事実に基づかない青色申告の取消しは無効

 異議申し立て人の△△△△さんの委任を受けた代理人として陳述します□□□□です。
 今日は、今年2月13日付で、島田税務署長・財務事務官、山田謙司名で送付された「青色申告の承認の取消通知書 平成17年1月1日から平成17年12月31日までの事業年度以後これを取り消したから通知します。」という処分について、口頭で意見を述べたいと思います。
 私は、△△△△さんに対する、青色申告の取消処分の起因となった事実として「△△△△に帳簿書類の提示を求めたところ、その提示がありませんでした。このことは、青色申告に係る帳簿書類の備付け、記録又は保存が所得税法第148条第1項に定めるところに従って行なわれていないことになります。」となっていますが、この事実記載は、明らかに誤っています。
 誤りは「帳簿提示がなかった」かのように書かれている点であります。△△△△さんは、AA、BB両調査官の調査を受けようとした時は、いつもテーブルの上に帳簿資料を置き、乗せきれない資料は段ボールの箱に入れ、要求があれば直ぐにでも出せるような状態にしており、その資料を「見ていって下さい」とお願いしているのです。
 もし、処分書に書かれているような言い分が通用するとするなら、調査官が、調査対象になっている業者を「こいつは気に入らないから青色を取り消してやろう」と思えば、帳簿を見ないで帰ればそれでいいことになってしまいます。調査官の恣意的判断でそのような事がやられたとしたら、申告納税制度はその根幹から崩れてしまうのではないでしょうか。名古屋国税局管内の島田税務署ではそれが許されるのでしょうか。
 △△△△さんは調査に応じ、協力する意思を終始明らかにして、必要な帳簿や資料類を用意して、繰り返し「どうぞ調べていって下さい」と、訪れた調査官に促しさえしたのに、どうしてそれが「帳簿書類を備え付けていても税務署長の求めを拒否して提示しない。」ということになるのですか。
 話がまるでアベコベではありませんか。
 帳簿書類が存在するのに「提示がない」という事と、もともと帳簿書類の「備付け、記録又は保存がない」ということとは全く別個の事柄です。「提示がない」とは、提示すべきものが無いか、あっても見せようとしない場合にだけ言えることです。△△△△さんは、調査に訪れたAA、BB両調査官の目の前に帳簿書類を並べて、1度ならず、数え切れないほど何度も「どうぞ見ていって下さい」と提示したのです。もしそれでも△△△△さんに送りつけられたような処分通知書に書かれていたような事実認識を山田謙司署長が持っているとしたら、調査に当たった2人の調査官は2人とも全盲且つ完全な聴力障害者で、納税者が何を言ってもまた帳簿などを提示しても全く認識できないような甚だしい障害を負っているとでも考えざるを得ません。もしそうだとするならば、障害者の働く機会を保障する観点からは島田税務署は厚生労働省などから相当高い評価を受けてもいいかも知れません。しかし、それがために納税者に不当な負担や不利益が及ぶということになると、(本件はまさにそういう状況なわけですが)仮にも国民の財産権に対してあからさまな侵害を中心業務とする税務行政のあり方としては絶対に許されないことではないでしょうか。
 あるいは、AA、BB両調査官はとんでもないウソつきなのかも知れません。調査対象者の家などに出向いて税務調査をするような格好をしていても、実際に見たり聞いたりしたこととはまるで違ったことを署に帰って報告しているのかも知れません。だとすると、山田謙司署長はそのウソつきの被害者ということになります。しかしこの場合も、納税者が国家公務員のウソのために、まるでいわれのない経済的負担や不利益を被ることになるわけで、これも国家権力行使の在り方として、また官公署の業務執行の在り方として絶対に許されるものではないし、事実と異なる帰命報告をこととするような職員は即刻免職をはじめとする懲戒処分をしていただかなければなりません。
 さらに、もしAA、BB両調査官が事実をありのままに署に帰って報告していたのだとすると、山田謙司署長は、自らの指揮下にある職員が著しい職務怠慢を繰り返しているのに、全くそれを不問にしたばかりか、その責任を納税者の側になすりつけて、これ以上の寛容さはないと言っても過言でないほど協力の意思を示した△△△△さんに対して驚くほど多額の追加納税と青色申告の取り消しという不利益処分をあえてしたことになります。これは、いかに末端の一税務署の最高責任者の職務執行の在り方とはいえ、絶対に放置していいような問題ではないと考えます。
 憲法では、30条と、84条で租税法律主義の原則を定めています。国民は、法律に定めのない義務を負ういわれはなく、また、法律の規定を類推したり、拡大解釈したりすることは許されません。もしこうした点がアイマイにされるようなことになると、国民の財産権をはじめとする基本的な権利が国家権力によって乱暴に侵されかねないからこそ、憲法はこれを明文で定めて厳格に守ることを国家に対して課しているのです。仮にも日本が近代国家・法治国家を標榜しようとするなら、この憲法の規定をどれだけ誠実に守るかが、厳しく問われているということを率直に指摘しておかなければなりません。
 「第三者の立合いがいるから守秘義務が守れない」といいつつ「税務署は△△△△さんに帳簿書類の提示を求めましたが、その提示がなかった」と事実をゆがめ、本来でしたら、前記の「第三者の立合いがいるから」△△△△さんが帳簿を提示したが「公務員の守秘義務が守れない」ゆえに帳簿書類を見ずに、提示があったにもかかわらず「提示がありません」と白を黒と主張する事になったのではありませんか?。
 青色申告取消し条項に「第三者の立合いがいるから守秘義務が守れない。ゆえに所得税法第148条第1項第1号に該当する。」と規定されていますか?。それとも新しい法解釈ですか?。「無理が通れば、道理が引っ込む」といわれますが、まさに、国家権力、職権の乱用に当るのではないのでしょうか?。
 ……どうなんですか?。
 1993年2月9日、東京高裁は、「春日さんに対する税務署の青色申告承認取消処分は違法である」と判決を下しています。いわゆる『春日裁判』です。この中にも言われていますが、「帳簿書類を見る努力をしなさい。第三者がいることが、帳簿書類の提示がなかったことにはならない」と裁判官は税務署員にさとしています。
 今回の△△△△さんの場合も、帳簿書類、資料を提示しているのでありますから、「提示を求めたところ、その提示がありませんでした」はウソという事になります。このことについての立証責任は、重いことになります
 2003年10月9日付の新聞に、「50億円の申告漏れ、調査期間は2年間、重加算税(更正処分)を含めて約20億円を追徴した模様です」との記事がありました。いつも新聞報道で不思議に思うことは、税の専門家、税理士や公認会計士などを何人もかかえていて、その中には国税局長の経験者もいる大企業が、どうして不正をするのか?。不正を指摘されると「見解の相違。でも税務署の指摘に従って納税した」ということ。さらに調査期間が1年から長くて3年であるということ。中小業者の場合、5年、7年と遡及して調査をされ、重加算税で徹底してオキュウをすえられる。大企業が「青色申告を取り消された」という話は聞いたことがない。数年前に新聞、マスコミを騒がせた、あの佐川急便が青色申告取消しの第1号と新聞で報道していたのがいまでも記憶に残っている。
 この新聞・マスコミで報道された企業はどこだと思いますか。世界第2位の自動車生産で名声をあげている「トヨタ自動車」です。
 トヨタ自動車の会長・奥田氏は、少し前まで何をしていましたか?。政・財・企業にも口を出すし、金も出す。すべて思い通りに国を動かせる。企業の総理大臣とも言われる役職に就いていました。だから、トヨタ自動車が脱税をしても手心を加えて、表面的な調査で済ませるのですか?
 2003年10月10日付の新聞にまた、前日に続いて、20億円の申告漏れ「自社の利益を圧縮していたと認定。意図的な所得隠しに当ると判断した。」この会社も調査期間は2年間。「重加算税を含め約7億円を追徴課税した模様。」と報じています。この会社も「青色申告を取り消された」と言っていません。この会社の名前は、自動車メーカー大手のスズキ(静岡県浜松市)です。
 このような記事は、注意していれば1か月間に何件も発生し、調査期間は2・3年、青色申告は取り消されない。税務当局は、公正に処分をしているのかと怒りすら感じます。大企業の脱税、悪質な業者には、軽い処分をしない公正な立場に立てる正義感の強い公務員になれますか?
 公務員は、法に従って国家活動に従事する義務があります。もし、公務員が法に反したら、国民は、その公務員に対し、あるいは国家を相手として、その違法性を争い、法を守るよう要求する権利を持っています。又、国家公務員法第97条は「職員は政令の定めるところにより、服務の宣誓をしなければならない」となっています。
 宣誓書にはこのように書かれています。
 「私は、国民全体の奉仕者として、公共の利益のために勤務すべき責務を深く自覚し、日本国憲法を遵守し、並びに法令及び上司の職務上の命令に従い、不偏不党かつ公正に職務の遂行に当ることをかたく誓います」
 この宣誓に違反するような行為はないと約束できますか。
 今回の「青色申告取消し」の取消しと、3年間の所得税と消費税の「更正処分」を取り消すことを強く要求して、私の口頭意見陳述を終わります。

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