[寸評]
表題作のほか、さまざまな恋愛の形を描く短編全6編から成る。
いずれもストレートな愛の形ではなく、ちょっと変形、理解できる人を選ぶような物語ばかりだが、不快になるようなものはない。
すんなりと読み手の精神に入ってくるのは、話の語り、流れが巧いからか。
大学時代の同級生でちょっと好きだった彼女が、長く男やもめだった自分の父親と結婚するなどという話も、読んでいてそれなりの幸福感を感じさせるのは流石。
[寸評]
この本の帯には「分類不能」とあるが、体裁はあくまで本格ミステリー。
あくまで論理的に謎を解明すべく奮闘する主人公のミチオの姿を追う。
しかし、生まれ変わったS君とか妹のミカや占い師のおばあさんなど、うわぁそうくるか、という奇矯さ。
ミステリーとして反則のレベルを超えた不可思議な設定と味わいの物語。
動物や児童の虐待も出てくるし、小学生の推理として描くのは無理があるようで、個人的にはもうひとつ楽しめなかった。
[寸評]
テス・モナハンシリーズも早や8作目。
私は第1作の「チャーム・シティ」に失望して以来7年ぶりだが、さすがにシリーズが続いているだけあって面白さはかなり上がっている。
何とか父親に連絡を取ろうとする息子の描き方もいいし、テスをめぐるサイドストーリーも余計な感じはない。
ペーパーバックとしてなら十分な面白さと思うが、もう少し短ければ流れるようなストーリーが楽しめたろう。
500ページの長旅の割りにラストはあっけない。
[寸評]
主に犯罪事件でない日常の謎を、売れない女性フリーライターがちょっとキュートなお婆ちゃんの助言を得て見事解いていくという連作短編6編から成る。
系列から言えば、「垂里冴子のお見合いと推理」などと似ているが、出来のほうはまぁつまらなくはないけれど、という位。
この種の物語にはお約束の主人公の不器用な恋愛なども描かれるが、登場人物に魅力がなく、こういう作品に不可欠なほのぼの感が足りないのも残念。
[寸評]
公安とスペインものという2つの柱を持つ作者が、その得意のスペインを舞台に、第2次大戦中の各国スパイの暗躍ぶりと人間模様を描く。
連作長編の4作目に当たるもので、人物関係などは単発で読むとさすがに説明不足。
しかし、連合軍反抗の大きな分岐点となる地中海ヨーロッパ側上陸地点を巡っての大戦秘話めいた謀略作戦が興味深く、深みはないが退屈させられることはない。
エンディングはまだまだという終わり方でした。
[あらすじ]
志郎は車関連の仕事がしたくて、とりあえず大学には行かず、ガソリンスタンドで働くことにした。
両親は猛反対だったが、祖母が説得してくれた。
祖母は70歳を超え横田基地近くでカウンター・バーを営んでいる。
そして3年近く、仕事にも慣れ新人指導も任されているが、問題は祖母がカマロで若い男を助手席に乗せ頻繁にこのスタンドに給油に来ることだ。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
夏休み前の7月20日、小学5年生のミチオは、学校を休んだS君の家に宿題と連絡プリントを届けることになった。
S君の家のチャイムを鳴らすが、何の応答もない。
庭に回り家の中を見るとS君はロープで首を吊って死んでいた。
ミチオは急いで学校へ戻り、担任の岩村先生に事情を話す。
しかし先生が警察と一緒にS君の家に向かうと死体は消えていた。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
メリーランド州の女性私立探偵テス・モナハンのもとに裕福なユダヤ人毛皮商人マークから家族捜索の依頼が。
妻ナタリーと9歳の息子、4歳の双子の4人が突然姿を消した。
警察は事件性が無いとの理由で介入しない。
何の前触れも説明も無く出て行った妻にマークは納得できない。
テスは女性私立探偵のためのメーリングリストを利用しながら行方を探る。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
わたし、寺坂真以はあちこちの雑誌などに寄稿しているフリーライター。
家にこもって原稿を書いていると息が詰まるので、ほかの店よりも空いている近所のファミリーレストランに居座り、仕事をすることが多い。
そんな時、携帯に友人から電話が。
ちょっと謎めいた不思議な話だったが、電話を終わると、壁際の席にいる和服のお婆ちゃんが手招きしてきた。
[採点] ☆☆☆
[あらすじ]
1942年夏、ドイツ軍にヨーロッパ本土から追われていた連合軍が攻勢に転じ、地中海のいずれかの地点への上陸を計画していた。
イギリスの秘密情報部では、それに先立ちある謀略作戦が練られていた。
作戦の舞台は各国のスパイ活動が活発に展開されているスペイン。
将校の死体に偽の機密書類を持たせドイツ側の手に渡らせようというものだった。
[採点] ☆☆☆★
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