[寸評]
30間近の屋台のおやじであるテッキが、持ち前の推理力と少々強引なやり方で、キュータらが持ち込む事件を解決していく6編の連作短編集。
掛け合い漫才のようなテッキとキュータのやり取りが面白く、テンポよく話は進むが、いずれも込み入った事件を50ページ弱でまとめる都合か、ラストが詰まってしまい、テッキのあまりの名探偵ぶりには少々しらける。
個性豊かな脇役も出てくるが、屋台が軒を連ねる辺りの街の猥雑な雰囲気がもっと欲しい。
[寸評]
中国ものに絶妙の筆さばきを見せる作者の長編。
学はあるが金と力は無い女好きの小説家の曹霑が、夢と現、自らの小説世界と現実の間を行き交いながら、色恋と冒険を繰り広げる不思議な物語。
曹霑に絡む弟や義妹、女賞金稼ぎなどの助演陣がいかにも作者好みのかっこよすぎる面々だが、嫌みはない。
面白い物語だがやや間延びした感じで、半分は夢の中や主人公の小説世界のためか、全体に霞がかかったような印象。
[寸評]
軽快なテンポ、平易な文章、個性豊かな登場人物そして物語もパワーがあり、面白い。
作中にも出てくるが、まさにチャップリンの「モダンタイムス」の世界の中で、人間同士のぶつかり合いもたびたび出てくるものの、主人公の大阪弁により雰囲気が上手く和らげられている。
女性も上手く配し、またホロっとさせる場面も忘れないなど、話の抑揚の付け方もにくい。
ラストも気持ちの良い終わり方だが、主人公としてはもう一段の進歩をさせたかったな。
[寸評]
2000年のMWA(アメリカ探偵作家クラブ)最優秀処女長編賞受賞作。
現代のチベットを舞台にした珍しいミステリーだが、重厚な雰囲気を持つ正統派の作品である。
特に自由を奪われたチベット仏教の僧たちの毅然とした態度、弾圧にひるまず自然体で信仰に励む姿には心を動かされる。
地味で長さのわりに見せ場にやや乏しく、禅問答めいた会話も多くて娯楽性ではあまり高い点は付けられないが、印象深い作品。
[寸評]
以前はミステリー専門だった作者もいつも間にか恋愛小説作家になっていたが、これは本当に久しぶりのミステリー。
もちろん恋愛も事件の雰囲気を壊さぬ程度に程良く濃い目に味付けされている。
出だしは桐野夏生の「柔らかな頬」を想起させるが、緊迫感や悲愴感よりも全体にスマートな雰囲気なのが作者らしく、刑事小説としての面白さも十分。
事件の真相は少々後味悪く、犯人も作者の意図よりも早めに割れてしまった感じなのが残念。
[あらすじ]
テッキは博多長浜でカクテルを売りにした屋台を出している。
店に入ってきたのは高校以来の友人で結婚相談所調査員をしている疫病神のキュータ。
相談所の紹介で結婚した天野夫妻を訪ねたキュータは2人の遺体を発見し、あわてふためき逃げだしてきたと言う。
キュータはテッキのアドバイスを受け翌日再び天野宅を訪れ初めて遺体を発見したことにするが。
[採点] ☆☆☆
[あらすじ]
18世紀半ばの中国は蘇州。
小説家の曹霑(そうてん)は名家の出身だが、今は家も没落し、妻にも先立たれ、口うるさい義妹と暮らしている。
時々金もないのに妓楼へ行ったりと気ままな生活を送っていた。
ある夜、酔った勢いで満州兵と喧嘩になり、追われる途中、遊仙窟のような家にたどり着き、まるで天女さながらの美女と夢のような一夜を過ごすことに。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
大学を中退、勤めていた貿易会社が倒産し失業保険も切れた野崎は、バイクで北海道を旅行するためようやく職探しを。
そしてナイス興業という会社の派遣という形で愛知県の自動車組み立て工場へ。
京大卒や元教師、元ボクサーなど個性豊かな男たちと共に寮に入る。
ベルトコンベアーで運ばれてくる車に部品にボルトを埋め込む作業に、悪戦苦闘の毎日。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
単道雲は中国経済部主任監察官だったが、上層部も絡む事件の余波で北京を追われ、チベットの強制労働収容所へ送られる。
そこには仏教の僧侶たちが収容されていたが、不当な弾圧にも屈しない彼らの姿に単は畏敬の念を抱く。
ある日、作業現場で男の首なし死体が発見される。
単は、州の人民解放軍責任者の譚大佐から事件解決を命じられる。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
西軽井沢にある画廊経営の室生家の別荘から12歳の息子の雄介が行方不明となる。
交番に通報してきた母親の康子から偶然事情を聞くことになった辰巳刑事を中心に、誘拐も視野に捜査が始まる。
しかしいっこうに雄介の行方はしれず、業を煮やした父親の希望で警察も公開捜査に踏み切る。
そこに突然身代金要求の電話が室生家に。
[採点] ☆☆☆★
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