『ペンション○○』に対する税務調査についての意見
 
 『ペンション○○』の経営者である△△△△さんの代理人の□□□□です。
 今日は、本年2月13日付で山田謙司・島田税務署長よりなされた△△さんへの2005年1月1日から2005年12月31日までの事業年度以後の「青色申告承認の取消し」という処分について、意見を述べます。
 憲法第29条では、「財産権はこれを侵してはならない。」また、第35条でも、「何人も、その住居、書類及び所持品について侵入、捜索及び押収を受けることがない権利は、第33条の場合を除いては正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。」と明記されています。この憲法に照らせば、税務調査そのものができないものと考えられます。しかし、なぜか、所得税法234条、法人税法153条に「必要がある時はできる」こととされています。
 この法律によって税務署員は調査にくるのだと思いますが、明確な必要性がなければ、本来調査はできないものと思いますがいかがでしょうか。
 私は、島田民主商工会の事務局員として多くの税務調査に立ち会わさせていただいておりますが、いまだかつて明確な調査理由を聞いたことがありません。聞くのはだいたい「所得の確認」ということだけです。だいたい申告納税制度は、納税者を信用することを前提としており、当然税務調査においても、納税者を信用することが要求されます。「所得の確認」などと端から納税者を疑ってかかるに等しい“理由”に基づいて調査を行おうとすること自体が憲法や税法の趣旨を無視ないしは曲解するものと言わざるを得ません。これでは、法律そのものを税務署員が否定しているのと同じではありませんか。
 では、△△さんの調査はどうだったでしょうか。私も、立ち会っていたので状況はわかりますが、去年、8月25日の調査当日は、ペンションの一室のテーブルの上に、調査対象年度分の帳簿、請求書、領収書、預金通帳などを置き、調査官が調べていくスペースも必要でしょうから、残りの資料は、段ボール箱の中に入れ、必要ならいつでも取り出せるようになっていました。このとき、調査に来たAA調査官・BB調査官の二人が、これらの資料を調べていけば、何の問題も起きなかったのです。二人の調査官は、国家公務員法第100条の「守秘義務」にあくまで固執し、税務職員なら守らなければならない「申告納税制度のもとでは、納税者自らが積極的に納税義務を遂行することが必要であるが、そのためには、税務当局が納税者を援助し、指導することが必要であり、我々は、常に納税者と一体となって税務を運営していく心掛けを持たなければならない。また、納税者と一体となって税務を運営していくには、税務官庁を納税者にとって近づきやすいところにしなければならない。そのためには、納税者に対して親切な態度で接し、不便を掛けないように努めるとともに、納税者の苦情あるいは不満は積極的に解決に努めなければならない。また、納税者の主張に十分耳を傾け、いやしくも一方的であるという批判を受けることがないよう、細心の注意を払わなければならない。」という『税務運営方針』を忘れ、「法令や通達の内容は分かりやすく説明し、また、納税者の利益となる事項をすすんで知らせる心構えが大切である」「税務行政に対する苦情あるいは批判については、職員のすべてが常に注意を払い、改めるべきものは、速やかに改めるとともに、説明や回答を必要とする場合には、直ちに適切な説明や回答を行なうように配慮する」といった、これも『税務運営方針』でうたわれているような態度は微塵も示すことなく、ただ、ただ、立会人の排除にこだわったのです。△△さんが「この状態で調査をしていってもらいたい」とお願いしているにもかかわらずです。
 このことは、国家公務員法第98条の「職員はその職務を遂行するについて、法令に従い、且つ、上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない」に違反しませんか。『税務運営方針』は、あなた方の属する税務行政機関の中では最高の部署である国税庁が打ち出した指針です。言ってみれば究極的な上司の命令と言っても過言ではありません。AA調査官・BB調査官の二人は、国家公務員法第100条だけにこだわって、その一つおいて手前の第98条を侵してしまったのです。それとも、98条は知らなかったとでも言うのでしょうか。
 そして、9月9日、9月17日、9月25日、12月8日もまったく同じ状態が続いたのです。
 私たちはよく「消費税廃止」や「景気回復」などの請願署名を集めて国会に提出しますが、誠実に処理されているかどうかはわかりません。なかなか聞き入れてもらったことはありません。それでも、粘り強く、こつこつ署名を集めて請願し続けています。
 △△さんは「この状態で調査を」とお願いし、調査官も「立会人に帰ってもらうように」これを、お願いだと言います。憲法には、その第16条に請願権というものも規定されています。そして、請願法の第5条には、「この法律に適合する請願は、官公署において、これを受理し誠実に処理しなければならない」となっています。また、第6条では、「何人も、請願したためにいかなる差別待遇も受けない」となっています。文書での請願ではないにしても、そのお願いは「官公署」、この場合は「税務署員」が受け、誠実に処理しなければならなかったのです。
 しかし、AA、BB、二人の調査官は違いました。△△さんの願いをまったく無視し、公務員だけに課せられている「守秘義務」を一方的に△△さんに押しつけ、それが聞き入れられないとみるや一方的に帰ってしまったのです。
 そして2月13日付で山田謙司署長名の更正決定並びに青色申告の承認を取り消す旨の処分通知書が送りつけられてきたのです。
 しかしAA、BB両調査官は、“守秘義務”をタテに、△△さんが両調査官の目の前に提示した帳簿書類に一切目を通そうとしなかったのです。それでは、山田謙司署長はいったい何に基づいて更正決定を行ったのでしょうか。調査に△△さん宅に赴いた2人の調査官が見てもいないものを、いくら署長だからと言ってどんな内容かわかるはずがありません。もし全くの当てずっぽうではなく、多少なりとも裏付けになるデータに基づいて更正決定を行ったのであれば、△△さん以外の取引先や金融機関などに対する、いわゆる反面調査を行ったとしか考えられません。
 この反面調査については、先ほどの『税務運営方針』の中で、「反面調査は客観的にみてやむを得ないと認められる場合に限って行うこととする。」とされています。すでに繰り返し述べているように、△△さんは帳簿書類をテーブルの上に置いて、数え切れないほど何回も「見ていって下さい」と、訪れたAA、BB両調査官に促しているのです。この状況からは誰がどう見ても「客観的にみてやむを得ない」場合とは認められないはずです。
 反面調査は、余程注意深く行われた場合でも取引先の信用を失墜させる等、納税者にとって回復不可能な不利益をもたらす恐れが強い調査手法であり、だからこそ『税務運営方針』の中で「客観的にみてやむを得ないと認められる場合に限って行うこととする。」としているわけです。税務署側の勝手な法解釈を振りかざして、目の前に帳簿書類を△△さんが提示しているにもかかわらず、「提示がなかった」と強弁し、本来極めて限られた場合にしか行ってはならないとされている反面調査まで行った末に行われた今回の更正決定については、直ちに撤回されるべきです。
 それとも山田謙司署長は、△△さんが提示した帳簿書類を調べもせず、反面調査もしないで全くの当てずっぽうで更正決定をしたとでも言うのでしょうか。もしそうであるならば、これほど納税者を愚弄したやり方はないし、諸税法の適正且つ公正な執行を疑わせる話はないのではないでしょうか。
 反面調査は、納税者と取引関係にある人に対する調査であり、調査を受ける人にとっては大変迷惑なことであり、納税者にとっても取引先との関係が悪くなる可能性があり、ときには行き違いが生じて取り引きが停止されたという例さえあります。
 反面調査は、まず納税者本人に対する調査を行ない、そこで出た疑問が調査対象者にも答えられないような場合にのみ、納税者の承諾を得て行なうべきものです。ちなみに「客観的」とは、『新明解国語辞典』によると、「見方が公正であったり、考え方が理論的であったりして、多くの人に理解・納得される様子」となっています。すでに明らかになっている事実経過に照らして、どこに「客観的に見てやむを得ないと認められる場合」にあたる事情があると言われるのですか。こうした、どのような角度から見ても不当性が明らかな今回の更正決定処分については、直ちに撤回されるべきことを重ねて要求し、私の意見陳述を終わります。
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