第6節 拡散波動砲! 島よ,あの艦隊を撃て

(画面)宇宙空間。アステロイドベルト宙域に停泊している艦隊。リバーシブル空母,潜宙艦。ミサイル艦。戦艦。駆逐艦などおよそ60隻。
(効果音)宇宙艦の複数の機動音。
(字幕)ガトランティス第156遊動機動艦隊(画面下部横文字)
(画面)1隻の宇宙戦艦の描写。
(字幕)宇宙戦艦イメルディア(画面下部横文字)

(画面)宇宙戦艦イメルディアのブリッジ内。艦長席に座っている白髪の恰幅(かっぷく)のいい初老の戦士。
(字幕)第156遊動機動隊司令官 イメル(画面下部横文字)
(効果音)ブリッジ内機械音。
イメル「・・・太陽系9番惑星の様子はどうなのだ?」
(画面)イメルの前へ進み出てくる耳の大きなガトランティス戦士。画面手前にはイメルの右斜め後頭部のアップ。
(画面)耳の大きな青年戦士のアップ。右手を上げる。
(字幕)副官 キーク(画面下部横文字)
キーク「(右手を下げる))・・・未確認ですが,どうやら艦隊を発進させようとする動きがみられるようです」
(画面)腕を組むイメル。
イメル「我らの存在に気づいたか・・・?」
(画面)キーク。
キーク「いえ。このアステロイドベルト宙域はあの9番惑星の探知エリアからは死角になっています。我々の存在にはまだ気づいていないはずです」
(画面)腕を組みながら首を傾げるイメル。
イメル「では,なぜ艦隊が発進しようとしている?」
(画面)キーク。
キーク「・・・大帝閣下の最外周惑星襲撃の一件で警戒しているかも知れません。もしくは他に目的があるのか」
(画面)腕を組みながら首を傾げているイメル。
(画面)キーク。
キーク「・・・提督。偵察は充分だと思われます。9番惑星への進行のご命令を」
(画面)まゆをしかめているイメル。
イメル「・・・本当に我らの存在に気づいていないと思うか? キーク。あの基地にはワープ通信装置がある。地球軍は2度も本星と連絡をとっているのだ。亜空間レベルの通信波は宇宙艦の設備では内容は傍受(ぼうじゅ)できない。地球人たちがどのようなことを考えているか分からんうちはあの艦隊の動きを見極める必要がある。我らをおびき出す策略かも知れんからな」
(画面)前へ進み出るキーク。
キーク「お言葉ですが,提督。少し慎重に過ぎるのではありませんか。大帝閣下からのご命令からすでに80ガトランティスアワー以上経過しております。これ以上の時間の浪費は・・・」
(画面)反応するイメル。
イメル「・・・! 浪費と? 地球を甘く見てはいかんぞ。キーク。先の大帝閣下の攻撃でやつらは警戒態勢に入っているとお前も今言ったではないか。ここで軽率に動いて,バルゼーの二の舞になりたいか。これは我らの武勲を挙げるチャンスなのだ。失敗は許されないのだぞ」

(BGM)M−1A
(画面)別の宇宙空間。やはり停泊している宇宙戦艦ヤマト。周辺に他の宇宙艦が追従しているがこの宇宙艦隊の全貌はこの画面に完全には表現しきれていない。・・・ただはるかかなたの星と思われる光も不自然に動いている。その光でさえも宇宙艦だとしたら,この宇宙艦隊のその規模は計り知れない。
(字幕)ガトランティス本隊(画面下部横文字)
(効果音)宇宙艦の複数の機動音。

(画面)宇宙戦艦ヤマト第1艦橋内。艦長席で頬杖をついているレック・アルド・ズォーダー。
(効果音)艦橋内機械音。
(画面)画面左端にはレックの頬杖をついている右腕のアップ。右側正面にゲーニッツが歩み寄り,レックの手前で右手を上げる。
ゲーニッツ「(右手を下げる)・・・大帝閣下。第156遊動機動隊から暗号通信が入りました」
(画面)動じる気配のないレック。
(画面)タイミングを推し量って口を開くゲーニッツ。
ゲーニッツ「・・・太陽系第9番惑星にて動きがあった模様です。地球艦隊が基地を飛び立ったとのことです」
(画面)動じる気配のないレック。
レック「・・・それが?」
(画面)黙っているゲーニッツ。

(画面)頬杖を外さないレック。
レック「・・・イメルはそのような報告をして,私に何を求めているのかね」
(画面)言葉が思いつかないゲーニッツ。
(画面)頬杖を外すレック。
レック「(身体を起こす)・・・ここは戦場だ。生産性のない無駄な暗号通信は控えてもらいたいものだね。私は経過よりも結果を欲している。地球の科学力など恐れてはいないが暗号を傍受(ぼうじゅ)されるだけでも虫が好かない」
(画面)頭を下げているゲーニッツ。
(画面)ボックスに隠れてはいるが,足を組む様子のレック。
レック「・・・あえて申し出があったからイメルに9番惑星攻略を任せたのだ。あの程度の勢力にいつまで時間をかけるつもりなのかね」
(画面)ゲーニッツ。
ゲーニッツ「・・・あの惑星にはガミラスのワープ通信装置があります。地球人の能力では再現は難しいにしましても操作に関しましては,地球本星と何度か通信を繰り返しているようでありまして・・・」
(画面)目を細めるレック。
レック「・・・”繰り返してるようで”とはどういうことかね。地球人の通信・・・?」
(画面)ゲーニッツ。
ゲーニッツ「・・・ワープ通信は異空間電波傍受施設がありませんと通信内容を把握できませんので・・・」
(画面)ため息をつくレック。
レック「・・・そうじゃない。地球軍の行動になぜそこまで過敏(かびん)になる必要があるのかねと言っているのだ。私たちはウーム連邦を相手にしているわけじゃないんだよ,ゲーニッツ」
(画面)恐縮しているゲーニッツ。
(画面)再び頬杖をつくレック。
レック「全く。応用力のない四角四面の堅物には困ったものだね。相手が変われば戦い方も変わる。長い間同じ戦術で戦ってきて,他の戦い方も思い出せなくなっているようだ。親父殿の悪い影響が身体に染み付いているのかね」
(画面)顔を上げるゲーニッツ。
ゲーニッツ「・・・それと比べましても先ごろの外周惑星に対する大帝閣下の戦い方は画期的で素晴らしかったですな。全くの無傷で地球艦隊を壊滅させることができたのですから。あの調子でしたら一気に地球本土まで進行できます。イメルなんぞに任せる必要などなかったかも知れません」
(画面)鼻で笑うレック。
レック「(嘲笑)ふん。私は戦いに出向いたのではない。・・・私はこの艦(ふね)が地球人にどれほどの影響力があるのかを確認したかっただけだよ。結果的に予想以上だっただけだ。・・・地球軍は,ただの1発の砲弾さえも撃ってこなかった。さすがに驚いたよ。しかしね,ゲーニッツ。この戦術はこの艦の存在が相手への接触寸前まで知られないことで絶大な効果を発揮するものだ。繰り返せるようなものじゃない」
(画面)ゲーニッツ。
(画面)微笑するレックのアップ。
レック「ふふ。地球はガミラスからの長い戦乱で疲弊(ひへい)しきっている。おそらく,この艦が最後の英雄だったのだ。それがはっきり分かっただけでも収穫だったね。1個惑星国家としては少し犠牲が重なりすぎていたようだ。今の地球軍は単なる烏合の衆(うごうのしゅう)に過ぎない。もはや地球には英雄というものは存在していないようだ」

(画面)宇宙空間に浮かぶ宇宙戦艦ヤマト。
(効果音)機動音。
(BGM消える)

(画面)宇宙空間を航行している宇宙戦艦アンドロメダと第10管区日本艦隊。
(効果音)複数のエンジン噴射。

(画面)アンドロメダブリッジ内。艦長席に座っている島 大介。
(効果音)ブリッジ内機械音。
島「(正面へ)・・・副官。土星宙域到着予定はどうだ」
(画面)ブリッジ正面の戦闘班リーダーボックスに座っている南部康雄の後ろ姿。
(画面)目を丸くしている島のアップ。・・・表情がほころぶ。
島「(微笑)・・・南部。タイタン艦隊の当艦隊へのコンタクト時間を知りたい」
(画面)立ち上がる南部の後ろ姿。横の藪が驚いたように顔を上げる。焦る表情で振り返る南部。
南部「・・・し失礼しました・・・!」
(画面)艦長席の島。
島「(笑顔)名前で呼んだほうがいいかな?」
(画面)思わず手をかざす南部。
南部「・・・いえ。大丈夫で,です。(視線を横へ)・・・や藪。土星宙域到着予定は・・・?」
(画面)振り仰ぐ藪。
藪「96分後です。副官。(にこり)」
(画面)振り向く相原。
相原「(笑顔)タイタン艦隊からの通信によりますと42分後に当艦隊と接触する予定です。副官」
(画面)苦笑する南部。
(画面)笑いをかみ殺している太田。
(画面)けらけら笑っている沙織。
(画面)ため息をつく穴井教授。
穴井「とほほじゃなあ。南部。・・・戦闘班リーダーが補佐官になるのは今や地球防衛軍の伝統じゃぞ。問われる前に事前に報告する義務を身につける癖をつけんといかんなあ」
(画面)ブリッジ内を移動するアナライザー。
(効果音)移動機械音。
アナライザー「クセ ヲ ツケル クセ ヲ ツケン ト イケマセン フクカン サン」
(画面)苦みばしる穴井教授。
穴井「(への字)・・・お前が足元すくうな。ボケナス。お前はその悪い手癖(てぐせ)を直せ」
(画面)ブリッジ内全容。どっと笑い声がおこる。

(画面)笑顔の島。
島「・・・艦内の乗組員の食事の交代も終わるころだ。みんな今のうちに食事に行っておいてくれ」
(画面)立ち上がる穴井教授。
穴井「(どっこいしょ)やれやれ。どうもここんところ,不規則になっていかんのじゃ。食事に気を使ってくれる上官はありがたいわい」
(画面)アナライザー。
アナライザー「ソレジャ ボク モ モリ サン ヲ サソッテ コヨー。(動きだす)」
(画面)アナライザーの背中のコードをつかむ穴井教授。
穴井「おまえは飯は食わんじゃろうが」
アナライザー「サケ ハ ノメマス ド」
穴井「おまえは,ブリッジにいるよりも医務室にいるほうが長いんじゃからここで留守番しとけ」
アナライザー「ソンナ コト ナイヨ。トーチャン。イムシツ ニ イナイ ホー ガ ぶりっじ ニ イル ジカン ヨリモ ミジカイ ンダッテ」
穴井「(引っ張る)・・・嘘つけい! ・・・(あごに手)あ。・・・本当じゃわい」
アナライザー「(画面から退場)」

(画面)艦内レストランホール。セルフサービスで並んでいる乗組員たちの様子。
(効果音)ざわつき。
(画面)食事のトレイを両手で持っている沙織。・・・きょろきょろしている。
(画面)カウンターでトレイに食器を乗せている島の斜め後ろ姿。
(画面)微笑む沙織。
(画面)食事のトレイを両手で持っている島。・・・そこへトレイを持っている沙織が横へ並びかける。
沙織「(笑顔)提督。いっしょに,ごはん食べましょ」
(画面)笑顔の島。手前に沙織の後頭部。
島「・・・悪いね。実は先客がいるんだ。今度はぜひご一緒させてもらうよ。(退場)」
(画面)あごを梅干にする沙織。横切る綾乃に気づく。
沙織「(早足)・・・森さん・・・!」
(画面)綾乃の後ろ姿。それに追いつく沙織。沙織の方を見る綾乃。
(画面)画面左端に綾乃の斜め横顔のアップ。画面中央に沙織が視線を綾乃に向けている。
沙織「・・・ねえ,ねえ。提督って彼女いるのかしら」
(画面)綾乃が左。沙織が右のツーショット。
沙織「・・・提督って,もてそうだもの。でも,もてる男って意外と決まった彼女っていないのよねえ」
綾乃「(黙っている)」
沙織「(顔を向ける)森さん。何か知ってる?」
(画面)顔を向けない綾乃。
綾乃「・・・提督には心の中で永遠に想い続けている女性がいるんです」
(画面)口を丸くする沙織。
沙織「やっぱり,いるんだ。そっか。まさか片想いじゃないわよね。どんな人なの?」
(画面)綾乃。
綾乃「・・・もう亡くなられているわ。去年」
(画面)目も丸くする沙織。
沙織「・・・え? ・・・うそでしょ。・・・え? 何? じゃあ,提督って,消滅している女を想い続けているってこと? ・・・信じられない。地球の男ってみんなそういうものなの?」
(画面)けげんな表情で顔を向ける綾乃。
綾乃「・・・おかしな言い方をするのね」
(画面)トレイを持っている沙織の右半身。
沙織「・・・わあ。それは大変だわあ。(早足で退場)」
綾乃「・・・(画面に取り残されて首を傾げる)」

(画面)レストランホールの一角のテーブル席に向き合って座っている島と藪。
(効果音)ざわつき。
(画面)味噌汁を美味そうに飲む島。
島「(息をつく)・・・宇宙艦内料理も進歩したもんだな。(顔を上げて笑み)ヤマトのころはひどかったんだ。ヤマト菜園があったけど,やっぱり貧弱でね。他の惑星へ寄り道して野菜を調達したりとかしてな。でもそのころの地球だってひどかったもんな」
(画面)肉片を口へ運ぶ藪。
藪「はい。母と僕とで市場へ食料を買いに行くにも戦争でした。宇宙戦士訓練学校へ入学したのも戦士になりたかったんじゃなくて,安定した食料供給があったからで・・・。それでもふたりで懸命に生きてました。ヤマトは必ず帰ってくると信じてましたから」
(画面)見つめる島。
島「(箸を置く)・・・ヤマトじゃなくて,兄さんを待っていたんだろう?」
(画面)黙っている藪。
(画面)ふっと下を向く島。
島「・・・私には弟がいるんだ。この9月に訓練学校への入学が決まっていてね。入学式に行く約束をしたんだけどね。あいつは私を待つんだろうな」
(画面)箸を置く藪。
藪「・・・行かないんですか?」
(画面)苦笑する島。
島「あいつは多分,うすうす感づいているんじゃないかな。・・・男の兄弟ってものはいつでもお互いを信じて待つ関係じゃないかって,最近思うようになってきたんだよ。たとえ結果的にそうならなかったとしてもね」
(画面)うつむく藪。
藪「・・・兄さんは帰って来なかった。裏切り者の汚名だけがヤマトと一緒についてきただけでした」
(画面)優しく見つめる島。
(BGM)M−12
島「あの古代も兄さんを待ち続けていた。そして帰って来なかった。日本艦隊司令官の沖田さんを,古代は身分も踏まえず責めまくっていたよ。”なぜ兄さんを連れて帰ってくれなかったんですか。”とね」
(画面)うつむいたままの藪。
(画面)微笑する島。
島「・・・藪。確かに君の兄さんは結果的に間違った選択をしたのかも知れない。結果的にだよ。しかし,もしかしたら君の兄さんが正しい判断をしたという結果もありえたかも知れない」
(画面)驚いた表情で顔を上げる藪。
藪「・・・! 駄目ですよ。提督。そのような事をおっしゃっては。地球を救った当事者がそんな事を言ったら周りの人たちがどう思うか・・・!」
(画面)片目をつむる島。
島「もちろん。ここだけの話さ。君にだけ話してることだ。・・・君の兄さんは,君の兄さんなりに地球人の将来のことを考えていたんだ。けして自分だけの保身を考えたわけじゃなかった。それだけは頭に入れておいてくれ。君の兄さんのことで君とお母さんが辛い思いをしたというのも心が痛む。だから許してくれとは言わないから,せめて憎むのだけはやめてもらいたいな」
(画面)見つめる藪。
藪「・・・提督。どうしてそんなに言ってくださるんですか・・・?」
(画面)再び微笑する島。
島「男の兄弟というものは,いいものだからさ。一番身近なライバルだからだ。自分を成長させる一番いい条件だと私は信じている。だから藪には前向きに兄さんを越えてもらいたいんだ」
(画面)黙っている藪。
(BGM消える)

(画面)アステロイドベルト宙域に停泊しているガトランティス第156遊動機動艦隊。
(効果音)宇宙艦の複数の機動音。

(画面)個室のデスクに腰かけているキーク。
(画面)個室のデスクに腰かけているキーク。・・・おもむろに自分の襟元からネックレスを引き出す。
(画面)キークの右手のひらに乗っているネックレスのロケット部分。
(画面)キークのアップ。
(画面)キークの右手のひらに乗っているネックレスのロケット部分。・・・ふたが開いて,その中には一人の軍服のガトランティス戦士の画像が映し出されている。
(画面)キークのアップ。
キーク「・・・もうすぐ作戦が開始されるよ。この作戦が成功したら,僕の階級も上がる。そうしたら特別許可をもらって,宇宙の果てまで探しに行ってでも必ずデスラーを見つけ出して仇(かたき)をうつからね。待っててよ。ミル兄さん・・・」
(BGM)M−10
(画面)キークの右手のひらに乗っているネックレスのロケット部分の中の軍服のガトランティス戦士の画像。
(画面)鋭い目を向くキークのアップ。
(BGM消える)

(画面)宇宙空間に停泊している冥王星艦隊。数は32隻。
(効果音)艦隊機動音。

(画面)停泊している宇宙戦艦。
(字幕)冥王星艦隊旗艦 メッロ(画面下部横文字)
(画面)宇宙戦艦メッロ艦内。エレベーターに乗っているソマリア・ギルの右半身。硬い表情の横顔。
(画面)艦内ブリッジ。エレベーターの閉まっているドアの描写。・・・ドアがスライドしてソマリア・ギルが手前へ歩いて来る。
(効果音)ドアの開閉音。
(画面)正面パネルスクリーンを見上げている士官たちの後ろ姿。振り返るベルナルドはじめ,艦隊関係者たち。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(画面)直立するソマリア・ギルのアップ。
(画面)身体の向きを視線に合わせるベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・遅かったですね。事態が切迫しているのです。迅速に動いてもらわなければ困ります。ソマリア隊長」
(画面)ソマリア・ギル。
ギル「(英語)・・・身体の具合が悪かったんだ」
(画面)まゆを上げるベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・アメリカ人は身体が弱いのですね。(背中を向ける)・・・こちらへ来てください」

(画面)歩き出すソマリア・ギルのアップ。画面から退場。

(画面)見上げている艦隊関係者たちを正面から。列に加わるソマリア・ギルも見上げる。視線を合わせないベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)正体不明の電波が頻繁(ひんぱん)にアステロイドベルト宙域から外宇宙へ発信されています。往復反応がないので電波交信かどうかは分かりませんが,自然界では明らかにイレギュラーです。(ソマリア・ギルへ)・・・あの宙域は我が方からは死角になっているため,電波の発信源は特定できません。これをどう判断しますか」
(画面)見上げているソマリア・ギル。
ギル「(英語)簡単な理屈だ。あの宙域には,間違いなく艦隊が潜んでいる」
(画面)疑心暗鬼(ぎしんあんき)のベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・艦隊? ソマリア隊長。そう断言できる理由をぜひお聞かせ願いたい」
(画面)右へ顔を向けるソマリア・ギル。
ギル「(英語)・・・ギルと呼んでくれ。ファーストネームはきらいなんだ」
(画面)左へ顔を向けているベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・今回の武装勢力が,ガトランティスだという貴官の根拠もうかがいたいものです。ソマリア隊長」
(画面)仏頂面で正面を向くソマリア・ギル。
ギル「(英語)・・・ゼナでは奇襲だった。今回は地球側が警戒していることは分かっているからやつらも奇襲はかけにくい。あの電波が仮に通信だとしたら,俺たちの動きはとっくにやつらも承知しているはずだ。それにもかかわらず何度も,おうかがいの通信を送っているやつならば,前回のように1隻で奇襲をかけるような奇策をうつような真似はしないさ。ゼナを襲ったやつじゃない。数を頼みとする指揮官だ」
(画面)正面を向くベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・1隻・・・ね。実はゼナを襲った未確認武装勢力が宇宙艦だったという貴官の報告も信じがたいのです。地球司令部にはその部分だけは未確認情報として報告はしていません。・・・ただ司令部にはその部分を気にしていた人もいましたがね」
(画面)右へ顔を向けるソマリア・ギル。
ギル「(英語)ほう。それは誰だ?」
(画面)正面を向いているベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)地球連邦連合艦隊総司令官 シマ提督です。こちらへ向かっている日本艦隊の指揮官ですよ」
(画面)正面を向いて笑みを浮かべるソマリア・ギル。
ギル「(英語)・・・面白い。司令官直々(じきじき)のお出ましか。それならその司令官殿に訊いてみたらいい。司令官殿も今回の敵は間違いなくガトランティスだと言うぜ。多分理由は俺と同じはずだ。バーナード司令」
(画面)左へ顔を向けるベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・ベルナルドです」

(画面)宇宙空間。

(画面)宇宙空間。・・・画面中央から突然手前に向かって突進してくる金属の物体。突き抜けるように退場。
(効果音)噴射音。

(画面)宇宙空間を飛行する流線型の有翼艇。
(効果音)飛行音。
(字幕)地球防衛軍無人偵察艇(画面下部横文字)
(画面)眼前に広がるアステロイドベルト。画面の下側からエンジン噴射する無人偵察艇が前方へ向かっていき,小さくなっていく。
(効果音)ドップラー効果。

(画面)宇宙空間に停泊している冥王星艦隊。32隻。
(効果音)複数の機動音。

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。艦長席のベルナルド。
(効果音)ブリッジ機械音。
(画面)操作パネルに向かっているレーダー士の男性。パネルの光が顔を照らしている。

(画面)無人偵察艇の画像。アステロイドの中へ突入していく様子。・・・大小さまざまな小惑星を巧みにかわしていく。・・・しばらくその映像が続く。変化の中にも何の変哲もない単調な映像の繰り返し。電波状態があまりよくないのか,時折映像が途切れる。

(画面)宇宙戦艦メッロのブリッジ内。表情をくもらせるレーダー士。
(効果音)ブリッジ機械音。

(画面)アステロイドベルト宙域の爆発の描写。
(効果音)爆発音。

(画面)宇宙空間に浮かぶ青い地球。

(画面)雨の中の日本自治区地球防衛司令部の建物の外観。
(効果音)雨音。

(画面)司令部内司令センター。後方からのバードビュー。
(効果音)司令部内機械音。慌(あわただ)しい足音。話し声。
(スタッフの声)・・・外周部隊撤退完了。連合艦隊への配属準備中です。
(スタッフの声)・・・地上軍対空設備60%完了。対空ミサイル点検経過報告待ちです。
(スタッフの声)・・・民間人の地下都市避難継続中。30%完了しています。・・・避難拒否住民たちのデモ行進が・・・。
(画面)司令ボックスの藤堂司令長官。
藤堂「第10管区艦隊の冥王星到着予定の確認はどうだ?」
(画面)振り返るヘッドマイクのスタッフの女性。
スタッフ「・・・司令。冥王星艦隊より,ワープ通信による映像がきています。いかがいたしますか?」
(画面)視線を下げる藤堂司令長官。
藤堂「ライブかね?」
(画面)振り返っているスタッフ。
スタッフ「・・・いえ。録画映像です。通信内容も電信です。・・・読みます。(下を向く)・・・”太陽系外周アステロイドベルトへ探索に入った無人偵察艇の映像。・・・アステロイドベルト内で物理的攻撃により破壊さる。最後の部分を解析。解析結果を検分されたし。”・・・以上です」

(画面)視線を上げる藤堂司令長官。・・・隣へ山南司令が並ぶ。
藤堂「パネルへ全画面表示せよ」

(画面)電子ラインが走り,映像までのカウントダウン。・・・小惑星帯の中を進む映像が映し出される。
(効果音)電子音。

(画面)座っている藤堂司令長官。隣で立っている山南司令官。

(画面)スクリーンパネルへクローズアップ。画面へ迫って来る小惑星群・・・。

(画面)藤堂司令長官と山南司令官。

(画面)見上げている司令部スタッフたち。

(画面)スクリーンの映像。・・・画面へ迫って来る小惑星群。・・・突然,光が放たれて映像が中断する。画面ブランク。

(画面)藤堂司令長官と山南司令官を遠めから。手前には女性スタッフのアップ。
スタッフ「・・・超微速画像へ切り替わります。(操作)」

(画面)スクリーンの映像。・・・画面ブランク。・・・映像が逆回転。再び光が放たれて,先ほど中断する映像の直前でストップモーション。画像が微調整コマ送りに変化。

(画面)藤堂司令長官のアップ。

(画面)スクリーンの映像。コマ送り。・・・動かない小惑星群。

(画面)藤堂司令長官のアップ。・・・目を細める。

(画面)スクリーンの映像。コマ送り。・・・動かない小惑星群。・・・突然右下より白い物体が現れる。相当な速度で移動しているらしく,次のコマでは画面全体が白い物体で占められる。・・・次のコマでは左上へ白い物体の一部が残されているが,白い尾のような突起物が白い物体の後部へ連なっている様子。・・・次の瞬間,光を放って映像が終了。

(画面)振り向く女性スタッフ。
スタッフ「映像は以上です」

(画面)まゆをしかめる山南司令。
山南「・・・あれは何だ?」

(画面)あごに触っている藤堂司令長官。
藤堂「・・・」

(画面)まゆをしかめる山南司令。
山南「・・・何か・・・白いものが」

(画面)あごに触っている藤堂司令長官。
藤堂「・・・カブトガニ・・・」

(画面)左下へ視線を向ける山南司令。

(画面)立ち上がる藤堂司令長官。
藤堂「(スタッフへ)・・・昨年の戦闘の映像資料を検索してくれたまえ」

(画面)スクリーンの映像。パネルに映し出される戦艦。リバーシブル空母。全身ミサイルだらけのミサイル艦。潜宙艦。パラノイア戦闘機。

(画面)立っている藤堂司令長官。・・・クローズアップ。

(画面)スクリーンの映像。・・・そしてパネルに映し出される白い機体のデスバデーター型戦闘機・・・。その形状はまさしくカブトガニ・・・。

(BGM)M−8
(画面)藤堂司令長官のアップ。
藤堂「・・・間違いないな・・・」

(画面)冷や汗を流している山南司令。
山南「・・・ガ,ガト・・・ランティス・・・か」

(画面)宇宙空間に停泊している冥王星艦隊。32隻。
(効果音)複数の機動音。

(画面)宇宙戦艦メッロのブリッジ内。操作パネルに向かっているレーダー士。
(効果音)ブリッジ内機械音。
レーダー士「・・・! (目を見開く)」
(画面)操作パネル。レーダースクリーンに突然現れる複数の移動する光・・・。
(効果音)複数の電子発信音。

(画面)地球司令部司令センター内。藤堂司令長官と山南司令のツーショット。・・・山南司令は血相を変えてその場から離れる。
藤堂「・・・島君の予想通りだったな。(スタッフへ)・・・冥王星艦隊へワープ通信。電信でいい。”その宙域から直ちに撤退。後退して第10管区艦隊を待て。アステロイドベルトの中にいる先方に話し合いの余地はない。・・・相手はガトランティスだ”」

(画面)宇宙空間に停泊している冥王星艦隊。32隻。
(効果音)複数の機動音。

(画面)宇宙戦艦メッロのブリッジ内。振り返るレーダー士。
(効果音)ブリッジ内機械音。
レーダー士「(ポルトガル語)・・・司令! 艦隊反応! アステロイドベルト宙域より! 数,60!」

(画面)にわかに緊迫したブリッジ内の空気。スタッフが顔面蒼白で振り返っている。

(画面)さすがに表情をひきつらせる艦長席のベルナルド。
ベルナルド「・・・! (ポルトガル語)・・・! 艦隊・・・だと? (指差す)・・・全艦進路反転180度! 全速後退!」
(画面)作業へ戻るスタッフたち。
(画面)操作管を右へ引く操縦士の正面。
操縦士「(ポルトガル語)・・・りょ,了解・・・! 進路反転180度!」

(画面)艦体を回転させて始めている宇宙戦艦メッロはじめ,冥王星艦隊各艦。
(効果音)複数の回転噴射。質量音。

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。艦長席のベルナルド。
(通信士の声)・・・(ポルトガル語)・・・提督!
ベルナルド「(視線を向ける)・・・!」
(画面)振り返る通信士。
通信士「(ポルトガル語)・・・提督! 地球司令部から通信文が入っています!」
(画面)ベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・地球司令部と日本艦隊へ返信!」
(画面)振り返っている通信士。
(画面)ベルナルド。・・・クローズアップ。
ベルナルド「・・・(日本語)・・・”ワレ テキ カンタイ ト ソウグウ セリ!”」

(BGM)M−46
(画面)宇宙空間で反転している冥王星艦隊。32隻。
(効果音)複数のエンジン音。

(画面)宇宙戦艦メッロ内スタンバイルーム。それぞれの体勢でバランスをとっているアメリカ空間騎兵隊隊員たち。
(効果音)きしむ艦内。
(アナウンス)(ポルトガル語)・・・総員対ショック姿勢! 総員対ショック姿勢! 当艦隊はガトランティス艦隊と遭遇した! これは訓練ではない! 繰り返す! これは訓練ではない! 当艦は現在全速反転中である! 総員,不慮の事態に備えて戦闘態勢を保持せよ!
(画面)手すりにつかまりながら遠心力に顔をしかめるソマリア・ギル。
ギル「(英語)(舌打ち)・・・やることが遅すぎるんだよ。全く。反転ぐらい,前もってやっとけって!」

(画面)画面へ向かってくるガトランティス第156遊動機動艦隊。60隻。
(BGM)M−46
(効果音)複数のエンジン噴射音。

(画面)宇宙戦艦イメルディアの全容。
(効果音)エンジン音。

(画面)イメルディアブリッジ内。前へ進み出るキーク。
(効果音)ブリッジ内機械音。
キーク「(直視)・・・提督。地球艦隊は全速で後退を開始しています」
(画面)艦長席で優越の表情のイメル。
イメル「・・・こしゃくな地球人めが。やはり偵察目的だったか。・・・キーク。妨害電波,レベルA! (右腕を前へ)・・・全艦追跡! 1隻たりとも逃すな!」

(画面)一気に加速する第156遊動機動艦隊。60隻。
(効果音)エンジン噴射。

(画面)反転を終了させて加速を始める冥王星艦隊。32隻。
(効果音)エンジン噴射。

(画面)宇宙戦艦メッロ内スタンバイルーム。右腕を曲げて顔と逆方向を指差すソマリア・ギル。
ギル「(英語)全員,船外コスチュームに着替えろ!」
(画面)隊員のひとりが体勢を整える。
隊員「(英語)・・・隊長。艦隊は全速加速中です。外へ出るのは無理です」
(画面)視線を合わせるソマリア・ギル。
ギル「(英語)このタイミングじゃ,やつらの方が速い! 追いつかれるのは時間の問題だ! 俺たちは空間騎兵隊だ。こんな鉄の棺おけでお陀仏(おだぶつ)なんぞできるか! 俺たちの死に場所はここじゃない!」

(BGM)M−46
(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。背中を向けているレーダー士。
レーダー士「(ポルトガル語)・・・敵艦隊との相対速度に格差があります! 23分後には追いつかれます!」
(画面)艦長席のベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)全艦,艦載機発進待機!」

(画面)宇宙戦艦イメルディアブリッジ内。艦長席のイメル。
イメル「・・・ははは。もっともっと慌てろ,地球人。(顔を向ける)・・・キーク! 前衛のミサイル艦からミサイル攻撃をしかけろ! 地球艦隊の隊列を崩しにかかるぞ!」
(画面)右手を上げるキーク。
キーク「大型ミサイルを第2波として発射させます。地球艦隊の戦術に揺さぶりをかけます」
(画面)イメル。
イメル「許す!」

(画面)第156遊動機動艦隊前衛。ミサイル艦3隻から,たて続けに発射されるミサイル。ミサイル艦艦首ミサイルが最後に発射。
(効果音)発射音。複数。
(画面)遠方から画面に向かって接近してくるミサイル群。再接近時にアングルが右へ回転。ミサイル群の接近が正面から左へ変化。通過していくミサイル群。さらにアングルが回転。遠ざかっていくミサイル群。・・・その先には冥王星艦隊最後尾の宇宙艦のエンジン噴射の光。
(効果音)ミサイル噴射音。ドップラー効果。

(BGM)M−46
(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。蒼白のレーダー士。
レーダー士「(ポルトガル語)・・・ミサイル接近! 数は・・・30・・・いや40! ・・・いや・・・」
(画面)後ろを振り向くベルナルドの横顔。

(画面)画面下部手前から遠ざかっていくミサイル群。冥王星艦隊最後尾へ迫る。
(効果音)ミサイル噴射音。

(画面)冥王星艦隊最後尾の宇宙駆逐艦。
(効果音)エンジン音。

(画面)駆逐艦ブリッジ内。駆逐艦艦長。
駆逐艦艦長「(ポルトガル語)・・・迎撃ミサイル発射! 弾幕を張れ! 後部主砲,緊急照準!」

(画面)接近してくるガトランティスミサイル群。
(効果音)複数の噴射音。

(画面)冥王星艦隊最後尾。次々と各艦から発射される迎撃ミサイル。
(効果音)複数の発射音。

(画面)冥王星艦隊宇宙駆逐艦後部の2門主砲の描写。砲台を回転する主砲。上下する2門の砲口。回転角度と上下角度がほぼ同時に定まる。
(効果音)しり上がりに重機械音。

(画面)遠方から接近してくるガトランティスミサイル。・・・そして画面手前から遠ざかっていく冥王星艦隊のミサイル。
(効果音)遠ざかる側と近づく側の複数の噴射音。

(画面)主砲の照準を定めていく冥王星艦隊最後尾の宇宙艦各艦。
(効果音)しり上がりに重機械音。連続。

(画面)駆逐艦ブリッジ内。駆逐艦艦長。
駆逐艦艦長「(ポルトガル語)・・・発射!」

(画面)向かってくるガトランティスミサイルに着弾する迎撃ミサイル。爆光。・・・次々と直撃。爆光。さらに爆光。破片,燃料,ガスの散乱により画面視界が一時不明瞭となる。さらに爆光。さらに着弾。爆光。・・・迎撃しきれなかったガトランティスミサイルが弾幕を抜けて多数,画面を通過していく。
(効果音)爆発衝撃音多数。複数の噴射音。ドップラー効果。

(画面)冥王星艦隊駆逐艦の主砲。・・・タキオンの光を放ち,その砲口からショックカノンが発射される。
(効果音)発射音。弾道音。

(画面)次々と主砲を放つ冥王星艦隊。長く伸びる砲弾の軌跡が多数,宇宙空間をつんざく。
(効果音)複数の発射音。ランダム。弾道音。

(画面)迫ってくるミサイル群。手前のミサイルをかすめるショックカノン。・・・遠方のミサイルに着弾。爆発。
(効果音)弾道音。爆発音。

(画面)次々と主砲を放つ冥王星艦隊。
(効果音)複数の発射音。ランダム。弾道音。

(画面)ショックカノンの砲弾に迎撃されていくミサイル群。・・・しかしそれでも迎撃からくぐり抜けるミサイル群がさらに接近。
(効果音)弾道音。爆発衝撃音多数。複数の噴射音。

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。レーダー表示スクリーン。・・・時折,砂嵐の不鮮明。一瞬おさまって点灯する光が6つ。
(画面)表情をくもらせるレーダー士のアップ。
(画面)振り返るレーダー士。
レーダー士「(ポルトガル語)ミサイル第2波接近! 大型です!」
(BGM)M−46
(画面)歯をくいしばるベルナルド。

(画面)正回転しながら画面を通過していくミサイル艦艦首ミサイル。計6弾。
(効果音)重厚な金属音。噴射音。

(画面)冥王星艦隊最後尾。第1波のミサイル群が追いつく。通過していくミサイル・・・。突然,画面右端の宇宙駆逐艦に直撃。爆光。かたむく宇宙駆逐艦。
(効果音)直撃。爆発音。噴射音。多数。

(画面)宇宙戦艦イメルディアブリッジ内。右手を上げるキーク。
キーク「(右手を下げる)・・・ミサイル,地球艦隊へ着弾しました。大型ミサイル着弾まであと0.2ガトランティスアワーです」
(画面)ほくそ笑むイメル。
イメル「よし。地球艦隊までは,あとどのくらいだ」
(画面)キーク。
キーク「あと0.4ガトランティスアワーほどで追いつきます」
(画面)顔を上げるイメル。
イメル「・・・よし。パラノイア型,デスバデーター型を発進させよ。一気に血祭りにあげてやるわ」

(画面)リバーシブル空母から次々と発進していくデスバデーター戦闘機隊。前部の甲板滑走路全体が回転。裏側の滑走路が出現。そこからも発進していくデスバデーター戦闘機隊。上下感覚のない宇宙空間でのお互いの位置関係を把握(はあく)するための工夫である。
(効果音)戦闘機発進。

(画面)冥王星艦隊へふりそそぐミサイル群。直撃を受ける駆逐艦。空母。戦艦。被弾してかたむき,爆光を放って火を噴くも,まだどの宇宙艦も沈没は免れている。しかしかなり隊列は乱れてきている様子。
(効果音)複数の爆発音。

(画面)宇宙戦艦メッロの左舷へ着弾するミサイル。爆発。わずかにかたむく宇宙戦艦メッロ。
(効果音)爆発音。きしむ金属音。

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。ぶれる画面。顔を上げるスタッフ。
(効果音)衝撃音。反響。
スタッフ「(ポルトガル語)・・・左舷被弾! 艦内で火災が発生しました!」
(画面)艦長席でふんばるベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)消火班を向かわせ! 全艦,艦載機発進! (通信士へ)・・・日本艦隊とはまだ連絡がとれないか!」
(画面)振り返る通信士。
通信士「(ポルトガル語)・・・先ほどより敵艦隊からと思われる強力な妨害電波が発生しています! ワープ通信施設への電波も妨害されています! 基地から離れすぎてしまったようです!」
(画面)歯をくいしばり,うつむくベルナルド。

(画面)冥王星艦隊へふりそそいでいるミサイル群。・・・1隻が大破。航行速度が落ち,艦隊から脱落していく。
(効果音)複数の爆発音。エンジン不調音。

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。うつむいているベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・(つぶやく)・・・もはやこれ以上は逃げられないか・・・。(顔を上げる)・・・全艦,減速!」
(画面)振り返っているブリッジスタッフ。フロントガラスの外では直撃され爆光を放っている宇宙艦の様子。
(画面)一筋の汗のベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・全艦進路反転90度! 全主砲を敵艦隊方面へ照準!」

(画面)正回転しながら画面へ向かってくるミサイル艦艦首ミサイル。計6弾。
(効果音)重厚な金属音。噴射音。

(画面)減速して隊列を整える冥王星艦隊。32隻。・・・次々と艦載機隊が発進している様子。

(画面)さらに画面へ向かってくるガトランティス第156遊動機動艦隊。60隻。デスバデーター隊とパラノイア隊が展開している。
(効果音)機動音。複合。

(画面)宇宙戦艦イメルディアブリッジ内。高らかに笑い声をあげるイメル。
イメル「我らから逃げ切れないと開き直ったか。地球人ども! (顔を右へ)キーク! 大型ミサイル着弾と同時にデスバデーター隊を散開させて地球艦隊へ攻撃をしかけろ! あのような貧弱な地球戦闘機隊など怖くないわ!」
(画面)前へ進み出るキーク。
キーク「・・・提督。艦隊戦に備えて妨害電波を切ります。我らのレーダーにも影響がでてきています」
(画面)にらみつけるイメル。
イメル「まだだ。キーク。地球人に援軍を通信要請させる暇(いとま)を与えてしまうわ。ある程度やつらにダメージを与えるまで待て」
(画面)キーク。
キーク「味方戦闘機隊の視界確保にも影響があります。パイロットたちに余計な危険を伴わせてしまいます。提督」
(画面)立ち上がるイメル。
イメル「地球ごときに危険だと!? あのような地球艦隊,目をつむっていても勝てるわ! とにかく指示するまで妨害電波は切るな! わかったな。キーク!」
(画面)キーク。
キーク「(頭を下げる)・・・わかりました」
(画面)画面左側の遠くに艦長席のイメル。画面右側手前にキークのアップ。・・・ピントがキークに合う。
キーク「(小声)・・・臆病者・・・(苦々しく)」

(BGM)M−46
(画面)全砲塔を合わせて側面をみせて隊列を整える冥王星艦隊。・・・この隊形は全ての主砲が使用できる代わりに,相手側へ向ける表面積が増えるので被弾の確率が格段に上がってしまう。正に防御よりも攻撃を重視した隊形である。

(画面)正回転しながら画面へ向かってくるミサイル艦艦首ミサイル。計6弾。
(効果音)重厚な金属音。噴射音。

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。艦長席のベルナルド。
(通信士の声)(ポルトガル語)・・・妨害電波によりレーダー不鮮明! 大型ミサイル接近! 数は6! 着弾までおよそ40秒!
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・全砲塔,発っ射ぁ!」

(画面)一斉にショックカノン砲を発射する冥王星艦隊。200を超える砲弾の弾道が宇宙空間を照らし出す。
(効果音)発射音。弾道音。多数。連続。

(画面)正回転しながら画面へ向かってくるミサイル艦艦首ミサイル。計6弾。・・・次々と冥王星艦隊の砲弾が弾道を残して,ミサイル群をかすめ飛んでいく。
(効果音)重厚な金属音。噴射音。弾道音。多数。

(画面)ショックカノン砲を発射し続ける冥王星艦隊。
(BGM)M−46
(効果音)複数の発射音。弾道音。連続。複合。

(画面)大型ミサイル1基へショックカノンが3弾直撃。穴が開き,そこから光が噴出す。・・・爆発。・・・画面を通過していく他のミサイル群。・・・さらに画面向こう側で爆発。
(効果音)直撃。爆発音。

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。艦長席のベルナルド。
(スタッフの声)(ポルトガル語)・・・ミサイル2基撃墜! 残り4基!

(画面)宇宙戦艦イメルディアブリッジ内。見上げているキーク。
(レーダー士の声)・・・地球艦隊は全力射撃を開始しています!
キーク「あわてるな。まだ距離はある」

(画面)ガトランティス第156遊動機動艦隊。・・・はるか遠方にショックカノンの弾道痕。
(効果音)複数のエンジン音。弾道音。

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。艦長席のベルナルド。
(スタッフの声)(ポルトガル語)・・・ミサイル1基撃墜! 残り3基!
ベルナルド「(視線をスタッフへ)(ポルトガル語)・・・波動砲は撃てるか?」
(画面)振り返るスタッフ。
スタッフ「(ポルトガル語)・・・敵艦隊の予想射程距離突入まで120秒! エネルギー充填,間に合いません! 波動砲発射艦護衛艦を選抜してください! 提督!」
(画面)険しい表情のベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・それはできない。仲間を盾(たて)になどできるか・・・!」

(画面)宇宙戦艦イメルディアブリッジ内。顔を向けるイメル。
イメル「・・・地球艦隊は艦首波動砲を撃ってくるか。キーク」
(画面)前に立つキーク。
キーク「あの地球艦隊は,あまりにも今回,戦術の方針を変更させすぎています。いまから当方へ艦首を向けてエネルギーを充填するには我が艦隊のペースがそれを上回っています。しかも今は大型ミサイルの迎撃で,それどころではないでしょう。艦首波動砲の発射はありえません」
(画面)笑みを浮かべるイメル。
イメル「・・・さすがだな。キーク。お前の働きは私の方から大帝閣下に進言してやるぞ」
(画面)頭を下げるキーク。
キーク「ありがとうございます。提督」

(画面)ショックカノン砲を撃ち続けている冥王星艦隊。・・・向かっていく大型ミサイル2基。・・・右側1基が直撃を受け爆発。
(効果音)複数の発射音。弾道音。爆発音。

(画面)左舷を被弾している宇宙戦艦メッロ。
(BGM)M−46
(効果音)機動音。

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。爆光が顔を照らし,眩しそうに目を細めるベルナルド。
(スタッフの声)(ポルトガル語)(緊迫)・・・大型ミサイル,残り1基! 提督! 迎撃が間に合いません!
ベルナルド「(顔を向ける)・・・! (ポルトガル語)・・・何!」
(BGM消える)

(画面)画面へ迫ってくる大型ミサイル。
(効果音)噴射音。

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。・・・瞳を震えさせて顔を上げているベルナルド。

(画面)画面へさらに迫ってくる大型ミサイル。艦載機隊が懸命な攻撃をしかけている。被弾し小さな穴が多数開いているミサイル。・・・しかし爆発までは至っていない。
(効果音)噴射音。

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。冷や汗が吹きだしているベルナルドのアップ。
(スタッフの声)(ポルトガル語)・・・敵艦隊接近! 射程距離まで60秒!

(画面)迫ってくるガトランティス第156遊動機動艦隊。
(効果音)複数のエンジン音。

(画面)宇宙戦艦イメルディアブリッジ内。優越の笑みを浮かべているイメル。
イメル「ははは・・・。全艦,砲撃準備! デスバデーター,パラノイア,隊列を整えよ!」

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。冷や汗が吹きだしているベルナルドのアップ。
(スタッフの声)(ポルトガル語)・・・敵艦隊射程距離まで40秒!

(画面)画面へさらに迫ってくる大型ミサイル。艦載機隊が懸命な攻撃をしかけている。・・・ふと,その艦載機隊に混じって黄色い影の集団が光の塵(ちり)の軌跡(きせき)を描いて数十本のラインを形成しながら大型ミサイルの周辺を散開し始める。
(効果音)噴射音。そして新たな噴射音。複数。

(画面)宇宙戦艦イメルディアブリッジ内。・・・はっと顔を上げるキーク。

(画面)画面へさらに迫ってくる大型ミサイル。艦載機隊が懸命な攻撃をしかけている。・・・先ごろ出現した数十本の黄色いラインが統率のとれた軌道を描いて大型ミサイルへ攻撃をしかける。無駄のない手馴れた攻撃。ミサイルの弾頭へ効率的な機銃攻撃。そして旋回。・・・周辺の艦載機隊にプレッシャーをかけて大型ミサイルから強制的に遠ざけていく。そして2本の黄色いラインが再び大型ミサイルへ向かっていく。
(効果音)複数の噴射音。

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。目を見開くベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・あ・・・あれは・・・!」

(画面)宇宙戦艦イメルディアブリッジ内。表情が変わるイメル。
(画面)右後方を指差すキーク。
キーク「妨害電波を切れ! 急げ!」
(画面)操作するスタッフ。
(画面)レーダー士が注目している正面のアングル。・・・機器類の光が顔を照らす。
(効果音)電子音。
(画面)砂嵐のレーダー表示。・・・突然,砂嵐が改善されて画面表示がクリアになる。・・・そして・・・。
(画面)顔色が変わるレーダー士。
(画面)レーダー表示。・・・そこには冥王星艦隊の32個の光の点滅。・・・そしてさらにすぐ後方に39個の光の点滅。
(画面)あわてて振り返るレーダー士。
レーダー士「・・・て・・・提督!」
(画面)振り向くイメルとキーク。

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。ベルナルドの表情。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(通信音声)・・・妨害電波が切れたっすよ! 隊長! レーダーも交信もクリアになったっすよ! うれしいなあ!
(通信音声)・・・バカヤロウ! 気ぃ抜くんじゃねえ! 三郎太! ミサイル発射したらすぐに散開しろ!
ベルナルド「(放心)(ポルトガル語)・・・日本語・・・」

(画面)大型ミサイルをかすめる黄色いライン2本。そこから4本の細い軌道が枝分かれしてミサイル弾頭へ向かっていく。・・・そして弾頭に命中。・・・次の瞬間,まばゆい爆光を放ってミサイルが大爆発を放つ。
(効果音)大爆発音。

(画面)宇宙空間へ遠ざかっていく黄色いライン。そして旋回。再び画面手前へ向けて接近してくる。・・・近づくにつれその姿があらわになる。・・・それぞれ斜め後方へ伸びる両翼と,エンジン上部に垂直尾翼1枚。機首部には鋭い瞳のアート。機体はあざやかな黄色と黒のコントラスト・・・。それは正に,ブラックタイガー・クラシックタイプ戦闘機。
(効果音)噴射音。

(画面)フルフェイスメットのゴーグルを上げる桂巧隊長。
桂「・・・ミサイル迎撃はなあ! ミサイルの腹ぁ撃ったってしょうがないんだよ! 頭ぁ狙うんだ。あたまあ!」

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。立ち上がるベルナルド。

(画面)宇宙空間。はるかかなたで,冥王星光を反射する金属性の光。

(画面)ベルナルドのアップ。

(画面)宇宙空間。金属性の反射光。・・・ひとつ。ふたつ。・・・徐々にに光の数が増えてくる。

(画面)ベルナルドのアップ。・・・瞳がふるえている。

(画面)見上げる視線のイメルとキーク。宇宙戦艦イメルディアブリッジのスタッフたち。

(画面)宇宙空間。・・・光り輝く39の光。
(BGM)M−45(序盤)

(画面)ベルナルドのアップ。
ベルナルド「・・・アンドロメダ・・・」

(画面)宇宙空間の光が次第に現実的な物理的の金属反射へ変化。近づいてくる。・・・そして肉眼で確認できるまでに接近。
(BGM)M−45(序盤)
(効果音)近づいてくる機動音。多数。

(画面)頬杖から少し顔を浮かせるレック・アルド・ズォーダー。

(画面)光を反射。・・・それは第10管区日本艦隊38隻を従えて(したがえて)雄大な艦体を輝かせる灰色の宇宙戦艦。さらに接近。さらに接近。・・・減速もなく,おくびも見せずに,まっしぐらにこちらへ向かってくる日本艦隊。
(BGM)M−45(サビ直前)
(効果音)大きくなっていく複数のエンジン音。

(画面)座り込むベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・助かった・・・!」

(画面)画面へ接近してくる宇宙戦艦アンドロメダ。再接近でアングルが固定。アンドロメダ率いる日本艦隊。
(BGM)M−45(サビ部分)
(効果音)複数のエンジン音。

(画面)宇宙戦艦アンドロメダブリッジ内。艦長席の島 大介。クローズアップ。ブリッジ内はオレンジ色の非常照明。
(BGM消える)
(効果音)徐々に高くなっていくエネルギー充填音。
(画面)コントロールボックスを見ている土方機関長。赤い光が顔を照らしている。
土方「・・・波動エンジン,ニュートラルまで15秒・・・。全波動エネルギー,波動砲へ・・・。エネルギー充填120%・・・」
(画面)ドームゲージをみる沙織。視線そのまま。
沙織「・・・敵艦隊,接近。速度変わらず。距離,8万宇宙キロ」
(画面)振り返る太田。
太田「・・・敵艦隊,数60。拡翼隊形」
(画面)操縦管を握っている藪。隣には南部が座っている。
藪「(正面を見たまま)・・・波動エンジン,ニュートラル。慣性航行へ。・・・反作用装置ロックオン。(操縦管を離す)・・艦首照準操作,ガンレバーへ渡します。・・・(南部を見る)・・・あとは任せます,副官」
南部「(せりあがるガンレバーを両手で握る)・・・任せとけ・・・」
(効果音)徐々に高くなっていくエネルギー充填音。

(画面)第156遊動機動艦隊。宇宙戦艦イメルディアの全容。
(効果音)複数のエンジン音。

(画面)宇宙戦艦イメルディアブリッジ内。振り返るレーダー士。
(効果音)ブリッジ内機械音。
レーダー士「新たな艦隊より,エネルギー反応! タキオンです!」
(画面)見上げているキーク。
(画面)冷や汗をかいているイメル。
イメル「・・・あの戦艦は見たことがあるぞ・・・」
(画面)顔を向けるキーク。
(画面)イメルのアップ。
イメル「・・・大帝閣下の示されたブレインスキャン映像で見た。・・・あれは,バルゼーを打ち破った戦艦だ・・・!」
(画面)目を細めるキーク。
キーク「・・・提督・・・?」
(画面)イメル。
イメル「・・・キーク。どうすればいい。やつは艦首波動砲を撃とうとしている」
(画面)背中から振り返るキーク。
(レーダー士の声)・・・敵艦隊まで0.2ガトランティスアワー!

(画面)冥王星艦隊上部をすり抜けるようにしてさらに前進していく日本艦隊。先頭は宇宙戦艦アンドロメダ。画面からゆっくりと退場していく冥王星艦隊。
(効果音)複数のエンジン音。機動音。

(画面)冥王星艦隊駆逐艦ブリッジ内。窓の外をかすめていく日本艦隊をあおいで立ち上がっているブリッジスタッフたち。

(画面)宇宙戦艦アンドロメダブリッジ内。艦長席の島。オレンジ色の非常照明。
(効果音)エネルギー充填音。
(画面)コントロールボックスの土方機関長。
土方「・・・波動砲,エネルギー充填135%」
(画面)ガンレバーを握って座っている南部の左半身。
南部「・・・最終セーフティ・ロック解除・・・!」

(画面)機関室。巨大なシリンダーの斜め正面。各90度に差し込められていたロッドが4本。中心からゆっくりと引き抜かれていく。・・・正面へ近づいていく巨大圧力シリンダー。
(効果音)金属摩擦音。機動音。エネルギー充填音。

(画面)ガンレバーを握っている南部。
南部「ターゲット・スコープ,オープン!」

(画面)四角い透明のスコープが正面機器類パネルより立ち上がり出現。
(効果音)小さな金属音。エネルギー充填音。
(南部の声)・・・電影クロスゲージ・・・明度,20!
(画面)クロスとサークルのゲージ表示がスコープに浮かび上がる・・・そしてガトランティス第156遊動機動艦隊の姿がスコープへ映し出される・・・。
(効果音)エネルギー充填音。

(画面)ガンレバーを握っている南部。隣には藪。
藪「(南部を見る)・・・大丈夫ですか。副官」
南部「(スコープを見ている)・・・黙っててくれ・・・!」

(画面)宇宙戦艦アンドロメダの2門の艦首の描写。無数の光の粒がゆっくりと各砲口の中央奥へ集まっていく。
(効果音)エネルギー充填音。

(画面)ガトランティス第156遊動機動艦隊。
(効果音)複数のエンジン音。

(画面)宇宙戦艦イメルディアブリッジ内。パネルマイクへ顔を近づけるキーク。
(効果音)ブリッジ内機械音。
キーク「・・・全艦退避進路をとれ! あのトンガリ帽子の正面からできるだけ速やかに離脱しろ!」

(画面)宇宙戦艦アンドロメダの2門の艦首の描写。無数の光の粒がゆっくりと各砲口の中央奥へ集まっていく。・・・光がほぼ飽和(ほうわ)状態。
(効果音)エネルギー充填音。

(画面)宇宙戦艦アンドロメダブリッジ内。汗が流れる南部。
(効果音)エネルギー充填音。
南部「・・・目標! 正面ガトランティス艦隊! 総員,対ショック,対閃光防御!」
(画面)椅子に座っているクルーの腰部分の左側描写。腰にベルトをまわす。
(効果音)小さな金属音。
(画面)椅子に座っているクルーの腰部分の正面描写。腰にベルトをまわす。
(効果音)小さな金属音。
(画面)対閃光ゴーグルを装着する土方機関長。
(画面)対閃光ゴーグルを装着する藪。
(画面)対閃光ゴーグルを装着する沙織。
(画面)対閃光ゴーグルを装着する穴井教授。太田。
(画面)対閃光ゴーグルを装着する相原。
(画面)そして軍帽のつばをさけるように対閃光ゴーグルを装着する島。

(画面)大きくそれぞれ退避進路をとりはじめるガトランティス第156遊動機動艦隊各艦。
(効果音)乱れる複数のエンジン音。

(画面)宇宙戦艦アンドロメダブリッジ内。対閃光ゴーグルをしている南部のアップ。
(効果音)エネルギー充填音。最高潮。
南部「・・・発射カウントダウン,10秒前! 9・・・8・・・7・・・」
(画面)艦長席の島。
(南部の声)・・・6・・・5秒前・・・

(画面)輝きを放ち始めている宇宙戦艦アンドロメダの2門の艦首。
(効果音)エネルギー充填音。
(南部の声)(少し聞こえにくくなる)・・・4・・・3・・・

(画面)ターゲット・スコープに映っているガトランティス第156遊動機動艦隊。
(画面)南部のアップ。
南部「・・・2・・・1・・・発射ぁ!」

(画面)ガンレバーの引き金を引く南部の右手のアップ。トリガーが押し戻される。
(効果音)トリガーの戻る金属音。

(画面)機関室。圧力シリンダーが前方へ押し出されていく様子。巨大な圧力で少し後ろへ押し戻される巨大シリンダー。
(効果音)摩擦音。圧縮音。フライ・ホイール全開。

(画面)輝きを放つ宇宙戦艦アンドロメダの2門の艦首。

(効果音)静寂。

(画面)宇宙空間。画面左端に宇宙戦艦アンドロメダ艦首が右方向へ向けられている。・・・突然その艦首を中心に巨大な光が画面全体を照らしつくす。
(効果音)空間がゆがむ。
(画面)巨大な青白い光の帯が左から右方向へ一気に押し出される。
(効果音)空間をつぶしさく衝撃。
(画面)アングルが少し右へ回転。はるかかなたに敵艦隊の光。・・・その中央へ向けて巨大なタキオンの光の砲弾が膨大な輝く帯を引きずりながらまっしぐらに突き進んでいく。
(効果音)激しい轟音。

(画面)宇宙戦艦ヤマト第1艦橋内。ゲーニッツが駆け寄る。
(効果音)艦橋内機械音。
ゲーニッツ「・・・大帝閣下。第9番惑星付近で巨大なタキオン反応です。艦首波動砲のようです」
(画面)頬杖をしていないレック。
レック「・・・何をやっているんだろうね。全く」

(画面)ガトランティス第6遊動機動艦隊。待機している宇宙戦艦バルゼミア。
(効果音)艦隊機動音。

(画面)宇宙戦艦バルゼミアブリッジ内。ボードを持っているナスカ。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(画面)艦長席のバルゼー。
バルゼー「・・・ナスカ」
(画面)視線を振り仰ぐナスカ。
(画面)天井パネルを見上げているバルゼー。
バルゼー「あの光は見覚えがある。思いだしたくはないが忘れてはならぬ光だ」

(画面)宇宙空間大きく迫る青白い光に照らし出されるガトランティス第156遊動機動艦隊。
(効果音)青色ドップラー効果。

(画面)強力な光に両手でさえぎる仕草の宇宙艦ブリッジスタッフたち。

(画面)下げ舵いっぱいに急降下している宇宙戦艦イメルディア。
(効果音)波動砲の轟音にかき消されている。

(画面)宇宙戦艦イメルディアブリッジ内。強烈な光。艦長席で頭を抱えているイメル。
(画面)右腕で光から目を保護しているキーク。

(画面)宇宙空間を突き進んでいる波動砲の光の砲弾。・・・突然,その光の帯が途中で放射線状に大きく広がる。
(効果音)轟音。拡散音。

(画面)ガトランティス第156遊動機動艦隊からの視界。向かってくる光が何倍もの大きさに広がってくる。
(効果音)轟音。

(画面)恐怖の表情のキーク。

(画面)毅然と前を向いている対閃光ゴーグルの島。

(画面)ガトランティス第156遊動機動艦隊を左側からの全容。・・・画面左端から,艦隊を覆いつぶすように襲い掛かる波動砲の群光。たちまち破壊される宇宙駆逐艦。潜宙艦。空母。光の圧力にバランスを崩し,味方の戦艦へ衝突するイージス艦。爆発。ばらばらに砕け飛ぶ巡洋艦。
(効果音)ランダムの爆発音。衝撃音。衝突。光の轟音。多数。

(画面)後方の破壊されていく味方の宇宙艦を背に懸命に加速してくる宇宙戦艦イメルディア。
(効果音)複数の爆発。加速音。

(画面)宇宙戦艦イメルディアブリッジ内。頭を抱えているイメル。計器盤へ必死につかまりバランスをとるキーク。
(効果音)衝撃音。

(画面)宇宙戦艦アンドロメダブリッジからの視界。前方の艦隊から矢継ぎ早に爆発光が見えている。
(効果音)遠くの複数の爆発音。

(画面)宇宙戦艦アンドロメダ正面。連続する爆発光が艦首に反射している。

(画面)宇宙戦艦アンドロメダブリッジ内。対閃光ゴーグルを外す島。
島「・・・全艦隊前進。各艦載機隊,ブラックタイガー隊は展開。一気に中央へ」
(BGM)M−24

(画面)前進する宇宙戦艦アンドロメダ。日本艦隊。
(効果音)複数のエンジン音。
(BGM)M−24

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。目を見開いているベルナルド。
(BGM消える)

(画面)宇宙空間を航行する宇宙空母サツマ。
(効果音)エンジン音。

(画面)宇宙空母サツマ管制塔ブリッジ内。軽く前方を指差す梶川司令。
(効果音)ブリッジ内機械音。
梶川「・・・第1次戦闘機隊発進! 本艦隊前面へ展開!」

(画面)宇宙空母サツマ滑走路。次々と発進していく戦闘機隊。
(効果音)複数の発進音。

(画面)宇宙戦艦アンドロメダブリッジ内。視線を右へ向ける島。
(効果音)ブリッジ内機械音。
島「・・・太田。敵艦隊の状況はどうだ」
(画面)パネルを見ている太田のアップ。
太田「・・・隊列乱れています。概算で38隻が沈没,もしくは航行不能状態・・・。残りの艦も何らかのダメージを負っているものと思われます。艦載機に関しましては,80%以上が撃墜。ほぼ壊滅状態・・・」
(画面)口をへの字にする穴井教授。
穴井「・・・なんともまあ。間抜けな話じゃ。自分らの出した妨害電波で,こんな至近距離までわしらの存在に気づくのが遅れたとはのう。わしらにとってはその妨害電波が逆に灯台の役目を果たしてくれたようなもんじゃからな」
(画面)艦長席の島。
島「・・・戦闘可能な艦のみを攻撃せよ。退避していく敵には深追いはつつしんでくれ。・・・冥王星艦隊へ通信。戦闘の成り行きを見定めて,安全を確認次第,救助を求めている艦への救助活動を開始するように」
(画面)振り返る相原。
相原「・・・提督。それは危険ではありませんか? 相手は地球人ではありませんよ。地球の常識が通用するとは限りません」
(画面)視線を向ける島。
島「時間がなさすぎるんだ。今はできるだけ情報を集める必要がある。捕虜は多いほうがいい。背に腹は替えられない。徒党を組まれないように分散確保してくれ。武器を回収,もちろん油断はしないように」

(画面)被弾して宇宙空間を航行している宇宙戦艦イメルディア。
(効果音)エンジン音。

(画面)宇宙戦艦イメルディアブリッジ内。呆然(ぼうぜん)としているキーク。
(効果音)ブリッジ内機械音。
キーク「・・・(うめく)・・・あれが艦首波動砲か・・・」
(画面)振り返るレーダー士。
レーダー士「・・・地球艦隊が接近してきます! 敵戦闘機隊が我が艦隊へ攻撃を仕掛けてきています!」
(画面)キークのアップ。・・・後ろを見る。
(画面)頭を抱えているイメル。
(画面)視線を戻して軽くため息をつくキーク。
キーク「(顔を上げる)・・・全艦へ連絡。全速後退。戦場を離れてアステロイドベルト内へ退避する」
(画面)かたまる通信士。
通信士「・・・し,しかし・・・」
(画面)キーク。
キーク「どのみち,戦っても勝ち目はない。向こうの艦隊は70隻を超えている。こちらは戦える数はわずかだ。今回は私たちの完全な戦術ミスだ。このまま戦えば犬死にだ」
(画面)青ざめている通信士。
通信士「・・・敵前逃亡で処罰されます・・・。副官」
(画面)息を吸うキーク。
キーク「あの地球艦隊は情報を欲している。それはガトランティス軍も同じだ。我らの持ち帰る情報が我ら自身の命を救ってくれるかも知れない。ここに留まれば確実な死が待っているだけだ。撤退すれば,わずかに生き残る可能性がある」
(画面)うなだれる通信士。
(画面)通信士を背に顔を伏せる鋭い目のキークのアップ。
キーク「(小声でうめく)・・・こんなところで絶対に死ぬわけにはいかないんだよ。僕は・・・」

(画面)宇宙空間には対照的な情景が広がっている。隊列を整えている日本艦隊と冥王星艦隊。その眼前には無残な瓦礫(がれき)をさらしながら廃墟と化しているガトランティス艦隊の残骸。
(効果音)艦隊機動音。

(画面)宇宙戦艦アンドロメダブリッジ内。天井パネルの描写。何も映っていない。・・・やがてわずかに光の変化が起きて横一筋に電子ラインが走って,ベルナルドの上半身がスクリーンパネルに映し出される。
(効果音)電子音。ブリッジ内機械音。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・冥王星艦隊へようこそ。シマ提督。お待ちしていました。日本艦隊を歓迎いたします。(敬礼)」

(画面)敬礼を返す島。
島「(手を下ろす)・・・遅くなって申し訳ありませんでした。貴艦隊の被害状況はどうですか」

(画面)スクリーンで敬礼を解くベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・幸い被害はそれほどでもありませんでした。正直,助かりました。アステロイドベルトからあれほどの艦隊が現れるとは,恥ずかしい話ですが予期していませんでしたので」

(画面)艦長席の島。
島「防衛軍司令部には,私の方から連絡しておきます。・・・敵方の捕虜の数を教えてください」

(画面)スクリーンのベルナルド。下を向く。
ベルナルド「(顔を上げる)(ポルトガル語)・・・23人です。うち,16人は治療中ですが,異星人など扱ったことがないものですから,さすがに軍医も戸惑っています。(苦笑)」

(画面)微笑する島。
島「・・・かつて私たちもイスカンダル作戦の折に同じ経験をしていますよ。去年のガトランティス進行の折の翻訳データーがあるはずです。・・・捕虜への尋問は貴官にお任せします。よろしいですか」

(画面)スクリーンのベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)心得ました。・・・ところで,シマ提督。これからどうなさるおつもりですか」

(画面)艦長席で表情を引き締める島。
島「(苦笑)・・・ベルナルド司令。これは通信波です。盗聴される危険があります。捕虜がいるということだけしか今は,お話できませんね」

(画面)スクリーンの中で恐縮するベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・失礼いたしました・・・」

(画面)宇宙空間に停泊している宇宙戦艦アンドロメダ。
(効果音)機動音。

(画面)艦内会議室。フロアの中心に大きなテーブルがあり,投影パネルがテーブルの長手方向に向けて設置されている。投影パネルを避けるように背を向けて正面へ腰かけている島。テーブルをはさんでベルナルドと梶川司令が腰かけている。さらに右手にはソマリア・ギル隊長。
島の横には南部。穴井教授。計6人。
(画面)島が見回す。
島「(視線を向ける)・・・はじめまして。ソマリア隊長。連合艦隊指揮官の島です。今回の捕虜確保に関しては,一番に動いてくれていたみたいですね。船外服にもすでに着替えていたようですし,普段から迅速な行動を心がけているとお見受けします」

(画面)笑みを浮かべるソマリア・ギル。
ギル「(英語)・・・迅速な行動は私の常なる目標です。司令官殿」

(画面)目を丸くしているベルナルド。

(画面)軽くうなずく島。
島「アメリカ自治区司令部にも許可を得てあります。本日付けで,アメリカ空間騎兵隊34名に宇宙戦艦アンドロメダへ期間勤務を命じます。ガトランティスとの戦闘経験はもとより,当艦には地上部隊が存在していないものでね。よろしいですか。ソマリア隊長」

(画面)テーブルの上に指を組んだ両手を乗せるソマリア・ギル。
ギル「(英語)・・・司令官殿。ギルと呼んでください。私はファースト・ネームが好きではないのです」

(画面)微笑する島。
島「承知しました。・・・私のことも,シマと呼んでください。よろしくお願いしますよ。ギル隊長」

(画面)明るい笑顔を見せるソマリア・ギル。
ギル「(立ち上がり下士官敬礼)(英語)・・・こちらこそ,よろしくお願いいたします。シマ提督」

(画面)斜め方向へ顔を向けるベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・地球軍の方はいかがですか。シマ提督」

(画面)島。
島「連合艦隊編成は80%完了しています。・・・ただ外周部隊を撤収させたことでやはり情報不足の感は否めません。今回,ガトランティスは以前のような大胆な進行はしてきていない以上,どうしても敵の情報を得る必要があります。私たちの行動結果が大変重要なウエイトを占めているのは間違いありません」

(画面)身を乗り出すベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・これからどうするおつもりですか」

(画面)右後ろを向く島。
(画面)投影パネルが画面中央。向かって右に島。左に南部。穴井教授。・・・島がビームスティックを取り出すと,投影パネルに冥王星と惑星カロン,そして外周アステロイドベルトのモデル映像が映し出される。
島「(ビームで各天体を示しながら)・・・今回の一件で判明した事を整理します。今回の敵は間違いなくガトランティスです。ガトランティスは冥王星基地の探査範囲の死角がこのアステロイドベルトだという事を知っていました。実際,60隻もの艦隊が潜んでいてもそれに気づくことができなかった。・・・ということは,彼らはまだ私たちが探査できない宙域に潜んでいると思われます。・・・それもかなりの大掛かりな軍備でです」

(画面)緊張した表情の梶川司令。
梶川「・・・島提督。そう断言できる根拠はおありになるんですか」

(画面)顔を向ける島。
島「前回の戦いでは最初から彼らは私たちにその姿を見せていました。私たちには彼らの情報がなく,そして彼らは私たちの力を過小評価していた。戦略的にかなり余裕を持っていた。しかし彼らは私たちの艦隊にある程度の苦戦を強いられた。彼らの頭の中にはその時のイメージが残っているはずです。前回のように最初からその姿を明らかにせず,私たちの様子を探るような今回のやり方は彼らが全力で私たちへ挑んでいる根拠となりえます。前回のような白色彗星を,ウィークポイントを知っている私たちにぶつけてくるようなことはしないでしょう。それならば彼らは,前回よりも強力な軍備を整えているに違いありません」

(画面)梶川司令。

(画面)投影パネルに話を戻す島。
島「(ビームを指す)・・・ガトランティス艦隊が現れる直前,このアステロイドベルト宙域から数回,電波発信が確認されました。電波の向かう先は太陽系のはるか外宇宙です。これがガトランティスのものであったことは明白です。この電波により探査機を送り込むことができ,ガトランティスであることがはっきり確認されたわけですからね。・・・となると,これから私たちが何をすべきかは必然的に決まってくるものと思うのですが,いかがでしょう」

(画面)息を呑むベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・電波の発信先へ向かうというのですか・・・! お言葉ですが,シマ提督。それは大変危険な行為です・・・! しかも冥王星基地から遠く離れてしまえば,地球へのワープ通信ができなくなってしまいます」

(画面)後ろの投影パネルが消える。ビームスティックをしまう島。
島「(見回す)・・・第10管区艦隊と冥王星艦隊は冥王星宙域で待機していてください。これはアンドロメダ1隻のみで行きます」

(画面)立ち上がるベルナルドと梶川司令。
梶川「・・・何をおっしゃるのですか! あなたは連合艦隊指揮官ですよ! 何を血迷っておられるか!」
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・同意見です。シマ提督。危険すぎます・・・!」

(画面)見上げている島。
島「・・・戦いに行くのではありません。様子を見にいくだけです。艦隊で赴けば退去がスムーズにいきません。1隻ならば敵にも悟られにくく,ワープによる速やかな後退が可能です。ガトランティスとの実戦経験のないあなたがたに行かせるわけにはいきません。あなたがたは私からの通信とワープ通信の中継をお願いしたい」

(画面)宇宙戦艦アンドロメダ機関室。操作盤の椅子に座って写真を見ている坂本機関士。
(効果音)機関室機械音。
(画面)坂本の背後から近づいていく土方機関長。
土方「・・・何を見てるんだ?」
(画面)写真を持って振り返る坂本。照れ笑い。
坂本「はは。どうです? (写真を差し出す)可愛いでしょう? 愛子っていうんですよ」
(画面)写真を受け取って見やる土方機関長。
(画面)写真。若い女性に抱かれている赤ん坊。白い産着に包まれている。
(土方の声)・・・お前の子供か。なるほどね。確かに母親似だ。可愛いな。よかったな。
(画面)えびす顔の坂本。
坂本「残念でした。全然,腹立ちません(にへら)」
(画面)写真を返す土方機関長。
土方「(苦笑)・・・駄目か。しかしいつの時代も同じだな。人の子供見せられて喜ぶやつなんかいないっていうのに,決まって自分の子供を見せたがるもんだ。・・・ま,私もそうだったがな」
(画面)写真を受け取って見ている坂本。
坂本「・・・頑張らなきゃな。守ってやらなきゃな。絶対に守ってやらなきゃ・・・」
(画面)笑みを浮かべる土方機関長。
土方「そうだな。立派にお嫁に行かせるまではな」
(画面)にらみつける坂本。
坂本「嫁にはやりませんよ! 何言ってんですか!」
(画面)目を丸くする土方機関長。
土方「これには腹が立つんだな」

(画面)宇宙空間にひしめくガトランティス艦隊。
(効果音)多数の機動音。
(BGM)M−1A

(画面)宇宙空間に停泊している宇宙戦艦ヤマト。
(効果音)機動音。

(画面)宇宙戦艦ヤマト第1艦橋内。頬杖をついているレック・アルド・ズォーダー。
(効果音)艦橋内機械音。
(BGM)M−1A
(画面)前で進み出るゲーニッツ。
ゲーニッツ「・・・大帝閣下。第156遊動機動艦隊が敗れました。残存艦はアステロイドベルト宙域へ退避した模様です。明らかに敵前逃亡です。処罰を検討しませんと・・・」
(画面)頬杖をついたまま,ため息をつくレック。
レック「・・・全く。散々待たされたあげくに結局はこれか。もっと早く行動を起こしていれば後続の艦隊に足元をすくわれることもなかっただろうにね。イメルの臆病者め。あいつの罪は艦隊敗北だけには留まらないよ。ゲーニッツ」
(画面)言葉を待つゲーニッツ。
(画面)頬杖をついているレック。
レック「・・・あいつは我が本隊に通信を送りすぎた。それが問題だよ。地球に我らがガトランティスだということを知られてしまっただけではない。本隊のおおよその場所も地球側に教えてしまった。普通の処罰では済まされないよ」
(画面)いまさらながらに慌てるゲーニッツ。
ゲーニッツ「どういたしましょう・・・」
(画面)違う理由で,ため息をつくレック。
レック「・・・地球軍はこちらへ偵察にくるだろうね。我らの規模を見せ付けて驚かせてやりたいという気持ちもあるが,逆に簡単に降伏されてしまうというのも困る。降伏した相手を滅ぼせば,国民の私への心象が悪くなる。絶対に私は地球を滅ぼさねばならないのだ。まだこの本隊を地球軍に見られるのはよくないね」
(画面)ゲーニッツ。
(画面)頬杖を外して起き上がるレック。
レック「・・・仕方ないね。予定外だけど,もう1度行くかな。ゲーニッツ」
(画面)あごを突き出すゲーニッツ。
ゲーニッツ「・・・は?」
(画面)見下げる視線のレック。
レック「動くとしたらあの第9番惑星の艦隊だろう。・・・外周惑星艦隊と同じ目にあわせてやるんだよ。ゲーニッツ」
(BGM消える)

(画面)冥王星宙域。停泊している冥王星艦隊。日本艦隊。宇宙戦艦アンドロメダ。
(効果音)複数の機動音。

(画面)宇宙戦艦アンドロメダブリッジ内。艦長席で佐渡医師が島の血圧を測っている。
(効果音)ブリッジ内機械音。血圧計の空気の音。
(画面)島の左腕からマジックテープを外す佐渡医師。
佐渡「(見上げる)・・・(小声)ここのところ医務室もごぶさたですね。島さん。少し血圧が低いですよ。あまり治療に不真面目だと,医師権を発動しますからね・・・!」
(画面)苦笑する島。
島「・・・すまない。ここのところ調子がよかったものだから,つい・・・ね」
(画面)ブリッジにソマリア・ギルが入ってくる。
ギル「(気づく)(英語)・・・ドクター。あの医務室,なかなか居心地がいいね。看護士も美人だ。ちょくちょくお邪魔させてもらうよ」
(画面)ソマリア・ギルの後方からアナライザーが回り込む。
アナライザー「・・・センセ。センセ。・・・コノ あめりかジン ハ タイヘン ケンコウ デス。グアイ ワルイ ナンテ ウソ ハッピャク ダ」
ギル「(後ろを見る)(英語)・・・ずんぐり野郎め。お前なんか治療じゃなくて,修理なんじゃないのか? なんでお前が医務室にいるんだ?」
(画面)苦笑する佐渡医師。
佐渡「・・・また変なのが増えたな・・・。(ソマリア・ギルへ)・・・医務室は休憩所じゃないんだぞ。(うつむく)・・・こっちはロボット君だけでも手一杯だっていうのに。(ちらりと)全く。来なきゃいけない人が来なくて,来なくていいのばかりがたまってくる・・・」
(画面)苦笑しっ放しの島。
(画面)かばんに医療機器をしまう佐渡医師。
佐渡「(顔を向ける)・・・今度はどこへ行こうとしているんですかね。この艦は。また危険なことを考えているんじゃないでしょうね」
(画面)笑顔で冷や汗の島。
島「・・・いや。そんなには危険じゃない・・・かな」

(画面)宇宙空間に黒いシルエット。接近してくる。
(効果音)エンジン音。

(画面)宇宙空間に停泊している宇宙戦艦アンドロメダ。
(効果音)機動音。

(画面)宇宙戦艦アンドロメダブリッジ内。レーダーパネルを見ている太田。光が顔を照らしている。
(効果音)ブリッジ内機械音。
太田「・・・!(後ろを向く)・・・提督!」
(画面)艦長席の島。佐渡医師。ソマリア・ギル。3人がこちらを見ている。横にはアナライザー。
(画面)振り返っている太田。
太田「・・・冥王星宙域に接近してくる金属反応があります!」
(画面)身構えるソマリア・ギル。
ギル「(英語)・・・ガトランティスか!」
(画面)島。
島「・・・数は・・・?」
(画面)再び振り返る太田。
太田「・・・金属反応はひとつです! 規模は宇宙艦クラス!」
(画面)ピクリとするソマリア・ギルのアップ。
(画面)首を傾げる南部。
南部「・・・1隻? おかしいな。さっきの艦隊の生き残りだろうか」
(画面)艦長席の島。
島「全艦,戦闘態勢」

(画面)一斉に隊列を整える冥王星艦隊。日本艦隊。
(効果音)エンジン音。複数。非常サイレン。

(画面)宇宙戦艦アンドロメダブリッジ内。艦長席の島。
(効果音)非常サイレン。
島「太田。あの宇宙艦の種別を識別してくれ」
(太田の声)・・・分かりました!
(画面)操作している太田。
(画面)振り返る太田。
太田「・・・ガトランティスの過去のどの宇宙艦とも適合しません。新型です!」
(画面)ソマリア・ギルのアップ。
ギル「・・・」
(画面)島。
島「・・・念のため,地球型の宇宙艦との照合もしてみてくれ」
(画面)操作する太田。
太田「・・・2195年,該当なし。2196年,該当なし。2197年,該当なし。2198年,該当なし。2200年,該当なし。2201年該当なし。2202年,該当なし。・・・やはり該当しません! 地球の艦ではありません!」
(画面)首をかしげる薮。
薮「・・・あれ? 今,2199年がとんでませんでしたか?」
(画面)顔を向ける太田。
太田「2199年が該当するわけないだろう!」
(画面)振り向く穴井教授。
穴井「・・・薮。2199年には地球は,戦艦を1隻しか製造しとらんのよ」
(画面)顔を正面に向けて首をかしげてうなずく薮。
薮「あ・・・! そうか・・・!」
(画面)艦長席の島。
島「・・・形式だけでも2199年も識別しておいてくれ。データー管理上ではブランクがあるとよくないからな」
(画面)目を丸くして振り返っている太田。
太田「・・・分かりました。(背中を向ける)」
(画面)操作する太田。
太田「・・・地球型,2199年製造・・・」
(画面)太田の操作しているパネル。そこへ映し出されているシルエット。・・・。
(画面)太田のアップ。
(画面)太田の操作しているパネル。そこへ映し出されているシルエット。・・・そこへ別のシルエットが近づいていく。
(画面)太田の操作しているパネル。そこへ映し出されているシルエット。・・・そこへ別のシルエットが重なっていく。
(画面)太田のアップ。
(画面)太田の操作しているパネル。そこへ映し出されているシルエット。・・・シルエットが重なり,突然赤い光がシルエット全体を浮かび上がらせる。
(効果音)電子音。
(画面)赤い光に照らされている太田のアップ。
(画面)赤い光に照らされている太田のアップ。・・・驚きから疑惑の表情へ・・・。そして再び驚きの表情から冷や汗を伴い恐怖のまなざし。そして打ち消そうとするあがきに似た表情へと変化する・・・。
太田「・・・そ・・・そ・・・」
(画面)艦長席の島。佐渡医師。ソマリア・ギル。アナライザー。
(画面)振り返っている薮。南部。
(画面)顔を上げる沙織。
(画面)こちらを見ている穴井教授。
(画面)ヘッドマイクを支えている相原。

(画面)宇宙空間に黒いシルエット。接近してくる。
(効果音)エンジン音。

(画面)背中を震わせている太田の後ろ姿。
(画面)艦長席の島。
島「・・・どうした? 太田」
(画面)目を細める穴井教授。
(画面)ぼうぜんと顔を上げる太田。
太田「・・・そ・・・そんな・・・そんな馬鹿な・・・」

(画面)はっきり顔を上げるソマリア・ギル。
ギル「(英語)・・・そんな・・・馬鹿な・・・?」

(画面)太田を見ている島の横顔。
(画面)下から見上げているソマリア・ギル。
ギル「(英語)・・・シマ提督!」
(画面)その声に反応して,こちらを見る島。
(画面)ソマリアギル。恐怖の表情。
(画面)けげんな表情になる島。
(画面)ソマリア・ギル。恐怖の表情。
ギル「(英語)・・・に,逃げろ! ・・・やつだ! やつがきた! 逃げるんだ! 早く退避命令を出せ! 逃げろぉ!」
(画面)こちらを見ている島。

(画面)画面へ突き進んでくる宇宙戦艦ヤマト。艦首にはタキオンの光。
(効果音)エネルギー充填音。

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。顔を上げるベルナルド。
(効果音)ブリッジ内機械音。

(画面)冥王星と惑星カロンへ向かっていく宇宙戦艦ヤマト。
(効果音)エネルギー充填音。

(画面)宇宙空母サツマ管制塔ブリッジ内。目を見開く梶川司令。
(効果音)ブリッジ内機械音。
梶川「・・・あ・・・ヤ・・・」

(画面)宇宙戦艦ヤマト第1艦橋内。右手を上げるゲーニッツ。
(効果音)エネルギー充填音。
ゲーニッツ「・・・艦首波動砲,発射準備完了しました」
(画面)スイッチを右手に持って親指を添えているレック。
レック「(優越の笑み)・・・地球人ども。宇宙の塵(ちり)となれ!(親指に力を入れる)」
(効果音)小さなスイッチ音。

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第7節 沈没! 極寒の海へ消えるアンドロメダ