私はこの春、第一志望の東京大学(文科三類)に前期で合格した。しかし私は、テレビの「東大合格者のお宅を突撃取材!!」みたいな企画に出てくるような東大合格者ほど勉強した実感はないので、私の合格は奇跡的とすらいえる。(実際、家族の誰も私が合格するとは思っていなかったと思う)
ただ、勝因はと尋ねられたら、日頃から計画を立ててマイペースで学習を続けてきたこと、そして本番でも、試験時間ギリギリまで何とか答案を埋めようとあがいたこと、と答えられるだろう。特に前者に関して、私が受験勉強において唯一(?)自慢できることは、高1から高3まで一度も塾に行かずに自主的に学習したことだ。私は小6から某通信添削の会員で、その合格実績から自分の受験勉強のパートナーとして信頼していた。そのため私は高1から、学校の課題や予習、定期テストの勉強をこなしながら、余った時間を添削問題の解答に充てるという学習スタイルを貫いていた。
また、もともと計画を立てることが好きだったこともあり、毎月始めに1ヶ月の大まかな学習計画を立て、高3の夏からは1週間ごとに細かい計画を立ててもいた。もちろん計画を立てても全然その通りに進まなかったことの方が多いので、そういう時はもう一度計画を見直して、無理のないように組み替えたりしていた。それほど細かく計画を立てなくても勉強できる人もいるが、私はある程度細かく立てないと何をしたらいいかわからなくなってしまうので、計画を立てることが不可欠だったのだ。計画を立てる時間がもったいないと思えるかもしれないが、自分が最も記憶を定着させやすい学習順序(たとえば参考書を一通り読んでから問題集を解くのか、あるいはその逆なのかといったこと)などに基づいて計画を立てることで、効率よく学習を進められるので、計画を立てるために費やす時間は、あながち無駄ではないのだ。
ここまでだらだらと書いてしまって、大変読みにくいと思うので、ここからはいくつかの項目に区切って書いていこうと思う。
センター試験について
私は記述よりもマークが苦手だった。東大ではセンターの得点はかなり圧縮されて二次試験の配点の方が高いとはいえ、足切りもあるのである程度の点数は取らなければならないと思うと不安だった。特に苦手な数学は毎日問題演習をし、生物も問題演習をしながら自分の理解できていない箇所を洗い出していくという方法で地道に学習した。また授業のなかった現代社会も、参考書+センター形式問題集でなんとか知識の定着を図った。
他の教科は授業での演習を中心にして、家では苦手な科目の克服に専念した。二次の勉強も心配だったので、12月いっぱいはギリギリまで二次の勉強を続け、1月に入ってからはセンター試験に頭を切り替える意味でもセンター形式の演習に専念した。また本番も、休み時間には適度に息抜きをしながらも、一日集中力を維持するよう心がけた。その結果・・・かどうかわからないが、本番では予想よりもよい点数が取れた。(ただし数TAと現代社会以外。)
センターリサーチによれば前期試験の足切りラインは余裕で超えられそうだったが、それまで12月の三者面談の時点では前期より合格する確率が高いといわれていた後期の足切りラインギリギリだったので、後期試験を頑張ればいいというそれまでの意識は、センターによって覆されたといえる。センター試験に必要以上に気合を入れると、緊張してなかなか自分の本来の力が発揮できなくなってしまうので、まだ二次もあるから大丈夫というくらいの余裕を持つことも大切だが、センター試験の結果次第でそれまで志望していた大学から急にランクダウンを余儀なくされたりといった波乱も珍しくないので、センター試験を侮ってはいけない。(結局私は他の国立に行く気がなかったこと、第2志望の慶應文学部をおさえられる可能性が比較的高かったことから、前後期ともに東大を受けさせてもらえた)
私大受験について
東大は二次の配点が高く、科目も多かったことから、センター試験後から二次試験までの時期の時間や体力を私大受験に必要以上に費やすことは避け、とにかく二次試験に専念する必要があった。しかし同時に浪人することを避けるためにも、私大の勉強もおろそかにはできないという事情もあった。
私はできるだけ省エネで私大入試を切り抜けるために、受ける私大を慶応大学と津田塾大学にしぼり、慶應は文学部の一般入試と法学部政治学科のセンター利用、津田はセンター利用のみに出願した。(津田には行く気がなかったので、慶應に落ちたら浪人するつもりだった)前述の通りセンター試験が比較的できたのでセンター利用は両方とも合格した。
また一般入試に向けては、2週間ほど前から小論文の過去問を3年分ほど国語の先生に添削指導していただき、英語は3年分、世界史は2年分ほど解くというような短期集中型の対策で合格できた。国立の受験を自信をもって受けるためにも、すべての私大に合格できたことはよかったと思う。
東大二次試験について
私は受験の前日まで「もっと勉強しておけばよかった」と家族に愚痴っていた。特に歴史の知識量や論述力の不足はすでに手の打ちようがなかった。また、いちばん苦手な数学も、結局できるようになったわけではなかった。以下に、教科ごとに反省点などを挙げてみたい。
<国語>私は地道な暗記が苦手(というか嫌い?)で、古文単語や漢文の句法などは、問題演習で覚えるようにしていた。それでも古典はなんとか点が取れるほうだったが、現代文には過去問を解いた時点でお手上げだった。その一因として、おそらく2年の頃まで、文章をフィーリングで読解しようとする癖が残っていたこともあるように思う。また記述力も不安だった。私は過去問の演習は4年分ほどにとどめ、あとは前日まで添削されて返却された通信添削の答案を見直して、解答の組み立て方を見ていった。本番ではとにかくすべての解答欄を埋める!!というスタンスで、根性ですべて埋めた。(根性で埋めた答えで点が取れたのかは謎だが、他の教科の出来具合から考えると、案外点が稼げたのではないかと思われる)
<英語>英語はもともと得意だったこともあり、得点源にしたいと考えていた。ただ二次の問題はある程度パターン化されている点で特殊で、さらに問題量に比べて解答時間が短く、時間との戦いでもあった。(そして私はあろうことか、解答時間120分をなぜか150分とずっと勘違いしていて、本番で終了15分前にその誤りに気づき、冷や汗をかいた。が、解答はなんとか最後まで終えられた)どうしても陥りがちなのが、英語でパターン攻略に終始してしまうことだ。
今年の英語の試験は、去年が簡単だったといわれたためかかなり難化し、それまでのパターンを微妙に変えてくる出題だった。日頃から総合的な英語力を養っていれば、パターンの変化に動揺することなく落ち着いて答えられる。そうして有利に英語の得点を稼げる意味でも、英語が得意だったことは、合格の一つの要因だったかもしれない。
<世界史>私は日本史よりも世界史が好きだ。・・・ったのは、2月に本格的に世界史の論述を始めるまでのことだった。450〜510字の大論述には本当に苦しめられた。大論述の問題だけ取り出して過去問の8年分以上を解き、先生に添削していただいた。3年になってから日本史との両立が難しく世界史の勉強を怠っていたこともあり、結局最後まで教科書を手放すことができなかった。
さらにそんな私に追い討ちをかけるように、本番の問題は、全3問中第3問の単答問題は易しかったものの、第1問の大論述は農業史、第2問の小論述は暦の歴史というマニアックな出題だった。大論述は多少支離滅裂でもなんとか字数を埋め、小論述は分かる部分だけ何とか解いた、という感じだった。そしてやはり世界史は、定期テストごとに知識を定着させながら、教科書を読み込んでいくというスタイルが最も重要であることを痛感した。知識の記憶という地道な作業は欠かせない。
<日本史>もともと世界史より苦手で、それほど好きになれなかった日本史は、やっぱり苦手なままだったが、それまでより好きにはなれた。それまで定期テストの勉強も、なるべく細かい知識を覚える手間を省こうとして、あまり時間をかけていなかった。実際東大の日本史はすべて論述で、しかも史料の考察が多いので、それほどマニアックな用語の知識などは必要ない。
しかし結局あまり日本史の勉強に力を入れてこなかったために、政治の仕組みや事件の意義などを理解し論述するための知識は絶対的に不足していた。特異な出題形式に慣れるために、センター試験後すぐに過去問をどんどん解き始め、先生に添削していただいた。始めは教科書を頼りにしていたが、途中から先生に言われて何も見ないで解くようにした。すると特に近現代で、よく理解できていない部分がたくさん出てきた。そんな危なっかしい私の論述を試験の直前まで根気よく添削してくださった先生には感謝の気持ちでいっぱいだ。(先生は私があまりに論述ができないので内心心配していたらしく、私が合格したときいて驚いていた)結局やろうやろうと思っていながら近現代の復習はできなかったが、本番では何とか9割近く埋めることができた。
東大日本史の論述は、史料と自分の知識をバランスよく組み合わせるといった技術が必要だ。その訓練にはたくさんの過去問を解いて、日本史の先生に添削していただくことがとても大切だ。そしてその論述の下地になるのは教科書である。私はもっと早いうちから、繰り返し教科書を読んでおくべきだったと思う。
<数学>今まで様々な反省点を書いてきたが、上に書いた科目についての苦手意識など、この教科に対する苦手意識と比べたら何のことはない。数学は高1の頃から私の最大の敵だった。しかし私はそんな最強の敵に果敢に挑戦しなければならなかった。本当は高1の頃からもっともっと演習を積んでおくべきだった。しかし高3になってからそんなことをいってもしょうがない。
私が夏休みから直前期にかけて取り組んだのは、とにかく復習だった。とはいっても数学に割ける時間には限りがあるので、私はある程度の優先順位を決めて、まずこれ、次にこれ、余裕があったらこれ、というふうに自分がやるべきだと思ったものから、標準→難という順序になるようにこなしていった。主に力をいれて復習したのはやはり通信添削の問題である。特に東大に特化したコースの問題は、実際の入試問題を研究して(さらに本番より難しく)つくってあるので、この問題が解けるようになれば入試問題も怖くない!!という意気込みでとにかく直前期にはひたすら復習をした。あとは予習をして講習に出て先生の説明を熱心に聞いた。
本番では、4問中2問と1/3問解けた。・・・つもりだったが後から思い返してみると2問とも途中から間違っていた。今ではいったい数学で何点とれたかは謎である。3年で1年間授業や講習でお世話になった数学の先生にも、合格したことを報告しに行ったとき「数学あれで通用したの?」といわれた。でも途中までしかあってなくてもなんとか書いたことがきっとよかったのだと思う。そしてそれまでは東大模試などでも一問も手がつけられなかったことから考えても、私の数学との格闘は無駄ではなかったと思っている。
以上、予想より長くなってしまったが、これが私の受験体験記だ。私が東大を真剣に目指すつもりになったのは、2年の秋に3年次の科目選択で地歴を2科目とることを決めたときだった。それまでは何となくトップレベルの大学ということで、できれば行けたらいいけどたぶん無理だろうという気持ちで、それでも勉強では自分のベストを尽くしてきた。
3年になっても私は部活(音楽部)は5月の学校祭でミュージカルを上演するまで部長として精一杯続け、小さい頃から趣味で続けていたピアノも8月の発表会まで続けた。もちろん部活もピアノも終わった後は勉強三昧だったが、たまに勉強に飽きてぐだぐだしてしまった時もあって、冒頭で述べたように決して他人の手本になれるような受験生ではない。それでも上に書いたような私なりの学習法や反省点が、今後の受験生の役に少しでも立てればいいと思う。
最後に、受験を乗り切るには何より健康に留意することが大切である。私は受験直前期の冬休み以降は10時には勉強を終えて11時には寝るようにしていた。そして、家族や友人など自分の身近な人間を大切にすること。これは私が読んだ合格体験記には必ずといっていいほど出て来たことだが、納得できる。受験は団体戦だとはあまり思わないが、自分との闘いに勝つためにも、周囲の人の応援はなくてはならないものである。