調査理由についての意見
                      
 調査対象者である『ペンション△△』経営者・△△△△さんの代理人である□□□□です。
 今日は、今年2月13日付で山田謙司・島田税務署長よりなされた△△さんへの「平成17年1月1日から同年12月31日までの事業年度以後、青色申告を取消す」旨の処分について、口頭で意見を述べます。
 国税通則法第16条は、「税額の確定の方式として」、「納付すべき税額が納税者のする申告により確定する…」という『申告納税方式』を筆頭にあげ、これが原則であることを明記しています。△△さんは、所得税法第143条に規定する青色申告の承認を受けて、法令に定められた帳簿書類に基づいて確定申告をしていました。
 昨年7月に、何の連絡もなく突然税務署員を名乗る2名の人物が、「税務調査をしたい」と言って自宅兼ペンションを訪れました。その時は、「仕事の都合もあり、突然こられても困る」旨伝えて帰っていただきましたが、8月25日、日程を調整して△△さんはペンションの一室で、調査を受けるために帳簿や請求書、領収書など、とりあえず必要と思える資料をテーブルの上に用意し、乗せきれない資料は段ボールの中にいれ、いつでも取り出せるように脇に置いて、調査官が訪れるのを待ちました。
 当日来たのは、AA調査官、BB調査官の2名でした。△△さんが、「うちへ調査に来たのはなぜか」と理由を尋ねたところ、「申告の確認」との返事でしたので、「調査に来るのには、それなりの理由があるのではないですか」と再び聞いても、「申告の確認」としか答えませんでした。本当にそれでいいのでしょうか。
 確かに所得税法第234条には「国税庁、国税局又は税務署の当該職員は、所得税に関する調査について必要があるときは、次に掲げるものに質問し、又はその者の事業に関する帳簿書類その他の物件を検査することができる」と定められています。税務調査は、この法律があるからできるものだと思います。しかし、この法律の条文の中には「必要があるときは」とあり、税務調査は、本来どのような必要があるのか、それなりの理由がなければ出来ないものだと言うべきです。さもなければ、平穏に営業と暮らしを営み、まじめに申告・納税を行っている善良な市民が、税務当局や税務職員の「ちょっと調べてみたい」という恣意的な興味や疑問の赴くまま、ただでさえ多忙を極めつつ困難な営業と暮らしを余儀なくされている納税者が一方的に時間を割いて付き合わされることになり、極めて理不尽な犠牲を強いられる結果になるからです。調査はあくまでも社会通念上相当と認められる理由と根拠がある場合にのみ許されると解されるべきで、税務当局やましてや個々の税務職員が「調べてみたいから」という動機から行われるようなことは、絶対にあってはならないと考えるものです。
 この点で、1974年(昭和49年)の第72国会では『税務行政の改善について』は、「事前に納税者に通知するとともに、調査の理由を開示すること」と、『中小業者に対する税制改正等に関する請願(第1403号)』が採択されました。「申告の確認」というのは誰に対しても言えることであり、申告の確認をすること自体が、これは、税務調査の行為そのものであり、調査理由になるはずはありません。△△さんのところへの税務調査ということであれば、一般的且つ抽象的な「申告の確認」などではなく、「△△さんがした申告のどこがどのように不明確ないしは疑問であり、どのような点を確認しなければならないか」ということを具体的に明らかにするべきです。それがないのであれば、そうした“調査”は、納税者に合理的に必要な範囲を超えて本来必要でないはずの負担と苦役を強いる以外の何物でもありません。これは「…犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。」と定めている憲法第18条後段の規定に明らかに触れるものと考えられます。
 所得税法第234条第2項に「質問又は、調査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。」とあるように、納税者を疑ってかかってはならないのです。「申告の確認」としか言わないのは、初めから根拠もなく△△さんを疑ってかかっていることに他ならないのではありませんか。
 「申告の確認」は調査の行為そのものであって、世間一般では理由とは認められていません。お母さんが子供に「買い物に行って」と頼んだのに対して、子供が「どうして」と聞いた場合、「買い物に行ってほしいから」では、子供も納得しないでしょう。これから遊びに出かけようとしているところだったら、そして正常な精神発達を遂げている子供だったら、素直に言うことを聞かない可能性が高いと考えるべきです。増して税務調査は、大の大人を相手に、他ならぬ税務職員が署長の命を受けて行う公権力の行使です。しかも一日調査に付き合わされたら、月給制で年休まで保障されている国家公務員とは違って、確実に実入りに響くのです。子供でさえ納得しないような木で鼻をくくったような“理由”に基づいて調査を行おうとするのは、明らかに権力の乱用です。もしこれに何ら疑問を感じないというのが国税職員一般の認識だとすれば、ぜひ国税庁長官を始め全国の税務行政に携わる職員のみなさんには、もう一度小学校からやり直すことをおすすめしなければなりません。
 付け加えて言わせてもらいますが、所得税法第234条は、「必要があるときは、…質問し、又はその者の事業に関する帳簿書類その他の物件を検査することができる」とされているだけで、調査官の権限を規定しています。調査しなければならないという義務を規定しているものではありません。この日調査官二人は、調査せずに帰ってしまいました。そして、9月9日、9月17日、9月25日、12月8日とも、△△さんが、仕事の都合をつけ、日程を調整して待っていたにもかかわらず、同じように帰ってしまったのです。調査もせずに帰ってしまうような調査官は、自らの職務を放棄したものと言わなければならず、職務怠慢として厳重に処分されて然るべきなのに、山田謙司・島田税務署長は、この2名の職員を処分するどころか△△さんに対して青色申告を取り消すという処分をしてきたのです。これほど逆さまな話は無いのではないでしょうか。
 これといった調査理由もなく調査に来て、、公務員にだけに課せられた義務を△△さんに押しつけ、自らの職務をも放棄しておいて「帳簿を提示しなかった。青色申告を取消す」とはとんでもない暴挙です。
 調査理由のない調査は違法であり、即刻△△さんに対する「青色申告取消し」の処分を、撤回するよう求めます。
                              以     上
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