[寸評]
大名に仕えず、必ず弱い方に陣借りし、まさに超人的な武者ぶりで、豪放磊落、おまけに女にもめっぽうもてる、という戦国のランボーを描いた痛快時代劇。
未読だが、作者の「陣借り平助」という本のシリーズだそうで、60ページほどの短編5編から成る。
とにかく平助の活躍ぶりは痛快そのものだが、その破格なスケールの大きさに比べ、各エピソードはいずれもやや小振りな印象。
気楽に楽しむには十分。
[寸評]
「オッド・トーマスの霊感」の次々作にあたる作品。
障害のある子どもたちと修道院で静かな暮らしをしていたオッドだが、そこに危険が迫るというもので、被害を食い止めるべく彼の能力が発揮される。
長さの割に展開に変化が少ないようで、ようやく(?)の襲撃場面では、襲い来る”怪物”たちの禍々しさはなかなかのものだが、決着の付け方はちょっと拍子抜け。
もっと二重三重の攻防が読みたかったところ。
[寸評]
クックの作品はほぼ3年ぶりだが、その見事な語りは健在。
序盤の小さな事件のほかは、物語の大半で起伏が少なく、淡々とした語りが暗く静かに綴られていくだけで、派手な展開が用意されているわけでもない。
しかし、終盤の悲劇に向けじりじりと、だが着実に進んでいく物語はしっかりと読み手を引き込んでいく。
読後も重さが残る結末はちょっと残念だが、時折時間を前後させ、回想を交える語りに魅了された。
[寸評]
小気味良い娯楽作「ヒートアイランド」の主要メンバーが久し振りに勢揃いというものだが、実はシリーズ4作目で、私は間の2作は未読。
細かいことは抜きで楽しむ類の作品だが、高校にも行かず、10月から勉強を始めて東大合格ですか。
300Kmオーバーで高速道路で練習走行ですか。
それでもテンポよく進んでいたものの、中盤やたら間延びする場面があり、最後は仲間内で楽しんでいるだけの話でした。
[寸評]
ナチを絡ませた国際謀略小説。
二度とドイツの土を踏むまいと決めていた男が、目覚めたらベルリンのホテルで、60年以上前の容疑で逮捕されるという、衝撃的な導入部から快調に話は進む。
女性検察官は魅力的な人物設定だが、ブレイヴァマンの息子とのイギリス捜査行はちょっと安易な展開。
国際的な話でありながらダイナミックさが足りない印象で、もう一段謎を深めて欲しかったが、全編面白さは持続する。
[あらすじ]
魔羅賀平助は、戦のあるところへ参じ許しを得て陣を借りる、つまり傭兵で、陣借り平助の異名を持つ。
その豪勇を将軍足利義輝より「百万石に値する」と評された。
その平助が美濃国の養老の滝の滝壺で水浴びをしていたところ、5人の男にいたぶられていた若侍を助ける。
若侍は、菩提山城の城主・竹中半兵衛の弟、彦八郎と名乗る。
平助は命の恩人として城に迎えられ半兵衛と対面する。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
オッド・トーマスは死者の霊が見える21歳の若者。
心の平安を求めるため、シエラネバダ山脈に囲まれたセント・バーソロミュー大修道院に滞在し、パンケーキを焼いて7か月になる。
ある夜、雪の降り出しを見ようと外を眺めていた彼は、ポダッハを見つける。
ポダッハは近い将来の災厄を意味する。
追っていくと、ポダッハたちは脳障害で収容されている女の子を熱心に観察していた。
[採点] ☆☆☆
[あらすじ]
1954年、24歳のジャック・ブランチはレークランド高校で教職に就いていた。
彼の家は名家、旧家の並ぶ地区にある高貴な家系のひとり息子。
町の東側には”ブリッジズ”と呼ばれる、貧民街、暗黒街があった。
彼は生徒たちに”悪”についての講義を専門に行っていた。
例えば”水上の悪”という講義では、1816年に座礁し殺人から食人にさえ至ったメデューズ号の航海のことを語った。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
中西は東京大学の2年生でワンルーム住まい。
宝飾業を営む越谷市の実家は祖父のみで、父はベトナム出張の際暴漢に襲われ死亡、母は業務提携していた会社の社長と再婚した。
彼のクラスに渋沢薫という中卒、大検で東大合格という男がおり、小柄で穏やかそうだが見かけほど軟弱でないと、中西はみていた。
飲み会の席で近くのグループともめた時、相手は渋沢を見て怯んだ。
[採点] ☆☆☆
[あらすじ]
ルドルフ・ブレイヴァマンは激しいノックの音で目を覚ました。
部屋に入ってきたのはベルリン刑事警察の警部。
62年前にドイツ市民を殺害した容疑で逮捕すると言う。
昨夜はロンドンのホテルで眠りについたはずなのに、なぜベルリンに。
ユダヤ人の彼は、第三帝国崩壊後の1946年4月、森の中に潜んでいた元ナチ親衛隊将校5人を、仲間たちとともに民族の復讐のために殺害した。
[採点] ☆☆☆★
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