序節 永遠の旅へ旅立つ戦艦

(画面)ブランク。
(効果音)宇宙空間の初期音。
(画面)ゆっくりと,宇宙空間の全景が描写される。星ぼしが点々としている。
(画面)その宇宙空間は,この後のナレーションと相反して生命の何者も受け付けないほどの冷たい真空の広がりを表現している。
(効果音)宇宙空間。

(画面)宇宙空間の星ぼしが放射状に動き始める。
(ナレーション)・・・無限に広がる大宇宙。・・・静寂な光に満ちた世界。・・・そこには様々な生命が満ち溢れている・・・。

(画面)宇宙空間で光り輝く新星や,赤く帯を広げた様なぼやけた塵(ちり)の描写。
(ナレーション)・・・死に逝く星・・・,生まれくる星・・・。命から命へ受け継がれている大宇宙の息吹は・・・永遠に終わることはない・・・。

(画面)銀河系の壮観。・・・徐々にクローズアップ。
(ナレーション)・・・大宇宙誕生から220億年・・・。その気の遠くなるような時の流れの中では,ひとつの星の歴史など取るに足りない小さな瞬き(またたき)でしかない・・・。

(画面)中央に青い地球。手前右に月面の左半分。
(ナレーション)・・・我が地球はその歴史上,二度にわたり外敵からの侵略戦争に見舞われた。

(画面)中央に青い地球。手前右に月面の左半分。・・・青い地球が赤く変色し,荒れ果てる。
(ナレーション)・・・あの恐るべきガミラス帝星からの進行は,大きな犠牲を出しながらも辛うじて撃退した地球だったが・・・。

(画面)中央に青い地球。手前右に月面の左半分。・・・赤い地球が,再び青く美しく蘇る。
(ナレーション)・・・やはり戦災復興途上の国力の低下は著しく,その間隙(かんげき)をつかれ再びガトランティスにその進撃を許した。

(画面)中央に青い地球。手前右に月面の左半分。
(ナレーション)・・・宇宙とは,強い者だけが生き残る過酷(かこく)なフロンティアである。

(画面)中央に青い地球。手前右に月面の左半分。
(ナレーション)・・・しかし・・・それを誇示する侵略者たちに敢然と異を唱え,地球の人々の記憶にその名を深く刻み付けた,ある一隻の宇宙戦艦があった・・・。

(画面)中央に青い地球。手前右に月面の左半分。
(男の子の声)・・・ねえ! ・・・ヤマトはどうしたの? ヤマトが来たら,あんなのやっつけてくれるよね! ね!
(字幕)西暦2201年(画面中央横文字)
(字幕消える)

(画面)中央に青い地球。手前右に月面の左半分。
(BGM)M−64A
(効果音)低い機械音。巨大さを感じさせる圧迫感。高性能を思わせるエンジン音。
(画面)中央に青い地球。手前右に月面の左半分。・・・突然画面上部から地球へ向かって覆いかぶさるように巨大な物体が現れ,前進していく。明らかに地球のものではない超巨大宇宙戦艦の艦底部分。・・・さらに前進していく超巨大宇宙戦艦。それはやがて画面のほとんどを占めていく。超巨大宇宙戦艦艦底部分が画面に収まりきらないうちに,その艦影に隠されていく青い地球。

(BGM)M−64A
(画面)超巨大宇宙戦艦が左斜め手前に向いている。画面左下には月面の一部が見えている。
(効果音)継続。

(BGM)M−64A
(画面)超巨大宇宙戦艦の艦底部分。・・・艦底のハッチが開き,その内部から主砲らしき砲塔が下方へせり出してくる。さらに前方へ伸びる砲塔。
(効果音)スムーズさを感じさせる単調な機械音。

(画面)そして唐突に主砲から発射されるオレンジ色の光の帯。
(効果音)高音で静かな発射音。
(BGM)M−64A

(画面)超巨大宇宙戦艦の前部が画面手前。その前方に月面。超巨大宇宙戦艦より発射された光の帯が月面に向かっていく。
(BGM)M−64A

(画面)月面の北半球。そこへ光の帯が激突。地割れのごとくに爆光が月面にはしる。次の瞬間,眩い閃光が画面を支配し,砕け散った岩が無数宇宙空間へ散乱し始める。
(効果音)凄まじい衝撃音。
(BGM消える)

(画面)地球上。青い空にも関わらず不規則な光を放って出現する月のかけらの無数の流れ星。それは地球人たちが慣れ親しんだあの願いをかなえるそれとは全く異なる。

(画面)地球上。多くの市民が不安の表情を浮かべて見上げている。老若男女。赤ん坊を抱きかかえている母親,スーツ姿の若者,オープンシャツの老人,華やかなワンピースの女性,ありとあらゆる人々が・・・全くの無言。静まり返っている。

(画面)赤い服を着た男の子のアップ。右側にはその子の父親と思われる右腕が見える。男の子も不安そうな表情。右側の服の袖を握りしめている。

(画面)青空をバックに地球防衛司令部の建物の外観。
(字幕)日本自治区地球防衛司令部(画面下部横文字)

(画面)司令部の中枢センター。奥へいくほど上部へせり上がった各指令ボックス全景の正面。それぞれの席にいる司令部スタッフ。一人として座っている者はなく,全員が立ち上がっている。その全てが驚愕(きょうがく)の表情で見上げている。
一番奥の最上部には頭の禿げ上がった司令長官の姿。ゆっくりクローズアップ。

(画面)司令部の中枢センター。司令長官のアップ。やや右斜め方向。万策尽き果てた様子。額や頬には冷や汗が流れている。
(侵略者の声)・・・はははははは・・・!
(画面)見上げていた司令長官の顔がその笑い声に気づいて下を向く。

(画面)司令部の中枢センター。通信装置の受信機らしきもののアップ。外形は円形でグリーン。ます目があり,周波数を示す波が横にはしる。受信した声に波が反応する。
(侵略者の声)・・・どうだ,わかっただろう・・・!

(画面)地球上。地球市民たちを左方から右方へながすように描写。
(侵略者の声)・・・宇宙の絶対者はただひとり,この全能なる私なのだ!

(画面)赤い服を着た男の子のおびえた表情。
(侵略者の声)・・・命あるものは,その血の一滴までこの俺のものだ!

(画面)超巨大宇宙戦艦の全景。右側に艦首。
(侵略者の声)・・・宇宙は全て我が意思のままにある! ・・・私が宇宙の法だ! 宇宙の秩序なのだ!

(画面)宇宙空間に浮かぶ青い地球。
(侵略者の声)・・・よって当然地球もこの私のものだ・・・! はははは・・・! はははははは・・・!

(画面)宇宙空間に浮かぶ青い地球。

(画面)司令部の中枢センター。通信機の受信機のアップ。声に波が反応する。
(古代 進の声)・・・違う! 断じて違う!

(画面)司令長官のアップ。
司令長官「(絞り出す声)・・・古代・・・!」

(画面)地球市民たちの面々。
(古代 進の声)・・・宇宙は母なのだ! そこで生まれた生命は全て平等でなければならない! 

(画面)司令部の中枢センター。スタッフの面々。
(古代 進の声)・・・それが宇宙の真義であり・・・宇宙の・・・愛だ!

(画面)超巨大宇宙戦艦の全景。
(古代 進の声)・・・お前は間違っている! ・・・それは,宇宙の自由と平和を消してしまうものなのだ!

(画面)男の子のアップ。
(古代 進の声)・・・俺たちは戦う! 断固として戦う!
(画面)勇気づけられたように表情が和らぐ男の子のアップ。瞳が輝いている。

(画面)破壊され,黒煙をあげている月面。
(侵略者の声)ふふふふ・・・。よかろう。・・・だが,ヤマトよ。

(画面)宇宙空間に浮かぶ青い地球。
(侵略者の声)・・・満身傷つきエネルギーすら底をついた貴様がどうやって戦おうというのだ!

(画面)通信機の受信機のアップ。・・・反応は無い。
(侵略者の声)・・・ははははは・・・!
(画面)受信機の波が揺れ,そしておさまる。それぞれの通信のやりとりが終わった模様。

(画面)司令部中枢センターのスタッフの人々の表情がそれぞれ順次描写される。もはやどう対処したらよいか分からない様子の面々。

(画面)地球市民たちの表情。

(画面)司令部の中枢センター。最上段のデスクに両腕をついている司令長官の姿。両側にはそれぞれ参謀が立っている。うつむきしばらくの間無言だったが,(ここまでしばらく体勢変わらず)やがて意を決したように顔を上げる。
司令長官「(低く力強い声で)・・・各自治区防衛軍司令部にアクセスしてくれ。我が日本自治区防衛軍司令部はこれより地球本土決戦に備える。・・・ただちに民間人たちを旧地下都市へ避難させよ。各地球防衛軍基地へ連絡。総員戦闘態勢に入れ」
(画面)両脇の参謀が敬礼。そして傍らを離れる。

(画面)司令長官が右斜め方向から横顔へ首をまげる。
司令長官「ヤマトへ通信できるか。速やかに戦場からの撤退を指示してくれ。我が地上軍との合流を急いでもらいたいと・・・」

(画面)地球上。男の子の表情。何かに気づいたように口を開ける。

(画面)スタッフの男性の横顔のアップ。モニターらしきものを見ている様子。
冷や汗をかいている横顔に明らかに変化がみえる。
スタッフ「ちょ長官・・・!」

(画面)顔を上げる司令長官。

(画面)参謀を手前に一斉に顔を上げるスタッフの面々。

(画面)スタッフたちが見上げている方向からの描写。スタッフたちの顔に戸惑いの表情。一斉に同じ方向を見上げる。
(効果音)ざわめき。
スタッフ「・・・見ろ! ・・・」
スタッフ「ヤマトが・・・」
スタッフ「ヤマトが行く・・・」
スタッフ「ヤマトが行くぞ・・・!」

(画面)司令長官のアップ。
司令長官「(困惑)・・・ヤマト・・・?」

(画面)地球市民たちも騒ぎはじめている。
女性「あなた! 見て! ヤマトが・・・!」
男性「おお・・・! ヤマトが・・・」
市民「ヤマトが!」
市民「ヤマトが行く!」
市民たち「おお ・・・」
(画面)男の子が大きく目を見開いている。

(画面)宇宙空間に超巨大宇宙戦艦の全景。
(効果音)低い機械音。巨大さを感じさせる圧迫感。高性能を思わせるエンジン音。

(画面)再びスタッフの男性の横顔のアップ。しばらく何か操作をしているような素振りだったが,ようやく視点が一点に絞られる。
スタッフ「・・・長官,ヤマトが敵巨大戦艦に接近中です! ・・・たった今巨大戦艦からヤマトに対して攻撃が始まりました! ヤマトさらに接近中! ・・・敵ミサイルがヤマトに命中しました! ヤマト,バランスを崩しましたがさらに加速! ・・・さらに接近中! (ここで表情が変わる)・・・おかしいぞ。ヤマトからの反撃がない・・・ヤマトは・・・」

(画面)静まり返っている地球市民たち。

(画面)下を向いていたスタッフの男性が顔を上げる。こわばった表情。ゆっくりと立ち上がる。画面が引いていき彼の周辺のスタッフの姿も見えてくる。全員が彼と同じ方向を見上げながら無言。

(画面)地球上。男の子の表情。

(画面)防衛軍司令部中枢センター。司令長官はじめ,立ち尽くしているスタッフたちの正面。ゆっくりと司令長官へクローズアップしていく。

(画面)軍服の男性の腹部のアップ。・・・彼の右腕がゆっくりと上に上がっていき,画面もそれに連動して上に移動していく。やがて司令長官の顔のアップになり,右手はしっかりと敬礼の体勢をとる。

(画面)地球防衛司令部中枢センターの全景。それぞれスタッフたちが敬礼をし始める。・・・ほどなく全員が毅然と敬礼。
(画面)敬礼をしている先ほどのスタッフの男性。もはや表情はこわばっていない。

(画面)地球市民たちも,何かを感じたらしく脱力感からか座り込む者や顔を覆い泣き始める女性,顔を隠さず涙を流す男性など。もはや歓声をあげる者はなく,悲しみとふがいなさが交錯し,しかしモニターから顔を下げない。
(効果音)泣き声。嘆き声。等々。

(画面)男の子のアップ。最初は目を丸くして見上げているが,次第にその表情はゆがみ始める。・・・こらえる素振りを見せつつも両方の瞳にはついに涙があふれて大粒となって頬を流れる。かすかに首を左右に振る男の子。
男の子「(涙声)・・・ヤバトォ・・・」

(画面)宇宙空間。星がちりばめられている。
(男の子の声)・・・ヤマトォ・・・!!(反響効果)
(画面)宇宙空間。
(画面)宇宙空間。静寂。

(画面)宇宙空間。静寂。

(画面)宇宙空間。静寂。
(画面)宇宙空間。しばしの静寂。・・・突然,中央に眩い光。一筋の閃光。
(効果音)時間差で爆発による衝撃音。
(画面)宇宙空間。静かに消えゆく閃光。

(画面)宇宙空間。
(メインタイトル)遥かなる我が宇宙戦艦ヤマト(ヤマトの文字は起動表示)
(メインタイトル消える)
(サブタイトル)The First Scenario V
(BGM)M−18
(サブタイトル消える)

(画面)宇宙空間の描写。
(BGM消える)
(画面)宇宙空間。・・・画面が左方向へ移動していく。

(画面)宇宙空間。・・・画面が左方向へ移動していく。
(画面)・・・やがて左側から宇宙艦隊が現れ,画面の移動はそこでストップ。
(効果音)静かなる艦隊の機械音。
(画面)その宇宙艦隊は,戦艦,駆逐艦,空母などある一定のまとまりがある。
(字幕)ガトランティス第6遊動機動艦隊(画面下部横文字)

(画面)一隻の宇宙戦艦のクローズアップ。明らかに他の戦艦とはタイプが異なる。
(字幕)宇宙戦艦バルゼミア(画面下部横文字)
(効果音)継続。

(画面)戦艦内部ブリッジ。上部天井パネルには爆発の跡と思われる煙,点々と光り輝く火花らしき情景が映し出されている。それを見上げている軍服姿の男たちの背中が何人か。
(効果音)内部ブリッジの機械音。

(画面)ブリッジ内正面。軍服の男たちを前方から。そのほとんどは両手を広げ,明らかに狼狽の体勢。その中央に悠然と足を踏みしめ腕を組み,正面を見据えている一人の軍服の男。

(画面)その男の上半身からのアップ。
(字幕)第6遊動機動隊司令官バルゼー(画面下部横文字)
バルゼー「(視線をわずかに下方へ)・・・ナスカ。状況は報告できるか」

(画面)ブリッジ前部で半身をかがめていた一人の男の背中が起き上がり,ボードらしきものにはさまれた書類を両手で持ちながら振り返る。膝から上の描写。精悍(せいかん)な顔つきの若い士官。
(字幕)副官ナスカ(画面下部横文字)
ナスカ「報告致します,提督。戦場にはエネルギーの拡散が続いています。飛散している金属片多数。原型をとどめているものはありません」
(画面)ナスカのアップ。書類に視線を向けているため,うつむき加減。
ナスカ「(顔をあげる)・・・戦艦ガトランティックは完全に破壊されています」

(画面)戦艦内ブリッジ。腕を組んでいるバルゼー。正面。その背後に控えている上官らしき初老の男。クローズアップ。驚愕の反応。2,3歩前へ。
(字幕)遊動機動隊司令長官ゲーニッツ(画面下部横文字)
(効果音)継続。
ゲーニッツ「(うろたえて)・・・か,完全にだと・・・ナスカ! ヤマトがガトランティックへ突入していったにしても,サイズを考えてみよ! 被弾したというならともかく,完全にというのは・・・」
(画面)ナスカ。
ナスカ「(淡々と)私は提督のご指示で報告させていただいただけです。長官。メインパネルをごらんください。あそこに映し出されている動かしがたい事実がお見えになりませんか」
(画面)絶句するゲーニッツ。

(画面)戦艦内ブリッジ。再びナスカが書類に視線を戻す。
(効果音)継続。
(画面)メインパネルが切り替わる。そこには羽を広げたシルエット(ガトランティック)と,小さな点で示されているヤマト,そして人型のシルエットが映し出される。小さな点と人型のシルエットはガトランティックへ接近している。この動きはこれから始まるナスカの説明と連動して動く。

(ナスカの声)・・・我が戦艦ガトランティックは,地球の戦艦ヤマトと反物質戦士であるテレザート人のテレサによる体当たり攻撃を受けた模様です。
(ナスカの声)・・・まずヤマトはガトランティックの主砲の収納口の開放されているハッチよりガトランティック内部へ侵入。ガトランティックの主砲とメインエンジンが接続されている部分の内壁を突き破り直接メインエンジンへ突入したと思われます。
(ナスカの声)・・・メインエンジン内部で停止したヤマトはそこで大爆発し,ガトランティックの主砲に充填されていたエネルギーが逆流し,その艦内で暴発,この段階でガトランティックのメインエンジンは一気に吹き飛ばされました。
(ナスカの声)・・・完全に動力を失ったガトランティックは,それでもまだ原型を保っており,大帝閣下もご存命だったと思われますが,反物質を防御する防護シールドもメインエンジン爆発により失われ,そこへテレサが正面から玉砕。物質反物質の融合反応によりお互いに大規模なエネルギー爆発が起き,双方が失われたと分析できます。

(画面)戦艦内ブリッジ。顔色が変わっているゲーニッツ。
ゲーニッツ「・・・ご存命だった? 失われた? ナスカ! ・・・お前は自分で何を言っているのか判っているのか! 大帝閣下は・・・」
(効果音)継続。
(画面)無表情のナスカ。
ナスカ「大帝閣下は脱出されてはいません。司令長官」
(画面)表情を痙攣させるゲーニッツ。思わず2,3歩後ろへ退がる。やがて苦痛に顔を歪めて両手で白髪を鷲づかみ,体勢を崩して床に腰をつける。画面の右端には書類を持っているナスカ。
ゲーニッツ「(うめくように)・・・だから私は再三,大帝閣下に進言申し上げたのだ。テレザートのテレサをそのままにしておけば,いつか必ず災いが起こると・・・。ヤマトにしてもそうだ。ラーゼラーと私は,先にヤマトを始末した方がいいと,前々から・・・」
ナスカ「・・・ラーゼラー卿もガトランティックの中です」
ゲーニッツ「(顔をあげる)黙れ! ナスカ! (立ち上がる)・・・テレザートのテレサが我が艦隊を封じ込めてさえいなければ,後ろからヤマトを挟撃(きょうげき)できたのだ! 我が彗星要塞がヤマトに攻撃を受けていた時,お前は何をしていたのだ!」

(画面)戦艦内ブリッジ。体勢をゲーニッツの方へ向けるバルゼー。右側にゲーニッツ。その正面には斜め後ろ姿のナスカ。
(効果音)継続。
バルゼー「(落ち着いた様子)・・・長官。もはや今となってはそのような議論は無意味でしょう」
ゲーニッツ「(振り返り)バルゼー!」
バルゼー「(向き直って)ナスカ。さすがのお前も動揺しているようだな。いつもより口数が多いぞ」
ナスカ「(頭を下げる)・・・申し訳ございません。提督」

(画面)宇宙空間。手前にガトランティス第6遊動機動艦隊。その前方には青く輝く地球が浮かんでいる。
(効果音)静かなる艦隊の機械音。

(画面)戦艦内ブリッジ。バルゼー上半身。
(効果音)内部ブリッジの機械音。
バルゼー「(前方を見ながら)とにかく,我が艦隊はようやくテレサの呪縛(じゅばく)から解き放たれたわけだ。反物質戦士のテレサの性質上,ガトランティックと我が艦隊の両方を相手にするわけにはいかなかったという事だな。・・・さて・・・」
(画面)後ろ姿のバルゼーが中央。正面にはこちら向きでナスカ。左側にはバルゼーに体勢を向けているゲーニッツ。
バルゼー「(あごに手をあてる)・・・これから,どうするかだが・・・」
ゲーニッツ「(詰め寄る)当然だ! これより地球を攻撃する!」
(画面)目をつむり黙っているバルゼー。おもむろに目を開ける。
(画面)前方を直視しているナスカ。
ナスカ「申し上げます。提督」
(画面)バルゼー。
バルゼー「(うなずき)言ってみるがよい」
(画面)ナスカ。
ナスカ「・・・ここは撤退なされた方がよろしいと思います」

(画面)戦艦内ブリッジ。手前にはナスカの後ろ姿の上半身。左端にはバルゼー。中央にはゲーニッツ。
(効果音)継続。
ゲーニッツ「(目を見開く)・・・何を言っているのだ,ナスカ! お前,気は確かか!」
(画面)ナスカ。左方へ顔を向ける。
ナスカ「・・・今の戦況は必ずしも我が軍に有利とは言いがたいものがあります。我々は彗星要塞そのものを失い,我が艦隊も先の地球艦隊との戦いで無視できないダメージを被って(こうむって)います。それと比較し,地球側は全ての艦隊を失っているとはいえ,地球自体は全くの無傷です。本土決戦ともなれば地の利のある地球軍に分があり,我が艦隊も深刻な被害を避けられません」
(画面)ゲーニッツ。手前にナスカの後頭部。
ゲーニッツ「臆(おく)したか,ナスカ! 今がどういう状況か! 我々は大帝閣下を失ったのだぞ!」
ナスカ「大帝閣下が崩御(ほうぎょ)なされた今,艦隊の士気は低下しています。長官」
ゲーニッツ「(左手をふり)黙れ,ナスカ! 今の言動は敵前逃亡の反逆罪だぞ! 軍法会議ものだ!」

(画面)戦艦内ブリッジ。横顔のバルゼー。腕を組んでいる。
(効果音)継続。
バルゼー「・・・軍法会議」
(画面)中央にバルゼー。ゲーニッツとナスカが彼を見上げている。
(画面)バルゼーのアップ。
バルゼー「(首をわずかに左下へ)長官。大帝閣下亡き今,誰の御名(みな)においての軍法会議でしょうか。・・・どう考えてもこの状況下では,我々の今回の地球進行作戦は,紛れも無く失敗しています。それは認めなければならないでしょう。もはや,この上はこれ以上傷口が広がらないうちにガトランティスへ帰還し,若君(わかぎみ)にこの結果を報告しなければなりません。大帝閣下が亡くなられた事は程なく国民にも知れ渡る事になります。帝星内や植民地惑星の治安の乱れも考慮しなければなりません。不本意でしょうがここは,こらえてください」

(画面)唇を噛み締めているゲーニッツ。

(画面)バルゼーをローアングルから。
バルゼー「(不敵な表情)心配なさいますな,長官。これで終わったわけではありません。誇り高きガトランティスを汚したことを地球は後悔することになる。おとなしく植民地になっていた方がましだったとまざまざと思い知ることになるでしょう。(見上げる)・・・それにしても・・・」
(画面)ブリッジ後方からの全景。メインパネルにはまだ戦場の跡が映し出されている。3人の姿が下方。

(バルゼーの声)・・・宇宙戦艦ヤマト・・・勝利を捨ててまで,敗北を拒(こば)んだのか・・・。

(画面)宇宙空間。動き始めるガトランティス第6遊動機動艦隊。艦隊レベルで転進を開始する。
(効果音)エンジン音,移動音。

(画面)宇宙空間。右下に大きく青い地球。

(画面)宇宙空間。右下に大きく青い地球。・・・その下方から白い物体が現れ,その画面全てを覆い隠してくる白い物体は金属製の輝きを持ち,大きな赤十字のマークが画面中央に大きくクローズアップ。

(画面)宇宙空間。青い地球をバックに浮遊している白い救命艇。側面には赤十字のマーク。

(画面)救命艇の内部。そこには赤,緑,黄色のユニホームを着ている若者たちが思い思いの体勢で身体を支えている。計17名。
(効果音)内部機械音。

(画面)通信装置の周波数調整用つまみを回している右手。左側の液晶画面には不安定に動く波のグラフィック。
(効果音)周波数調整のノイズ。

(画面)ヘッドホンをつけている若者の右横顔のアップ。向こう側で左手がヘッドホンを支えている。

(画面)その後ろから覗き込むように見ている別の若者。白地に緑の柄のユニホームを着ている。正面からの描写。
(字幕)島 大介(画面下部横文字)
島「・・・どうだ? 相原。地球司令部は出たか?」

(画面)後ろ姿の若者。ヘッドホンをしている。黄色地に黒の柄のユニホーム。その声に振り向く。
(字幕)相原義一(画面下部横文字)
相原「(困惑気味)・・・あと少しだと思うんですが,おかしいな。やはりあの大爆発の影響かも知れません。かなりのエネルギー波が周辺に散乱しているようです」

(画面)宇宙空間。浮遊している白い救命艇。バックの地球が少しずつ動いている。
(効果音)周波数調整のノイズ。
(相原の声)・・・応答してください。こちら宇宙戦艦ヤマト。・・・地球司令部,応答願います。こちら宇宙戦艦ヤマト・・・。

(画面)救命艇内部。島が外を見ている横顔。そこへ重なるようにあばた顔の若者が後方から顔を出す。ユニホームは島と同じ。

(画面)あばた顔の若者が右。島が左のツーショット。
(字幕)太田健二郎(画面下部横文字)
太田「・・・敵艦隊は動きませんか? 島さん」
(画面)左後方からの島のアップ。前方に窓を隔てた宇宙空間。
島「・・・肉眼ではよく判らないな。しかしいつまでもあのままではないはずだ」
(画面)太田。
太田「しかし不思議ですね。俺たちがヤマトで彗星帝国と戦っていた時,どうしてあの艦隊が攻撃をしかけてこなかったんだろう」
(画面)少しバランスを崩し,右手で身体を支える島。
島「・・・俺は見たんだよ,太田。古代艦長が巨大戦艦へ向かって行った時に確かにヤマトの前方に光る人影があった。あれはテレザートのテレサだったんだ。きっとテレサがあの艦隊をおさえこんでいてくれたんだろう。そうでなければヤマトは前後からの挟み撃ちにあって,たちまち宇宙の藻屑(もくず)になっていたはずだ」

(画面)背中から振り返る島。徐々にクローズアップしていく。
島「相原。なんとかして地球と連絡を取って俺たちを回収してもらうんだ。あの艦隊が攻撃をしかけてきたら俺たちは助からない。俺たちは取り返しのつかない犠牲のうえで生き残ったんだ。何としてでも地球へ帰らなければならない。俺たちは古代艦長と約束したんだ。命あるかぎり,生きて生きて生き抜くんだ・・・!」

(画面)宇宙空間。浮遊している白い救命艇。バックの地球が少しずつ動いている。
(効果音)周波数調整のノイズ。
(受信の声)・・・ちら・・・地球司令部。応答せよ・・・。こちら,地球防衛司令部・・・。

(画面)救命艇内部。飛び上がって喜ぶ相原。振り向きざま。
相原「(うれしそうに)島さん! 地球と連絡が取れました!」
(BGM)A−3
(画面)一心不乱に通信装置に向き直る相原の様子。右横から。
相原「こちら宇宙戦艦ヤマト,生存者17名! 救命艇にて地球軌道上を漂流中。至急救援を請います!」
(画面)振り返っている島。その横で太田が逆方向を指差している。
太田「島さん! 敵艦隊が遠ざかっていきます!」
(画面)振り返る島。
(BGM消える)

(画面)宇宙空間。はるかかなたにある艦影が少しずつ消えていく。

(画面)宇宙艇内部。島と太田のツーショット。そこから島が少しずつクローズアップ。
(画面)島のアップ。汗をかいており,心なしか顔色が悪い。
(BGM)M−8
島「(深刻な表情)・・・何ということだ・・・。太田,あれがどういう意味を持つか分かるか・・・」
(画面)横を向く太田。
太田「・・・え?」
(画面)島のアップ。少し頭がふらついている。
島「(息づかい)・・・あの艦隊には・・・還るところがあるということだ・・・」
(画面)うつろな目になり急に下を向いて後ろに倒れる島。太田がびっくりして支える。
太田「・・・島さん? 島さん!」
(画面)太田に支えられている島。気を失っている。
(BGM消える)

(画面)宇宙空間。地球軌道上。島たちが乗っている白い救命艇に近づいていく一隻の地球型宇宙船。
(ナレーション)・・・地球とガトランティスのファーストコンタクトはお互いに多大な犠牲を出しつつも,地球がガトランティスを水際で食い止め撃退するかたちとなった。・・・しかしこれで終わったわけではなかった。この出来事こそ,幾世代もの未来の宇宙の歴史家たちが,太陽系史上最大の宇宙艦隊戦争と位置づけることになる歴史的大戦争への序奏となったのである・・・。

(画面)宇宙空間。手前に向かって航行してくるガトランティス第6遊動機動艦隊。先頭には旗艦である宇宙戦艦バルゼミア。
(効果音)艦隊の機械音。
(画面)戦艦バルゼミアのブリッジの外観。

(画面)戦艦内ブリッジ。腕を組んで立っているバルゼー。
(画面)艦長席にうなだれて座っているゲーニッツ。
(効果音)ブリッジ内の機械音。
(画面)レーダー要員と話をしている様子のナスカ。うなずいて,書類をボードに挟み体勢を起こす。
(画面)左端に腕組みして立っているバルゼーが斜め後ろ姿。中央にこちら向きで歩み寄ってくるナスカ。頭を下げる。
(画面)ナスカ。
ナスカ「(顔を上げる)提督。前方に金属反応です。破片ではありません。おそらく宇宙船だと思われます。金属組織はガトランティスのものです。調査が必要だと・・・」
(画面)バルゼー,体勢は変えない。
バルゼー「(うなずく)」

(画面)宇宙空間。航行しているガトランティス第6遊動機動艦隊。
(効果音)艦隊の機械音。

(画面)戦艦内ブリッジ。ナスカが再びバルゼーの前へ進み出る。
ナスカ「(視線は書類)・・・ここはガミラスの総統デスラーが宇宙戦艦ヤマトへ最後の戦いを挑んだ宙域です。ここへ出撃した我が軍の艦隊は,駆逐艦四隻と戦艦一隻。この金属反応規模によりますと,どうやらこれは戦艦のようです。他の反応はありません」
(効果音)ブリッジ内の機械音。
(画面)バルゼー。
バルゼー「・・・生命反応はどうか?」
(画面)ナスカ。顔を上げる。
ナスカ「・・・駆逐艦にはガトランティスの兵士が多数乗り込んでいましたが,戦艦にはデスラーとタランというガミラス人,ガトランティスでは監視官ミル・・・計三人しか乗組員はいません。あとは全てアンドロイド兵士で生命反応はないはずです」
(レーダー要員の声)・・・副官! 金属反応投影エリアにはいりました!
ナスカ「(後ろへ振り向く)メインパネルへ映し出せ」
(レーダー要員の声)・・・はっ!
(画面)メインパネル全景。
(効果音)映像がオンになった時の電気音。

(画面)メインパネル全景。そこへ映し出された映像。そこには青い艦体で流線型の宇宙戦艦。ところどころに穴があいていて,動力の様子はない。傾いて浮遊している様子からしてすでに廃墟と化しているようだ。
(BGM)C−2
(画面)疑わしき表情のバルゼー。メインパネルを見上げている上半身をローアングルで描写。
バルゼー「・・・確かにデスラー艦のようだが,ここから見ても生存者はなさそうだが。調査の必要はないのではないか,ナスカ」

(画面)宇宙空間。浮遊しているデスラー艦。その向こう側にガトランティス第6遊動機動艦隊。
(BGM)C−2

(画面)戦艦内ブリッジ。ボックスに腰をかけて操作をしている乗組員の背中からの描写。その右隣には計器類に右腕をつけて左手に書類ボードを持ちながら体重をまかせているナスカの半身。二人とも視線は同じ。
(効果音)ブリッジ内の機械音。
(BGM)C−2
(画面)計器類の中でひときわおおきな円形の液晶画面。中央にデスラー艦と思われる影。中心から広がるようにセンサーラインが,これまた円形に広がる様子の繰り返し。しばらく反応はなかったがやがて液晶画面の右端にセンサーラインにふれて反応する小さな点。
(効果音)センサーの小さな電子音。
(画面)計器類を操作している乗組員のアップ。
乗組員「(右からナスカを見上げる)・・・副官。反応があります。金属反応ではありません」
(画面)反応している円形の液晶画面。
(ナスカの声)・・・明らかにヒューマノイドの生命反応だ。かなり弱い。このままではまもなく消えるだろうな。しかし,周辺に金属反応がないとは・・・。
(画面)下を向いているナスカのアップ。計器類の光が顔に反射している。
ナスカ「・・・宇宙空間を浮遊しているのか。宇宙服を着ているかも知れない」
(画面)上体を起こすナスカ。きびすを返し遠ざかっていく。

(画面)手前に向こう向きのバルゼー。正面へ歩み寄るナスカ。距離をおいて立ち止まり,頭を下げる。
ナスカ「(頭を上げて)・・・提督。生存者を確認いたしました。回収準備にかかります。救急医療班を出動させます」
(画面)頭を下げて上体を戻し右側へ歩み去っていくナスカ。それを目で追うバルゼーの横顔のアップ。
(BGM消える)

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第1節 新たなる脅威! 集うアンドロメダ宇宙戦士