「ブルー・ベル」(BLUE BELLE)
作者 アンドリュー・ヴァクス 出版社 早川書房 90年
ニューヨークの無免許私立探偵バークはポン引きに雇われて、少女売春婦を狙う者が乗る"幽霊ヴァン"を追跡することに。
作者は青少年犯罪と幼児虐待専門の弁護士という職業柄、作品にはこういった題材が多くあまり気持ちの良いものではないが、アウトローの人々の生き様が衝撃的な作品ばかり。
特に本作では大女のストリッパーだが純粋な心を持ち愛に飢えたヒロインのベルの姿が圧倒的。
他に「赤毛のストレーガ」とバークシリーズではないが「凶手」が面白い。
「初秋」(EARLY AUTUMN)
作者 ロバート・B・パーカー 出版社 早川書房 82年
私立探偵スペンサーに依頼された仕事は、離婚した夫に連れ去られた息子を取り戻すこと。
仕事は簡単に終わるが傷ついた少年をスペンサーは男として鍛えていく。
タフだが口数も多い反骨精神の固まりのようなスペンサーに恋人スーザン、相棒ホークのこのシリーズ、
20作以上も続いていますが、10作目あたりまではすぐ次が読みたくなる面白さでした。
本作はシリーズ中でも珍しい静かな余韻に浸れる珠玉の1編。
「羊たちの沈黙」 (The Silence of the Rambs)
作者 トーマス・ハリス 出版社 講談社 86年
若い女性を殺し皮を剥ぐ殺人者"バッファロゥ・ビル"を追うFBIは訓練生クラリスを大量殺人で収監中のレクター博士のもとに派遣。
レクターに予言めいたヒントを与えられたクラリスは事件の核心に迫っていく。
映画も傑作だったがこの本も凄い。サイコスリラーブームのはしりにもなった作品で全編にわたって非常にスリリング。
ハリスの作品はこの本の前作といえる「レッド・ドラゴン」とテロで話題となった「ブラックサンデー」がある。
「ペテルブルグから来た男」(THE MAN FROM ST.PETERSBURG)
作者 ケン・フォレット 出版社 集英社 83年
第1次世界大戦直前のロンドンを舞台に、ロシアと手を結ぼうとするイギリス側代表の伯爵。交渉に来たロシア侯爵。
そしてそれを阻止しようとするロシア人テロリスト。これにテロリストと昔深い関係にあった伯爵の妻が加わって織りなす、サスペンス・ロマン。
ケン・フォレットの戦争冒険スパイアクションは、サスペンスたっぷりの展開にうまく女性を絡めてドラマ性も十分。
「針の眼」「トリプル」「レベッカへの鍵」も同等の面白さ。
ただ、これ以降の作品はいまいちのようです。
「倒錯の舞踏」(A DANCE AT THE SLAUGHTERHOUSE)
作者 ローレンス・ブロック 出版社 二見書房 92年
エイズで死期が迫っている男から元アル中の無免許探偵マット・スカダーへの依頼は、強盗殺人事件で死んだ妹の夫を調べることだった。
しかし調査の過程で殺人ビデオで殺しをした男を見かけその男を追う。
スカダーは、パーカーの探偵スペンサーと同様に口数は多いがマッチョではなく、断酒会に通うようなより人間味のある男。
このシリーズは12作ほど邦訳があるが、ハードボイルド、推理、サスペンス、ホラーといった種々の要素を持ちながら、かつ人間ドラマとしても読み応え十分。
この作品と「死者との誓い」が特にお薦めで、「墓場への切符」「獣たちの墓」もいい。
「北壁の死闘」(TRAVERSE OF THE GODS)
作者 ボブ・ラングレー 出版社 東京創元社 87年
戦後40年を経てアイガー北壁でナチ軍人の氷漬けの死体が発見された。
BBC調査員によって第2次大戦末期のナチ・ドイツによる恐るべき企てが明らかになる。
近年、かつてのアリステア・マクリーンやジャック・ヒギンスに代表される正統派冒険小説がどうも振るわないが、この作者にももっとがんばってほしい。
本作は迫力満点の登はんシーンが見もの。他に「オータム・タイガー」「ブリザードの死闘」がお薦めです。