Web小説 Restructure                     原作 周防 元水     
第9話

 環境に順応させていくことが生き残ることに繋がっている。企業であろうと人であろうとこの厳然とした自然淘汰の原則は崩れることはない。

 競争が宿命の企業は効率を追い求め無駄を極限まで廃するよう系列化やその逆となる分化を繰り返している。生き残りの為の差別化と棲み分けが日常の様に行われ始めていると言っていい。人は人で自己の生活と自己の実現との狭間でこの厳しい社会の中を藻掻きそして自力で泳ぎ始めている。
 この一連の動きはここ数年来の不況下で起こったものであって、資本主義の仕組みが見事に働いたからに他ならない。珍しくはないがその速さはこれまでのものではない。しかも世代交代というかつて経験したことのない新しいリストラの始まりをもこれは意味していた。

 効率を追い求める近代的システムは、遊びの生じないシステムつまり一つ一つの要素が歯車となって働くことを前提として構築されている。それは失敗から学ぶ人の作りとは根本的に異なっている。基本は常に Simple is best.であって、正答以外は除外され予期しない展開は機構上発生し得ないことになっている。言うならば近代的システムは複雑であるが故に簡単明瞭を追い求め、人として大切なものを排除する形となって機能していると言っていい。
 生産物に於いても同じ事が言える。分業化と協同化が進み機械と電子を併せたメカトロニクスと言われる複合機械が盛んに生み出されている。この複合機械でも基本の Simple is best.は貫かれている。組み上がった機械は一見複雑な様に見えても実は全体では単純化されている。個々の部品は求める機能が保障されていれば良いのであって、その部品の積み重ねを通して全体として機械の体を成すよう仕組まれている。

 企業環境に順応出来ず取り残されそして窓際に追い立てられた者は確実に増えていく。空しい日々が流れていく。仕事の切りの良いところを待ったように有能と言われた技能者・技術者は職を辞していった。

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