特許「ウニ紫」秘話

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私は、卒業研究に使われたウニ殻を水酸化ナトリウム溶液で処理していた。
そして、集めた骨格を水洗しながら、あることに気づいた。
つまり、ウニの棘だけが、鮮やかな紫色のままだったのだ。
ウニ棘にだけ、安定な色素が存在しているのは、間違いなかった。
多忙な二学期が終わり、冬休みになった。
私は、頭の中に描き溜めてきた、数々の色素抽出法を、次々に実験してみた。
しかし、棘に存在する色素は極めて安定で、何時間煮沸しても、
各種溶剤で抽出を試みても、全く溶出してこなかった。
また、酸での溶解では、色素のほとんどが分解してしまった。
日常業務が終了してから始め、実験は連日深夜に及んだ。
そして、その年の大晦日の夜、
ついに、ウニ棘の色素を溶液化する事に成功した。
試験管を電灯光にかざすと、
色素原液は、ルビーのような明るい赤色に輝いていた。

{ウニ紫」で染色したネクタイ
(カルシウム塩で媒染)

年が明け、私は生徒とともに、各種の布に対する染色を試みた。
色素は、動物性繊維によく吸着され、アルミニウム塩では桃紫色、鉄塩では灰紫色、
カルシウム塩では自然な風合いの紫色に染色された。
そして、染色した布を一ヶ月間水に晒し、更に太陽光の直射下に置いたが、
全く退色しなかった。
私は、この色素原液をペーパークロマトグラフ法により分析し、
色相の異なる3種類の色素が混合していることを突き止めた。
そして、これらの色素を「ウニ紫T・U・V」と命名した。その時に染色した布は、
10年近く経った今も、健在である。
私は、この色素製造法を、特許出願した。

1,発明の名称 「ウニからの天然色素の製造方法」
2,特許出願 平成3年第201703号     
3,出願公告 平成7年第078173号
4,特許登録 平成8年4月9日        
5,特許番号 第2042424号
6,発 明 者 〒410-2122 静岡県伊豆の国市寺家 545  諫早 正夫

   (関心のある方は、上記住所までお問い合わせください)

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