第5節 未知への発進! 宇宙戦艦アンドロメダ

(画面)宇宙空間。
(字幕)半年後(画面中央横文字)

(画面)宇宙空間に浮かぶ白く凍った惑星。
(BGM)M−2
(字幕)第11番惑星ゼナ(画面下部横文字)
(ナレーション)・・・ゼナは西暦2003年10月31日に初めて発見された太陽系さいはての惑星である。直径は2384キロ。天体”2003UB313”から惑星として認定された西暦2086年よりつい2年前まで太陽系第10番惑星として位置づけられていたが,宇宙戦艦ヤマトが冥王星外軌道のアステロイドベルトを第10番惑星の成れの果てと認定したため,西暦2200年,第11番惑星として再登録された。・・・ゼナの軌道は楕円形であり,557年かけて太陽の周りを一周する。ゼナにはガブリエルという名の衛星が存在し,大気は無く,凍ったメタンが地表を覆っている極寒の惑星である。

(画面)ゼナの地表面の描写。凍った地平線がわずかに丸みをおびている。
(ナレーション)・・・この惑星は,大気のある冥王星に比べ当初あまり存在価値は認められてはいなかったが,地球外知的生命体の存在がはっきりした現在,外宇宙と太陽系の境界線として地球連邦政府が確定し,太陽系へ侵入する生命体を監視するための重要な拠点となったため,ここには監視艦隊を擁する太陽系最遠の軍事施設が設置されている。
(BGM消える)

(画面)ゼナ地表。北極点に軍事基地全容。
(ナレーション)・・・西暦2201年のガトランティス・ファーストコンタクトの折,当時の監視艦隊全滅の教訓を得て,ここに常駐している艦隊は現在,空母4隻,戦艦8隻,駆逐艦15隻,揚陸艦1隻と基地対空設備も最新の装備を備え,不測の事態にいつでも対応できるように交代勤務で監視に当たっていた。

(画面)ゼナ基地内部。廊下を歩く恰幅のいいアメリカ青年。ダークグリーンの制服を着ている。手前へ近づいてくる様子。
(効果音)足音。
(画面)青年の上半身アップ。
(字幕)ゼナ駐留アメリカ空間騎兵隊隊長 ソマリア・ギル(画面下部横文字)

(画面)基地内部の一室。照明は薄暗い。内部側から見たスライドドア。・・・左方向へ開放するドア。ソマリア・ギルが入室して来る。
ギル「(英語)・・・失礼します。お呼びですか」

(画面)基地司令センター内部。ソマリア・ギルの右肩が画面左端。中央にスクリーン内臓デスク。その周りに制服軍人たちが数人集結している。・・・一斉に視線をこちらに向ける。その中の年配の軍人が口を開く。
軍人「(英語)みんな集まっているぞ。ソマリア。ここでの延滞は好ましくないな」
(画面)直立しているソマリア・ギル。
ギル「(英語)体調がおもわしくありませんでした」

(画面)苦笑する年配の軍人。
(字幕)太陽系ゼナ駐留軍総司令長官 スペンサー。
スペンサー「(英語)・・・お前の特技は,すぐばれる嘘だな。ソマリア」
(画面)直立しているソマリア・ギル。
ギル「(英語)・・・ギルと呼んでください。ファーストネームは嫌いです」
(画面)デスクの周りの軍人たちの描写。
スペンサー「(英語)そうしよう。(下から右手を手前へ振る)早くこっちへ来い。ソマリア」
(画面)仏頂面のソマリア・ギル。

(画面)デスクの列に加わるソマリア・ギル。軍人たちの視線がデスク表面のスクリーンへ戻る。
(効果音)基地内部機械音。
(画面)デスクに両手を突きデスクを見入っているソマリア・ギル。スクリーンの光が下から照らされている。
ギル「(視線は変えず)(英語)・・・緊急徴収の理由は,これですか。長官」
(画面)デスクに軽く右手をつき,直立しているスペンサー。
スペンサー「(視線を向ける)(英語)・・・20分前に空間の歪み(ゆがみ)の反応が見受けられた。しかも重力場が陽性。自然現象ならばブラックホールではなく,ホワイトホールとも言うべきかな。だがその反応はすぐに消え,その代わりにある程度の質量を伴う物体が同じ空間に取り残された。・・・これをどう解釈するかな?」

(画面)デスクの表面のスクリーン表示。・・・惑星セドナとその軌道仮想線の楕円のはるか遠方に淡く光るポイントがひとつ。点滅しながら,ゼナ方面へ接近している様子。
(効果音)基地内部機械音。

(画面)顔を上げるソマリア・ギル。
ギル「(英語)解釈はひとつしかない。これはワープアウトでしょう」

(画面)ソマリア・ギルを見やる若い士官。
士官「(英語)・・・地球連邦の各自治区の全ての管制塔へ問い合わせましたが,この時間帯にワープ航法をした船はありません。しかもどの航路とも符合していません」
(画面)左方へ顔を向けているソマリア・ギル
ギル「(にやり)(英語)・・・ほう。面白いじゃないか。(顔を向ける)・・・ということは・・・おいでなすったということか」

(画面)スペンサー。
スペンサー「(英語)・・・結論は早まってはいかんが,急がなければならない。いずれにしても,あれはこちらに向かっているのだからね」
(画面)身体を起こすソマリア・ギル。
ギル「(英語)私に偵察させて頂きましょう。レムナントで行きます」
(画面)視線を向けるスペンサー。
スペンサー「(英語)・・・レムナントは揚陸(ようりく)艦だ。偵察のつもりでターゲットへ向かって仮にターゲットがすでに戦闘態勢に入っていればその温度差に対応しきれまい」
(画面)ソマリア・ギル。
ギル「(英語)ならば最初から戦闘態勢で臨めばいいことでしょう」
(画面)スペンサー。
スペンサー「(英語)・・・空間騎兵隊は陸上作戦や白兵戦は長けているが,艦同士の砲撃戦には不向きだ。ターゲットがこの基地に向かっているのならば後方防衛待機を命ずるほかはない。もとより単独での偵察任務は考えていないのでね。揚陸艦以外の全艦隊を出動させるつもりだ。確認できているターゲットは今のところはひとつだが,これがもしガトランティスならば当然この程度では済むまい」
(画面)不満を顔いっぱいに表すソマリア・ギル。

(画面)笑みを浮かべるスペンサー。
スペンサー「(英語)・・・そんな顔をするな。ソマリア。お前が遅刻しなくても結論は同じだったよ」

(画面)第11番惑星ゼナを背に出撃する地球監視艦隊。駆逐艦15隻を前衛に,戦艦8隻,空母4隻,計27隻。監視艦隊と呼ぶにはあまりにも大掛かりな布陣である。
(字幕)ゼナ駐留太陽系最前線地球監視艦隊(画面下部横文字)
(効果音)質量音。エンジン機動衝撃波。複数。

(画面)戦艦内ブリッジ。艦長席に座っているスペンサー。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(画面)レーダーセンサーボックスに座っているスタッフの後ろ姿。
スタッフ「(振り返る)(英語)・・・当方とターゲットの相対速度によるコンタクト予定は32分38秒後です」
(画面)うなずくスペンサー。
スペンサー「(英語)・・・全艦に連絡。これは偵察ではない。むろん警戒でもない。総員第一級戦闘配備。空母は25分後に艦載機を発進させよ。コンタクト時に一度だけターゲットへ警告発信。ノーリアクション確認次第,攻撃を開始する。各自上官へ復唱せよ」

(画面)ゼナ基地司令室。臨戦態勢に入っている空間騎兵隊の面々。
(効果音)基地内部機械音。
(画面)中央デスクに足を組んで座っているソマリア・ギル。・・・彼へ近づいていくひとりの隊員。
隊員「(英語)・・・隊長。俺たちはここでぼけっと連絡待ちですか」
ギル「(顔を向けずに)(英語)そうだ。ここでぼけっと連絡待ちだ」

(画面)宇宙空間を航行している地球監視艦隊。
(効果音)質量音。エンジン機動衝撃波。複数。

(画面)見下ろしているソマリア・ギルのアップ。スクリーンの光が顔を照らしている。
(効果音)基地内部機械音。
(画面)デスクのスクリーンの描写。セドナ軌道外に点滅しているひとつのターゲット。・・・そこへ向かっていく27個の点滅。
(画面)見下ろしているソマリア・ギルのアップ。スクリーンの光が顔を照らしている。

(画面)宇宙空間に浮かぶ第11番惑星ゼナ。・・・アングルが回転。ゼナがゆっくりと画面左端へ退場。画面はゼナとは真逆の方向の宇宙空間を臨んでストップ。
(画面)宇宙空間。地球監視艦隊が遠ざかり見えなくなる。

(画面)ゼナ基地司令室。臨戦態勢に入っている空間騎兵隊の面々。
(効果音)基地内部機械音。

(画面)宇宙空間。
(字幕)32分後・・・(画面中央横文字)

(画面)ゼナ基地司令室。臨戦態勢に入っている空間騎兵隊の面々。
(効果音)基地内部機械音。
(画面)ヘッドマイクをしている通信班が振り返る。
通信班「(英語)・・・隊長。地球総合司令部より冥王星基地経由にて受信。”ターゲットはまだか”と言ってきています」
(画面)見下ろしているソマリア・ギルのアップ。スクリーンの光が顔を照らしている。
ギル「(視線そのまま)(英語)待てと伝えろ」

(効果音)基地内部機械音。
(画面)デスクのスクリーンの描写。ゼナ軌道外に点滅しているひとつのターゲット。至近距離で隊列を整える27個の点滅。

(画面)見下ろしているソマリア・ギルのアップ。スクリーンの光が顔を照らしている。
(効果音)基地内部機械音。
ギル「・・・(目を細める)」

(画面)宇宙空間。
(字幕)37分後・・・(画面中央横文字)

(画面)第11番惑星ゼナ。

(画面)見下ろしているソマリア・ギルのアップ。スクリーンの光が顔を照らしている。
(効果音)基地内部機械音。
ギル「・・・! (目を見開く)」
(画面)デスクのスクリーンの描写。セドナ軌道外に点滅しているひとつのターゲット。至近距離の27個の点滅。・・・ひとつの点滅が突然消滅する。

(画面)宇宙空間。

(画面)宇宙空間。段発的に光が出現。さらに光。そしてさらに光。

(画面)ゼナ基地司令室。顔色を変えて立ち上がるソマリア・ギル。
(効果音)基地内部機械音。
ギル「(腕を大きく振る)(英語)・・・通信班! 監視艦隊へ連絡をとれ! 総員,戦闘配置! レムナント稼動! 乗艦準備を進めろ!」

(効果音)基地内部機械音。
(画面)デスクのスクリーンの描写。ゼナ軌道外に点滅しているひとつのターゲット。至近距離で隊列を整える27個の点滅が次々と消滅していく。・・・やがて隊列も乱れ逃走さえ始める。

(画面)ゼナ基地司令室。慌しくなった基地内。振り向く通信班。
(効果音)基地内部機械音。複数の足音。
通信班「(英語)・・・隊長! 監視艦隊と通信がつながりました! し,しかしこれは・・・!」
(画面)指さすソマリア・ギル。
ギル「(英語)スピーカーに切り替えろ!」
(画面)スイッチをはじく指。
(効果音)小さな金属音。

(画面)基地内スピーカーの描写。
(声)(英語)・・・逃げろぉ!
(声)(英語)・・・助けてくれぇ!
(声)(英語)・・・わあああ!
(声)(英語)・・・なぜだぁ!
(声)(英語)・・・そんな馬鹿なぁ!

(画面)ゼナ基地司令室。振りあおぐソマリア・ギル。
(効果音)基地内部機械音。
(スピーカーの声)(英語)・・・やめてくれぇ!
ギル「(冷や汗)(英語)な,何だ? ・・・一体・・・何だってんだ・・・。”そんな馬鹿な”とはどういうことだ・・・。ターゲットはひとつじゃないか。こっちは艦隊なんだぞ。たった1隻で艦隊を相手にやりあっているっていうのか・・・?」

(画面)ゼナ基地司令室。振り向く通信班。
(効果音)基地内部機械音。複数の足音。
通信班「(英語)・・・隊長! 冥王星基地から通信が入っています!」
(画面)振り向くソマリア・ギル。
ギル「(英語)早くレムナントに乗れ! 続きはそれからだ!」

(画面)宇宙空間。ところどころで発生する光の集団。・・・やがて光は完全に消え去り,元通りの静寂と闇が支配。

(画面)第11番惑星ゼナの北極点。・・・基地を背にして発進してくる1隻の宇宙艦。
(字幕)アメリカ空間騎兵隊所属宇宙揚陸(ようりく)艦レムナント(画面下部横文字)
(効果音)金属音。エンジン噴射音。

(画面)艦内ブリッジ。レーダーボックスの椅子へつかまり,仁王立ちのソマリア・ギル。
(効果音)ブリッジ内機械音。
ギル「(レーダー係へ)(英語)レーダー! 金属反応! エネルギー反応! 見逃すな!」

(画面)宇宙空間を疾走する宇宙揚陸艦レムナント。
(効果音)金属音。エンジン噴射音。

(画面)艦内ブリッジ。振り向くパイロット。
(効果音)ブリッジ内機械音。
パイロット「(英語)隊長! どこへ向かうんですか!」
(ここで画面がぐらつく)

(画面)バランスを崩しかける宇宙揚陸艦レムナント。
(効果音)金属音。エンジン噴射音。

(画面)艦内ブリッジ。バランスを崩しかけるソマリア・ギル。しっかり踏みしめる。
(効果音)ブリッジ内機械音。
ギル「(怒りの顔を上げる)(英語)馬鹿やろうが! しっかり運転しろ! ターゲットに向かうに決まってんだろうが!」
(画面)振り向くレーダー係。
レーダー係「(英語)前方12万宇宙キロに金属反応! エネルギー反応も確認!」
(画面)下から振り向くソマリア・ギル。
ギル「(英語)金属反応はひとつか!」
(レーダー係の声)(英語)・・・宇宙艦規模はひとつです! 他は半径1万2千宇宙キロ範囲内に金属片多数散乱! 拡散中!
ギル「(唇を突き出す)(英語)・・・何だと・・・! おいおい冗談じゃないぞ! そんなところへ向かったらレムナントは破片でボロボロになっちまう」

(画面)宇宙空間を疾走する宇宙揚陸艦レムナント。
(効果音)金属音。エンジン噴射音。
(BGM)絶体絶命

(画面)艦内ブリッジ。通信班へ振り向くソマリア・ギル。
ギル「(英語)監視艦隊からの通信はどうした!」
(効果音)ブリッジ内機械音。
(画面)振り向く通信班。
通信班「(英語)・・・沈黙しています! 受信対象が見つかりません!」
(画面)気持ちを奮い立たせる様子のソマリア・ギル。
ギル「(英語)27隻だぞ!」

(画面)宇宙空間。そこに巨大なシルエット。そのエリア範囲で星が隠れている。明らかにそこに何かが存在している。やがて小さな光が集まり始める。シルエットがわずかに明るく見える。それは何か巨大な砲口のようにも見える。次第に多く集まっていく光。
(効果音)最初は低いトーンの機械音。次第にトーンが高くなっていく。音の間隔が短くなっていく。

(画面)艦内ブリッジ。振り向くレーダー係の顔色が変わっている。
レーダー係「(英語)・・・巨大なエネルギー反応! 高レベルの波動を感知! 12時の方向!」
(効果音)ブリッジ内機械音。
(画面)目を凝らすソマリア・ギル。
ギル「(英語)・・・エネルギーだと! ジャンルは!?」
(画面)声をつまらせるレーダー係。
レーダー係「(英語)・・・そ,それが・・・タキオンです! 当艦の真正面です! 隊長ぉ!」
(画面)一瞬固まるソマリア・ギル。
ギル「(右方向を指さす)(英語)・・・お,面舵いっぱいだぁ! 逃げろぉ!」
(画面)右へ舵をとるパイロット。
パイロット「イ,イエッサー!」

(画面)宇宙空間。右方向へ向きを変える宇宙揚陸艦レムナント。後方には第11番惑星ゼナ。
(効果音)金属音。エンジン噴射音。
(BGM消える)

(画面)宇宙空間の巨大なシルエット。・・・集中していく光が大きく変化。・・・突然,箍(たが)が外れたように急激に膨張。
(効果音)ひときわ大きな金属音。次の瞬間,何も聞こえなくなる。

(画面)宇宙空間。・・・突然,眩い(まばゆい)人工の超新星が出現。画面全体を光が支配。間髪入れずに光が帯状に変化。すさまじい力で右から左の一方方向へ押し出される。その光の帯の直径は宇宙揚陸艦レムナントのそれを数十倍凌駕(りょうが)。回転する画面。・・・アングルが変わって初めてそれが巨大なエネルギー砲だと分かる。エネルギー砲の行く手は第11番惑星ゼナ。エネルギーの光でわずかに浮かび上がる宇宙戦艦のシルエット。
(効果音)エネルギー噴射の轟音。

(画面)宇宙空間。右方向へ向きを変えている宇宙揚陸艦レムナント。後方には第11番惑星ゼナ。・・・エネルギーの巨大な帯が宇宙揚陸艦レムナントの左舷を間一髪でかすめていく。・・・エネルギーの見えない圧力で右へ大きく揺らぐ宇宙揚陸艦レムナント。さらに右へ流されていく。
(効果音)金属音。エンジン噴射音。

(画面)眩い光でほとんど視界を失われている艦内ブリッジ。わずかにソマリア・ギルの恐怖の表情の輪郭のアップ。
ギル「(大きく口を開けている)おおおおおおお・・・!」

(画面)宇宙空間に浮かぶ第11番惑星ゼナ。・・・その北極点めがけて突き進んでいく巨大な光の帯。そして北極点に命中。青白い爆光の直後に人工施設のエネルギー爆破が融合。すさまじい爆発が惑星の上部4分の1を吹き飛ばす。・・・やがて無数の人工物や岩石の破片が画面いっぱいに降り注ぐ様子。
(効果音)時間差で大きな爆発衝撃音。さらに轟音が連鎖。

(画面)宇宙空間に散乱する瓦礫(がれき)や破片に翻弄(ほんろう)される宇宙揚陸艦レムナント。
(効果音)複数の衝突音。被弾。

(画面)艦内機関部。身体を支えながら思い思いの場所にしがみついている隊員たち。機関部の外壁を突き破る岩石。・・・大きな穴が開き,急激に低下していく気圧。穴の外には肉眼で見える宇宙空間。岩石に押しつぶされる隊員。
(画面)絶望的な表情で氷点下240℃真空の宇宙空間へ吸い出されていく隊員たち。
隊員「(英語)・・・ってくれえええ!(消えていく)」
(効果音)破壊音。気圧低下音。

(画面)各部で被弾炎上している宇宙揚陸艦レムナント。周囲はまだ瓦礫や破片が散乱。
(効果音)複数の衝突音。被弾。

(画面)艦内ブリッジ。両足を踏みしめているのはソマリア・ギルただひとり。
(効果音)複数の衝突音。被弾。
ギル「(英語)・・・被害状況はどうなっている! とにかくこのエリアから脱出だぁ!」
(画面)振り向かないレーダー係。
レーダー係「(英語)・・・12時の方向から新たな破片群! 急速接近中! 金属反応!」
(画面)顔色が変わるソマリア・ギル。
ギル「(英語)・・・一体どうなってんだ・・・! 監視艦隊はどうなったんだ! さっきの破壊エネルギーは・・・あれじゃ・・・まるで,はど・・・」
(画面が大きく揺らぐ)
(画面)ついにバランスを崩し,ひっくり返るソマリア・ギル。

(画面)画面を覆い尽くすかのような金属片。瓦礫。岩石。挟み撃ちになった格好の宇宙揚陸艦レムナント。連続する激突,衝突。・・・もはや艦体自体が変形し,宇宙艦の原型をとどめないほどのダメージを受け続けている。
(効果音)複数の衝突音。摩擦音。金属音。激突音。

(画面)宇宙空間。黒いシルエット。エンジン噴射を見せながら方向転換して遠ざかって行く様子。
(効果音)エンジン噴射音。

(画面)宇宙空間。
(字幕)60分後・・・(画面中央横文字)

(画面)北極点を完全に失っている第11番惑星ゼナ。

(画面)宇宙空間にただよっている金属片。岩石。

(画面)完膚(かんぷ)なきまで痛めつけられている宇宙揚陸艦レムナント。周辺には金属片,瓦礫がただよっている。

(画面)艦内ブリッジ。倒れているソマリア・ギルのアップ。・・・まゆをしかめて,ゆっくりと目を開ける。
(画面)頭をおさえながら,ぎこちなく立ち上がるソマリア・ギル。
ギル「(頭を振って,顔を上げる)」
(画面)ソマリア・ギルの後ろ姿。ブリッジからの外のながめ。
(画面)目を見開き,驚愕しているソマリア・ギルのアップ。

(画面)宇宙空間。静寂。そこには無数にただよう瓦礫,岩石・・・そして・・・明らかに宇宙艦の残骸とみられる破片・・・。
(BGM)C−2

(画面)ただよう破片に囲まれている宇宙揚陸艦レムナント。
(BGM)C−2

(画面)艦内ブリッジ。歯をくいしばっているソマリア・ギル。
ギル「(英語)・・・ジーザス・・・。これは・・・間違いない。ガトランティスだ・・・。しかし,それにしても・・・」
(BGM消える)

(画面)宇宙空間に浮かぶ青い地球。

(画面)曇り空をバックに地球防衛司令部。

(画面)司令部内部。一番高いボックスからのビュー。正面に巨大なデジタルスクリーン。それに映し出されている複数の円軌道,楕円軌道のラインは太陽系の表示のようだ。前衛の一番低いボックスで作業しているスタッフたちの後ろ姿は遠く小さく見える。スクリーンにはさらに入り乱れている航路のラインとポイントが整然と並び,表示非表示を繰り返している。
(効果音)機械音。デジタル音。作業するスタッフたちの会話等。

(画面)一番高いボックス通路に立っている藤堂司令長官。

(画面)ヘッドホンをしているスタッフの横顔。・・・しばらくそれを左手で押さえている仕草。

(画面)司令室へつながる通路を正面からのアングル。提督装の島 大介が手前に向かって歩いて来る。

(画面)一番高いボックス通路に立っている藤堂司令長官。・・・そこへ並びかける島。藤堂司令長官と身体の向きを同じくする。
島「(視線そのまま)・・・連合艦隊の自治区司令官が全員アクセスしてきました。・・・警戒レベルはBでいいんですか? 長官」
藤堂「冥王星基地からのワープ通信待ちだよ。とにかく情報が少なすぎるのだ」
島「(視線を長官へ)・・・対応が遅れれば前回と同じになります」
(画面)表情を少しゆるめて顔を向ける藤堂司令長官。
藤堂「・・・分かっているよ。島君。同じ愚は繰り返すつもりはない」

(画面)ヘッドホンをしているスタッフの横顔。・・・表情に変化。後ろを振り返る。

(画面)一番高いボックス通路に立っている藤堂司令長官と島。
(スタッフの声)・・・冥王星からはいりました! メインスクリーンへ全画面表示します!
(画面)一番高いボックス通路に立っている藤堂司令長官と島。・・・顔を上げる両者。
藤堂「・・・予定を12分遅れたな・・・」

(画面)デジタルスクリーン。・・・真横に電磁ラインが走り,歳は40代位の褐色のアンゴラ男性士官が映し出される。
(効果音)電子音。
士官「(ポルトガル語)・・・日本自治区防衛軍司令部へワープ通信伝達しています。映像と音声の確認・・・」

(画面)藤堂司令長官。
藤堂「良好だ。報告をしてくれたまえ」

(画面)スクリーンの士官。
士官「(デスクの書類を見やる)(ポルトガル語)・・・確認完了。報告します。日付と時間は日本自治区のものです。・・・2202年8月6日,20時41分・・・第11番惑星ゼナ外周にて,ゼナ駐留地球監視艦隊が未確認武装勢力単体と軍事交戦。コンタクト時間は約20分間。揚陸艦1隻を残し,他は消息不明。恐らく全艦沈没による壊滅状態と思われます・・・」
(BGM)M−10

(画面)島と藤堂司令長官。
島「・・・! 壊滅・・・!」
藤堂「・・・わずか20分でかね・・・?」

(画面)スクリーンの士官。
士官(淡々と)(ポルトガル語)・・・空間へワープアウトしてきた未確認武装勢力をゼナ基地が発見認識が同日19時07分。監視艦隊27隻が基地を出撃したのが同日20時04分。艦隊から当基地へ連絡が入ったのはこれが最終です。その後,当基地でのリアルタイムの追跡はできなくなりました」

(BGM消える)
(画面)藤堂司令長官。
藤堂「生還は揚陸艦1隻だけかね。ゼナ基地への被害状況はどうなっているのだ」

(画面)スクリーンの中で少し喉を詰まらせる仕草の士官。
士官「・・・(ポルトガル語)・・・ここからはゼナ基地所属宇宙揚陸艦レムナント乗務アメリカ空間騎兵隊隊長ソマリア・ギルの報告を要約します。・・・監視艦隊が出撃して35分後,基地待機の空間騎兵隊より,”待て”の送信後,約2分後に,監視艦隊と未確認武装勢力とのコンタクトを確認。さらに7分後,監視艦隊からの通信傍受に成功。明らかに艦隊は攻撃を受けており,送信のみの交信不能状態。しかしなぜか艦隊は未確認武装勢力との交戦を放棄している様子だったとのことです」

(画面)島と藤堂司令長官。

(画面)スクリーンの士官。
士官「(ポルトガル語)・・・異変を確認するため基地を出撃した揚陸艦レムナントは同艦進路方向12万宇宙キロにて巨大な・・・ここであえて巨大なと表現させていただきますが,同艦が巨大なエネルギー反応を感知。数値は記録されていませんでした。ジャンルはタキオンです」

(画面)目を見開く島のアップ。

(画面)スクリーンの士官。
士官「(ポルトガル語)・・・エネルギーは同艦に対してではなく最初よりゼナ基地へ目標としていたと思われ,同艦をかすめてゼナ北極点に着弾。同惑星北半球半径350キロ四方を消滅させた模様。ゼナ基地も同様です。・・・報告は以上です。不備があればどうぞ」

(画面)島と藤堂司令長官。両者の顔色に明らかに変化が見られる。
島「(前へ)・・・そのエネルギーを発射した武装勢力は・・・? その後の進路はどうなっているんだ」

(画面)スクリーンの士官が顔を上げて間を置く。
士官「(ポルトガル語)・・・シマ提督。そのエネルギーと未確認武装勢力との関連は確認されてはいませんが・・・」

(画面)島。
島「回答を報告せよ」

(画面)スクリーンの士官。
士官「(ポルトガル語)・・・未確認武装勢力のその後の進路は不明です。シマ提督」

(画面)島。
島「武装勢力は単体とのことだが,規模は? 宇宙艦クラスなのか。それとも要塞クラスか」

(画面)スクリーンの士官。
士官「(ポルトガル語)・・・ソマリア・ギル本人も詳細はつかめていません。データーをとる前にエネルギー攻撃を受けて,レムナントのデータバンクが損傷しています。残念ながら修復は望めません」

(画面)軽く息を吐く島。

(画面)藤堂司令長官。
藤堂「・・・ご苦労だった。ただちにこれより検討会議にはいる。追って連絡を入れる」

(画面)スクリーンの士官。
士官「・・・(ポルトガル語)トウドウ司令。連合艦隊は援軍をよこしていただけるのか?」

(画面)藤堂司令長官。
藤堂「・・・今,各自治区艦隊司令官がここへ全員ネット集結している。ただちに編成し,連絡を入れるつもりだ。そちらも異変を察知次第,速やかに当司令部へ報告するように」

(画面)スクリーンの士官。
士官「(ポルトガル語)・・・了解した。トウドウ司令。シマ提督。・・・通信おわり」
(スクリーン表示消える)

(画面)手前に藤堂司令長官,向こう側に島。画面左方向へ顔を向けている。藤堂司令長官へ顔を向ける島。
島「・・・確かゼナ監視艦隊は昨年の土方前司令のことがあってから大幅に軍備を増強したのではなかったのですか?」
藤堂「(視線変えず)・・・波動砲装備の戦艦,駆逐艦が20隻以上配備されていたはずだよ」
島「それがたった20分で壊滅するなどとは・・・」
(画面)藤堂司令長官のアップ。
藤堂「(首を傾げる)・・・未確認武装勢力の実態がつかめないことにはどうにもならないな。しかも所在が把握されていないというのも頭が痛い問題だよ。冥王星へ援軍を送るにしても地球本星の警備を手薄にする目的の可能性も捨てきれない」
(画面)島。
島「・・・罠(わな)だということですか」
(画面)藤堂司令長官のアップ。
藤堂「それと,もうひとつ気になることがある」
(画面)島。
(画面)横をあおぐ藤堂司令長官。
藤堂「・・・なぜ,監視艦隊は,その武装勢力と。 ”戦わなかったか” だ」

(画面)司令部会議室。しかしそこには藤堂司令長官と島ともうひとりが背中を見せて座っているだけで彼らの前のテーブルには誰も座っていない。テーブルの上には大きなディスプレイが彼らの正面に1台設置されている。ネット会議のシステムである。発言する人間が映し出されて実際は多数の他の出席者たちがそれを傍聴する。今回出席する各自治区艦隊司令官は,ヨーロッパ52自治区。アフリカ53自治区。中東15自治区。アジア22自治区(日本自治区を含む)。大洋州14自治区。北米2自治区。中南米33自治区,計191名。ネット会議でなければとても集まりきれない人数である。

(画面)藤堂司令長官と島が並んでる横にもうひとり50代前半の士官が座っている。
(画面)その士官のアップ。白髪がきれいにまとめられており,がっちりとした体格。
(字幕)日本自治区艦隊司令官 山南浩志(画面下部横文字)
山南「(横のふたりを見やる)・・・では会議を始めます」
(画面)山南の右手がキーボードのキーを押す。
(効果音)プッシュ音。電子音。

(画面)ディスプレイに40代男性が映し出される。
(字幕)フランス自治区司令官(地球連邦連合艦隊副司令官) ジーザック・ガブリエル(画面下部横文字)
ジーザック「(仏語)・・・やはり,冥王星基地の報告だけでは情報不足の感は否めませんな。せめて武装勢力の実体でもつかめていればよかったのですが」

(画面)藤堂司令長官。
藤堂「あまりにも事が早く終結してしまったのだ。わずか20分そこそこでは充分な情報収集は不可能だ」

(画面)ディスプレイのジーザック。
ジーザック「(仏語)武装勢力が単体だったということでしたな。白色彗星の再来という可能性は・・・?」

(画面)藤堂司令長官。
藤堂「・・・否定はできないが,ただあのクラスならば冥王星基地からでもその正体を確認することは容易だったはずだ。それにあまりにも姿の消し方があざやかすぎる。我々の知識の範囲内で考えるならば白色彗星ならばあのような行動パターンは考えにくい」

(画面)ディスプレイに30代女性士官が映し出される。
(字幕)中国自治区司令官 チャオ・リーフィ(画面下部横文字)
チャオ「(中国語)・・・監視艦隊は27隻だったと聞いている。武装勢力が要塞クラスでないとしたならば,たった1隻で艦隊を壊滅させたというのか? それは物理的に不可能ではないのか? 確かに波動砲装備の戦艦クラスならば,ある程度の戦果は期待できるかもしれないが,それにしても壊滅というのは極端すぎる。しかも監視艦隊は波動砲を装備していたはずだ。今の性能ならば150秒もあれば発射できる。20分も手をこまねいてやられるのを待っていたというのか」

(画面)顔を向ける島。
島「チャオ司令。信じられないが,実はその可能性が高いんだ」

(画面)にらみつけるチャオ。
チャオ「(中国語)・・・宇宙戦艦ヤマトの元パイロットにおたずねする。ヤマトは七色星団宙域においてガミラス艦隊とただ1隻で戦い,勝利したと聞く。しかしその勝利はあくまでも偶然の産物であった。違いますか? 本来,正面からの艦隊戦は消耗戦にほかならない。物量の違いが直接勝利の要因となるのは常識の範囲だ。武装勢力が相手の油断を当てにして艦隊へ1隻で戦いを挑むなど・・・」

(男の声)・・・あまり,かみつくなよ。チャオ。
(画面)ディスプレイに青年士官が映し出される。
(字幕)朝鮮自治区司令官 ユン・スンジュン(画面下部横文字)
ユン「(ハングル語)・・・中国艦隊は確かに連合艦隊最大の艦艇数だけど,発言の時間は平等にいこうや。お後(おあと)がつかえてるんだ。さてと。(肘をつき前のめり)・・・ここで分からないことを色々吟味(ぎんみ)していても時間の無駄ってもんだ。これからどうするかを考えた方が生産的だぜ。どうしたもんかね? 総合司令長官殿・・・?」

(画面)黙っている島と藤堂司令長官と山南の斜めアングル。
藤堂「実は冥王星基地から援軍の申し出を受けているのだよ。しかし今回の一件はどうも腑に落ちない事が多すぎる・・・」

(画面)ディスプレイのユン。
ユン「(人差し指を軽く眉間に)(ハングル語)・・・申し訳ないが藤堂司令。俺は島提督にうかがっているんだ。(手を下ろす)・・・今回の一件は確かに情報不足だ。しかしこれだけは間違いない。その相手は。俺たちの仲間を大勢殺している。これは厳然(げんぜん)とした事実だ。その認識はしてくれているのかな? ゼナを壊滅させたやつは今もどこかに潜んでいる。今は何もしてきていない。・・・今はだ。もしこれがゼナ壊滅から時間をおかずに地球本土まで攻撃してきていたら,こんな会議などしている余裕などあったのかな?」

(画面)息をのむ島のアップ。

(画面)ディスプレイのユン。
ユン「・・・殺された仲間は軍人だ。こうなる事もある程度は覚悟していただろう。・・・しかし地球本土にいるのは民間人だぞ。俺たちができない色んな仕事をして地球経済を支えてくれている人たちだ。当然殺される事など考えてはいない。それは俺たちもだ。俺たちの存在価値はその人たちを守ることで認められるんじゃないのかい? さてどうだ?」

(画面)島のアップ。

(画面)ディスプレイに髭面の年配の男性が映し出される。
(字幕)ドイツ自治区司令官 ブルクハルト・ベッケンバウアー(画面下部横文字)
ブルクハルト「(独語)・・・私どもの艦隊に出撃命令をいただきたい。シマ提督。そもそもこの会議は今回の有事に対する対応策を検討するものであるはずだ」

(画面)島のアップ。

(画面)ファッショングラスをかけている男性士官。
(字幕)アメリカ自治区司令官 スミス・オースチン(画面下部横文字)
スミス「(英語)・・・ご指示願おう。シマ提督。前回の失敗は繰り返したくはないのだ」

(画面)褐色の肌に白い髭の男性士官。
(字幕)インド自治区司令官 メーナカー(画面下部横文字)
メーナカー「(ヒンディー語)・・・あなたは地球市民の人気が高い。あなたの言動行動には大変影響力がある。今回の一件では子供から老人まで皆,あなたの決断に注目している。しかも即急に。しかし,もちろん軽率な判断は私どもの望むところではないが・・・」

(画面)細面の士官。
(字幕)スペイン自治区司令官 エドゥ・アスタルロア(画面下部横文字)
エドゥ「(スペイン語)・・・スペイン艦隊は太古の時代より無敵であった。ガミラス大戦では日本艦隊に遅れをとったが,本来艦隊戦は我らの専売特許なのだ。今回はぜひとも我らにお任せ願いたい」

(画面)青い瞳の静かな面持ちの士官。
(字幕)ロシア自治区司令官 アレクセイ・イヴァノフ(画面下部横文字)
アレクセイ「(ロシア語)・・・恐らくここに集まっている者たちは皆同じ意見だろう。シマ提督の言葉を待っているのだ。もちろん我がロシア軍も同じである・・・」

(画面)考え込んでいる島の様子。

(画面)山南を手前に藤堂司令長官,島を斜めからのアングル。
藤堂「・・・諸君の自治区方針を確認した。全員一致か。確かにあまり検討に時間を費やす問題ではない。15分間の休憩をとる。方針を決定後,具体的な指示をする。待機していてくれたまえ」

(画面)ディスプレイに金髪のショートカットの女性士官。
(字幕)イギリス自治区司令官  ジーン・アボット(画面下部横文字)
ジーン「(英語)・・・シマ提督。今回の有事がガトランティスであるという明確な根拠はお持ちなのか? 戦争には戦争がつきまとってくる。ガミラス大戦がきっかけとなって,我が地球がガトランティスのターゲットになっていたとしたならば,同じように今回にも第3の敵の可能性は考えられるのではないか」

(画面)島のアップ。

(画面)別室のテーブルをはさんでソファーに腰かけている藤堂司令長官,島,山南。テーブルにはコーヒーカップがそれぞれ彼らの前に置かれている。

(画面)下を向いている島。

(画面)視線を向ける藤堂司令長官。
藤堂「何を考えているのかね。島君」

(画面)コーヒーを飲む山南。
山南「(コーヒーを置く)・・・正直,あまり気に入りませんな。各自治区の司令官たちの態度がです。年齢が若いからといって島提督を軽んじられているように見受けられる。自分たちの主義主張を押し付け,自分たちの思い通りの方向へ議論をもっていこうとしている。先ほどの冥王星基地の司令官の受け答えも納得がいきません。上官の質問に対して質問で返すなど無礼極まりない。(首を振る)これでは地球防衛艦隊の頃と少しも変わらないではないか」

(画面)ソファーに深く寄りかかる藤堂司令長官。
藤堂「(顔を向ける)・・・島君はどう感じたかね?」

(画面)顔を上げる島。
島「・・・山南司令。私が見たところでは,明らかに地球防衛艦隊の頃とは違っていると感じましたが・・・」

(画面)山南。

(画面)テーブル面を見る島。
島「・・・1年前,古代には許されなかった事がこの私には許されている。彼らの質問を受け,その質問に答えられるという事です。彼らは皆,私の言葉を聞きたがっていました。1年前では考えられなかった事です。ガトランティスとの一件が間違いなく教訓になっている証拠ですよ」

(画面)黙っている山南と藤堂司令長官。

(画面)島のアップ。
島「彼らは知りたがっています。ハードウェアや物量が明らかに劣っていたヤマトがなぜあそこまで戦えたのか。そして今回は全く逆の事が起こった。彼らはその自信の裏側でこの私に不安を訴えていたのです。・・・私は彼らの気持ちに応えなければならないと思っています」

(画面)藤堂司令長官。
藤堂「(首を傾げる)・・・気持ちに応える・・・?」

(画面)はっきりと顔を向ける島。
島「長官。間違いありません。これはガトランティスです。武装勢力はわざわざゼナを狙ってきました。挟撃(きょうげき)を恐れ外側から切り崩していく手口は前回と似通っています。それに我らの操作網に引っかからずに姿を消せたのは太陽系の警戒ポイントを彼らが熟知している証拠です。一度太陽系へ侵入してきた経歴があるからこそできる技です。今の警戒態勢で過去に太陽系へ進行してきたのはガトランティス以外にはありません。・・・それは逆に言えば我々の今の警戒態勢では前回と同じ轍(てつ)を踏む可能性が非常に高いという事でもありますが」

(画面)藤堂司令長官と山南。

(画面)島。
島「・・・ガトランティスは外側を無防備にするまで地球へは進行してはきません。外周惑星基地を徹底的に狙ってくるでしょう。彼らは地球本星に比べて外周惑星の軍備が小規模である事を知っているのです」

(画面)山南が身を乗り出す。
山南「それでは,やはり連合艦隊から援軍を出すしかないか・・・」

(画面)両手を握り合わせ両肘を膝へ乗せる島。
島「山南司令。外周艦隊の利点は地球よりも早くリアルタイムに危険を察知する事ができることと,地球が攻められた時に敵の背後に回り込んで攻撃をしかけられるという点です。今回,ガトランティスにはその利点はあてはまらない・・・。彼らにとっての外周艦隊は単なる戦力分散であり,各個撃破の絶好の標的にしか過ぎません」

(画面)目を見開く藤堂司令長官。
藤堂「・・・島君。・・・君はまさか・・・」

(画面)顔を向ける島。
島「・・・長官。ヤマトがなぜ,あそこまで戦えたのか・・・。私は確信しています。ヤマトには,あのガミラスにもガトランティスにもなかったものがあったと。ひとつの同じ目的のためにお互いを無条件で信じた団結力です。それは人間だけではありません。人間が使う設備,乗り物,兵器,拳銃一丁にいたるまでヤマトのクルーは全てを信じていました。古代だって最後の瞬間までヤマトを信じていたはずです。ハードウェアへの過信は確かに危険です。しかしそれさえも失くしてしまえば素手になってしまう。大事なものを守るために戦うには絶対に素手になってはいけません。私は1年前にそれを,いやというほど見せつけられた・・・。集めるのです。戦うための全てのものを。ここへ。です」

(画面)膝をテーブルへ打ちつけて立ち上がる山南。コーヒーカップが転がり中の液体がこぼれる。
(効果音)カップがひっくり返る音。
山南「・・・! 島提督! あなたは外周部隊を全て撤収(てっしゅう)させるおつもりか! 敵を無防備のままに地球本星まで迎え入れるというのか! それが何を意味するか! 背水の陣をしいて仮に敗れるような事があれば今度こそ地球はおしまいですぞ!」

(画面)顔を上げる島。
島「・・・ゼナを襲った武装勢力は単体でした。なぜ前回のように艦隊を繰り出してこなかったのか・・・。そしてなぜすぐに姿を消したのか。それは自分たちの規模を我々に悟らせるのを遅らせるためだったのではないでしょうか。つまり裏を返せば今度の規模は我々の想像をはるかに超えるものなのかも知れません。前回のガトランティスには驕り(おごり)があった。しかし今回は違う。彼らは全力で攻めかかってくるでしょう。山南司令。気づいた時には遅かったではもう済まされないんですよ」

(画面)つまる山南。座り込む。
山南「・・・しかし・・・」

(画面)あごを触れる藤堂司令長官。
藤堂「・・・確かに危険な賭けではある。しかし敵の予想を外す可能性は期待できる。だが,何の情報も得られないままに敵を本丸にまで進行させるのはいかがなものか・・・」

(画面)島。
島「長官。冥王星艦隊にだけは情報収集の偵察任務を指示したいと思うのですが」

(画面)藤堂司令長官。

(画面)島。
島「恐らくガトランティスの次の標的は冥王星基地です。直前の敵に背中を向けての撤収は逆に危険を増大させます。それにあそこには電波のワープ実験をした通信設備がそのまま残されています。ワープ通信ならば迅速な報告が可能です」

(画面)藤堂司令長官。
藤堂「・・・しかしそれではあまりにも任務が過酷すぎやしないかね」

(画面)身を乗り出す島。
島「長官。私を冥王星へ行かせてください」

(画面)さすがに驚きを表情に表す藤堂司令長官と山南。
山南「・・・今,何とおっしゃられた!? あ・・・あなたは,ご自分の立場を分かっておられるのか! あなたは地球連邦艦隊の総司令官なのですぞ! 総司令官が最前線へ出撃していくなどとは聞いたことがない!」

(画面)顔を向ける島。
島「私の今までの経験は全て最前線のものです」

(画面)おだやかな表情の藤堂司令長官。
藤堂「・・・適任者は他にいくらでもいると思うがね。君は立場上,大きな責任を背負っている。何の理由もなく,ただ行きたいというだけならばそのような個人的なわがままは許されないのだ」

(画面)同じようにおだやかな表情の島。
島「・・・私が最適任なのですよ。長官。ガトランティスと戦って生き残っている者は私を含めてわずかです。しかもその者たちは全てアンドロメダのクルーです。情報を集めるための術(すべ)はある程度経験済みです。他の者では冥王星基地の部隊と合流してもガトランティスとの実戦経験がない。長官。これはわがままでも思いつきでもありません。任務を成功させるための一番適切な方法なのです」

(画面)藤堂司令長官と山南。

(画面)島。
島「他の者を派遣させても結局はこちらから指示を出すようでは,あまりにも距離がありすぎます。現地では臨機応変(りんきおうへん)な指示が出せないと手遅れになるかも知れません。ゼナの二の舞は絶対に避けたいのです。実戦経験は生き残らなければ得られません。生き残ったソマリア・ギルは貴重な存在です。私が彼と会えばなぜ監視艦隊が壊滅したかの理由にたどり着けると確信しています。そこで得られた情報は全艦隊へ指示する私の立場にけしてマイナスになるとは思いません。長官。これが今回の会議において私が各自治区司令官に応える唯一の回答だと信じています。長官。あなたの言葉は忘れてはいません。私は必ず生きて還ってきます。この私を信じて行かせていただけませんか」

(画面)藤堂司令長官のアップ。

(画面)部屋のドアを開けて制服の若者が入って来る。
(効果音)ノックの音。
若者「会議再開のお時間です」

(画面)部屋を出て行く山南と島。後に残されている藤堂司令長官。
(画面)うつむいている藤堂司令長官のアップ。顔を上げる。
(画面)山南と島の後ろ姿。
(画面)小さなため息の藤堂司令長官。
藤堂「(つぶやく)・・・やはり・・・彼も沖田の子供なのだな・・・」

(画面)夜。自治区総合病院の全容。

(画面)病院の診察室。デスクに向かってカルテを書いている佐渡蔵造医師。
佐渡「(振り向く)・・・全くあなたって人は何を考えているのか・・・」

(画面)椅子に座って軍服のボタンを締めている島。
島「出撃は35時間後だ。担当への引継ぎを頼むよ」
(画面)ため息をつく佐渡医師。
佐渡「島さん。ここのところ激務が続いて,治療の時間も遅くなっています。睡眠時間もままならないはずですが? 確かにあなたはこの半年間,素直に私の治療に耐えてきた。しかし明らかにあなたの身体は半年前よりは弱っている。ここで最前線なんかに出て行ったら治療を継続させるだけでも一苦労ですよ」
(画面)微笑む島。
島「大丈夫。なぜなら,とっくに死んでいるはずの私をまだこんなに元気にさせてくれている名医が私と同行するんだからね」
(画面)当惑する佐渡医師。
佐渡「・・・冗談は勘弁してもらいたいですね。何とかならないんですか? あなたの立場ならば,違う人に行かせる事もできたはずですよ」
(画面)軍帽を脇にかかえて立ち上がる島。
島「・・・決まってしまった事だからね」
(画面)右手中指と親指でこめかみを押さえる佐渡医師。
佐渡「あなたが決めた事でしょう」
(画面)島。
島「佐渡先生がいるから決める事ができたんだ。当てにしているよ,先生。(笑顔で背中を向ける)」

(画面)苦みばしっている佐渡医師のアップ。
(効果音)島の足音。閉まるドアの音。
佐渡「・・・じっちゃん・・・何となく気持ちがわかってきたよ。・・・ヤマトの連中はやっかいだな。全く」
(BGM)M-12

(画面)病院の廊下を歩いている島。
(効果音)響く足音。
(画面)立ち止まる島。

(画面)私服姿の森 綾乃が立っている。・・・頭を下げる。

(画面)微笑んで歩き始める島。
島「・・・森さん」
(効果音)足音。
(BGM)M−12

(画面)綾乃に並びかける島。
島「今,お帰りですか?」
綾乃「・・・はい。(うなずく)」
島「・・・行きましょうか」
綾乃「あ,はい」

(画面)並んで歩いている島と綾乃。
(効果音)足音。
綾乃「・・・あの,提督」
島「はい」
綾乃「・・・私をアンドロメダのクルーから外したそうですね」
島「(微笑んで綾乃を見る)・・・さては待ち伏せしましたね」
綾乃「(口を尖らせる)・・・人聞きが悪いです。提督」
島「ははは・・・。すみません」
綾乃「なぜですか」
島「(顔を正面へ)森さん。食事はまだですか?」
綾乃「(島を見上げる)え。あ・・・はい」

(画面)島のアップ。
島「おなかが空きました。ここのところ身体の調子がいいみたいです」
(画面)綾乃のアップ。

(画面)レストランの窓際のテーブルに向かい合わせで座っている島と綾乃。ナイフとフォークで食事をしているふたり。窓の外は近代都市の夜景が広がっている。
(画面)口を拭う島。
島「・・・明日は久々の休日なんですよ。実家に帰ってのんびりしようと思っています。弟の次郎が宇宙戦士訓練学校へ入学が決まりましてね。ちょっとしたパーティをするらしいんだ」
(画面)ナイフとフォークを置く綾乃。
綾乃「・・・弟さんはどちらを専攻なされるんですか」
(画面)ワイングラスを置く島。
島「パイロット科だそうです」
(画面)微笑む綾乃。
綾乃「・・・提督と同じ道を選んだんですね」
(画面)苦笑する島。
島「そんな同じだなんて。あいつは俺と違って優秀だからな・・・」
(画面)綾乃。
綾乃「(くすくす)・・・今,”俺”って言ったでしょう?」
(画面)目を丸くする島。
島「(さらに苦笑)・・・あまり酒は強くないからな・・・」
(画面)笑顔の綾乃。
綾乃「そんなにくだけた提督を見るのは初めてです。よほど弟さんがお可愛いんでしょうね」
(画面)島。
島「・・・できればあまり軍人にはなってもらいたくないんだがな・・・」
(画面)見つめる綾乃。
(画面)視線を下へ向けている島。
島「・・・俺のころは地球が追い詰められていたから選択の余地はなかった。古代だって本当は軍人にはなりたくなかったんだ。だけど,あの頃はそうするしかなかった。でも今は違う。連邦国家になって防衛軍も整備された。無理に軍人になる必要はないのに・・・」
(画面)手の甲にあごを乗せる綾乃。
綾乃「・・・弟さんは軍人になることを無理はしていないと思います」
(画面)うつむいている島。
島「・・・それが問題なんだよな」
(画面)手の甲にあごを乗せている綾乃。
(画面)うつむいている島。
(画面)手の甲にあごを乗せている綾乃。
綾乃「(怒気)・・・それは私も同じですよ。提督」
(BGM消える)
(画面)顔を上げる島。

(画面)手を外して顔を突き出す綾乃。
綾乃「・・・提督!」
(画面)あごを引く島。
島「・・・お・・・」
(画面)肩を上げる綾乃。
綾乃「・・・なぜ,私をアンドロメダのクルーから外したんですか?」
(画面)島。口を開きかける。
(画面)たたみかける綾乃。
綾乃「私が女だからですか? 女でも戦士として乗り組んでいる人はたくさんいます。私が民間人だからですか? 艦(ふね)のエンジニアだって民間人です。医療関係だって民間人です。危険な戦場へ行くからですか? どのみちガトランティスは地球を目指しているんでしょう? 私は地球に残って逃げ回るなんていやです。私は提督の担当の看護士です。この半年,私はずっと提督を見てきました。他の人に提督を任せることなんてできませんし,大体私の代わりなんてできっこありません!」
(画面)反論をあきらめている島。
(画面)テーブルに両手をついて,身を乗り出す綾乃。
綾乃「・・・アンドロメダに乗せていただけないんだったら宇宙遊泳でも何でもしてでも後ろから連いていきますからね! 提督!」

(画面)レストランの窓際のテーブルに向かい合わせで座っている島と綾乃。周りの客がふたりへ視線を向けている。

(画面)目を丸くしている島。
(画面)肩で息をしている綾乃。
(画面)目を丸くしている島。・・・再び苦笑する島。
島「・・・やれやれ。俺が言おうとしていた事を全部言われてしまった・・・。俺ってバリエーション少ないからなあ。本当に森さんって雪さんによく似ているよな。古代が雪さんをヤマトから降ろせなかった気持ちがよく分かるよ・・・」
(画面)肩で息をしている綾乃。
(画面)うつむく島。
島「・・・でも,結局はそれが雪さんを死なせることになってしまって・・・」
(画面)綾乃。
綾乃「私は死にません!」

(画面)レストランの窓際のテーブルに向かい合わせで座っている島と綾乃。周りの客がふたりへ視線を向けている。

(画面)周囲から視線を戻して両手を上げる島。
島「・・・あ,いや。とにかく了解したから,声を小さくしてみようか。うん。死なない死なない」
(画面)にらみつける綾乃。
綾乃「・・・じゃあ問題ないじゃないですか」
(画面)落ち込む島。

(画面)見つめている綾乃。
(画面)うつむいている島。
(画面)眉毛をすっと上げて,のぞき込む綾乃。
綾乃「・・・私,雪姉さんに似ているんですか?」
(画面)うつむいている島。
(画面)のぞきこんでいる綾乃。
綾乃「・・・ヤマトでは雪姉さんもこんな感じだったんですか?」
(画面)島。
島「(うつむいたまま)・・・はい」
(画面)にこにこする綾乃。
綾乃「(目を細める)・・・でも好きだったんでしょお?」
(画面)肩をぎくりとさせる島。
(画面)さらにのぞき込む綾乃。
綾乃「古代さんから聞きました。最初に雪姉さんを見初めたのは提督だったんですって?」
(画面)真っ赤になって顔を上げる島。
島「あ・・・! い,いや!」

(画面)レストランの窓際のテーブルに向かい合わせで座っている島と綾乃。周りの客がふたりへ視線を向けている。

(画面)姿勢を戻して笑顔を傾ける綾乃。
綾乃「ふふ。私を仲間はずれにしようとした罰です。これで許してあげます。提督」
(画面)頭から湯気を出してうつむいている島。
島「(小声)・・・君が敵でなくてよかったよ・・・」

(画面)真夏の太陽が照りつける青空。きらめく海沿いの湾岸道路。入道雲をわき目に疾走している2201年型BMW。・・・アングルが回転してBMWの後部からの描写。画面はBMWに固定。次第にアングルの速度が遅くなり,ゆっくりと遠ざかって行くBMW。
(効果音)エンジン音。タイヤ摩擦音。
(画面)運転席を正面から。ハンドルを握っている島。

(画面)部屋の一室。個人部屋のようだ。床はフローリングで壁は淡いクリーム色。隅にはシングルベッドが置かれていてテレビや卓上コンピューターが並ぶ。木目調のデスクに向かっているひとりの少年。年齢は15歳前後。横半身の描写。横から見たその顔立ちはやはり島 大介の面影がうかがえる。
(画面)少年を正面から。
(字幕)島 次郎(画面下部横文字)
(画面)次郎が持っている額入りのアナログ写真。そこにはイスカンダル作戦直後のヤマト戦士たちの雄姿が写っている。
(画面)次郎のアップ。
(母親の声)・・・じろう! にいさんが帰ってきたわよ! おりてらっしゃい!
次郎「(振り向く)・・・はあい!(席を立って後ろを向く)」

(画面)階段を下りてくる次郎。下まで下りきらないうちに何かに気づき立ち止まる。目を大きくする次郎。
次郎「(笑顔)・・・にいさん!」

(画面)父親と母親の背中をはさんで,軍服に軍帽の島 大介が笑顔で玄関に立っている。
島「・・・次郎! 大きくなったなあ!」

(画面)父親と母親の間に立つ次郎。
次郎「兄さん・・・!」

(画面)軍帽を取る島。身構える。
島「・・・お? 抱きついてくるかと思って腰に力を入れていたんだが・・・?」
(画面人差し指で鼻をこする次郎。
次郎「よしてくれよ。僕はもう子供じゃないんだぜ」
(画面)笑顔の島。
島「ははは・・・。失礼した」
(画面)照れくさそうに頭を傾げる次郎。
次郎「・・・兄さん。その代わりに,ちょっとやりたい事があるんだけどいいかな・・・?」
(画面)まばたきする島。

(画面)直立姿勢をとる次郎。
次郎「(一息つく)・・・地球連邦防衛軍連合艦隊総司令長官 島提督に敬礼!」
(画面)口を丸くしている島。
(画面)下士官敬礼をする次郎。
(画面)口を丸くしている島。・・・一瞬笑みを浮かべてすぐに真顔で上官敬礼する島。手を下ろす。
(画面)敬礼を解く次郎。照れ笑い。

(画面)優しく笑いかける島。
島「・・・立派になったな・・・」
(画面)見上げている次郎。
次郎「・・・おかえり。兄さん」
(画面)島の笑顔。
島「ただいま」

(画面)夜空。家の屋根に月明かりが照らされている。
(家族の笑い声)

(画面)食卓に並べられているごちそうの品々。
(母親の声)・・・全く,今日泊まっていければいいのにねえ。
(画面)テーブルの上座に座っている父親と島。料理を運んでくる母親。島の横には次郎が陣取っている。
次郎「(母親へ)・・・駄目だよ。母さん。兄さんは明日,アンドロメダで出航しなきゃいけないんだから。ガトランティスはすぐそこまで来ているんだからね。兄さんが行かなきゃガトランティスを撃退できないんだ」

(画面)振り向く父親。
父親「・・・大介。政府から伝達がきたんだが,私たちはまたあの地下都市のあなぐらへ戻らなければならないのかね・・・?」
(画面)皿と箸を持っている島。
島「(笑み)・・・あくまでも安全対策です。心配はいりませんよ。父さん」
(画面)母親。
母親「去年は地下へ行かなかったけどガトランティスの船がすぐ近くまで飛んできたし。やっぱり地下に行った方が安全なのよね」
(画面)母親へ顔を向ける父親。
父親「・・・あの時は艦隊が全滅したから地球まで来たんだろう? (振り向く)今回も同じ事を想定しているのか? 大介」
(画面)むきになる次郎。
次郎「何言ってんだよ,父さん! 艦隊が全滅するわけないじゃないか! 兄さんが指揮官なんだよ! 縁起でもないこと言うなよ!」
(画面)皿と箸を置く島。
島「・・・父さん。母さん。次郎。何も心配する事はないよ。前回はガトランティスがどういう敵かも分からなかった。だけど今回は大丈夫。もう敵の状況はほとんど分かっているんだ。それに今度の地球艦隊は今までで最大規模の艦艇数だ。最強といってもいい。地球には指一本触れさせるつもりはないよ」 

(画面)見つめている次郎。
次郎「・・・兄さん。何かいつもと違うな・・・」
(画面)再び皿を取る島。
島「・・・そうか?」
(画面)次郎。
次郎「兄さんはいつだって何も考えずに突っ走る僕に,もっと慎重に考えろっていつも言ってたから・・・」
(画面)笑顔の島。
島「実はここまでくるのに散々慎重に議論したんだ。そのおかげで自信の持てる確信を得たんだよ。今ごろになって慎重に考えているぐらいだと遅すぎるだろう? ただ,全市民を地下都市へ避難させるのは俺の案なんだ。人によっては少し慎重すぎるんじゃないかと言われそうだけどね」

(画面)次郎のアップ。

(画面)おだやかな表情の島。
島「・・・次郎。お前に言っておきたいことがあるんだ」
(画面)次郎。
次郎「・・・うん。何?」
(画面)島。
島「お前のこれからの戦士としての心構えだ。俺の尊敬する沖田十三さんの言葉だよ。いいかい? ”明日のために今日の屈辱に耐えろ。死んではいけない。行って,そして帰ってくるのだ。”・・・分かるかい?」
(BGM)ヤマトより愛をこめて(曲のみ)
(画面)黙っている次郎。
(画面)首を傾げる島。
島「・・・どうした? 次郎?」
(画面)顔を上げる次郎。
次郎「・・・でもヤマトは帰ってこなかったよ・・・」
(画面)微笑む島。
島「・・・俺たちは帰ってこられた。いいかい,次郎。死んではいけないよ。約束だ。生きようとする者の命こそ,敵を倒す最大最強最後の武器となる。死を覚悟した者の命など敵にとっては怖くも何ともない。敵に向かっていった古代はあの時死のうとは考えてはいなかった。生きようと考えていたんだ。どんな事があっても,このことだけは覚えておいてくれよ」

(画面)夜空。家の屋根に月明かりが照らされている。

(画面)実家の玄関。直立している島。
(画面)実家の中から並んで立っている父親。母親。次郎。
(画面)軍帽をかぶり,敬礼する島。
島「・・・父さん。母さん。次郎。・・・それでは行ってまいります」
(画面)実家の中から並んで立っている父親。母親。次郎。・・・うなずく父親と母親。
(画面)敬礼したまま視線を向ける島。
(画面)見つめている次郎。
(画面)微笑む島。・・・敬礼を解く。
(画面)頭を下げて,きびすを返す島。・・・玄関を出て行く。

(画面)立ちつくしている次郎。
(画面)次郎のアップ。
次郎「・・・兄さん!(走り出す)」

(BGM)ヤマトより愛をこめて(曲のみ)
(画面)実家の玄関先。外へ出る島。後ろから次郎が駆け寄る。
次郎「兄さん。いつ頃また帰って来れる? 僕の訓練学校の入学式には来てくれる?」
(画面)振り向く島。
(画面)すがるような表情の次郎。
(画面)優しく見つめる島。
島「(微笑み)・・・もちろん。・・・もちろん行くよ。次郎」

(画面)次郎のアップ。

(画面)気さくに手を上げる島。視線を残しながら背中を向ける。
(画面)身じろぎしない次郎。
(画面)歩き遠ざかって行く島の後ろ姿。

(画面)身じろぎしない次郎。・・・後ろから母親が姿を見せる。
母親「どうしたの? 次郎・・・?」

(画面)島の後ろ姿は見えなくなっている。

(画面)母親を振り返らない次郎。
次郎「・・・に・・・。にいさんが・・・(涙が頬を伝う)・・・兄さんが,初めて僕に嘘をついたんだ・・・」

(画面)夜の道路を疾走するBMW。
(効果音)エンジン音。タイヤの摩擦音。
(画面)険しい表情でハンドルを握っている島。
(画面)走り去って行くBMW。
(BGM消える)

(画面)宇宙空間に浮かぶ淡い水色の惑星。隣には多数のクレーターが点在する惑星。
(字幕)冥王星と惑星カロン(画面下部横文字)
(BGM)M−13
(ナレーション)・・・冥王星は西暦1930年,2月18日に発見された太陽系第9番惑星である。海王星の軌道を横切るかたちで恒転する同惑星は「軌道を交差する海王星よりも小規模」との理由で西暦2006年8月24日,当時の国際天文学連合(IAU)により1度は惑星から除外されていたが太陽系境界線の拡大目的により西暦2086年,ゼナとともに惑星として再登録された。直径は2320km。自転周期は153時間。248年かけて太陽を一周する。20世紀末までその存在は太陽系最遠といわれてきたが21世紀初頭にゼナが発見されて,そのさいはてのポジションを明け渡している。冥王星は太陽系唯一の二連星であり,双子星のカロンは西暦1978年に発見されている。冥王星には原生生物が存在し,楕円軌道をえがく太陽最接近時期には氷が解け,冷たい海が形成される。惑星カロンの重力の影響でその地殻変動は今だ活発であり,薄いながらも大気を持っているため軍事的に重要な拠点となり,地球にとってもガミラスにとってもここはガミラス大戦時,最も過激な激戦区となった。日本艦隊の沖田十三と古代 守の”瀬戸際の論争”は,あまりにも有名である。
(BGM消える)

(画面)アングルが冥王星大気圏内へ突入。・・・やがて巨大な人工建造物へアングルが接近。
(字幕)太陽系地球防衛冥王星基地(画面下部横文字)
(ナレーション)・・・地球防衛軍冥王星基地は,かつてのシュルツ提督率いるガミラス軍太陽系方面基地の跡地に建設された。ガミラス同様,地球防衛軍にとってもここの立地条件は基地建設には最適であった。惑星カロンの重力のおかげで凍ることのない海を近くに見渡せ,なおかつ,地球との交信にも影響が少なく,何といっても広大な台地が広がり地盤がしっかりしているため安定した建築物を維持できている。

(画面)巨大なアンテナタワーの建造物の描写。クローズアップ。
(ナレーション)・・・地球防衛軍がこの場所に基地を建設した理由はもうひとつあった。実はここにもガミラス軍のワープ通信装置が設置されていたのである。常にガミラス本星と連絡を取り続けなければならなかったシュルツ提督にとってはそれは必需品であり,ガミラスにとっても太陽系攻略には絶対条件で必要なものであった。日本自治区が有人ワープ航法実験をする以前に電波によるワープ実験を行った際にも敏感(びんかん)にそれを察知することができ,宇宙戦艦ヤマトの号名とその潜伏先を解明,それを破壊するための巨大ミサイルの誘導などガミラスにとっては正にドル箱的存在であったが当時のガミラス副総統ヒスによる「戦って死ね」の通信を最後にシュルツ提督はこのワープ通信装置を使用することは二度となかったのである。イスカンダル作戦の折,ヤマトのクルーがそれぞれの家族との最後の通信を行ったのを皮切りにこの施設は地球防衛軍の管理下におかれている。

(画面)ワープ通信設備内部。背中をみせている通信士へ近づいていくアンゴラ系司令官。
(効果音)内部機械音。
(字幕)冥王星基地司令官 ベルナルド(画面下部横文字)
(画面)振り返る通信士。
通信士「(ポルトガル語)司令。通信がライブです。確認完了」
(画面)通信ボックスへ腰かけるベルナルドの正面。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・日本自治区防衛軍司令部へワープ通信伝達しています。映像と音声の確認」

(画面)スクリーンに藤堂司令長官の姿が映し出される。
(効果音)電波音。内部機械音。
藤堂「・・・良好だ。続けてくれたまえ」

(画面)無表情で見上げているベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・確認完了。正式な命令を受理いたしました。監視任務の具体的な指示を与えてください」

(画面)スクリーンの藤堂司令長官。
藤堂「諸君の任務は戦うことではない。あくまでも敵の動きを我が方へ報告するのみである。まずこれを基本的方針として認識していただきたい。敵と遭遇したら戦わずにその宙域を去ることを最優先の指示とする」

(画面)見上げているベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)了解した。トウドウ司令」

(画面)スクリーンの藤堂司令長官。
藤堂「・・・日本自治区一個艦隊を援軍として,そちらへ差し向ける。到着予定は42時間後だ。だが諸君はその到着を待たずに直ちに基地を放棄。ワープ通信設備のみをアクティブにして艦隊を発進させ,到着する指揮官の指示に従うよう待機せよ。以上だ」

(画面)まゆをひそめるベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・日本艦隊・・・? 冥王星基地はアフリカ自治区連合で構成されている。潤滑な指令を実現させるにはアジアよりもアフリカの方が好都合だが」

(画面)スクリーンの藤堂司令長官。
藤堂「貴官は命令に説明を求めるつもりかね?」

(画面)背筋を伸ばすベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・トウドウ司令。この作戦では我らは孤立する。私は部下たちの命に責任を負っているのだ。今は通常の事態ではない。明らかに敵は我らよりも優位に立っていると推測される。ここは軍規に照らし合わせても責任説明を求めることに何の支障もないものと確信する。到着が42時間後というのも納得がいかない。少し時間がかかりすぎるのではないか」

(画面)スクリーンの藤堂司令長官。
藤堂「その日本艦隊は途中,外周惑星基地への指示と視察,撤退ルートの指示確認を行う予定だ」

(画面)ベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・トウドウ司令。その日本艦隊の指揮官は誰か」

(画面)スクリーンの藤堂司令長官。
藤堂「地球連邦連合艦隊総司令官 島 大介」

(画面)スクリーンの中でしばらく沈黙するベルナルド。
ベルナルド「(沈黙)・・・(ポルトガル語)・・・了解した。トウドウ司令。全ての指示に従う。我が冥王星艦隊は日本艦隊を歓迎する。それでは直ちに準備にとりかかる。・・・幸運を。通信おわり。(敬礼)」
(スクリーン表示消える)

(画面)防衛司令部内部。立ち上がっている藤堂司令長官。
(効果音)施設内機械音。
(スタッフの声)・・・司令長官。
藤堂「・・・(右下方へ顔を向ける)」

(画面)ヘッドマイクをつけているスタッフ。
スタッフ「艦隊の発進準備が98%完了しております。発進時間の最終修正を」

(画面)藤堂司令長官。
藤堂「1時間後。13時45分だ」

(画面)ドック内部。慌しい雰囲気。入り乱れている作業員たち。一部に宇宙戦艦アンドロメダの艦体が見えている。
(効果音)足音。機械音。話し声。金属音。
(アナウンス)・・・業務連絡。発進準備作業の全てのスタッフに告ぐ。本艦発進最終時間13時45分。予定時間10分前には全ての作業を終了し,ドックから退去せよ。・・・本艦発進最終時間13時45分。予定時間10分前には全ての作業を終了し,ドックから退去せよ。

(画面)作業員へ指示をだしている穴井雷蔵教授。上を見上げる。
(画面)穴井教授のアップ。
穴井「(口をへの字にする)・・・全くもって,藤堂めが。相変わらず人使いが荒いわい。宇宙艦1隻の発進前チェックには最低80時間は必要なんじゃぞ。60時間そこそこで終了しろというんじゃからな。しかもまだわしは昼飯も食っとらんじゃないか」

(画面)宇宙戦艦アンドロメダ機関室。計器類を操作している坂本。
(効果音)エンジンアイドリング音。
(画面)歩いて来て,気づく様子の土方影虎機関長。
土方「・・・坂本。エンジンは安定しているようだな」
(画面)振り向く坂本。手前には土方機関長の後ろ姿。
坂本「(笑み)楽チンですよ機関長。性能は大げさになったって基本動作は同じです。しかもほとんどオートマティックですからね」
(画面)左手で額を拭う土方機関長。
土方「アンドロメダの処女航海だ。しかも太陽をはさんで外周惑星に全て立ち寄らなければならないからな。しかも42時間以内にだ」
(画面)片目をつむる坂本。
坂本「・・・ヤマトはもっと過酷でしたよ。ヤマトは手動でエンジンをかけなければいけませんでしたからね。このアンドロメダなら全然大丈夫ですよ。大船に乗った気持ちでいてください」
(画面)苦笑する土方機関長。
土方「・・・何て言ってやっていいのか分からないことを言うんだな」

(画面)宇宙戦艦アンドロメダスタンバイルーム。ユニホームを手で払いながら長倉三郎太が部屋へ入って来る。
三郎太「(にこにこ)・・・隊長。戦闘機の整備は万全っすよ」
(画面)くわえ煙草で視線を細める桂巧隊長。
桂「(煙草を持つ)・・・何を,にこにこしてんだい。三郎太」
(画面)桂隊長が左側。右側へ向き合うように座る三郎太。
三郎太「だって隊長言ってたじゃないっすか。俺たちブラックタイガー隊の真価を発揮するチャンスじゃないっすか。いやいや,まさか旗艦アンドロメダで最前線へ行けるなんてねえ。今,猛烈に感動してるっすよ。さすが隊長だ」
(画面)しかめ面の桂隊長。
桂「俺じゃねえ。提督さんが決めたこった」
(画面)上機嫌の三郎太。
三郎太「さすが提督さんだ」
(画面)煙草を消す桂隊長。
桂「・・・いいか,三郎太。今回の任務は簡単じゃねえぞ。なんせ冥王星以外の戦力はみんな地球に集まっちまって,俺たち艦隊と冥王星艦隊だけが太陽系の果てに取り残されちまうんだぞ。しかもこっちは敵がどんなもんかも分かっちゃいねえ。昔の合戦でいやあ”しんがり”ってやつよ。命が残っていなきゃ,真価もくそもねえんだぞ」
(画面)目を丸くする三郎太。
三郎太「隊長らしくないっすね。ずいぶん弱気じゃないっすか」
(画面)空になった煙草の箱を握りつぶす桂隊長。
桂「そうじゃねえ。これはただの任務じゃねえってこった。これを成功させりゃ,俺たちの名は天下にとどろくってことさ。つまりそれほど難しい仕事ってことよ。やっぱあの提督,相当の肝っ玉だぞ。にやついて浮ついてっと命落とすぞ,三郎太」
(画面)目を丸くしている三郎太。
(画面)立ち上がる桂隊長。
桂「(見渡す)・・・いいか,野郎ども! 気ぃひきしめろよ! 地球に帰ってくるまではお前たちの家族のことも女のことも全部忘れろ! ただ,てめえら自身の命と仲間への信頼のみ頭ぁ中叩っ込んでおけ! 全員命持ち帰って一緒に美味い酒飲もうぜ!」
(画面)桂隊長を真ん中に集まっているブラックタイガー隊隊員たち。一斉に腕を振り上げる。三郎太も一緒。
全員「おおお!!」

(画面)宇宙戦艦アンドロメダ艦長室。防音設備が完備されているらしく,雑音は聞こえない。デスクに向かって座っている島の左後ろ姿。
(画面)島のアップ。何かを見ている様子。
(画面)島の手に持たれている一枚のアナログ写真。そこにはイスカンダル作戦成功直後のヤマト戦士たちが笑顔で写っている。
(画面)島のアップ。
島「(つぶやくように)・・・古代。また宇宙へ行くよ。どうにか間に合ったみたいだ・・・」
(呼び出しブザーの音)
島「・・・(気づき,操作する仕草)・・・島だ」
(相原の声)・・・提督へ通信です。ブリッジへお越しください。
島「わかった」

(画面)宇宙戦艦アンドロメダブリッジ。艦長席からのローアングル。・・・艦長席の真上の天井に開口が開いて天井から床までの後方の壁づたいのレールが動き出し,椅子に座っている島が天井の開口から椅子ごと艦長席へ降りてくる。
(効果音)小さな機械音。
(画面)艦長席へおさまる島。

(画面)通信ボックスから振り向く相原義一。
相原「・・・空母サツマからです。天井パネルに全画面表示します。(スイッチを入れる)」

(画面)振り仰ぐ島。

(画面)ブリッジ天井全体に設置されている巨大パネル。そこに一筋の電子ラインが真横に走り,40歳代の温厚そうな軍人が映し出される。
(効果音)電子音。
軍人「(敬礼)・・・日本自治区九州方面第10管区艦隊所属 空母サツマ指揮官の梶川です。今回アンドロメダとの同行に際しご挨拶申し上げる」

(画面)島。
島「(敬礼)・・・よろしく頼みます。梶川司令。連合艦隊指揮官の島 大介です」

(画面)スクリーンの梶川司令。
梶川「・・・このような形での挨拶で恐縮いたします。総司令官殿」

(画面)微笑む島。
島「とんでもない。梶川司令。今回の作戦に参加していただき感謝しています。あまりにも急な話で辞令的な手続きを省いてしまって,私も心を痛めていますよ」

(画面)スクリーンの中で笑顔を見せる梶川司令。
梶川「何の。ご高名な総司令官殿とご一緒させていただけるのは光栄ですよ。私も息子に自慢できるというものです」

(画面)防衛軍司令部司令センター。アナログ時計の針が13時45分をさす。デジタル表示も同様。
(画面)振り返るスタッフ。
スタッフ「・・・第10管区艦隊および,旗艦アンドロメダ発進準備が完了いたしました」

(画面)うなずく藤堂司令長官。
藤堂「全艦,波動エンジン回路接続許可。全指揮権を島提督へ引き継ぐ。発進命令伝達」

(画面)山肌を眼下に垂直に上昇していく第10管区艦隊。衝撃波で揺れる木々。宇宙戦艦。宇宙駆逐艦。宇宙イージス艦。宇宙空母。総艦艇数38隻。
(画面)その壮大な雄姿を正面から。巨大な空母がゆっくりとその巨艦を浮上させていく。
(字幕)日本自治区地球防衛軍所属九州方面第10管区艦隊旗艦 宇宙空母サツマ(画面下部横文字)
(効果音)複数のエンジン音。衝撃音。風。(空気中)
(画面)宇宙空母サツマの管制塔ブリッジの全容。
(画面)管制塔ブリッジ内。
(画面)艦長席へ座っている梶川司令。
梶川「(前へ)・・・全艦隊,離陸完了。第一船速へ加速。大気圏離脱後,待機。旗艦アンドロメダを迎え入れる。隊列確認」

(画面)加速上昇していく第10管区艦隊。
(効果音)エンジン噴射音。ドップラー効果。

(画面)海辺のドックの建物の全容。太陽の光で海の小波(さざなみ)がきらめいている。灰色のその建物の外壁も太陽の光を反射している。
(効果音)静かなる波。

(画面)宇宙戦艦アンドロメダ ブリッジ内。艦長席に座っている島。
(効果音)ブリッジ内機械音。
島「(右へ視線)・・・コンディションを報告してくれ」

(画面)大きなドーム型ゲージを見ている穴井沙織。
沙織「・・・8月9日,13時45分現在。天候は晴れ。・・・気温は摂氏28度。・・・南南西の風,風速8メートル。高気圧が広がっています。気圧は1024ヘクトパスカル。大気圏内航行に支障はありません。提督」

(画面)うなずく島。
島「・・・ドックのドームゲートを開け。各自ベルト着用。離陸体勢に入れ」

(画面)ブリッジ内の右翼ボックスに座っている穴井教授。操作パネルにふれる。
穴井「・・・ドームゲート,オープン」

(画面)海辺のドックの建物の全容。・・・外壁に微動。建物上部に突合せ開口が現れる。ゆっくりとその開口幅が広くなっていく。
(効果音)ゲート開放。
(BGM)M−13

(画面)ドックの全容を右斜め正面からのアングル。・・・開いていくゲート。宇宙戦艦の艦橋部分が現れ始める。
(効果音)ゲート開放。
(BGM)M−13

(画面)ドックの全容を正面斜め上部からのビュー。・・・開いていくゲート。ゆっくりと宇宙戦艦アンドロメダの艦首砲口から6門の主砲塔が見えてくる。そしてブリッジ。・・・ゲートが全開して宇宙戦艦アンドロメダの艦体が出現。
(効果音)ゲート全開。

(画面)ブリッジ内。艦長席の島。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(BGM)M−13
島「(正面へ)・・・藪。発進準備」

(画面)ブリッジ正面ボックスで操縦管を握っている藪 秀樹。緊張で顔が強張っている。
藪「(冷や汗)・・・は,はい。機関長。エンジン・チェック願います・・・」

(画面)艦長席の島。
島「・・・藪。落ち着け。オートマティックでエンジンはかかる。肩の力を抜くんだ」

(画面)操縦席の藪。
藪「・・・はい・・・。(肩をほぐす)」

(画面)ブリッジ左方独立ボックスでゲージを見つめる土方機関長。
土方「・・・波動エンジンシリンダー内,圧力上昇・・・エネルギー充填90%・・・」
(効果音)振動を伴うアイドリング。

(画面)機関室。メインパネルを操作している坂本。
坂本「・・・エネルギー充填100%・・・フライ・ホイール始動・・・」
(画面)波動エンジンの巨大な本体。3列に本体を取り巻いているホイールが一斉に回転し始める。
(効果音)フライ・ホイール回転音。

(画面)土方機関長。
土方「・・・あと35秒で自動的に波動エンジン回路,フライ・ホイールに接続されます・・・。エネルギー充填120%・・・」
(効果音)振動を伴うアイドリング。

(画面)顔を向ける穴井教授。
穴井「・・・もうすぐエンジンがかかるぞい。藪。左正面の緑色のランプをよく見とくんじゃぞ」
(効果音)振動を伴うアイドリング。
(BGM消える)

(画面)緊張している藪のアップ。
(画面)点灯していない左正面パネルのランプ。

(画面)土方機関長。
土方「・・・エネルギー充填135%・・・フライ・ホイール,オートドライブへ・・・点火10秒前・・・」

(画面)機関室で操作レバーを握っている坂本。
(土方の声)・・・9・・・8・・・。

(画面)ヘッドマイクをしている相原。
(土方の声)・・・7・・・6・・・。

(画面)振り向いている太田健二郎。
(土方の声)・・・5・・・4・・・。

(画面)正面を見ている南部康雄。
(土方の声)・・・3・・・2・・・。

(画面)土方機関長。さすがに緊張の汗。
土方「・・・1。・・・波動エンジン回路,接続。点火!」

(画面)緊張している藪のアップ。
(画面)左正面パネルのランプが緑色に点灯する。
(効果音)振動音。ホイール回転音。

(ぶれる画面)
(画面)艦長席の島。
島「(正面へ)・・・よし。行くぞ。・・・アンドロメダ,発進」

(画面)緊張している藪のアップ。
藪「・・・はい! アンドロメダ,発進します・・・! ガントリーロックオープン」
(画面)管レバーを引き上げる藪の右手。
(効果音)レバーの金属音。

(画面)ドックから垂直に上昇する宇宙戦艦アンドロメダの左斜め横からのアングル。・・・ゆっくりと重量感あふれる鉄の塊(かたまり)が空中へ浮かび上がっていくスペクタクル。
(効果音)噴射音。地響き。
(BGM)F−4
(画面)地上からの上昇ビュー。艦底にある巨大なセンターウイング。さらに上昇するアングル。画面上部からから巨大な艦首レーダーと2門の波動砲口がアップ。さらに画面下方へ退場し,アングルがブリッジへクローズアップ。

(画面)ブリッジ内。操縦席の藪。
藪「・・・微速前進から第1船速へ・・・」

(画面)宇宙戦艦アンドロメダエンジン噴射口。四方対の補助エンジン口に,わずかにタキオンの光が満ちる。
(効果音)噴射音。
(BGM)F−4
(画面)ドックから浮かび上がる灰色の艦体。宇宙戦艦アンドロメダを左側面から。
(字幕)地球連邦軍所属連合艦隊旗艦 宇宙戦艦アンドロメダ(画面下部横文字)

(画面)ドックを背に上昇してくる宇宙戦艦アンドロメダ正面。・・・迫って来る。アングルがわずかに右へ移動。アングルをかすめるように艦体左舷がアップに通過していく。回転するアングル。上昇していく宇宙戦艦アンドロメダ後部の描写。・・・真上に輝いている真夏の太陽に反射する艦体。レンズ反射の六角形の光が相対的に回転。
(効果音)エンジン音。噴射音。
(BGM)F−4

(画面)ブリッジ内。土方機関長。
土方「波動エンジン,異常認めず」

(画面)艦長席の島。
島「・・・第10管区艦隊との合流を目指す。2時の方向へ面舵」

(画面)操縦席の藪。
藪「・・・2時の方向。面舵。ようそろお・・・」

(画面)ローアングル。右方向へ舵をとりながら上昇していく宇宙戦艦アンドロメダ。
(効果音)エンジン音。噴射音。
(BGM)F−4

(画面)日本自治区防衛軍司令部の外観。
(画面)司令センター内。巨大パネルが正面。パネルに映っている宇宙戦艦アンドロメダ。上昇し,遠ざかっていく様子。センター内スタッフ全員がパネルに向かって敬礼している。
(BGM)F−4
(画面)敬礼しているスタッフたちを正面から。・・・一番上部にあるボックスに立って敬礼している藤堂司令長官へクローズアップ。
(画面)敬礼している藤堂司令長官。
藤堂「・・・はるかなる沖田の子供たちよ。彼らを守ってやってくれ・・・」

(画面)宇宙戦艦アンドロメダブリッジ内。操縦席の藪。
藪「・・・速度。第1船速から第2船速へ」

(画面)宇宙戦艦アンドロメダエンジン噴射口。タキオンの光が満ちる。一気に輝きを放ってエネルギー噴射が増す。
(効果音)噴射音。
(BGM)F−4

(画面)宇宙空間。地球を背に上昇してくる宇宙戦艦アンドロメダ。

(画面)ブリッジ内。艦長席の島。
島「・・・各自,大気圏内体勢解除。・・・地球へ向けて敬礼」

(画面)ブリッジ内。天井パネルに青い地球が映っている。ゆっくりと遠ざかって行く。
(BGM)F−4
(画面)立ち上がって敬礼している島。穴井教授。土方機関長。相原。南部。太田。沙織。藪。

(画面)宇宙空間を航行する宇宙戦艦アンドロメダ。
(BGM消える)

(画面)ブリッジ内。通信ボックスの相原。ヘッドマイクをしている。
(効果音)ブリッジ内機械音。
相原「(振り返る)提督。月面基地より入電しています」
(画面)顔を向ける島。
島「・・・ライブか?」
(画面)計器へ視線を戻す相原。
相原「・・・いえ。電信です。読みます。・・・”貴艦の航海の安全と幸運を祈る”」
(画面)振り返っている藪。
(画面)南部。
(画面)穴井教授。
(画面)太田。
(画面)土方機関長。
(画面)穴井沙織。
(画面)艦長席の島。
(画面)再び振り向く相原。
相原「・・・提督。返信はどうしますか?」
(画面)艦長席の島。・・・ふっと視線を落とす。
島「・・・私は幸せ者だな。(軍帽のつばの下から優しげな瞳)・・・こう,返信してくれ。・・・”我々が今ここにあるのもヤマトの奇跡。ここから先の諸君たちの命運もまた,はるかなるヤマトが加護たらんことを祈る。死んではならない。命を惜しめ”と」

(画面)月の全容。
(画面)月面に建設されている基地。
(字幕)地球防衛軍月面基地(画面下部横文字)
(画面)基地内部。窓の外には宇宙戦艦アンドロメダを先頭に日本自治区第10管区艦隊の雄姿。内部のパネルにはさらに拡大された同艦隊の様子が映し出されている。・・・月面基地のスタッフたちが全員立ち上がって敬礼している。

(画面)宇宙戦艦アンドロメダブリッジ内。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(画面)艦長席で敬礼をしている島。

(画面)画面いっぱいに向かって来る宇宙戦艦アンドロメダ。アングルを回転させて宇宙空間へ遠ざかって行く。後続の第10管区艦隊もそれに続いて行く。
(効果音)複数のエンジン噴射音。ドップラー効果。

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第6節 拡散波動砲! 島よ,あの艦隊を撃て