一般質問



                                2006年 3月14日     
                一般質問原稿            小黒啓子

 私は日本共産党浜松市議団の一人として、先に通告いたしました内容に従い順次質問をいたします。今回は小泉構造改革が進む中で、社会保障が次々と切捨てられ、市民のくらしをつぶし、福祉を後退させている事例をあげながら、国の悪政から市民のくらしや福祉を自治体がどう守っていくのか、本来の自治体らしい自治体をどう作っていくのか、そのような観点から5項目にわたって質問をいたします。

 まずはじめに、国民健康保険事業について市長に質問いたします。

 国民健康保険の実態や構造的な問題は、繰り返し指摘していますのでご承知だと思いますが、社会的格差が広がる中で、国民健康保険の様相も変化してきています。
 今年2月の厚労省の調査では平成17年6月現在の集計で、国保に加入している全世帯の18,9%に当る470万世帯が国保料を払えず、滞納世帯は一年前に比べて約9万世帯も増えていることがわかりました。
 滞納が1年続くと、保険証が取り上げられ、保険証の代わりに資格証明書が発行されますが、医療を受ける際、一旦窓口で医療費の全額を払わなくてはいけないことから、医療を受ける機会を大きく阻害しています。
 今回の調査では資格証明書発行世帯は31万9千世帯にのぼりました。
 
 本市においては、平成17年10月時点で522世帯に資格証明書が交付されています。滞納者への制裁措置として資格証明書が交付されているわけですが、静岡県からの通知でも、「特別な事情」の有無を判断し機械的な発行ではなく慎重な適用をするよう求められているところです。
 平成15年9月の私の資格証明書を交付すべきでないという質問に対し、市長は「資格証明書の交付については特別な事情に該当するかどうか、丁寧に判断して適用しており、資格証明書は医療を受ける機会を奪うものではない」との答弁をされています。
 丁寧に判断して資格証明書を交付しているということですので、資格証明書交付世帯の所得階層はどうなっているのかを調査するなどして、機械的な資格証明書の発行をやめるべきと考えますがお尋ねします。

 次に、保険証の未交付について伺います。
 本来であれば10月の一斉更新時にすべての加入世帯に新しい保険証が交付されるわけですが、未交付になっている保険証が平成17年10月時点で965件ありました。
 そのうち306件は居所不明ということですが、残りの659件は郵送されずに、とめ置きになっていました。
 何故とめ置きにするのか、保険証がなければ受診することもできません。受診の機会を奪うことからとめ置きにすべきでないと考えますがいかがでしょうか。

 国民健康保険の3点目の質問は、保険料の減免制度について伺います。
 厳しい経済状況が続き、中小零細業者をはじめとする国保加入者は国保料が高くて支払えない世帯が年々増加し、本市の今年1月末現在の現年分未納額は調停額の12,3%の24億円を超え、昨年12月末の滞納繰越額は旧11市町村分を合わせ48億5千万円にのぼっています。

 滞納の理由は「少額ならば払えるが全額は支払えないのでそのままになっている」とか、「営業が思わしくなく、所得がなくやむをえず滞納している」などさまざまですが、、それぞれの相談にきめ細やかな対応をすれば滞納が減っていく要素はあると思われます。
 また、国保料を収めることができない世帯の中には、浜松市で定めている減免規定に適合し申請減免ができる方もおられると思います。

 ところが、本市の申請減免の状況は平成16年度は34件、今年は1月末現在で33件しかありません。
 収納率の向上にむけても、本市の減免申請の制度を広く市民に周知させることが求められていますがどのような対策をとっているか伺います。

 また、減免制度を充実させる点では、名古屋市の例を紹介し是非検討していただきたいと考えます。
 名古屋市では平成16年度の国民健康保険料の減免が146933件、総額で20億4800万円にのぼっています。
 中でも老齢者減免が78,186件、10億8700万円、所得激減減免が8215件、5億2千万円になっております。
 所得激減減免とは、自営業者などを対象に前年所得と比べ営業所得が低下すると見込まれた場合減免申請ができます。
 本市の場合は低下率が30%ですが、名古屋市では20%低下のみこみで申請できます。

 また、老齢者減免とは75歳以上で世帯の住民税が5万円以下で、7割5割減額の対象以下の所得の方は、均等割額の全額を減免することができます。
 他に、低所得者減免、事業の休廃止減免、社会的弱者減免など制度を充実し、負担の軽減をはかりながら、収納率も上げていくことが可能になっています。
 本市においても減免制度のさらなる充実が求められると考えますがいかがでしょうか。

 次に高齢者のいのちと健康を守るために、肺炎球菌ワクチンの接種について公費で助成されるお考えはないか保健所長に伺います。
 肺炎はがん、心臓病、脳卒中につぐ日本人の死亡原因の4番目にあげられ、毎年約9万人が死亡し、そのうち65歳以上が95%を占めています。
 肺炎の病原体には、細菌やウイルスなどいくつもの種類がありますが、肺炎球菌によるものが約5割にのぼるというデーターもあります。

 1回の接種で最低でも5年間は免疫が持続することから、アメリカでは国が高齢者への接種を推奨し、65歳以上の約7割が肺炎球菌ワクチンの接種を受けています。 
 日本でも高齢化が進み、医療費の高騰が続く中で、少しでも医療費の削減につなげようと、全国で肺炎球菌ワクチンの接種費用を自治体が助成する動きが出てきています。
 一度肺炎にかかると、医療費は約25万円かかります。ワクチンの補助に一人あたり2千円かけても、発病を100人に1人の割合で抑えれば十分に採算がとれることになります。

 北海道の瀬棚町では2001年から肺炎球菌ワクチンの助成をはじめ、高齢者の接種率は約60%に達しました。年間20〜30人だった肺炎患者が今では10分の1の2,3人に激減しています。
 一人当たりの老人医療費が1992年まで全国市町村ワースト1でしたが、今では半減しています。
 全国では27自治体が公費助成に踏み切り、広島県呉市では昨年の11月から75歳以上の高齢者に一生涯で1回のみ、3000円の補助制度をスタートさせました。
 75歳以上の3万2千人を対象に当初4600人分の1400万円の事業費を組んだところ、すでに3200人の方が接種され、予想以上の反響に当局も、年間約1万人の接種を目指すことになりました。そして、年間100人ほどの肺炎による死亡を食い止められると予測しています。

 平成14年9月に小沢議員も同様の質問をされていますが、当時の状況と比べましても接種率が大きく増加し、公費助成制度を創設した自治体では医療費の低下につながることが証明されています。 
 本市においても、高齢者の命を守り、医療費を抑える立場からも肺炎球菌ワクチンの接種に公費助成制度をつくるべきと考えますがいかがでしょうか。


 次の質問は税制改悪に伴う高齢者の福祉サービス等の対応について保健福祉部長に伺います。 
 小泉内閣の戦後最悪の大増税・負担増路線が加速を増して国民に襲いかかってきます。そのうちの一つとして平成18年度には地方税法の改悪により税額控除の廃止や縮減が行われ、それによって大きな国民負担増につながることになってきます。
 ただでさえ、税負担が国民生活を圧迫していますが、さらに追い討ちをかけて負担が増えてくることで、国民のくらしそのものがつぶされる事態になってくると思われます。

 今回の改悪の中で、特に高齢者に影響すると思われるものをあげてみますと、申告される方ご本人が65歳以上の場合、所得税では50万円、住民税では48万円の老年者控除を受けることができましたが、それがなくなることで、本市では約3万人の高齢者に4億円強の増税となります。
 また、65歳以上で所得125万円までの方は住民税が非課税でしたが、全廃され住民税課税に移行します。段階的に課税負担率が変わりますが平成18年度は課税額の3分の1が対象となり、本市では均等割、所得割を合わせて約1億円の増税となります。

 年金受給者の公的年金控除が140万円から20万円引き下げられて120万円に縮減したことで本市では約1〜2億円の増税です。
 そして、定率減税の縮減については、税額の所得税で20%、住民税で15%が恒久的減税として行われていましたが、平成18年度から半減します。
 本市においては約35万人に及ぶ納税義務者全員に約19億円の増税となることがわかりました。

 このように、高齢者にはいくつもの制度改悪から、今まで住民税非課税者・世帯であった方が課税者・課税世帯に変更されるわけですが、どのくらいの方が影響を受けるのかお尋ねします。
 また、住民税非課税者・世帯を対象に、いくつかの福祉サービスがあります。たとえば、  @緊急通報システム事業
  A日常生活用具等給付事業
  B福祉電話設置事業
  C徘徊高齢者家族支援サービス
  D高齢者介護用品支給事業
  E家族介護慰労金支給事業等がありますが、このことによって今まで受けていた福祉サービスが受けられなくなることがないようにすべきと考えますがいかがでしょうか。
 そして、平成18年以後の申請者についても、税制改悪によって課税者・世帯となる方には引き続きサービスが適用されるべきと思いますがお考えを伺います。

 質問の4番目は誰もが安心して利用できる介護保険事業にするために、3点にわたって保健福祉部長に伺います。

 1点目は介護保険料の問題です。
 介護保険法では、各市町村が3年ごとに事業計画を策定することが定められ、平成18年から平成20年までの第3期介護保険事業計画が策定されました。
 本市においては合併時の調整方針により平成18年度については、経過措置がとられ、基金を取り崩せるところは活用して保険料を一定額引き下げることができましたが、平成19年度、20年度については今回の基準どおりの運用になってきます。
 旧浜松市では基準額が3200円から3800円に18,75%の増加ですが、旧浜北市では28,47%の842円も増え、旧春野町や旧水窪町では35,71%の1000円の増加、旧佐久間町では45,04%の1180円もの増加になります。

 大変大きな負担増に高齢者のくらしへの影響が心配されます。これでは住民から「サービスは高く、負担は低く」という合併協議会の調整方針である約束はどうしたのかという疑問の声が出されてきます。
 国の税制改悪、さらに高齢者に新たな負担増となる医療制度の改悪が検討される中、本市においては少しでも高齢者のくらしに配慮し、積立金の取り崩しや、一般会計からの繰り入れなど実行して、介護保険料の大幅値上げは中止すべきではないかと考えますがいかがでしょうか。

 2点目として地域包括支援センターについてうかがいます。
 昨年6月の介護保険法の改悪により、サービスの切り捨てと国民への負担の転嫁が行なわれました。
 具体的には、昨年10月からこれまで介護保険の対象とされていた食費や、介護施設の居住費が介護保険の対象外となり、原則として全額が利用者負担となりました。
 また、「新予防給付」の導入などによって、要介護状態が軽度の高齢者は、筋力トレーニングや口腔ケア、栄養指導など、「状態の改善可能性」を高めるためるためのサービス利用が中心となるなどこれまでのサービスに制約を受けることになります。
 そして、高齢者の保健・福祉事業を、地域支援事業として介護保険として取り込むことで、これまで公費で行なってきた保健・福祉事業を介護保険財政に移すことによって、国庫負担の割合を削減し、国の責任を地方自治体や住民に転嫁させることをねらいとしています。
 まさに、「介護の社会化」という当初の理念を投げ捨てて、「自立自助」の考え方を徹底した制度へと介護保険を変えていく大改悪が行なわれたわけです。
 
 今回の法改悪の中で地域包括支援センターが設置され、新予防給付などのマネジメントをはじめ、高齢者の総合的な相談や、虐待防止など高齢者の権利擁護などにも深く関わることになります。しかし、本市の設置状況を見ますといくつかの問題点が見えてきます。
 地域包括支援センターの主な業務としては、
  @ 地域に総合的なサービスネットワークを構築すること
  A 高齢者の相談を総合的に受けとめ、訪問して実態を把握し、必要なサービスにつなげ、虐待の防止など権利擁護に努める事
  B 高齢者に対し包括的括つ継続的なサービスが提供されるよう地域の多様な社会資源を活用したケアマネジメント体制の構築を支援すること
  C 介護予防事業、新たな予防給付が効果的括つ、効率的に提供されるよう適切なマネジメントを行うことなど、重要な任務があります。
 本来であれば中立、公平の立場から自治体が設置すべきものと考えますが、本市では平成18年度に8箇所、20年度までにあと9箇所増やして17箇所の設置数となり、包括支援センター1箇所の対象人口は4万人から7万人になり、その業務を従来の在宅介護支援センターへ委託する形になっています。
 介護予防マネジメントの件数は地域支援事業の介護予防事業と予防給付を合わせると一地域500件とも600件とも言われていますがこれでは十分な地域包括支援センターとしての業務は遂行できません。
 生活圏域の見直しも含め、地域包括支援センターを増やし、本来の業務ができるようにすべきと考えますがいかがでしょうか。

 介護保険の3点目の質問は介護保険法改悪に伴う影響についてその、実態調査の必要についてお尋ねします。
 
 今回の介護保険法の改悪に伴い、施設入所者への居住費や食費が介護保険の適用からはずされ、全額自己負担になったことや、ショートステイの滞在費や食費、デイサービス・デイケアの食費も自己負担になったことにより、施設からの退所を余儀なくされたり、通所サービス抑制されるなど、サービス利用者にたいする影響が心配されています。
 このようなことから、本市のサービス利用者にどのような影響が出ているのか実態を調査する必要があると考えます。
 また、利用料の負担が重いために、必要なサービスが受けられない人が出ないよう本市においても独自の負担軽減措置をとるべきと考えますがいかがでしょうか。

 最後の質問は公立保育園の民営化について北脇市長にうかがいます。
 平成17年7月に「アウトソーシングのためのガイドライン」が発表され、公立保育園、幼稚園の民営化、保育園の調理業務の民間委託が打ち出され、そして、
 8月には小沢渡(こざわたり)保育園の民営化が打ち出されました。行政改革で無駄を削るために、子どもの育ちを守る保育や教育が真っ先に削られていいのでしょうか。

 公立保育園では国の貧しい基準を改善し、子どもの発達に必要な施設や職員配置を行ってきました。公立保育園の人員配置や、施設設備や、職員賃金などはその地域の民間園の基準となり、地域全体の保育水準を守り、発展させています。
 自治体が直営することから営利目的にはならず、儲からないからといって撤退することはありません。誰にでも平等で子どもの育ちを保障します。保育料以外の費用もやすく明快です。子どもを通わせる保護者は「自治体の主人公」として行政や保育に意見や要望をあげることができます。
 このような役割を果たしている公立保育園をどうして民営化するのでしょうか。 
 公立保育園の保育内容を充実させるために、民営化するという理由は理解できるものではなく、保育に対する自治体の責任を後退させることからこれ以上の公立保育園の民営化はすべきでないと考えますが市長のお考えを伺います。

 また、民営化するにあたっては、地域や保護者や職員への十分な説明と納得が必要であると思いますが、相互理解が得られない場合にはいかがされるおつもりでしょうか。
 合わせて質問いたします。