Web小説 森の中の企業                     原作 周防 元水     
第8話
 
 経済の分野でも同じで、予想の付きにくい時代だからこそ個人の重要さが際立ってきているという。

「つい先日まで時代の担い手は『IT』であった。猫も杓子も『IT』だ。ところが、思わぬところから次の時代の担い手が現れた。『Segway』である。Dean Kamen氏の発明品Segwayは機械技術と電子制御技術を併せた新たな先端技術産業を生み出した。新技術の影響力は底知れない。例えば、車の運転席にSegwayの機構が組み込まれ、座席ごと車を離れて移動できるようになるかもしれない。姿勢制御の技術は、これまで考えられなかった危険度の高い場所での移動を可能にもするだろう。ロボットの内部に組み込まれれば想像を超えたスーパーロボットの誕生が可能になるだろう。面白さは底が知れない。波及効果の大きい技術だけに対応が急がれるが、どっこい、日本では法律の検討すら行われていないのだ。日本の政治風土からしてこれはしかたがないのかも知れない。しかし、愚痴をこぼしていて時間を無駄にしたり、法律の出来るまでのんびりしていては時代の波に乗り遅れてしまう。Segwayが公道を走ることは当分の間できないだろうから、個人や企業が先取り式に実験でも何でもいいから利用をまずすることで、周辺技術の習得に心掛けていく必要が生じてきている。」

 舗装された山道と森に絡むように走る空中レールの意味が今やっと分かってきた。
 一人の女性が林の向こうに現れた。体が揺れないで幽霊のようにすう〜と移動している。風のように灌木の間を縫って移動している。途中のちょっとした坂道でもそのスピードは変わることなく一定だ。これまでに見たことのない実に不思議な動きをしている。これは別世界の様子を垣間見ているようだ。
「おい、あれは何だ。」
 唖然とした私は、思わず立ち上がり、そして、腰掛岩の上に上がってその正体を見極めようとした。Segwayである。初めて見た。実にシンプルである。スピードはローラースケートと同じくらいである。が、明らかにその動きは違う。見ていると、カーブにかかると滑らかにスピードを緩め再び滑らかに加速していく。その間、女性の体勢はほとんど崩れることなく実に安定している。手を振るなどかなり余裕を持った乗り方である。みるみるうちにこちらに近付いてきた。


(※本小説中のSegwayはDean Kamen氏の発明品です。その開発過程と機能は架空のものであり、想像して記述されています。)
動画→
http://www.watch.impress.co.jp/pc/docs/2002/1120/segway2.htm

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