[寸評]
物語の設定は面白い。命を狙われる者に隠れ家を提供することを商売にしている町などとい
うのもアメリカならばと思わせるし、アデアが持つウィスキーを詰めた杖は傑作で私もぜひ欲
しい。主要な登場人物は皆魅力的に描かれているし、敵の正体が見える後半からはサスペンス
も盛り上がる。ところが、私はもう一つ話に乗れなかった。なぜかな。微妙に感覚がずれるよ
うで、物語にのめり込めなかったのでした。
[寸評]
1年半前に読んだ「流星たちの宴」以来、久しぶりの白川道です。泣かせます。昔自分の子
供を宿していた恋人と共に、名乗り出ることもなく遠くから見つめるだけの妹のコンサートに
行く場面はジーンときます。しかし、設定から展開まで話はいかにも古い。愛する者のために
死のうという日本的浪花節ハードボイルドです。でもこの感覚は嫌いじゃないなぁ。作者独特
の世界を感じます。
[寸評]
幕切れは意外性はないが、結構怖いです。そこまで少し長いですが、なんとかもたせます。
小池真理子風の心理サスペンスで、主人公がだんだん追いつめられていき、精神に異常をきた
していく様がじわじわと描かれていきます。ただ、終盤に説明調で一方的に謎解きをしてしま
うやり方はどうかなぁ。
[あらすじ]
元最高裁判事のアデアは収賄の罠にはめられ15か月の服役生活を送る。出所の日に命を狙
われ自分に賞金がかけられていることを知った彼は、逃亡者に隠れ家を提供することを収入源
としている過疎の町ドゥランゴに身を隠す。そこで弁護士ヴァインズと女市長、警察署長と共
に、殺人を繰り返して近づいてくる姿無き敵に復讐の策を練り始める。
[採点] ☆☆☆
[あらすじ]
少年時代を養護施設で過ごした伊勢は、過去の名を捨て東京でクラブ経営をしていた。たっ
た一人の妹は幼い頃音楽教授の養子となり、今は世界的ヴァイオリニストだが伊勢は遠くで見
守るだけだ。その結婚間近の妹の生い立ちを風俗ネタ専門のライターが嗅ぎつける。またやく
ざの抗争で友を失った伊勢は、捨てたはずの拳銃で全てにけりをつける決心をする。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
須山久美子は勤務医を夫に持ち、自らは民間のカウンセリングルームでサイコ・セラピスト
(心理療法士)をしている。ある日、自宅に「人を殺した」との相談電話が入り、それ以後彼
女の内面に微妙な変化が現れる。若い相談者の殺人狂言劇にひっかかり昏倒してしまう事件が
起き、徐々に彼女の過去が浮き彫りになっていく。
[採点] ☆☆☆
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▲ 「流星たちの宴」
恩を受けた男の夢を叶えようと株取引の顧問業を営む男を主人公に、証券業界の実体をうま
く交えたサスペンス・ハードボイルド。バブルがはじける前の業界の姿が興味深く非常に面白
い。ただラストはすっきりしすぎて、近づいてくる警察の影など中途半端な印象。