ラジオ・シャック

3球再生式グリッド検波型受信機の製作

(画像をクリックすると拡大して見ることができます。)



3球ラジオの灯火
今回は並三ラジオの製作です。使っている球は三極管ではないので,“新並”というべきところなのでしょうが,初段の検波管は遮蔽格子四極管です。
そもそも今回の三球ラジオ製作のきっかけはこの四極管「36」と五極管「38」を井上さん(JF1GNY)から譲っていただいたからで,最初は実物の四極管を目にしたいとの思いから手に入れました。
RCAの36のデータシートを調べてみると検波に使えると書いてあったので,それならばと。(3バンド五球スーパをレストアした後では順序が逆のような気もしますが。)
三球式ですので,あまり感度は期待できませんが,ベッドサイドラジオ程度にはなるかと思い,作ってみました。いずれにしても再生検波のストレート受信機,しかもST管ラジオの製作は初めてのことなので,わくわくします。
回路図,外観図は下記のドキュメントをご覧ください。
回路図(PDF 59kB)        外観図(PDF 148kB)


前面パネル
ラジオの前面パネルです。6.3Vのパイロットランプの下に50mmのバーニヤダイヤル,その下は再生用豆コンのダイヤルで音量調整兼用です。7.7cmのスピーカを内臓しています。イヤホン端子はありません。
弱い信号のとき,若干のハムが気になります。


側面
同調は350pFの単バリコンとミズホ通信製並4コイルです。検波段はシールドケースを被せていますが,ジャンク品の再利用です。次の低周波出力段ともトップグリッドなので,グリッドキャップが必要ですが,現在では昔のような簡易なグリッドキャップが手に入らないので,タイト製のプレートキャップで代用しています。真空管ソケットもタイト製です。


背面
背面はアンテナとアースの各端子およびヒューズケースだけが付いたシンプルな外観です。今回はヒューズケースは昔風にこだわり,ご覧のようなものを使っています。


内部の配線
ラジオ内部の配線の様子です。ほとんどの部品は新品ですが,特に抵抗器などは小型化されているので,多少オーバスペックのものを使い,真空管ソケットとのバランスをとっています。豆コンも新品で,秋葉原で購入しましたが,タイトバリコンよりも高価です。この豆コンは国産ではないようです。
完成後に若干のハムがあり,後から気が付いたのですが,出力トランスとブロック電解の位置を取り替えたほうが良かったかと反省しています。


使用した真空管
(36 - 38 - 80BK)
今回使用した真空管は,検波に遮蔽格子四極管「36」(TUNG−SOL製),低周波出力に五極出力管「38」(RCA製),整流は二極管「80BK」(松下製)の3本です。いずれも真空管も傍熱型カソードを持ち,36,38はヒータ電圧が6.3Vです。これより前の時代の真空管のように直熱型ではないので,カソード回路やヒータ周りは標準的な配線で済みます。
36,38のデータシートを参考に回路を設計してみました。最初,36はプレート検波回路として組んでみましたが,思うように動作しなかったため,後からグリッド検波回路に変更しました。プレート検波回路では36のデータシートを参考にして各電極電圧を調整しましたが,当地の電界強度が弱すぎたため,うまく作動しなかったのではないかと考えております。現在のグリッド検波でもようやく受信できるほど電波は弱いです。

検波管36のプレート負荷をチョークコイルに変更



検波管(36)の負荷を
チョークコイルに変更
更に,検波管36のプレート負荷を抵抗器(270kオーム)からチョークコイル(200H)に変更してみました。低周波出力電圧は2割ほど増加したようですが,耳で聴く感じでは抵抗負荷と殆んど変わりませんでした。規格表によると36はプレート抵抗が約500kオームあり,三極管(56など)の数十kオームと比べて格段に高いので,余り改善の効果がなかったようです。なお,五極管の6C6などはプレート抵抗が1Mオーム位ですから,四極管36のプレート抵抗は三極管と五極管のちょうど中間の値です。
今回の改造の結果,外観は変わりませんが,シャーシ内部の部品配置と配線は写真のように変わりました。参考までに改造後の回路図と外観図を下記に示します。

最近はラジオのアンテナ端子に室内のコードアンテナではなく,屋外に設置したアマチュア無線用HF垂直アンテナを接続して聞いています。また,アースも繋いでいます。これにより,極微電界級の当地でもこのラジオでスピーカを普通に鳴らせるほどの出力が得られるようになりました。(2008.5)
回路図(PDF 59kB)        外観図(PDF 177kB)

遮蔽格子四極管36の奇妙な構造について

ところで,興味津々で手に入れました36は上の写真でもお判りのように,内部の形状が独特です。左の写真のようにステムの部分でみると,一番外側のメッシュの筒,その内側がプレート(陽極),更にその内側が遮蔽格子(第2グリッド),更にカソード,ヒータの順になっており,プレート,遮蔽格子,カソード,ヒータ(2本)はステムから下へ伸びた配線がボトムの脚(5本)に接続されているのがわかります。
斜め下から覗くと上記で述べた様子がよくわかります。なお,この写真で中心に見えるコイル状のものが遮蔽格子で,制御格子(第1グリッド)はその内側の白く見えるカソードとの間にありますが,見えにくいので詳しい構造はよくわかりません。
また,プレートは一番外にあるメッシュの筒ではなく,そのすぐ内側にある筒です。それではこのメッシュの筒は何のためにあるのでしょうか。
36の制御格子は,このように真空管の頂上でキャップにつながっています。なお,先ほどのメッシュの筒はここで遮蔽格子につながっているようです。つまり,プレートの表裏は遮蔽格子で覆われている格好です。そもそも遮蔽格子は制御格子とプレートの間の静電容量(Cpg)を小さくすることが目的ですが,その効果を高めるためにプレートの外側も遮蔽格子に接続した筒で覆っていると思われます。
以前,Webサイト「ラジオ温故知新」で入手した文献記事で確認したところ,これを連想させるような遮蔽格子の物理的な略図が載っていました。プレートを遮蔽格子が囲むような構造と制御格子を囲むような構造の2種類があったようです。前者は米国型,後者は欧州型だそうです。

遮蔽格子四極管の遮蔽格子には直流の正電圧を加えます。また,遮蔽格子はカソードからプレートに向かう電子の流れをほとんどじゃましない構造になっているので,電子の流れは主に制御格子の負電圧と遮蔽格子の正電圧によって決まり,プレート電圧の影響は極めて小さくなります。即ち,プレート電圧が変化してもプレート電流はほとんど変化しません。
ただし,プレート電圧が80ボルト前後の低い領域ではプレート電圧が増加するとプレート電流が減少する傾向が出てきます。これはカソードからの電子がプレートに衝突したときにプレートから新たに2次電子が飛び出し,これが遮蔽格子に吸引されるので,遮蔽格子電流は増加しますが,プレート電流は減少するためです。これが四極管に特有な負抵抗特性(またはダイナトロン特性)と呼ばれるものです。
 
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