2006年9月29日

                                                小黒啓子

2006年9月議会   反対討論

 私は日本共産党浜松市議団を代表いたしまして、第133号議案 浜松市立保育所条例の一部改正について、及び第150号議案 浜松市病院事業の設置等に関する条例の一部改正についての2つの議案に対しまして反対の立場で討論を行います。

 さて、第133号議案 浜松市立保育所条例の一部改正についてはみなさんご存知の通りこざわたり保育園を廃園にしていくというものですが、こざわたり保育園を守る会が行いました「廃園をやめて欲しい」という請願署名は一ヶ月に満たない期間で6万を超えて集まるなど、浜松市の保育行政のあり方が問われる大きな問題になりました。

  廃園にいたるまでの経過につきましては、請願趣旨説明でもお話しましたが、保護者・市民の理解を得られるものではなく、民営化から廃園へ至る市長の方針転 換についても明確な説明はないままです。ましてや廃園を決定した理由については「保護者の理解が得られなかったので」という、保護者に責任を転嫁し、行政 の説明責任を放棄する無責任極まりないやり方に、多くの保護者・市民は怒りをあらわにしています。


 厚生保健委員会では本条例案と「こざわたり保育園を廃園せず、保護者や市民の納得のいくまで説明・議論をして欲しい」という請願とを合わせて審議する中で、民営化の方針が廃園に変わってしまった理由として、当局から次のような説明がありました。

○今まで行なった2園の民営化については保護者の同意・理解を得て実施してきた。今回、都市計画道路との絡みでタイムリミットとなりアンケートを実施し保護者の意思を確認したが、アンケート結果により8割の保護者が民営化に理解していただけない状況では市としては民営化を強行することはできなかった。

○こざわたり保育園を廃園しても、近隣の公立保育園に優先転園できることや、民間保育園が3園開園し6月時点での平均入所率が60%程度であったことから地域の保育需要もそこでカバーできると総合的に判断して廃園を決定した。

 しかし、当局のこの理由からしても、いくつかの問題があります。

 まず1点目は当局の民営化の方針が、道路の開通時期を最優先とし、保育園の改築と民営化をセットで提案したことから、民営化を進めるには、保護者と話し合いする時間が初めから限られていたこと。

 2点目は限られた時間で事を進めなければならず、説明が不十分であったり、誠意のない当局の姿勢に保護者との信頼関係が築けない状況のまま、それを修復する時間がなかったこと。

 3点目に、保護者の理解が得られなければ民営化に向けて議論を継続する、もしくは現状を維持することが当然であるのに、理解が得られないといって強引に廃園を決定し、その理由を保護者アンケートに転嫁していること。

 4点目に、廃園すればこざわたり保育園の子ども達は公立保育園に転園させられ、受け入れる保育園の環境に手を入れたとしても、過密保育が行なわれ、こざわたりの子どもたちも、転園先の子どもたちにも影響がでてくること。

 5点目に同地域に3つの民間園を同時に開園し、民営化をしてもそれを受ける法人の枠をせばめていること。

 そして最後に、現在でも静岡県で一番待機児童が多い本市が、保育園を廃園するということは、少子化対策、子育て施策に逆行し、安心して子どもを生み育てたいという市民の願いを踏みにじる結果になること。

 以上のように、こざわたり保育園の廃園理由に道理は無く、市民にとっても、本市の保育行政にとっても、非常に大きなマイナスをもたらすことは言うまでもありません。

 委員会の審議では、厳しい財政状況のもとで、行財政改革を進めなければならない。民間でできることは民間に任せ、コストを削減しなければならない。民営化は当初からの決定であるという意見が出されました。

 本当に無駄なものは削減すべきであることに異論はありませんが、子どもの成長発達を保障する保育園の民営化については、十分慎重に議論して進めなければならないことが横浜の判決からも読み取れるところです。


 横浜判決の第1は、 民営化に対して保護者の同意が得られない場合にはそのような利益侵害を正当化しうるだけの合理的理由とこれを補うべき代替的な措置が講じられることが必要 であるとの基準を示し、行政の「裁量権を逸脱、乱用したもので違法」としています。公立園を廃止することを違法と明確に示しました。こざわたり保育園の場 合、利益侵害を正当化しうる合理的理由はあるでしょうか。もし、その理由を道路の開通計画とするのであれば、平成21年4月までに道路が開通しない場合、誰がどのように責任をとるのでしょうか。

 横浜判決の2番目は保護者が選択して入園した保育園の保育を受ける権利を認め、市に住民が利用する保育園を変更する権利はないことを明らかにしました。

 3番目に 保護者との信頼関係、行政説明責任を重視しています。「民営化について大方の保護者の承諾が得られていると言い難い状況」があり、「保護者と市のとの関係 は、民営化に向けて建設的な話し合いが期待できるという状況にはなく、早急に信頼関係の回復が見込める状況にもなかった」とし、保護者がこのような態度を とった理由として、「突然に民営化が公表されたこと」や「行政の決定事項」との市の強要があったことを認め、「このような民営化は、児童及び保護者の特定 の保育所で保育の実施を受ける権利を尊重したものとは到底いえない」とし、行政の説明責任を非常に重視しています。

 保育園は何より子どもの生活と発達を保障する施設であり、保護者にとってはなくてはならない施設です。保育園を選択して保育を受ける権利が、児童福祉法で明確に定められている以上利用者の意向を尊重したこの判決は当然のものです。

 行 革の観点からみても、現在の本市の公立保育園は、保育士の半数近くは非正規職員になっており、内部リストラは十分すぎるほど進んでいます。

 それでも、長年 の保育士のみなさんの頑張りで保育水準は国基準より高く、安心して子どもを預けられる、子育ての相談にも親身にのってもらえる、と地域の宝となり、保護者 や市民から愛されています。 ただでさえ数の少ない公立保育園を廃園にしていって、なんの利益があるのでしょうか。

 廃園による一番の被害者は子どもたちです。現状のままの保育を受け続けることが最大の安心であり、どのような手立てをとってもそれに替わるものはないでしょう。行政の勝手な都合で子ども達の心に傷をつけることは許されるものではありません。

 議員のみなさん。議会の良識が問われています。そして、「廃園しないで」の請願に署名をしていただいた多くの市民が議案の賛否を注目しています。議会に託された6万人の思いを汲み取っていただき、誠意ある対応を願いし、第133号議案 浜松市立保育所条例の一部改正についての反対討論とします。

 次に、第150号議案 浜松市病院事業の設置等に関する条例の一部改正について反対の理由を述べます。

 本条例案は健康保険法等の一部改正により、今年の10月から療養病床に入院する70才以上の高齢者に対し、新たに居住費を徴収し、食費負担を増やす算定基準をさだめたものと、特定療養費の制度を廃止し保険外併用療養費の算定方法を定めたものが出されています。

 療養病床は長期にわたり治療を必要とする患者が入院するもので、本市では浜松リハビリテーション病院の44床、佐久間病院の20床が対象になってきます。

  現在の制度では70歳以上の住民税課税者が療養病床に入院している場合、医療費の1割負担のほか「食材料費相当」として月2万4千円が患者負担になってい ますが、今回の法改正では水道光熱費相当分の「居住費」が月1万円、食材料費と調理コスト相当分の「食費」が月4万2千円かかり、食費・居住費だけで合計 2万8千円もの負担増となり、1ヶ月の入院費は約9万円近くかかることになり、特に高齢者や重症患者には情け容赦ない制度改悪になっています。

 また、今回の医療制度の改悪で本年10月からはさらに、70歳以上の「現役並所得者」の窓口負担が2割から3割に引き上げられ、2008年4月には70歳から74歳のすべての人の窓口負担が1割から2割に引き上げられようとしています。

 そして、療養病床に入院する65歳から69歳の入院患者にも2008年4月からは食費・居住費の自己負担が拡大され1ヶ月の入院費は約13万円を超えるようになってくる見通しです。

 病気にかかりやすく、治療にも時間がかかる高齢者の負担を引き上げることは、病気の早期発見・早期治療を妨げて重症化させ、かえって医療費の増大を招くのではないでしょうか。

 また、「特定療養費」を再編成し、新たに「保険外併用療養費」を導入することになり、いわゆる「混合診療」への道を開くものとなってきました。

 今 の日本の医療制度は「混合診療」を原則的には認めておらず、例外的に認めているのは1984年に導入された「特定療養費」制度です。

 わかりやすいものとし て、臓器移植があります。心臓や肝臓の移植は特殊な先進医療として保険がききませんが、大学病院など、一部の指定されている病院では研究費などが使えるの で保険のきくところまでは保険で行って、後は患者の自己負担か、大学の研究費でまかないます。まさに混合診療なのですが、例外として認められているので す。

 また、差額ベット代など医療行為の本体で無い部分も「特定療養費」になっています。

 今回の再編成の基本的な考え方は、保険導入を前提としない「選定療養」と保険導入のための評価を行なう「評価療養」とにわけ、合わせて「保険外併用療養費」とするものです。

 「選定療養」では患者が「同意」すれば現行の差額ベット代などにとどまらず、公的保険のきく回数を超える医療行為も新たに対象となります。

 具体的に部分解禁がどのような形になるか明らかではありませんが、これが拡大されれば保険のきく治療はどんどん少なくなり、保険外の治療が増えてくるように なり、患者の負担はますます増大します。
 このような「混合診療」の拡大・解禁は、日米の民間医療保険業界が強く求めているものであり、保険がきく医療が後 退した分、民間の医療保険の市場を拡大することを狙いとしています。

 「混合診療」を無制限に広げてしまえば、保険証があればどこでも、誰でも医療を受けられる世界に誇れる日本の公的保険制度が崩壊し、お金のあるなしで「命に格差」がつけられることになり、賛成できるものではありません。

 いま、格差社会と貧困の広がりが大きな問題となっている中で、介護も年金も切捨てが続き、今回の医療制度の改悪で、お金の払えない人は公的医療から排除され、「所得の格差」が「命の格差」に直結する社会になってしまい、安心して医療をうけることから遠ざかっていきます。

 これらのことから、第150号議案 浜松市病院事業の設置等に関する条例の一部改正には反対をします。

 以上で私の反対討論を終わります。

 (2006・10・04up)

               

2006年9月29日 反対討論