私の設計監理しているM邸の基本設計から、木造在来工法2階建ての出来あがるまでをメモしてみました。
大体の設計監理の流れと、建物の出来あがっていく流れを少しでもわかってもらえればと思います。
途中、ポイントとなる部分の詳細説明を別紙掲載しています。設計工事項目の色付きアンダーバーのある部分をクリックしてみてください。
M邸ができるまで |
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設計工事項目 |
参考写真・書類 |
関係図面 |
説明・解説 |
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調査打合せ
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敷地の調査や各行政への問合せから、敷地周辺の建物や電柱の位置、公共上下水や電話・電気の引込方法、地盤の良し悪し、隣地境界の確認、前面道路の幅・種別等いろいろなことを調査の上,基本設計図やパースを提示して、基本設計にはいります。この時点で急ぐと、後で後悔しても難しいですからゆっくりこの物件では3ヶ月かけています。この時点で、気に入らない場合は、早目に断ったほうが、お互いのためになります。 | ||
2 |
設計工事監理契約 |
基本設計を進めて、この方なら仕事を依頼してもいいなとなったところで、契約書を結びます。この時点で、お互いの意思の疎通を確認します。 設計工事監理契約は、設計工事監理者を知るといったことで非常に大切なことです。今までは、ほとんどされていませんでした。ここをはっきりさせておかないと欠陥住宅の元となります。詳しく知りたい方は、左記、設計工事項目部をクリックしてみてください。 |
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3 |
実施設計 |
実際に建てる際の詳細の設計に入ります模型や使う材料の現物サンプルを提示しながら、実際の建物の構造・設備・法規・デザイン・断熱気密・バリヤフリー・デザイン・予算といったいろいろな分野をあらゆる方面から検討します。期間は、住宅金融公庫の受付の都合もありますので、結構きつくなります。この物件では、実質1ヶ月かけて50枚程度図面を書いています。 | ||
4 |
確認申請
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住宅金融公庫の申請を含む着工前の建築確認申請の提出です。通常申請が許可されるまで2〜3週間かかりますのでこの間に合い見積も同時進行させます。本来でしたら業者の選定や予算が合わない場合の設計変更などを含めて、1〜2ヶ月程度ですが、今回は業者が、なかなか決まらず3ヶ月を要しました。 合い見積をだせるのは、設計事務所に仕事を依頼するひとつのメリットとなります。1社だけの見積では、請負金額の正当性がわかりません。 |
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5 |
工事請負契約 |
やっと施工会社も決まって工事請負契約です。建主も設計士もほっと一安心するときです。 これから設計者は、工事監理業務に入ります。 |
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6 |
地鎮祭 |
配置図 |
ついに地鎮祭にこぎつけました。建主さんは元より、設計者も感激すると共に、これからの工事監理の苦難を乗り越えようと気の引き締まるときです。 日取りはやはり縁起を担いで、大安の日を選びます。また、三りんぼうの日はさけます。 |
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7
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工事着工
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配置図 | 工事着工です。遣り出しといった作業をして建物の位置を確認後基礎部分を掘削します。今回は、事前調査にて良好地盤であることが確認されているため、一般的な布基礎です。この時点では、根切り底の地盤の良し悪し、根切り位置、根切り高さを確認し、その後砕石を敷いて転圧するところを確認します。 | |
8 |
基礎配筋 |
基礎伏図 |
捨てコンという墨出し用の薄いコンクリートを打ってから基礎の配筋をします。 鉄筋の材質・太さ、配筋の間隔・継手の取り方、交差部での配筋、フックのとり方、換気口及び点検口や設備スリーブの位置及び補強方法、配管ルートの確認、鉄筋がコンクリートからはみ出ないようにかぶり厚さや、かぶりをとる材の種類など調べることは、たくさんあります。 |
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9 |
基礎型枠
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基礎伏図 |
布基礎の立上げ部分に型枠を組んでコンクリート打設を行います。 型枠の種類・組み方、スリーブの位置やずれ、立上げ高さ、コンクリートの材質・スランプ値・混和材の有無・打設時の天候気温 |
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アンカーボルト据付 |
床伏図 |
基礎に土台を固定するためのアンカーボルトという金物を据付けます。 通常、コーナー部から2m以内程度に設置しますが、筋かいの位置、土台の定尺長さによっても変わってきますので一概にはいえません。 阪神淡路大震災後は、これ以外に柱引抜用のホールダウン金物も使用するようになりました。 |
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コーヒーブレイク |
我社のホープの現場での様子です。これからお客さんといっしょにラーメンを食べに行くところです。 |
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土台据付 |
床伏図 |
基礎に土台を据えるところです。 ここでは桧を使用していますが、最近は、防腐土台という安価な物の使用も進んでいます。しかし、後々のことを考えるとやはり桧程度は使いたいですね。近年は、土台下に基礎ゴムパッキンを挟んで施工するケースが増えました。 土台の材質、径、継手、転び、基礎ゴムパッキンの材質箇所厚み、防腐剤塗材の確認等行います。 |
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建て方のはじまり |
2階床伏図 |
建物の骨格の組立開始です。 最近は、安価にするために材料をプレカットでする物件が増えました。よほど大きい建物でない限りまず1日で建ちあがるようになりました。 材料の材質・等級・径・乾燥具合、仕口の加工、継手の加工、使う金物の種類等を事前に確認します。 |
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建て方中半 |
小屋伏図 |
建て方も中半になりました。 だいぶ形が見えてきました。設計士は、建て方をやっているときは、ほとんど何も出来ません。ですから建てる前の事前のチェックが重要になってきます。 |
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建て方終わり
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建て方も終わって、これから上棟式です。 この地区ではまだ、もち投げが行われているので、上棟式前に私も、もち拾いに参加しました。 慣れてないと拾えません、皆さん殺気が漂っています。 ついに建物の架構が、はっきりして、これから屋根を葺きます。 |
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公庫中間検査 |
平面図 |
屋根が葺きあがると住宅金融公庫物件の場合は、中間検査があります。本来は、すべての物件に中間検査が導入されれば、欠陥住宅もなくなっていくのでしょうが、現在の役所担当者の人数では、処理できないのが現状のようです。 役所の方も見に来てもあれもう帰っちゃうのと思うほどあっけなく見終えていきます。今まですべてどの物件でもそうです。やはり、専任の工事監理者に見てもらわないとだめでしょう。 |
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2階床下地
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2階床伏 |
2階の仕上げ下地組です。地方によって組み方に違いがあり、これが一番という決まりはありませんが、要はゆれないようにすることが重要です。ここでの下地の間隔は、床暖房のパネル幅で決まっていますが、この間隔を手抜き工事では、荒くしたり釘打ちのピッチを荒くしたりします。住宅金融公庫のの仕様書には、こういった間隔も記載があります。 住宅金融公庫の仕様書も重要な書類となります。 |
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天井下地組み |
矩計図 |
天井の下地組の始まりです。 下地のピッチや径・材質は、仕上材の種類で変わってきます。 天井下地は、2階の振動を伝えないように、2階の梁とは切り離して組むのがいいのですが、こういった構法も最初にしっかり業者に説明しておかないとやってはもらえません。 |
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冷媒設備配管 |
空調設備図 |
木造の設備配管をされる方たちは、家内業者が多いため、ビル物の工事をされる方たちと比べますとなんでこうなっちゃうのといった工事になることが多いです。設備は、最近の建物の1/3以上を占める部分であり、他の部分と絡むことが多いので、各業者及び設計監理者の連携が取れないといい施工が出来ません。棟梁も設備屋任せにしているところも多いです。ここはきれいにやっています。 | |
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空調設備配管 |
電気空調設備 |
私は少しでも設備業者や他の業種の方にも理解してもらうために、立面図や天井伏図・展開図といった一般設計図にも原寸大で、コンセントや照明器具やエアコンといったものを書くようにしています。こうすればここにこれがくるからと、理解して建物の施工時に注意がいくと思っているのですが、なかなかそこまで理解する業者がいないのが現状で、やはり自ら現場で指示するしかないようです。 | |
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外壁仕上げ下地 |
最近の外壁仕上げには、サイディングが良く使われるようになりました。最近の外壁下地には、通気構法という空気の通り道を作るようになってきましたが、これを行っていない物件では、数年後に壊してみたら、下地が腐っていたという話をよく聞きます。昔の職人には、よくわからないみたいで、ここでも空気の通り道ができるよう直してもらいました。木に白くカットされている部分がそれです。 | ||
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内壁仕上げ下地 |
仕様書 | 内壁の下地には、間柱と胴縁といった部材がありますが、こういった下地材にも材種や等級や釘の打ち方、梁との仕口の納め方等、細かく考えないといけないことはたくさんありますが、設計料の安い物件では、ここまでのチェックや設計段階で仕様を決めるようなことはあまりなされていません。しかし性能保証時代を迎えさらに職人の質の低下を考えると、ここまで踏み込んでいかないと後々問題が出るようなことになります。 | |
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小屋組と断熱材 |
小屋伏 |
施主の希望で小屋組を表すことにしました。つまり天井がないということです。一般的には、屋根下は天井を貼って、熱がこないように換気口をもうけますが、ここではそれが出来ないために屋根直下に断熱材を入れています。本来は熱を小屋裏のような建物内に一度入れ込むのは非効率のため、今後はこういった外断熱の工法が主流となっていくでしょう。 | |
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床暖房 |
床暖房設備図 |
暖房で一番良いのは、やはり床暖房でしょう。しかしコストが高いのでなかなか導入されません。電気式だと比較的最初の導入金額は安いのですが、後々電気代が高くつくので使わずに終わってしまうといったこともありなかなか難しいですが、最近は施主の要望で吹抜けを作ったりします。居間のような居住空間が吹抜けの場合は、コストがかかっても床暖房しないと生活できません。 | |
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電気設備 |
電気空調設備 |
最近の住宅の設備は、非常に高度になりました。近年の住宅の価格の1/3は設備が占めているといっていいでしょう。しかし高度になればなるほどブラックボックスの部分が多くなりました。マイカーのエンジンを見てもどうなっているのかわからなくなってしまったのといっしょです。しかし、建物のトラブルの80%は、設備によるものですから、いかにわかりやすくきれいに工事するかが大事です。見えないところをきれいにやらないと後が大変になります。 | |
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排水管 |
給排水設備図 |
排水管は設備の管の中でも太くて勾配を考えないと流れないので、難しい配管です。しかし見栄えの良いものでないので、どうしても無理に納めようとしたり、もっとひどいことを言えば、住宅の場合は、設計図や施工図といった図面をここまで書かないことが多く、職人が行き当たりばったりでやるのでトラブルが多く発生します。この形態を変えないと、住宅の質は上がりません。 | |
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内壁仕上げ下地 |
仕上表 |
ついに建物の仕上げになりました。仕上げが始まるとあっという間に進むので、こまめに現場に行かないといけません。最近は施主もよく勉強してまして合板は、F1以上でないと使えません。自分達もなるたけ健康材料の使用をしたいと思うのですが、コストが高いものが多くローコスト住宅では、仕上げ材をなくしたり、下地材を仕上げ材にするといったこともしないとなかなか難しいです。 | |
28 |
内壁仕上げ |
建物の仕上げ材を健康材料・自然素材でやろうというのが最近の主流ですが、こういった材料を使うことは私は昔から非常に良いと思ってましたが、使う際には施主にも理解してもらわなければ行けないことがあります。こういった材はメンテナンスが必要でこまめに補修しないといけません。フリーメンテナンスといった考えだとなかなかこういった材は使えません。 | ||
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内床仕上げ |
健康材料・自然素材は、人にやさしいですが、これは同時に、生き物すべてにやさしいと考えたほうが良いです。つまり、私達が嫌う害虫にもやさしいということです。白蟻や蜂といった虫も昔の強い薬剤を使っていたころは寄り付きもしませんでしたが、自然素材ではそうもいきません。色あせもします。しかしそれもまた良いのではないでしょうか。年を取ってもずっといっしょのままというのも気持ち悪いですし。 | ||
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床土間下地 |
矩計図 |
土間の下地に鉄筋や断熱材、防湿シートといったものを使用せずにただコンクリートを6p程度打つような現場をよく見ますが、こういった土間は割れて下さいといっているようなものです。それに、土間でない床下には断熱材を入れるのに、同じ建物内の土間下にはなぜ断熱材を入れないのか不思議です。図面に書いてあっても、職人は何も考えずに間違っているぐらいに施工するので、注意が必要です。 | |
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設備機器取りつけ |
機器表 |
仕上げが始まり設備機器が取りつくといよいよ大詰めです。設備の取りつけには、大きいものからタオル掛や紙巻器のような小さいものまでありますが、取付けに際してはいろいろ注意が必要です。設備を付けるのは設備や下地は大工、断熱材は内装屋といったように今の現場は分業されていて統括する人がいない現場がほとんどで、そういったことだと連携が取れず、自分の納まるようにしかやらず、外見はきれいですが、中はぐちゃぐちゃといったことになります。 | |
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浄化槽取りつけ |
給排水設備図 |
浄化槽の据付けです。下水道の完備されているところではいりませんが、そうでないところは浄化槽をつけなければなりません。現在は法律で合併式浄化槽しか使えませんので、50坪程度の住宅で100万円程度の金額がかかります。また、合併式は大きいので、小さい土地では、設置する場所が限られ結構苦労します。昔は市町村から補助金がでましたが、法制化されたことでなくなる方向です。 | |
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外壁仕上げ |
矩計図 |
外部の仕上げも始まり、足場もはずされると、建物の全貌もはっきりしてきます。もうすぐ完成です。 | |
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バルコニー防水 |
矩計図 |
昔はバルコニー下に部屋のある設計はだめだと言われてきましたが、近年1階に駐車場を持って来たり、近隣との土地の状況や土地の大きさによって2階に大きいバルコニーを持ってこないと施主の希望をかなえることが困難になってきました。木造で平らな床の防水を作るのはまだまだ選択肢が少ないですが、防水については住宅性能規定により10年保証が明確にされるようになったこともあり、今後増えていくと思います。 | |
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玄関ホール仕上げ |
1階玄関ホールの仕上げも終わりました。 | ||
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2階ホール仕上げ |
2階ホール仕上げも終わりました。 | ||
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外部仕上げ |
外部仕上げも終わました。 | ||
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完了検査申請書 |
昔の住宅ではほとんどの物件が完了検査を受けていませんでした。これはいわゆる日本の法全てに通ずるのども通ればの理論でこれが違法建築や欠陥住宅につながっていました。こういったことから行政も重い腰をやっと上げて完了検査を義務付ける方向で申請関係の法改正をしましたが,抜本的に建物の検査関係を施主自身も考え直さないと欠陥住宅はなくなりません。 |