Web小説 森の中の企業                     原作 周防 元水     
第6話

 Segwayの発売は来年からで,価格は3000ドル程度、月産4万台の態勢で生産に臨むという。

「アメリカでは2002年より法律整備とそのための実験が進められているが、すでに公企業では郵便配達や電気料金の検針で、また、大手私企業ではGEなどが工場内の移動手段として導入を決めているという。どうやらこの発明品が世界を大きく変えていくことは間違いなさそうだ。アメリカは国家戦略として新しいこのディバイスを通して工業大国としての圧倒的な地位を築くことを狙っているのは間違いない。先の大戦で工業国の中でたった一国だけ無傷のまま残ったアメリカは、その生産力を生かして戦後の世界をリードし大きく発展させることに貢献した。しかし、その一方で、自国工業力の相対的低下に歯止めがかからず、他国との経済摩擦を繰り返してきた苦い思い出がある。経済の新しい国家戦略を模索しているさ中、この新技術が登場したことによりアメリカは技術大国として再度世界に君臨できるチャンスを得たのである。『パソコンを超える世紀の大発明』と絶賛されているこのSegwayを国家レベルで育て上げ、これをてこに、既に覇権を獲得した政治・軍事と同レベルにまで経済力を復活させる。アメリカは今、大変綿密な計画の下に行動し始めたと考えられる。大企業連合を形成させ、豊富な資金力により相当数の関連技術を特許により固めさせる。2002年に入ってSegway関係の特許申請が急増したことから分かるように既にこの戦略は成功したと思われる。さらに高々度な車体コントロール技術の取得を目指して、他国との企業間提携も推し進めさせている。今後はこれらを武器に海外での販売や委託生産を増やし、やがては現在の車社会の大転換を画策していくことになるだろう。」

 では、日本はというと、残念ながら対応がかなり遅れているという。法律の検討すら行われていないのだからSegwayが公道を走ることは当然できない。私道でしか利用できないのだという。『発売が来年からなら対応ができないのは当たり前じゃないか。』と思ったが言わなかった。いや、言わなくてよかった。祥三の説明は、さらに日本政府の対応のまずさに及んでいった。
  (※上記設計図はDean Kamen氏発明の「iBot」の一部です。)

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