☆ Milford Track トレッキング(Trekking)のこと

 ミルフォード・トラック(Milford Track)とはFiordland National Parkの北の端に位置する全長54kmの曲がりくねった歩道(dog-leg walk)を言います。 かつてここにあった氷河により侵食して造られたU字形渓谷です。ここでは野外のキャンピングは許可されていません。 このあたりは一年のうち200日雨が降るといわれます。今は年間約1万人の人が世界各国から来てここを歩きます。
<*fiord=fjord:フィヨルド,峡江(高い断崖の間に深く入り込んだ峡湾);特にNorwayの海岸に多い。>

このトレッキングに対する感想> (写真の上にマウスを置いてみてください--put your mouse on each picture--) team photo
  1. 宿泊するロッジの設備がたいへん完備していて,日本の山小屋とは雲泥の差があります。
    世界的にもトップクラスとのこと。 変化に富む景観のすばらしさは言うまでもありません。
  2. ルートの整備もよくなされています。 ボランティアの人も参加して路面整備をしているとのこと。
    ゴミは一つも見当たらなかった。 豪雨でルートが部分的に破壊されたとこ ろは歩き易く石の舗道として修復されており,また迂回路がもうけてあるなど,およそ 危険を感じることがありませんでした。
  3. 一日にロッジの収容人員以上の人は歩かないから,必然的に自然環境保護が貫徹 しています。
  4. 最も南にある原生林と言われているそうですが,後述のように日本のそれと比べて意外に明るいのです。
  5. 唯一悩ましいのはサンドフライの存在です。
    ここには 人がいるところには必ずブヨのようなsandflyが群れて飛び回り,隙あらば人にたかって刺します。 刺されると少し痛いし,かゆい。 事前に話は聞いていて,現地で虫 除け(sandfly repellent)は買ったが,これほど多いとは想像外でした。 あまり引っ掻くと日本に帰ってから化膿する人もいるとのこと。 私も"かゆいお土産"を持ち帰り ました。 Walkの終点の地名がその名もずばりのSandfly Pointといいます。ドアは素早く開け閉めして,Sandflyが室内にまで入るのを防がなければなりません。
ここを歩き通すには2種類の方法があります。

我々の参加した
(a)MTGW (Milford Track Guided Walk (4泊5日間)−ガイドが付く,おんぶに抱っこ Walk− と,
(b)Independent Tramping−個人歩き−(3泊4日間) です。

Glade wharf MTGW(Milford Track Guided Walk)はSouth Pacific Hotel Corporation によって管理されています。Tourism Milford(The Helicopter Line社が この会社の一部を所有している) がその利権を持っています。 MTGWの場合 数人のガイドが面倒を見てくれます。
MTGW専用の快適なロッジには全て,シャワールーム,トイレ,洗濯場・乾燥室,二段ベッド付きの4〜6人用寝室が設置されていて,農場式の おいしい食事が提供されます。広い食堂兼ラウンジもあります。 朝出発前には,昼食(lunch)用おべんとうとしてサンドイッチ・パウンドケーキ(又はムー ズリイ)・果物等((sandwitch,pound cake (or muezli) and fruits(apple ,orange and banana))が提供されます。
ロッジの収容人員は大体50人。 トイレの個室は縦に大変広い,多分着替え室をも兼ねているせいでしょうか。
シャワールームは一人用の個室式です。どちらも人数の割にはたくさん設置してあります.乾燥室の風力は強力です。濡れた服はその日のうち に乾かせます。

今回付いたガイドは若い青年男女4人(リーダーHamish, Nevan, John & July)で,彼等のうち2〜3人は我々より後に出発しながら軽々と追い越 して行って,昼食や休憩ポイントの無人小屋でコーヒー・紅茶・ジュース・スープなどを準備し,我々の到着を待ってサービスしてくれます。 彼等 の”制服”は赤いフリース(fleece) と黒の短パン(ショートパンツ)。背中には軽くはないザック。落伍者が出たらヘリコプタで運んでくれるが,今回 は落伍者なし。
Clinton river game 毎晩食事のあとリーダーが全員に翌日のコースと時間表の説明をスライドを使って簡単に説明します。
(※その時Nevanと少し雑談しましたが,彼は昨年の冬(つまり北半球の夏)は友達のいるドイツで過ごしたし,来年も多分行くと言っていました。 Queenstownでロープウェイのゴンドラに乗ったときドイツ人のカップルと乗り合せましたし,Walkの途中 Independent Trampingらしいドイツ人も見 かけました。ドイツは結構近い存在なのだなとふと感じました。)
最終日の21.8kmをザックを背負って歩くのが辛い人には,Quintin Lodgeからヘリコプタか軽飛行機で終点の宿舎(Mitre Peak Lodge-マイター・ピーク・ ロッジ-)まで荷物を運ぶサービスもあります(料金25NZ$)。
もう一つの Independent Tramping−個人ウォーク−は,ガイドも食事もなし。宿泊施設は DOC huts(Department of Conservation huts) です。 ガス 調理器,乾燥室,マットレス・洗面器・テーブル・ベンチのある大部屋が整備されています。ハイカーたちは食料や調理道具,スリーピングバッグ(寝袋) を携帯しなければなりませんから,体力のある経験者でないとできないでしょう。 こういう人も途中10人以上見かけました。

Hisako walks 今回我々が参加したMTGWはグループ番号No.37,最初の宿泊ロッジGlade Houseで判明した参加者は日本人26名(我々名古屋からの一行15人 +東京からの一行9人+個人参加のご夫婦2人)のほかはオーストラリア人,アメリカ人,シンガポール人で合計46名でした。我々グループの最年少 は29歳のK嬢,最年長は70余歳のM夫人。アメリカ人の中は幼い子供を連れた人もいました。
ラウンジの壁には,今までここへ来た人たちが自分の国の位置に色針を突き刺した世界地図やら寄せ書きが所狭しと貼られています。我々には針 を刺す余地は残っていません。手早くハガキ大の自画像を書いて壁の空いている所へ貼り付けたのは自称一人旅の会会長K氏。ハイカーが署名を するための記帳ノートも置かれています。 本棚には大量の過去の記帳ノートが保管してあります。一番古いノートは1964年のものでした。当時の 名前はみんなNZ人ばかりでした。
Hidden lake Glade Houseでは,食事のあと全員集合,簡単な名前と出身地のみの自己紹介をし,各国別に歌を披露するのが決まりです。日本人グループは人数も多いので 「上を向いて歩こう」を歌うのが「伝統」になっているようです。(ここを歩いた先達たちのホームページを見ると分かります) そのあと,これも恒例のクリン トンリバーゲーム(Clinton River Game)という国別対抗ピンポン玉息吹きホッケーゲームがあります。当夜は日本人M夫妻を 含む4人対アメリカ・シンガポール混成チーム4人でテーブルを挟んでしゃがみ,口をとんがらかしてボールを相手サイドへ吹き落とそうと,熱闘。暫し 供に帰って遊びました。勝負は米・新チームの勝ち。
ロッジでは夜10時消灯です。情け容赦なく10時かっきりに電灯が消えます。従って深夜トイレットに行く人には懐中電灯は必帯品です。我々も持参 したが忘れて来ました。

コースの両側は急峻な山並みが続き,森林限界線の上には白い残雪がまだらに残り,燦然たる陽光を浴びて輝いていました。日陰の道も日本の それほど暗く感じません。 多分木の葉の比較的小さいブナが多い森なので,日光がよく透過するからでしょう。 また最終日に歩いた道は,巨大な,まるで ヤシの木を思わせるような羊歯が茂るところが至る所にあり,また路傍には苔が密生していて,熱帯雨林を歩いているような錯覚に陥ります。このwalkは ガイド付きとはいっても,出発時間は定められてはいても,歩行速度も見たいものも人により違いますから,すぐに,集団で歩いているというよりも, Fern forest ほんの数人で,或いは夫婦だけで歩いているという感覚になります。

黒味がかった花崗岩で形成されたマッキノン峠(Mackinnon Pass)を越える時間は猛烈な風と雨に悩まされました。登り切った地点でガイドのHamish とJulyが雨の中,傘をさしながらコーヒーと紅茶をサービスしてくれ,一息つきました。感激でした。ここでは風雨のため飛ばされそうになり写真を撮る ことは不可能でした。この日以外は天候に恵まれましたから,残念至極です。峠を降りるコースは急流と滝に沿う道で,歩きやすい楽しい道です。当日 の宿泊地クイントンロッジ(Quintin Lodge)[右下写真:裏庭から食堂・ホールを見る]へ着くと,すぐに4km離れたサザーランド滝 (Sutherland Fallls)を見に行かない手はありません。高さ580mの巨大な三段の滝です(世界第5位とか)。特にこの日は降った雨のため一段と水量も 増えていて,川を隔てた対岸から見上げていても,水しぶきが間欠的に霧雨となって襲い掛かってきます。外人さんたちが行くので,”吾も負けじ”と Quintin lodge ファイトが湧き,レインコートに身を固めて,滑りやすい川を越えてなんとか滝の裏まで進んでみましたが,轟音と雨のような水しぶきに恐怖感を覚え, 早々に撤退しました。 ここには人工の施設は一切何もありません。
当夜ロッジの廊下の手すりにハンカチを干していましたら,案の定キーア(Kea)という悪戯好きな鳥につつかれ見事に穴を開けられてしまいました。 彼等は靴も盗んだりします。

最終日は距離は長いが比較的平坦な道をひたすら歩くだけでした。妻はちゃっかり朝出発前に,ガイドたちと一緒に,重いザックだけをヘリで運ぶ 手配こ滑り込みで間に合わせたので軽い弁当だけ入れた小ザックだけの軽装でした。私は詰め換えが面倒くさく,えいままよと重いザックのまま歩い Sandfly point たので,やはり最後は半ばバテバテ状態,終点が待ち遠しい心境でした。ヘリ輸送の件は,事前説明会でも聞いていたし,前夜にも説明があったの ですが,10人以上まとまらないと飛ばないと添乗員氏が強調します。日本人だけでは希望者が10人もいなくて諦めていたのですが,日本人以外から 希望者が多くあったようです。考えてみればガイドたちは当然ヘリを利用するはずだから,何も諦める必要はなく,そのように前夜準備しておけば よかったのです。 そのため日本から小さいザックを持参していたのですから。歩き始めの1時間はそのことばかり考えて悔やんでいました。
昨夜來の雨で,両側の山稜には幾筋もの新造の滝が発生しています。小鳥の声はよく聞こえますが,姿を見付けるのはなかなか困難です。 立ち 止まって景色をゆっくり鑑賞しり,撮影したりしたい所もありましたが,一度立ち止まると,動き出すのにえらく心理的・物理的エネルギーを消耗する 感じです。 やけくそで歩いていると,我々夫婦が何時の間にかグループの先頭になっていました。 終点近くになると昔囚人の労働で道を拡張した ところがあり,古いレールが一本草叢に隠れていました。

21.8km歩き終わって終点Sandfly Pointに到着した時はこれで全長33.5マイルを無事歩き通したという安堵感と共に一抹の 寂寥感を覚えました。 ここでJohnとNevanにサービスしてもらった暖かい野菜ジュースは絶品でした。 ここの休憩所にはスキンヘッドの青年がうろうろ Sandfly point していて,終点を示す看板の前で写真を撮ってくれます。[左上の写真がそれです]実は彼は商売人で,完成品は後で当日の宿舎マイターピークロッジ (Mitre Peak Lodge−小屋ではなくてホテルです)に届けられました。買いたい人は20NZ$支払うのです。 Sandfly Pointからそこまでは船で10分強。 出港時間は午後3時と4時の2便。我々夫婦は早く着いたため,一時間余裕が生じました。私はヘリコプタからサザーランド滝を見るのがかねての念願 だつたので,ロッジのマスターから空港へ電話してもらうと,4人揃わないと飛ばないということだったので,妻も他の仲間も乗るのはお断りと言っていた ため,東京グループの添乗員の方に頼み,3人の希望者(好奇心溢れるおばさま方)を急遽募ってもらい,40分間の空からの観光を楽しむことができま した。(185NZ$/人の出費でした) 前の席に2人,後ろの席に2人別れて乗り込む前にパイロットのお兄さんが”途中で交代します”と言ったのが 不思議だったのですが,瀧の真上のQuill湖の脇の狭い窪地に着陸してくれたのには吃驚しました。ここで記念写真を取ってから席替えをしたわけです。

Mitre Peak Lodge おわりに

このコースは或る程度の登山やウォーキングの経験があれば,そんなにきついものではありません。ウォーキング時のザックの中味は出来るだけ軽く することです。日常生活用の荷物は基地となるQueenstownのホテルに預けて出て来ることができますし,トレッキング出発前に終点のマイターピーク ロッジ(Mitre Peak Lodge)まで予め着替えなどを送り届けるサービスもあります。
日本での事前説明会では,乾きやすくて虫除けにもなり身軽な服装としてはポリプロピレン製の横縞のタイツと短パンの組み合わせこそがKiwi styleと 言って,一押しだとPRされ,私も現地で購入しました。今後夏のWalkingには着用してみようと思います。でも「変なおじさん」に見えるかもしれません。 (ガイドの諸君はみんな生足でタイツなど履いていませんでした。「sandflyは気にしないで放っておけば噛まれない」のだそうです)
もし時間があればQueenstownでのバンジージャンプに挑戦して心臓を止める練習をするのも悪くはありません。精神の昂揚している時でないと勇気が Helicoptor 出ないでしょうから。    《完》

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