[寸評]
作者としてはまさに自家薬籠中の物といえる歴史ロマネスクミステリー。
キリスト教にまつわる話では、最近ではやはり「ダ・ヴィンチ・コード」が想起されるが、こちらは派手さでは劣るものの、全体を包むミステリアスな雰囲気は質の高さを感じさせる。
上下巻でややスローな展開だが、謎が謎を孕み、三転四転する物語は面白さを持続する。
ラストはもう一歩踏み込んで面白い作り話を読ませてほしかったが、それはちょっと贅沢すぎるか。
[寸評]
中古バイク情報誌「ミスターバイクBG」に約4年間連載されたショートストーリー全50話。
バイク雑誌連載でありながら、バイクが話の中心ではなく、どれも街と人を描く人情話である。
5、6ページの長さながらしっかり物語の体裁を持ち、最後はニヤリとさせたりホロリとさせる見事なオチまでついている。
あまりに出来がいい話が多く感心しながら読み進めていくうちに、徐々に"話の作り過ぎ"が鼻に付いてくるようになるのが残念。
[寸評]
突然の夫の死後に発覚した愛人、家や遺産相続、独立後も不安定な子供、自分の行く末まで、特に自己主張なく平凡に生きてきた女性を襲う荒波。
日々刻々と揺れ動く感情が作者らしく執拗に表現されており、実にリアル。
とりわけ夫の愛人とのやり取りは、お互いの激しい感情の吐露が凄い迫力。
物語としては、彼女が二転三転、一進一退する様が延々と続き、少々苦しい。
まとまりのないのがリアルといえばそれまでだが。
[寸評]
緩急つけた展開、気持ちの良い直球勝負の語り口で楽しめる家族小説だが、中盤まではあまりにカッコいい兄と妹のキャラにはちょっとしらけ気味。
おまけに兄弟の性遍歴のような部分も、あまりにあっけらかんとしていて呆れました。
だって中学生だよ。感心せんね。
これが兄の事故以降は、とても悲しいけど心の奥深くまでがんがん響く素晴らしい物語になっています。
それと"あとがき"が最高。
たった2ページ半ですが、泣けます。
[寸評]
異常犯罪ものサスペンスで、刑事が刑務所に収監されている男に事件解明のヒントをもらうなんて、まんま「羊たちの沈黙」じゃないですか。
まぁ設定はともかく、面白さは本家にも負けないほど。
女性検死官とライダーの関係、関連事件や警察内部の権力争いなどサイドストーリーにも手抜きはない。
ちょっと犯人が唐突な印象だし、終盤のどふざけた趣向もあるが、スピーディな流れの中では許せるか。
これがデビュー作とは驚き。
[あらすじ]
ニックはパレオロゴス家の3男。
家はビザンティン皇帝の子孫にあたり、17世紀に祖先がイギリスに移住した。
長兄アンドルーの50歳の誕生祝いに親族が集まることになったが、実は父親が住む古い屋敷を高額で買い取りたいという話があり、兄弟で
父親を説得するつもりだった。
買主の代理人によると屋敷内に"最後の審判"を描いた窓が隠されているという。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
食堂の中から表の様子を窺うと5、6人の外人が俺のバイクを取り囲んでいる。
大型アメリカンバイク「ワルキューレ」。
先ほどその中の一人が強引にバイクに跨ろうとしたので足払いしてしまった。
どうも仲間を集めてきたらしい。
愛車が壊される前にとやつらのところへ出て行くと、通りかかった中年の外人を見て連中は直立不動になった。
元憲兵隊の曹長だという。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
敏子は59才。
二人暮しだった夫の隆之が心臓麻痺であっけなく死んでしまった。
10年前にミュージシャンを目指し親の反対を押し切って渡米した息子も、妻と子供を連れて駆けつけた。
葬式の夜、夫の携帯電話が鳴る。
伊藤という姓で登録があり相手は女だった。
さらに蕎麦打ち教室に通っていたはずの夫が、教室にはあまり行っていなかったことも分かる。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
下宿のポストに、年末に家に帰るという父からの手紙が。
彼女と過ごす予定だったが、実家で飼っている犬のサクラに会いたいという理由をつけ帰郷。
久しぶりの実家。
3年ぶりに家に帰ってきた父、そして母と妹のミキ。
兄は4年前、20才過ぎで死んだ。
兄は小さい頃からとにかく伝説を作るほどモテた。
一方、妹はモテプラス乱暴者振りで名を馳せた。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
公園に横たわる男の首無し死体。
市警PSIT(精神病理・社会病理捜査班)刑事のライダーとハリーが捜査にかかる。
検死に立会ったライダーは、被害者の下腹部に意味不明の文字が書き連ねられているのを知る。
矢継ぎ早に2番目の犠牲者が。
やはり首無しで下腹部に文字。
そして所持品のPDAには"ミスター・カッターと面会"との記録が残されていた。
[採点] ☆☆☆★
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