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富士宮市の脳神経外科、外科、内科クリニック。加藤脳神経外科です。

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健康コラムHealth Column

健康コラム第9回 頭部打撲後によく起こる症状(血腫)

1)頭部打撲とは

今回は頭部打撲、つまり頭をぶつけてしまった後に脳と頭蓋骨の間に血が溜まる病気について、簡単に説明させていただきます。脳は身体の消費する酸素の約30%を占める器官です、大量の酸素を供給するために頭部は頸動脈系と椎骨動脈系の2つの動脈系で栄養されています。
脳に酸素を送った血管は脳の表面から静脈洞を通って心臓へと戻っていきます。脳というのは水の中に浮いている豆腐のようなもので、軟らかい脳を3層の膜、すなわち軟膜→くも膜→硬膜の順で覆って保護しています。脳から出る血管はこの浮いている状態の脳から3つの膜の間を通っているので、しっかりと固定されている状態ではありません。例えば強く頭をぶつけると、脳にダメージを与えないように脳髄液が衝撃を吸収して、和らげます。この時脳は脳髄液の中で揺さぶられることになり、完全に固定されていない血管が引っ張った拍子にプツンと切れてしまうことがあります。切れてしまうと、急速に又は徐々に脳のクモ膜と、硬膜の間に血が溜まっていくことになります。これを血腫と呼びます。放っておくと徐々に脳を圧迫して、脳が腫れて炎症を起こしたり(脳浮腫)、中枢神経を圧迫して命に関わることも稀ではありません。脳の表面に出来る血腫は急性硬膜外血腫、急性硬膜下血腫、慢性硬膜下血腫の3つです。

2)急性硬膜外血腫、急性硬膜下血腫

急性硬膜外血腫は、脳の外側部を流れる中硬膜動脈が切れることで3膜の一番外側の硬膜の外に血腫が溜まる病態です。脳震盪を起こさない程度の頭部打撲で、ぶつけた直後はなんともなくても6時間後までに徐々に血腫が大きくなり、頭痛、神経症状、意識障害が出現します。動脈からの出血なので、早めに処置を行わないと血腫がどんどん大きくなって命の危険が伴います。しかし逆に考えるとぶつけて6時間たっても症状が出なければこの病気の可能性は少ないということでもあります。
診断はCTスキャンで容易に確定することが出来ます。頭蓋骨に接した凸レンズ状の血腫が特徴的に見られます。

急性硬膜下血腫は、脳の表面から外側に向かう架橋静脈が主に切れることで硬膜の下側に血腫が溜まってしまう病態です。急性硬膜外血腫の場合血腫と同時に脳にも脳挫傷や外傷性のクモ膜下出血を伴うことが多く、重症の患者さんで、直後から意識障害も多く、見逃されるようなことはまずありません。しかし血腫が急速に大きくなるので、早期に適切な治療を行わないと予後はとても悪いです。CTスキャンで頭蓋骨に接した三日月形の血腫が見られるのが特徴です。

3)慢性硬膜下血腫とは?

急性硬膜外血腫も急性硬膜下血腫も、大抵の場合他の大きな外傷を負っている場合が多く、症状も受傷した当日以内には出現するので、診断で見落とされることは稀です。ただし慢性硬膜下血腫は時間をおいてから発現することが多く、頭部打撲の場合継続的な観察が必要となります
慢性硬膜下血腫は急性硬膜下血腫と同じように脳の表面から外に向かう架橋静脈という静脈が衝撃で引っ張られて破けることで、血腫を作ります。急性の場合と異なるのはゆっくり時間をかけて徐々に血が溜まっていくということです。大体1か月後くらいに症状が出て受診される方が多いようです。

上の画像は同じ患者様の受傷直後のCTとフラつきやめまいなどの症状が出て再撮影したCTとの比較になります。受傷直後はまったく異常が認められませんが、1か月後のCTでは脳の外側に白い部分がまだら状に、また前頭部には白い塊の部分が分かるかと思います。さらに脳の中心が血腫に押されて右側にずれてしまっています。ぶつけた部分とは反対側の脳に血腫が出来やすいのもこの病気の特徴です。このように血腫が脳を圧迫すると神経も圧迫されて、フラつき、めまい、吐気、見当識障害、昏睡などが生じて、治療をしなければ最終的には死に至ります。ただし適切に血腫を除去してあげればほぼ助かりますので、だいぶ前に頭をぶつけた事のある方で、行動に異常が見られる場合には直ぐ専門医にかかってください。
また高齢者の方がこの慢性硬膜下血腫になると、元々脳が萎縮してスペースに余裕があるので、頭痛や吐気が起こりにくく、代わりに急速に痴呆が進んだような症状が出るのが特徴としてあります。もの忘れが激しくなったり、失禁をするようになったり、まっすぐ歩けなくなったり、このような症状が数ヶ月以内に急速に進んだ場合、慢性硬膜下血腫の可能性があります。慢性硬膜下血腫による認知症は血腫を取り除くことで、めざましく改善します。患者様ご本人が覚えがないくらいの軽い頭部打撲でも起こりえますので、ご家族の中の老人の方で急激に認知症が進んだなと気づかれたら、専門医で頭の検査を行うことをお勧めします。

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