納税者の権利についての意見
                      
 今回、貴税務署の山田謙司署長から2005年度乃至2007年度分の所得税についての更正処分ならびに同期間以降の申告について青色申告の取消処分を受けた△△△△さんの代理人である□□□□です。私はこの2件の処分について、主に納税者の権利を守る立場から意見を述べたいと思います。
 本件については、納税者の権利が著しく侵害されました。
 納税者の権利とは、天からふってわいたものではなく、長い歴史の中で納税者が闘い、勝ち取ってきたものです。さらに言うなら、この国家による課税権の乱用をいかに抑えるかという点こそ、近代的な法治国家の仕組みないしは議会制民主主義の仕組みが生まれてくる端緒をなしていたということについては、私たちは改めて思い起こす必要があると思います。
 この近代的な法治国家の仕組みの根幹とも言うべき租税法律主義の原則は、イギリスにおいて、王による横暴な徴税に対して、いわゆる第3身分の民衆が決起して譲歩を迫り、マグナカルタ(大憲章)をうち立てて、国民から選ばれた議会において制定される法律の範囲内でしか課税を認めないということを取り決めたわけです。
 また、税金をめぐる問題は、アメリカのイギリスからの独立の原因にもなったのはよく知られています。周知の通り、アメリカ独立戦争は、“ボストン茶事件”が発端です。この背景にはイギリスが植民地としていたアメリカに対して、税金はかけるのに議会への代表選出は認めないという方針をとっていたのに対して、アメリカの民衆が“代表ないところに課税なし”を合い言葉に、イギリスから茶を積んでボストンに入港した商船を襲った事件です。
 これがアメリカ独立戦争に発展したわけですが、アメリカの独立宣言には、この“代表無いところに課税なし”の原則を始め、“人民の革命権”、即ち“人民の意思を尊重しない政府を人民が自ら変革するのは人民固有の権利”だとする思想も盛り込まれています。
 一方、日本においては、憲法前文の中で主権在民の原則が高らかにうたいあげられ、複数の条文の中に国民の基本的人権が「侵すことのできない永久の権利として」(第11条後段)明記されています。またそれらは、「この憲法が国民に保障する自由および権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」と、続く第12条にあるように、不当な税務行政とは、闘うことによってのみ国民の権利は守られ、発展させることができるのです。
 私たち納税者が「納税者の権利」を無視した税務署の処分に対して泣寝入りするならば、こうした長い歴史の中で私たちの先輩たちが営々と築いてきた、国民の基本的人権を守り拡大するという歴史の歯車を逆回転させることを許すことになってしまいます。私たち納税者は、不当な税務行政を許さず、私たちの権利を守るために今後とも闘っていくことを、まずもって明らかにしておきたいと思います。
 さて、△△さんは、税務調査に協力する意思が十分あり、机の上に置いた帳簿書類を提示し「見ていって下さい」と再三にわたってお願いしたにもかかわらず、調査に来た貴税務署のAA及びBB調査官は、第三者がいるということだけの理由でそっぽを向き、帳簿書類を見ようともしませんでした。
 所得税法第148条第1項には、「第143条(青色申告)の承認を受けている居住者は、大蔵省令で定めるところにより、帳簿書類を備え付けてこれに不動産所得の金額、事業所得の金額及び山林所得の金額に係る取引を記録し、かつ、当該帳簿書類を保存しなければならない」と定められています。△△さんは、これに従って帳簿書類を保存し、調査官の求めに応じて提示し、見てくれるようお願いしたのです。帳簿書類の保存の確認だけなら、どんな状況のもとでもできたはずです。△△さんは、AA、BB両調査官自身によるのか山田謙司署長の恣意的判断によるのかは私には知る由もありませんが、いずれにせよ、保管していた帳簿書類を両調査官の面前で明確に提示したにも拘わらず、山田署長名で送りつけられた処分書によれば、「帳簿書類の提示がなかった」ことにされてしまいました。この二人の調査官は、ある意図を持って「見なかった」としか言いようがありません。
 この点については、両調査官や山田署長はじめ貴税務署のみなさんにとっては極めて都合の悪いことに、△△さんの「信頼できる人に同席してもらいたい」という希望によって、いずれの調査日においても第3者が同席しており、この事実を見届けています。ことによると、貴税務署のみなさんはこうした事実に反する上司への報告や、法令に触れるような調査のやり方が公になると困るために立ち会いを認めたくないのではありませんか。
 聞くところによれば、民商に入っていない業者の方などの場合には、突然訪れた税務署員を名乗る男に通帳や帳簿類などをすっかり持っていかれて途方に暮れたといった体験をされた方も少なくないそうです。こんな基本的人権はもとより、税法のどこを見ても許されないはずのやり方が、民商に入っていない一般の納税者に対しては当たり前のように行われているのかと思うと、本当に身の毛がよだつ思いがするのは私だけではないはずです。
 この様なことを許しておいていいのでしょうか、「税務職員の言うことをきかなければ、どんなことになるか覚えていろ」と言うわんばかりの態度では、わたしたちは安心して税務調査を受けられませんし、いやむしろ商売そのものを安心して続けることができません。これでは、国民にほとんど権利が無かった時代、御上の言うことに口出しできなかった戦前や、時代劇に出てくるような悪代官が民百姓を苦しめたあの時代と変わりがないではありませんか。
 そもそも、特定の団体の構成員の調査を担当する部署が、税務署内に設けられていること自体、法の下の平等を掲げた憲法14条に触れるものです。また、その調査の方法やそれらの組織に対する対応も差別的・権力的で、納税者の当然の権利を著しく侵害するものと言わなければなりません。
 以上のとおり、納税者の権利を侵害して行われた今回の「青色申告の承認の取消し」処分を、直ちに撤回されることを求めるものです。
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