2008年2月28日
                                小黒啓子

安心して医療が受けられるように国民健康保険料の引き上げを行わないことなどを求める
請願趣旨説明

 紹介議員を代表いたしまして、請願第1号「安心して医療が受けられるように、国民健康保険料の引き上げを行わないことなどを求める請願」の趣旨説明を行います。

 本請願は中安俊文さんを代表とする「介護・医療・社会保障を考える市民の会」から提出されました。お手元の請願書をご覧ください。

 まず初めに述べられていますのは、国民生活の先行きの不安です。
 税制や、年金、医療、介護など国の制度改定により国民への負担が増し、特に高齢者には大きな負担増が押し寄せています。

 中でも、2006年6月に自民党・公明党によって成立しました12本の関連諸法からなる「医療改革法」では、高齢者を中心にした自己負担の引き上げ、自己負担上限の引き上げ、自由診療と保険診療を組み合わせる混合診療、療養病床を現行の38万床から15万床に大きく削減する、そして、後期高齢者医療制度などが決められ、総じて、患者負担増、保険給付削減になっています。
 
 平成20年度の本市の国保料改定についても後期高齢者医療制度の創設に伴い、大きな変動が生じ、被保険者には、また、新たな負担増になっていることを初めに述べておきます。
 
 さて、請願項目の1点目は、安心して医療が受けられるように、2008年度の国保料を引き上げないこと、とあり、国民生活が社会保障の切捨てや物価の高騰で、ままならない状況にある時にせめて、国保料は値上げしないでほしいという切実な思いが寄せられています。

 本市の国保料の改訂は、市長から諮問を受けた国民健康保険運営協議会が審議し、答申を出すわけですが、2008年度の答申では、合併前の旧11市町村と旧浜松市で異なる保険料をなだらかに改定することを求めました。
 
 それを受け、当局の案が出されていますが、現在、医療分の保険料は旧11市町村の方が高く設定されていますので、統一に向け旧浜松市分を引き上げる試案になっており、ここでは主に旧浜松市分について申し上げます。

 医療分と支援金分を合算した試算では、所得割で10%の引き上げ、資産割で5%引き下げられるものの、一人当たりにかかる均等割額は1000円増えて25,500円、世帯あたりの平等割も1000円増えて、25,000円の試算が示されました。

 限度額は医療分の53万円が47万円に引き下げられましたが、後期高齢者医療制度への支援金分が12万円新たに設定され、合わせますとなんと6万円も引き上げられることになります。

 現在最高額を支払っている方は、医療分と支援金分で59万円、40歳以上の介護分に関わる方は介護分の9万円の限度額を加算して年間68万円もの国保料になってきます。8回で納付すれば1回の納付額は8万5千円にのぼります。

 平成18年度決算の政令市比較をしてみますと、国保料一人当たりの平均は、堺市の97,909円が一番高く、次はさいたま市の95,516円、三番目は京都市の95,349円、そして、浜松市の91,959円となっています。世帯あたりの平均では堺市の182,420円の次が、浜松市の179,979円と本市の保険料は17政令市の中でも非常に高いといわざるを得ません。

 今回の改訂では、2008年度の国保料は所得が低く、法定軽減が適用される方をのぞき、国保加入者の約8割もの世帯で値上げになることがわかりました。

 今でさえ、加入者の2割の世帯は国保料が高くて支払えず滞納しています。医療費が増え、保険料が上がり、滞納世帯が増え、また保険料が上がる、この悪のスパイラルをどこかで打ち切らなくては、いつまでもこの状況が続きます。

 何とかして、保険料の値上げを抑え、支払える保険料にすることが求められます。
 
 次に請願項目の2点目にあります、「資格証明書の交付について、最近激増している事態を改め、交付を減らしていく方策を講じること」について述べます。

 資格証明書の交付は、浜松市が合併した平成17年10月では、12市町村を合わせても522件に留まっていましたが、平成18年10月には1,506件、19年10月には1,688件と異常な増加を示しています。

 何故、このように激増したのか当局に尋ねたところ、滞納している国保料について確実に滞納額が減ずるような返済計画をたてなければ、短期証から資格証に移行させるという措置をとった結果、先ほどのような急激な資格証の交付になったということでした。

 社会的貧困と格差が拡大する中で、NHKでも国保証がなく、治療が間にあわず命を落とされた方の事例が放映されました。事実上の国保証の取り上げについては、こんなことがあってはいけないと、憲法と人権を守る立場から、大きな反響が起きています。しかし、資格証明書は全国で35万世帯に交付され、国保で命を奪われる事態になっているのが現状です。

 全国保険医団体連絡会という、全国の医師の皆さんで作られている連絡会がありますが、資格証を交付された人の受診率を調査した結果が報告されました。調査結果によると、平成18年度の資格証を交付された人の受診率は、全国平均で14,99となり、同年度の一般被保険者の受診率、774,712の51分の1にあたり、17年度との比較では1,12ポイント低下していることがわかりました。
 
 受診したくても、お金がなく我慢をして命を落とすことがないようにしなくてはなりません。

 静岡県健康福祉部国民健康保険室から、国民健康保険の被保険者資格証明書の交付についてという通知が各自治体に対して、2度にわたって出されています。

 平成18年2月に出された通知を読んでみますと、「資格証交付済み世帯に対しては、交付後もできるだけ定期的に保険料の納付相談指導などを行うとともに、病気などになっているが、医療費の支払いに困窮し受診を控えていることはないかなど、とくべつな事情の有無を確認され、より適正な運営を図られるようお願いします」と丁寧な通知になっています。

 収入がない、病気をしているなど特別な事情に当てはまる場合は、資格証明書を交付することはできません。資格証を交付された世帯の実情をしっかりつかんで、適正な指導ができているでしょうか。17年10月から3倍以上に膨れ上がった数字の裏に、切迫した状況の方が隠れていないか非常に心配です。

 特に、こども第一主義を唱える市長の下で、乳幼児医療の対象世帯にも資格証明書が交付されている現状は、一日も早く改善し、どの子も安心して医療が受けられるようにすべきだと考えます。
 資格証交付世帯には丁寧な指導を行い、資格証明書の交付数が減っていくような方策を是非講じていただきたいと考えます。
        
 病気の早期発見、早期治療に力を注ぎ、医療費の高騰を抑えることが一番の課題であると考えますが、後期高齢者医療制度の創設で、市民の健康診査の状況も大きく変化してきます。

 請願項目の3点目にあります、「従来一般財源にてまかなわれてきた検診費用を国保財源に繰り入れるなどの措置を講じ、国保被保険者の負担の軽減を図ること」は
この内容に関連してきます。

 これまで市民の健康診査事業は保健予防課が担当し、10億円近い一般財源で事業を行ってきました。その制度が大きく変わり、国保被保険者は国保で実施する生活習慣病に特定した特定検診を受けるようになります。内臓脂肪症候群いわゆるメタボリックシンドロームに着目した検診です。

 2008年度、当初予算では約5億円の予算が計上されていますが、国が示している検診内容は、従来の基本健康診査項目から血糖検査の尿酸、ヘモグロビンA1C、をはずし、さらに貧血検査や腎機能の検査項目も除外しています。

 一人ひとりの健康について継続して数値の変化を見ていくことは、非常に重要なことですが、国が除外した項目を自治体で独自に取り入れていく場合には、国保財源の中から措置を求められ、更なる国保料の値上げに連動していくことになり、被保険者の負担増につながってきます。

 また、特定検診の受診率や、保健指導の実施率などが数値目標に対して実績が低い場合には後期高齢者への「支援金」が10%を上限として加算される仕組みの中で、さらに保険料の値上げが予想されます。

 これまでは保健予防の立場から市民の健康診査がなされてきました。生活習慣病のみの検査項目でなく、従来どおりの検査を継続すること、そして、検診費用が国保料に影響しないようにすべきではないでしょうか。

 自治体は、安心して医療が受けられることを保障している皆保険制度を守り、保険証が命綱である以上、自治体自らが、保険証を奪い、市民が命を失う危険にさらされることがないようにすべきです。

 その意味からも、市民の切実な願いであります、本請願に賛成していただきますようお願いをいたしまして、請願の趣旨説明といたします。

(2007/4/10up)


   

浜松市議会への国保請願の趣旨説明