生徒のウニ受精実験に用いた廃ウニが、毎年たくさん出た。ある日、実験授業
が終盤に近づき、片付けに入っていた時、被服部所属の生徒が「貝紫って知っ
ていますか? 高貴の色って昔から言われているのですってね!」と、話しかけて
きた。
確かに「貝紫」は、神秘的な色だ、しかも、動物性紫色染料は、コチニールなど
数種類しかない。どうやら「ウニ染め」をしてみたいらしい。
その年の夏休み、この生徒の卒業研究に付き合うことになった。最初は、一般
的な草木染の要領で、ウニ殻を煮た汁に布を浸け、媒染する方法をとった。媒
染剤・pH・布質・など、様々な条件で試行を繰り返したが、納得する結果は得ら
れなかった。冴えない上に褪せていく色・布からとれない悪臭・など、到底実用
にはなりそうになかった。そして、夏休みは終わった。

ウニ殻と口器(歯)

ムラサキウニの棘

色素原液(弱酸性溶液)

染色試験絹布(カルシウム塩媒染)

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特許「ウニ紫」秘話

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