夜城」ほどの切迫感はないが、それなりの緊張感を持ってラストまで引っ張ってくれます。
女社長と組長の娘の描き方がちょっと足りない気もするけど、男のハードボイルドではこれで十分かな。
終盤の活劇も結構迫力あり、あとはハートにグッとくるような人情味というか、泣かせる場面が描けたら最高です。
ただ横取りの場面で、素顔をさらすのは気になったな。
[寸評]
西澤保彦の奇想天外SFミステリーの最新作。
相変わらずの強引きわまりない展開で、このぺージで今までに取り上げた「七回死んだ男」や
「人格転移の殺人」同様、
読者は推理するというより、その意外な展開に翻弄されること自体を楽しむという感じ。
でもこういった話の造りはもうちょっと食傷気味。
この作品もかなり面白いのですが、そろそろ異なる趣向の西澤保彦を読んでみたいです。
[寸評]
同じ作者の「五稜郭残党伝」や「雪よ荒野よ」と同系統の作品。
さすが佐々木譲だけあって、ラストまで飽きさせずに引っ張ります。
ただ人間ドラマとして、共和国建国に賭けた男の熱い想いや焦りがもうひとつ伝わってこない。
また、追跡劇としてもスリル・緊迫感がいまいち。
しかしアメリカの西部開拓時代を感じさせる北海道の雰囲気は興味深く、面白い。
ラストの決闘もしびれます。
[あらすじ]
主人公のハップは、元恋人の美貌の黒人弁護士フロリダがグローブタウンという町で失踪したことを告げられ、警察から捜索を強要される。
ハップは相棒のゲイで'世界一頭の切れる黒んぼ'レナードとグローブタウンへ向かうが、そこは白人至上主義KKK団の巣窟だった。
警察署長も事件には公平な男だが黒人への蔑視を隠さない。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
間抜けな警官を演じる大河原警部を語り手として、名探偵天下一大五郎が解決した数々の難事件を描く連作短編集。
それぞれ密室、ダイイングメッセージ、時刻表トリック、首無し死体から童歌殺人、果てはテレビの2時間ミステリーまで
さまざまな推理もの、ミステリーの趣向を1作ごとにテーマとしている。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
主人公の橋爪はヤクザ組織を離れ、結婚して青果市場に勤めながら、裏では表沙汰にできない金の横取り・盗みをしていた。
組にいた頃知り合いだったやり手の女にその現場を見られたことから、仕事を押しつけられる。
気が乗らない彼も、妻がお産で死に、その仕事に昔世話をしていた組長の娘が関わっていることを知りのめり込んでいく。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
市街地にありながら区画整理の狭間に隠れた屋敷に’生ける屍’の女たちは住んでいた。
秘密を守るため、屋敷に迷い込んだ者は殺し、SUBLEという機械にかけて蘇生させた後、
屋敷の全員が記憶をリセットすることを繰り返してきた。
ある日ある事情により屋敷を訪れた女は、そこに過去の連続殺人事件で死んだはずの者の姿を見る。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
明治2年新政府に敗れ去った函館五稜郭の残党の兵藤俊作は、5年後に突然10数騎を擁し
北海道に共和国を建国すべく蜂起した。
一方、明治政府は彼らを盗賊とみなし、討伐隊を組織し、やはり五稜郭の残党の矢島を相談役とした。
討伐隊は当初手痛い返礼を受けるが、徐々に共和国騎兵隊を追いつめていく。
[採点] ☆☆☆★
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▲ 「雪よ荒野よ」
明治中期の開拓時代の北海道を舞台に、銃を持って戦う人間たちを描く短編集4作で、西部劇の世界を強く感じさせる。
開拓時代の北海道ならさもありなんという感じの、銃が支配する無法社会の雰囲気が凄い。
映画「真昼の決闘」をほうふつとさせる作品もあり、胸が躍る本です。