Web小説 Restructure                     原作 周防 元水     
第17話

 懐かしい友の生き様は三郎の心を揺り動かして熱くさせやがて燃え上がらせていく。

 無駄を省く生産システムは無遠慮に人の心を蝕んでは留まるところを知らない。企業組織はその遺伝子を組み換える程に徹底して自らの再構築を進めていく。フランス革命がヨーロッパにロマン主義を引き起こした様に、企業の合理化は社員の生理的嫌悪感を呼び起こさせ人としての生き甲斐を問う価値観の洗い直しへと必然的に繋がっていく。

 仲間の離職が続く中で、三郎は疲れ果てていた。企業への所属意識が薄らいだ末に夢見るものは現実や未来の姿ではなく、やはり懐かしい過去でしかなかった。ただただ回顧をしては想い出に浸り現実を忘れては惰性で生きていく。自ら燃えることは驚く程少なくなって、丘を時折訪れては人としての自分を取り戻しそして癒され続けてきた。
 三郎は忘れ難い想い出に辿り着いた。崩れ落ちていくもの、そしてあらわになったものを感じ取ると、強い意志を示した紀子と優柔不断な自分が重なるように現れた。導かれる様にかつての仲間を訪れた三郎は、イバラの道と想えた転職の現場が輝き生き生きとした雰囲気の中に在ることを知った。今や自分とは違う土壌に根を張って彼らは生きている。押し寄せる現実の前に育て上げた価値観はあっけなく崩れ去って、解き放たれ自由となった三郎は、熱く高まっていく感情を抑え切れなくなっていく。

 戻すことの出来ない時の流れが、三郎の情熱を呼び覚ましやがて熱く燃え上がらせて深緑の丘を紅色に染めていた。

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