第14節 領宙侵犯! 太陽系,そしてガトラン系

(画面)太陽系内の宇宙空間を狭しと航行しているガトランティス本隊。30000隻超。
(効果音)膨大なエンジン音。
(BGM)M−1A

(画面)多くの艦艇に囲まれて航行している宇宙戦艦ヤマト。
(効果音)膨大なエンジン音。

(画面)宇宙戦艦ヤマト第1艦橋内。電信文を持って進み出るゲーニッツ。
(効果音)艦橋内機械音。
ゲーニッツ「・・・大帝閣下。第2遊動機動艦隊より電信文が入りました。我が本隊より右翼NE方向32万宇宙キロに地球の戦艦が漂流しているとのことです。動力反応は無し。速度は惑星間第2宇宙速度程度で慣性運動中。1.2ガトランティスアワー。間もなく22万宇宙キロまで最接近し,あとは遠ざかっていくものと見られます。コースは惑星地球方向からは外れています」

(画面)艦長席で退屈そうに頬杖の腕を替えるレック。
レック「・・・ふん。難破船か。コーテクにやられた地球の船だろうね。どうせ」

(画面)電信文から顔を上げて直立するゲーニッツ。
ゲーニッツ「・・・いかがいたしましょうか。撃沈いたしますか」

(画面)面倒くさそうに鼻を鳴らすレック。

(画面)言葉を待つゲーニッツ。

(画面)ななめから一瞥(いちべつ)するレック。
レック「ゲーニッツ。宇宙一の大艦隊が発展途上国の漂流船ごときに右往左往(うおうさおう)するのか? 私の命令は3万の艦艇の兵士たちの耳にも入るんだよ。この程度の事由(じゆ)で最高司令官が命令を出すなんて,みっともない事だとは思わないかね?」

(画面)頭を下げるゲーニッツ。
(BGM消える)

(画面)太陽系内の宇宙空間を狭しと航行しているガトランティス本隊。30000隻超。
(効果音)膨大なエンジン音。

(画面)太陽系内の宇宙空間を狭しと航行しているガトランティス本隊。30000隻超。・・・やがて,その壮大な眺めを背に1機のデスバデーター戦闘機が画面手前へ飛来してくる。
(効果音)膨大なエンジン音。噴射音。

(画面)宇宙空間を接近してくるデスバデーター戦闘機1機。・・・接近。アングル回転。遠ざかっていく。
(効果音)噴射音。ドップラー効果。

(画面)息を殺して宇宙空間を慣性航行している宇宙戦艦アンドロメダ。

(画面)暗闇に包まれている宇宙戦艦アンドロメダブリッジ内。後方からのバードビュー。静まり返っている。
(沙織の声)・・・艦内温度。氷点下8度・・・。酸素濃度。16%・・・。二酸化炭素濃度。5%・・・。上昇中・・・。

(画面)息を殺して宇宙空間を慣性航行している宇宙戦艦アンドロメダ。・・・そこへ向かっていくデスバデーター戦闘機1機。
(効果音)噴射音。ドップラー効果。

(画面)暗闇に包まれている宇宙戦艦アンドロメダブリッジ内。閉まっているフロントガラスシャッター。アングル移動。防寒着の襟(えり)の小型通信装置を外して液晶画面を読む相原。顔に淡い液晶の光が当たっている。・・・艦長席の方向へ身体をねじって後ろ姿。
(画面)振り向いている相原。
相原「(抑え気味の声)・・・展望ドーム観測員より携帯メールです。艦隊方面より1機の戦闘機が接近中。カブトガニです。(白い息)」
(BGM)F−8

(画面)艦長席の島。彼を含めてアンドロメダの乗組員は全員防寒着を着ている。

(画面)緊張する太田。
太田「・・・気づかれた・・・? (白い息)」

(画面)コンソールから視線を変える穴井教授。
穴井「いや。・・・多分,偵察じゃ。わしらが生きているかどうかを確認しようとしているんじゃろう・・・。(白い息)」

(画面)艦長席の島。
島「教授。生命反応ブラインドメッキは? (白い息)」

(画面)振り返る穴井教授。
穴井「・・・全装甲にコーティング済みじゃ。(疑心暗鬼)・・・こんなこともあるじゃろうと開発はしとったが,どこまで性能が信用できるかのう。ひとつでもアンドロメダ艦内の生命反応を探知されれば,わしらはそこで終いじゃ。(白い息)」

(画面)コンソールボックスに向かっている土方機関長。
土方「補助エンジンはいつでも再始動可能です。その時はエンジンを一気に全開します。教授。(白い息)」

(画面)操縦席で震えている薮。白い息。
薮「・・・ぶぶ。寒いです。副官。宇宙服着ちゃいけませんか? (白い息)」

(画面)同じく白い息で戦闘班リーダーボックスに座っている南部。
南部「・・・我慢しろ。敵艦隊をやり過ごしたらアンドロメダは速やかに元の状態へリカバリーしなければならない。よけいな工程は増やせないんだ。(白い息)」

(画面)宇宙空間を慣性航行している宇宙戦艦アンドロメダ。・・・画面右上からデスバデーター戦闘機が入場。同艦へ接近するように遠ざかっていく。
(効果音)噴射音。ドップラー効果。
(BGM)F−8

(画面)宇宙戦艦アンドロメダ艦内通路。やはり暗闇である。赤十字のマークペイントのスライドドアの描写。

(画面)医務室内部。薬棚からのアングルスライド。・・・暗闇の中の綾乃のアップにピントが合う。防寒着と耳当てをしている綾乃。
綾乃「・・・(息を呑んで,あごを引いている)」

(画面)暗闇の中で光っている両目。
両目「ここは,どこかな? 看護士さん」

(画面)平静を保とうとしている綾乃。
綾乃「・・・ここは医務室です。あなたは大怪我をしていたんです。(白い息)」

(画面)暗闇の中で光っている両目。
両目「・・・ふふ。準備がいいね。会話が成立しているということは翻訳システムが施されているようだ。このことを予期していたということかな」

(画面)今まで感じた事のない圧倒的な迫力に押されている様子の綾乃。

(画面)暗闇の中で光っている両目。
両目「しかもご丁寧に私の身体をベッドに縛り付けている。どうやら私の正体もご存知のようだね」

(画面)平静を保とうとしている綾乃。

(画面)暗闇の中で光っている両目。
両目「・・・そんなに硬くなることはないよ。ガミラス人は暗闇でも目がきく。あなたの表情に敵意がないのは分かっている。それに私はモンスターではない。この束縛を振り切って,あなたを襲うようなことはしないから安心してほしい」

(画面)平静を保とうとしている綾乃。

(画面)暗闇の中で光っている両目。
両目「ここは地球の宇宙艦の中のようだね。今,たてこんでいるのかな? それならば今しばらくここで休ませてもらうことにしよう。ことが済んだら起こしてくれたまえ。おやすみ。(目を閉じる)」

(画面)緊張がほぐれて肩の力を抜く綾乃。

(画面)宇宙空間を慣性航行している宇宙戦艦アンドロメダ。・・・周囲を飛行しているデスバデーター戦闘機1機。
(効果音)噴射音。
(BGM)F−8

(画面)デスバデーター戦闘機コクピットのパイロット。メットマイクへ首をわずかに傾ける。
(効果音)噴射音。
パイロット「・・・目標にエネルギー放射は感じられません。生命維持装置も停止しているようです・・・」

(画面)ガトランティス本隊右翼に展開しているガトランティス第2遊動機動艦隊。宇宙戦艦エルディーノの姿も見える。
(効果音)膨大なエンジン音。

(画面)宇宙戦艦エルディーノブリッジ内。天井パネルに映し出されている宇宙戦艦アンドロメダ。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(画面)見上げているエルダ。

(画面)通信マイクへ向かっているカントレムール。
カントレムール「・・・生命反応はどうじゃ? スキャンの結果を報告せい」

(画面)宇宙戦艦アンドロメダを周回するデスバデーター戦闘機。
(効果音)噴射音。
(パイロットの声)・・・生命反応はゼロ。生存者はいない模様です・・・。

(画面)宇宙戦艦エルディーノブリッジ内。艦長席で見上げているエルダ。
(効果音)ブリッジ内機械音。

(画面)前へ進み出るカントレムール。
カントレムール「・・・提督。(頭を下げる)」

(画面)艦長席から軍帽を向けるエルダ。

(画面)顔を上げるカントレムール。
カントレムール「・・・エネルギー放射,生命反応,ともに測定値はゼロですじゃ。放棄され難破した戦艦じゃ。偵察機を帰還させますぞ。よろしいですかな」

(画面)しばらく黙った後に何か口を開きかけるエルダ。
(効果音)電子音。

(画面)電子音に反応するエルダ。

(画面)通信士が振り返る。
通信士「・・・提督!」

(画面)顔を向けるエルダとカントレムール。

(画面)振り返っている通信士。
通信士「第6遊動機動艦隊,バルゼー提督から通信が入っています。ビデオパネルチェンジします」

(画面)見上げるエルダとカントレムール。

(画面)天井パネルの宇宙戦艦アンドロメダの映像が消えて,真横に電子ラインが走る。バルゼーの上半身が映し出される。
(効果音)電子音。

(画面)見上げているエルダ。
エルダ「どうした。バルゼー」

(画面)天井スクリーンのバルゼー。
バルゼー「あの地球の戦艦の進路を解析(かいせき)したか」

(画面)目を細めるエルダ。
エルダ「・・・進路? バルゼー。何を言っている? あれは単なる難破船だ。エンジンも生命維持装置も動かぬ生存者のいない漂流艦が意思をもって進路を定めることなどあり得ぬ」

(画面)天井スクリーンのバルゼー。
バルゼー「本当にそう思うか」

(画面)見上げているエルダ。
エルダ「・・・バルゼー。・・・何が言いたい?」

(画面)天井スクリーンのバルゼー。
バルゼー「エルダ。あの戦艦は意思を持っている」

(画面)けげんな表情に変わるエルダ。
エルダ「・・・何だと? 何を根拠に言っているのだ,バルゼー。・・・あの戦艦の進路というが,仮にあれが意思を持っているのであれば一体全体あの戦艦はどこへ向かっているというのだ? あれは地球へのコースを外れているのだぞ」

(画面)スクリーンのバルゼー。
バルゼー「あの戦艦にはまだわずかに熱放射が残っている」

(画面)けげんな表情のエルダ。
エルダ「難破船には珍しいことではない。真空の宇宙空間でも星系内ではダストが散乱している。あの速度での慣性運動であれば空間摩擦だって起こり得る。しかもあれは9番惑星の戦闘宙域から漂流してきた可能性がある。艦内で火災が発生して気体が充満していれば,ある程度の熱放射は残るものだ。・・・仮にあの戦艦が生きていると言うのならば,そもそもなぜあの宙域にいるのだ。我らの存在はすでに周知のはず。わざわざ危険を冒してまで我らに無防備な姿を見せるなどとは到底合点がいかない。むしろ我が本隊から離れようとするのが当然ではないか」

(画面)見上げているカントレムール。

(画面)スクリーンのバルゼー。
バルゼー「あの戦艦にはあの宙域を行かねばならぬ理由があるのだ。あの戦艦はこの星系の6番惑星へ進路をとっている。惑星公転のタイミングとあの戦艦の速度と角度がぴたりと符合している。偶然とは思えん」

(画面)見上げているエルダとカントレムール。

(画面)スクリーンのバルゼー。
バルゼー「もう一度言う。あのトンガリ帽子は生きている。間違いない」

(画面)真顔になるエルダ。
エルダ「・・・だとしたら,目的は何だ?」

(画面)スクリーンのバルゼー。
バルゼー「分からぬ」

(画面)エルダ。
エルダ「撃沈しろと言うのか?」

(画面)スクリーンのバルゼー。
バルゼー「地球人の目的を考察する手間が省ける」

(ここでカントレムールの声)・・・バルゼー提督。

(画面)スクリーンのバルゼー。
バルゼー「・・・(視線を変える)」

(画面)見上げているカントレムールをバルゼーの視界から。
カントレムール「・・・おかしな空言(そらごと)は言わんでいただきたいものじゃ。ゲーニッツ長官からは,疑わしきことなければ捨て置けとの沙汰(さた)が出ておる。進路上にもなく,害もない難破船をわざわざ撃沈することは,大帝閣下が今回の作戦で過敏になりすぎていると兵士たちの間であらぬ疑念を抱かせることにもなろう。長官は些細な(ささいな)ことにも動じぬ大らかな元首の態度が望ましいとおっしゃっているのじゃ。・・・バルゼー提督。発展途上国の戦艦1隻になぜそこまでこだわるか。大帝閣下の初陣(ういじん)じゃぞ。わしらは強固な一枚岩(いちまいいわ)で望まなければならん。おぬしの独りよがりな臆病風(おくびょうかぜ)で全兵士の士気を揺るがせることはあってはいかんと存ずるが,いかが」

(画面)にらみつけるエルダ。
エルダ「カントレムール! 控えろ!」

(画面)振り向くカントレムール。・・・胸に手をあてて頭を下げる。

(画面)スクリーン上でそのやり取りを見ているバルゼー。・・・ふと視線を正面へ戻す。
バルゼー「ならば,ひとつだけ提案をさせていただくとしよう」

(画面)見上げるエルダ。
エルダ「何だ。バルゼー」

(画面)スクリーンのバルゼー。
バルゼー「偵察機から1発,ミサイルをあの戦艦に撃ち込んでくれ。様子を見たい」

(画面)見上げているエルダ。
エルダ「それで納得するのか。バルゼー」

(画面)スクリーンのバルゼー。

(画面)うなずくエルダ。
エルダ「・・・分かった。やってみよう」

(画面)進み出るカントレムール。
カントレムール「・・・提督・・・」

(画面)顔を向けるエルダ。
エルダ「カントレムール。お前が指示を出せ」

(画面)固まるカントレムール。・・・しかしすぐに頭を下げ,背中を向ける。
カントレムール「(背中でつぶやく)・・・全く。バルゼー提督のこととなると・・・。(歩き出す)」

(画面)宇宙空間を慣性航行している宇宙戦艦アンドロメダ。周回しているデスバデーター戦闘機。
(BGM消える)
(効果音)噴射音。

(画面)宇宙戦艦アンドロメダブリッジ内。コンソールに向かっている穴井教授。白い息が出ている。
穴井「(震え声)・・・くう。・・・全く,しつこいのう。あの戦闘機は・・・。もう艦隊は遠ざかり始めているはずじゃっつうのに・・・。(白い息)」

(画面)コンソールボックスで,はっと耳当てを上げる沙織。
沙織「・・・あのパイロット・・・何か機械的操作をしているわ。(島へ)・・・提督。気をつけて。何かしてくるかも知れない・・・! (白い息)」

(画面)艦長席で視線を返す島。暗闇にもだいぶ目が慣れてきた様子。

(画面)宇宙空間を慣性航行している宇宙戦艦アンドロメダ。周回しているデスバデーター戦闘機。
(効果音)噴射音。

(画面)デスバデーター戦闘機コクピット。パイロットが計器類を操作している様子。
(効果音)噴射音。
パイロット「(操作完了)・・・1番ミサイル。発射! (発射管のボタンを押す)」

(画面)デスバデーター戦闘機を上部からの描写。右舷下部から1発のミサイルが切り離される。・・・ミサイル噴射。一気に前方へはじけ飛んでいくミサイル。退場。
(効果音)発射音。噴射音。

(画面)宇宙戦艦アンドロメダブリッジ内。振り向く相原。
相原「・・・! 展望観測員よりメール! カブトガニがミサイルを発射しました! (白い息)」

(画面)目を見開く穴井教授。
穴井「・・・な。なんじゃあ! (白い息)」

(画面)青ざめる薮。
薮「ばれたんだぁ! (白い息)」

(画面)艦長席の島。
島「総員にメール。衝撃に備えよ。(白い息)」

(画面)宇宙空間で,ゆるやかな弧を描きながら宇宙戦艦アンドロメダへ遠ざかっていくミサイル。
(効果音)遠ざかっていく噴射音。

(画面)宇宙戦艦アンドロメダブリッジ内。振り向く穴井教授。
穴井「島提督! まずいぞい! 生命反応ブラインドメッキは衝撃に弱いんじゃ! あんなミサイルでも1発,装甲に着弾したら,まず間違いなく効力を失ってしまうぞ! (白い息)」

(画面)鋭く顔を向ける島。

(画面)テンパっている穴井教授。
穴井「・・・何ちゅうこった・・・! 偵察でミサイルを撃つかいな普通。・・・このままじゃと,百何十の生命反応がセンサーへ一気に丸裸じゃ! (白い息)」

(画面)振り返っている太田。

(画面)顔を上げている土方機関長。

(画面)艦長席で奥歯を噛む島。

(画面)宇宙戦艦バルゼミアブリッジ内。腕を組んで,仁王立ちのバルゼー。
(効果音)ブリッジ内機械音。

(画面)宇宙空間で,ゆるやかな弧を描きながら宇宙戦艦アンドロメダへ遠ざかっていくミサイル。
(効果音)遠ざかっていく噴射音。

(画面)デスバデーター戦闘機コクピット。通信マイクへ首を傾げるパイロット。
(効果音)噴射音。
パイロット「・・・着弾します・・・」

(画面)宇宙戦艦エルディーノブリッジ内。見上げている艦長席のエルダと,フロアのカントレムール。
(効果音)ブリッジ内機械音。

(画面)宇宙空間で,ゆるやかな弧を描きながら宇宙戦艦アンドロメダへ遠ざかっていくミサイル。
(効果音)遠ざかっていく噴射音。

(画面)宇宙戦艦アンドロメダブリッジ内。艦長席の島が左へ顔を向ける。
島「機関長。補助エンジン再起動準備・・・! (白い息)」

(画面)コンソールボックスへ向かっている土方機関長。
土方「(背中を向けたまま)・・・了解! (白い息)(操作)」

(画面)宇宙空間で,ゆるやかな弧を描きながら宇宙戦艦アンドロメダへ遠ざかっていくミサイル。着弾寸前。
(効果音)遠ざかっていく噴射音。

(画面)接近するミサイル。・・・ストップモーション。さらに接近しているコマ。ストップモーション。・・・さらに接近しているミサイル。
(効果音)無し。

(画面)宇宙戦艦アンドロメダブリッジ内。緊迫の沙織のアップ。
沙織「・・・きます・・・。提督」

(画面)艦長席の島。

(画面)宇宙戦艦アンドロメダを左斜め前方から。・・・弧を描いて向かうミサイル1基。・・・そしてミサイルが同艦左舷に着弾。爆光。艦体を震わせる宇宙戦艦アンドロメダ。動力が作動していないため,この程度の衝撃でもぐらついてかたむく同艦。
(効果音)噴射音。着弾音。爆発。衝撃音。金属のきしむ音。

(画面)宇宙戦艦アンドロメダブリッジ内を後方からのバードビュー。・・・右方向へかたむくブリッジ。フロントシャッターが閉まっているため,爆光は確認されない。ぶれる画面。
(効果音)衝撃音。金属のきしむ音。

(画面)ぶれる画面。コンソールの穴井教授。動力起動レバーを押す。
(効果音)金属音。
穴井「維持表示が消えたわい! メッキがはがれたぞい! 島提督! (白い息)」

(画面)艦長席で歯を食いしばる島。
島「(険しく顔を上げる)・・・全艦,緊急警戒態勢! 全速でこの宙域とコースを離脱する! 総員,持ち場につけ! (白い息)」

(画面)後方へ流し目を送りながら,操縦管を握る薮。
薮「機関長ぉ! 補助エンジンを起動してくださぁい! (白い息)」

(画面)コンソールのスイッチとレバーを操作する土方機関長。
(効果音)金属音。連続。
土方「補助エンジン起動開始! 全開へ! (白い息)」

(画面)後ろを向いている南部。
南部「非常電源スイッチオン! ブラックタイガー発進合図送ります!」

(画面)艦長席で歯を食いしばる島。
島「・・・(前へつぶやく)・・・沖田さん。土方さん。・・・古代・・・。俺たちを守ってくれ・・・。(白い息)」

(画面)宇宙戦艦バルゼミアブリッジ内。腕を組んで,仁王立ちのバルゼー。
(効果音)ブリッジ内機械音。

(画面)宇宙空間の描写。星々が点々としている。

(画面)宇宙空間に映える大マゼラン星雲。
(効果音)宇宙空間。

(画面)宇宙空間の描写。星々が点々としている。
(効果音)宇宙空間。
(BGM)M−46

(画面)宇宙空間の描写。星々が点々としている。・・・突然,画面上部から宇宙船イスカンダリアが入場。一気に画面中央へ遠ざかっていく。後続のガミラス艦隊も同様。多数のエネルギー弾道が艦隊の後方から襲いかかって,艦隊をかすめて追い抜いていく様子。・・・エネルギー弾道が後続のガミラスデストロイヤー艦に直撃。ぐらつく同艦。・・・さらに画面上部から入場してくる宇宙戦艦パムフ率いるパメラ艦隊。パメラ艦隊は追撃しながら主砲射撃を繰り返している。
(効果音)多数のエンジン音。発射音。複数。弾道音。ドップラー効果。
(BGM)M−46

(画面)ガミラス艦隊を正面からのアングル。先頭は宇宙船イスカンダリア。ガミラス艦隊から距離をおいて後方から主砲を連続発射しているパメラ艦隊。先頭は宇宙戦艦パムフ。パメラ艦隊の主砲弾道が多数,ガミラス艦隊を後方からかすめている。画面手前へ通り過ぎていくエネルギー弾道。ガミラス艦隊の後方で爆光。四散しているガミラスデストロイヤー艦。
(効果音)多数のエンジン音。発射音。複数。弾道音。ドップラー効果。遠ざかる衝撃音。
(BGM)M−46

(画面)宇宙船イスカンダリアブリッジ内。座っているスターシア。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(スタッフの声)・・・10番駆逐艦,沈没しました!
(スタッフの声)・・・敵艦隊との相対距離変わらず! 距離,9万宇宙キロ!

(画面)振り返るガミラス人スタッフ。
スタッフ「女王! 迎撃許可を! 専守防衛が成立します!」

(画面)正面を見ているスターシア。
スターシア「撃ってはいけません。 専守防衛を証明できません。撃てばパメラの思う壺(つぼ)です。あの艦隊にかすり傷ひとつつけてはなりません」

(画面)振り返っているスタッフ。
スタッフ「・・・しかし,このままでは犠牲はさらに拡大します!」

(画面)正面を見ているスターシア。
スターシア「私たちが撃てば,パメラは正規軍の立場を得るのです。それが目的なのです。あの艦隊はまだ全力射撃していません。私たちに反撃させようとしています。こちらから1発でも撃てば,それを機に全力射撃を始めるでしょう。ミサイルや魚雷も放ってきます。そうなれば,後方をとられている私たちに勝ち目はありません」

(画面)主砲を連続発射しているパメラ艦隊を正面から。先頭は宇宙戦艦パムフ。
(効果音)多数のエンジン音。主砲発射音。連続。
(BGM)M−46

(画面)宇宙戦艦パムフブリッジ内。艦長席のパメラ。
(効果音)ブリッジ内機械音。
パメラ「ビリュー・ルー! スターシアは撃った?」

(画面)振り返るビリュー・ルー。
ビリュー「まだ撃ってきていません。パメラ様」

(画面)苦々しげなパメラ。
パメラ「・・・しぶといわ。イスカンダルの女王・・・! こうなったら・・・。(正面へ指差す)・・・全艦,ガミラス艦隊右翼後方の巡洋艦に集中照準して! あの巡洋艦を撃沈しておしまいなさい!」

(画面)通信マイクへ向かうビリュー・ルー。
ビリュー「全艦,艦隊右翼後方の巡洋艦へ照準。撃沈せよ」

(画面)艦長席で,ほくそ笑むパメラ。
パメラ「・・・ふふふ。さて。どこまで我慢できるかしらね・・・? スターシア」

(画面)主砲を一斉射撃するパメラ艦隊。宇宙空間がまばゆく照らし出される。
(効果音)発射音。弾道音。多数。

(画面)ガミラス艦隊を正面から。その後方から追撃しているパメラ艦隊。パメラ艦隊から発射された主砲の光の羅列がガミラス艦隊後部右翼へ集中。追尾しているガミラスデストロイヤー艦に次々と直撃する。
(効果音)複数の弾道音。直撃音。衝撃。
(BGM)M−46

(画面)複数の主砲の直撃を受けて,大きくぐらつくガミラスデストロイヤー艦。爆光。
(効果音)次々と衝撃音。

(画面)ガミラスデストロイヤー艦ブリッジ内。両腕を張り伸ばしている艦長席のガミラス戦士。かたむく画面。非常灯点灯。
(効果音)複数の直撃。爆発音。きしむ金属音。
(スタッフの声)・・・後部エンジン被弾! 誘爆します!
艦長「艦隊から離脱! 巻き添えを誘発するな! ・・・」
(白くなる画面)

(画面)右へかたむいていくガミラスデストロイヤー艦。エンジン部分から爆発。全体から木っ端微塵に爆光を放って砕け散る。
(効果音)衝撃音。

(画面)宇宙船イスカンダリアブリッジ内。振り返るスタッフ。
(効果音)ブリッジ内機械音。
スタッフ「・・・6番巡洋艦,沈没!」

(画面)正面を見据えているスターシア。

(画面)宇宙戦艦パムフブリッジ内。優越の表情を取り戻していくパメラ。
(効果音)ブリッジ内機械音。
パメラ「・・・さあ。撃ちなさい。スターシア。誇り高きガミラスの男たちをイスカンダルの事情で犬死にさせるつもり? せめて戦わせてあげましょうよ。かわいそうじゃなくって? さあ・・・撃ちなさい。・・・撃ちなさい。スターシア・・・」

(画面)ガミラス艦隊を正面から。先頭は宇宙船イスカンダリア。後方のパメラ艦隊の追撃は止まない。
(効果音)複数のエンジン音。発射音。弾道音。
(BGM)M−46

(画面)宇宙船イスカンダリアブリッジ内。座っているスターシア。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(スタッフの声)・・・女王。
スターシア「・・・(顔を向ける)」

(画面)スタッフが振り返っている。
スタッフ「・・・まもなく七色星団宙域へ近づきます!」

(画面)振り向いているスタッフの背中から座っているスターシアへのアングル。
スターシア「・・・(立ち上がる)・・・何とか,たどり着けそうですね。・・・全艦,暗黒星雲へ進路をとりなさい」

(画面)振り向いているスタッフ。

(画面)顔を向けるスターシア。
スターシア「・・・あそこはレーダー波の死角になります。全艦,暗黒星雲へ突入してあの敵艦隊の追撃をかわします。ただし・・・」

(画面)注目しているブリッジスタッフをスライドアングル。

(画面)スターシアのアップ。
スターシア「・・・このイスカンダリアは暗黒星雲には向かいません。直ちにワープ準備に入ってください」

(画面)やがて前方に見えてくる赤橙黄緑青藍紫(せきとうおうりょくせいらんし)の七色に光る七つの矮星群。傍らには墨を塗ったかのごとくの暗黒星雲が広がっている。かつて宇宙戦艦ヤマトとガミラスの名将ドメル将軍がそれぞれ祖国の命運をかけて戦った伝説の戦地。七色星団宙域である。・・・そこへまっしぐらに向かっていく宇宙船イスカンダリア率いるガミラス艦隊。
(BGM消える)
(効果音)複数のエンジン音。

(画面)後方にパメラ艦隊を率いている宇宙戦艦パムフ。
(効果音)複数のエンジン音。

(画面)宇宙戦艦パムフブリッジ内。天井パネルには七色星団宙域へ向かうガミラス艦隊が映っている。それを見上げているブリッジの女性スタッフたちの背中。
(効果音)ブリッジ内機械音。

(画面)見上げているビリュー・ルーの背中。・・・振り向き,進み出てくる。
ビリュー「・・・パメラ様。この先は七色星団です。この宙域はデジタル波がランダムに乱れます。目視航行を余儀なくされますが」

(画面)艦長席で余裕のパメラ。
パメラ「どうってことないわよ。ビリュー・ルー。それは相手も同じこと。攻撃が出来る分だけ,私たちが有利よ」

(画面)振り向く女性レーダー士。
レーダー士「パメラ様! 前方の空間にゆがみの反応! ワープイン現象です!」

(画面)顔を向けているパメラとビリュー・ルー。
パメラ「・・・え? ここでワープ?」
ビリュー「・・・(前へ)・・・直ちに艦隊のワープ進路の解析にはいれ!」

(画面)パネルに向かっているレーダー士の背中。再び振り向く。
レーダー士「・・・ワープ現象は艦隊レベルではありません! 先頭のイスカンダリアだけです!」

(画面)目を細めるビリュー・ルー。
ビリュー「・・・なんと・・・? (後ろのパメラへ振り向く)」

(画面)艦長席のパメラ。目を見開いている。

(画面)再び顔を向けるビリュー・ルー。
ビリュー「イスカンダリアはどこへワープしようとしているか・・・?」

(画面)宇宙船イスカンダリアブリッジ内。スターシアのアップ。
スターシア「・・・総員,ワープに備えなさい・・・!」

(画面)操縦管を握るガミラス人パイロット。
パイロット「・・・ワープ開始! (操縦管を押す)」

(画面)前方に七色星団宙域。そこへ向かっているガミラス艦隊。・・・やがて先頭の宇宙船イスカンダリアの船体が空間に揺らぎ始める。他の宇宙艦の変化はない。・・・そして空間に溶け込むようにその姿を消していく宇宙船イスカンダリア。残された艦隊の進路は変わらずそのまま七色星団へ向かっている。
(効果音)複数のエンジン音に紛れるワープ音。

(画面)宇宙戦艦パムフブリッジ内。解析しているレーダー士の背中。
(効果音)ブリッジ内機械音。
レーダー士「・・・イスカンダリア,ワープインしました! 残りのガミラス艦隊は暗黒星雲へ向かっています! イスカンダリアのワープアウトポイントは・・・」

(画面)宇宙空間の描写。星々が点々としている。

(画面)宇宙戦艦パムフブリッジ内。解析しているレーダー士の背中。
(効果音)ブリッジ内機械音。

(画面)宇宙空間の描写。星々が点々としている。

(画面)宇宙戦艦パムフブリッジ内。解析しているレーダー士の背中。・・・両肩が震える。
(効果音)ブリッジ内機械音。・・・そして無音へ。

(画面)宇宙戦艦パムフブリッジ内。・・・顔色を変えて振り返るレーダー士。
(効果音)無し。

(画面)驚愕のパメラとビリュー・ルー。
(効果音)無し。

(画面)宇宙空間の描写。星々が点々としている。

(画面)宇宙空間の描写。星々が点々としている。・・・空間にゆがみの反応。・・・ゆっくりとその実体を取り戻してくる宇宙船イスカンダリア。
(効果音)ワープアウト。

(画面)宇宙空間に浮かぶ惑星ガトランティス。

(画面)惑星ガトランティス地表都市の全景。ゆっくりとアングルが前進。・・・やがてそびえ立つ大帝総督府のビル。

(画面)総督府内部司令センター。それぞれのコンソールへ向かっているガトランティス人スタッフたち。
(効果音)内部機械音。

(画面)計器類を見ているガトランティス人スタッフを右方向からのアングル。パネルに反応している点滅シグナル。
(効果音)電子音。

(画面)まゆをひそめるガトランティス人スタッフの表情。

(画面)パネルに表示されている点滅シグナル。
(効果音)電子音。

(画面)宇宙空間を航行している宇宙船イスカンダリア。
(効果音)エンジン音。

(画面)宇宙船イスカンダリアブリッジ内。操縦管を握っているパイロットが画面右端。後方には座っているスターシアを遠めに。
(効果音)ブリッジ内機械音。
パイロット「・・・女王。ワープ完了。予定通り,目的宙域へ到達いたしました・・・」

(画面)無言のスターシア。

(画面)複雑な表情で振り返るパイロット。
パイロット「・・・ガトラン系です」
(BGM)J−2B

(画面)座っているスターシア。

(画面)注目しているガミラス人スタッフたち。

(画面)目を伏せるスターシア。・・・再び目を開けて前を向く。
スターシア「・・・スタッフのみなさん。申し訳ないことをしました。でもこの方法しか,あなた方の仲間の危機を脱する方法が思いつかなかったのです・・・。しかしたとえそうであったにしても,このような事態にあなた方を巻き込んでしまったことは深く遺憾(いかん)に思っています・・・」

(画面)注目しているガミラス人スタッフたち。

(画面)宇宙空間を航行している宇宙船イスカンダリア。
(効果音)エンジン音。
(BGM消える)

(画面)七色星団の暗黒星雲を眼前のパメラ艦隊を後方からの全容。
(効果音)複数のエンジン音。

(画面)宇宙戦艦パムフブリッジ内。艦長席のパメラ。
(効果音)ブリッジ内機械音。
パメラ「・・・(左下へ視線)・・・ビリュー・ルー。艦隊を停めて」

(画面)見上げているビリュー・ルー。

(画面)停止し,隊列を整えるパメラ艦隊を右翼からの描写。
(効果音)おさまっていくエンジン音。機動音へ。

(画面)宇宙戦艦パムフブリッジ内。見上げているビリュー・ルー。
(効果音)ブリッジ内機械音。
ビリュー「・・・パメラ様・・・」

(画面)艦長席で真顔のパメラ。
パメラ「・・・スターシア・・・。考えたものね・・・。あの女狐(めぎつね)・・・。・・・この宇宙で,私が唯一踏み込めない場所へ逃げ込んでくれたわ・・・。しかも私たちを暗黒星雲までおびきだしておいて・・・」

(画面)見上げているビリュー・ルー。

(画面)苦々しげな表情を繰り返すパメラ。
パメラ「・・・あの女は撃ってこなかった。涼しい顔してガミラス人たちを見殺しにしてまで永世中立を守った。おかげで私はまだ正規軍になっていない・・・。私はまだガトラン系には入れない。たとえ入っても攻撃できない。あそこはガトランティスの中心なのよ。局地的混乱では済まされない」

(画面)見上げているビリュー・ルー。

(画面)艦長席のパメラ。
パメラ「・・・スターシアは単身,艦隊を離れることでガミラス人たちの足かせを外した。今,あの艦隊の指揮権はガミラスにあるわ。ガミラスは中立国じゃない。私たちの艦隊と堂々と戦火を交えることが出来る。・・・しかもここは七色星団。ガミラス軍にとっては庭みたいなものよ。ここで戦えば,たとえ数で優っていても私たちが勝つとは限らない。つまり,ここは戦いをするためじゃなく,戦いをやめさせるための場所。・・・スターシアはガミラス人たちに絶好の避難場所を準備して,私たちが追えない領域へ,まんまと逃げ込んだのよ」

(画面)見上げているビリュー・ルー。
ビリュー「・・・パメラ様。リレー衛星を守れとの命令は果たしました。もう充分なのでは・・・?」

(画面)鋭くにらみつけるパメラ。
パメラ「ビリュー・ルー! あなたは全然分かっていないわ! 私が今どんな気持ちなのか!」

(画面)押し黙るビリュー・ルー。

(画面)顔を上げるパメラ。
パメラ「私たちは勝っていたのよ! 圧倒的にね! 条件は全部私たちに有利だった! あと少しのところだったの! ・・・それが今は何? 私たちはスターシアを殺すどころか,これ以上前に進むことさえも出来なくなっているわ! こんな屈辱,考えられる?」

(画面)暗黒星雲内手前で進路を180度転換させて隊列を整えているガミラス艦隊。発進してくる戦闘機隊。
(効果音)機動音。出撃音。多数。

(画面)ガミラスデストロイヤー艦ブリッジ内。臨戦態勢のガミラス人戦士たち。
(効果音)ブリッジ内機械音。

(画面)戦闘機コクピットのガミラス人パイロット。
(効果音)噴射音。

(画面)宇宙戦艦パムフブリッジ内。パメラの心の逃げ場を模索(もさく)するビリュー・ルー。
(効果音)ブリッジ内機械音。
ビリュー「パメラ様。・・・いかにイスカンダルが永世中立国とはいえ,今回は完全なガトランティスへの領宙侵犯になります。イスカンダルの女王といえども,ただでは済まされないでしょう。もはやスターシアには,なす術さえもないと思われますが」

(画面)艦長席でにらみつけるパメラ。
パメラ「・・・ビリュー・ルー。それでも外交的配慮でスターシアの命は保障しなければならないのよ。ウーム連邦だって今回の件ではガトランティスの動向に注目してくるはずですもの。・・・私の望みはね。ビリュー・ルー。・・・スターシアを殺して,その後に私が正規軍になる事なの。先に正規軍になってしまうと,つまらない外交の都合でスターシアに二度と手は出せなくなるわ。だから私はどうしても今の立場のうちにスターシアを殺さなければならないの」

(画面)さすがに嘆願する表情を見せるビリュー・ルー。
ビリュー「・・・パメラ様。デスラーのことはお忘れになってください。あのガミラス人とて,今生きているかどうかも分かりません」

(画面)ぞっとする表情に変貌するパメラ。
パメラ「・・・ビリュー・ルー。これは女のプライドなのよ。いまさら引き下がれない。(顔を上げる)・・・私は絶対にあきらめないわ。(スタッフへ)・・・あのガミラス艦隊には,もう用はない! この宙域を離脱するわよ!」

(画面)見上げているビリュー・ルー。

(画面)艦長席から見下ろすパメラ。
パメラ「ビリュー・ルー。艦隊をビーメラへ引き上げさせて。・・・このパムフは放棄するわ。私は4番駆逐艦へ行く」

(画面)目を見開くビリュー・ルー。
ビリュー「パメラ様!」

(画面)口元をほころばせるパメラ。
パメラ「・・・だってパムフは目立ちすぎるんですもの。大量生産型の駆逐艦なら周りの正規軍と見分けがつきにくいでしょ? 駆逐艦1隻でガトラン系へワープよ。あなたもついてきてちょうだい。スターシアを追うわよ」

(画面)前方に七色星団。暗黒星雲へ向かって整列しているパメラ艦隊。・・・やがて進路を反転させ始める。
(効果音)複数の機動音からエンジン音へ。

(画面)宇宙空間。星々が点々としている。

(画面)宇宙空間をホバリングしているデスバデーター戦闘機1機。
(効果音)噴射音。

(画面)宇宙空間を慣性航行している宇宙戦艦アンドロメダ。ミサイルが着弾した箇所から爆煙。・・・画面には霞み(かすみ)が入り,薄い雲の様な白い影が,それでもよく見なければ分からないほどかすかに流れている。
(効果音)形容し難い些細な連続音。

(画面)闇に包まれている宇宙戦艦アンドロメダブリッジ内。後方からのバードビュー。やはり画面には霞み(かすみ)が入っている。
(効果音)形容し難い些細な連続音。

(画面)電源レバーを押し上げた体勢のまま,固まっている穴井教授。白い影が流れている。
(効果音)形容し難い些細な連続音。

(画面)冷や汗を流したまま操縦管を握りしめている薮。
(効果音)形容し難い些細な連続音。

(画面)コンソールボックスをにらんでいる土方機関長。
(効果音)形容し難い些細な連続音。
土方「・・・どういうことだ・・・。補助エンジンが起動しない・・・。(白い息)」

(画面)後ろを向いている南部。
(効果音)形容し難い些細な連続音。
南部「・・・非常通信,不調・・・! 提督・・・! ブラックタイガー隊へ指示が出せません! (白い息)」

(画面)けげんな表情の太田。
(効果音)形容し難い些細な連続音。
太田「・・・? (穴井教授へ)・・・教授。ど,どうしたんですか・・・? 機動電源が入らないじゃないですか・・・。まさか,さっきのミサイルの着弾のショックで・・・? (白い息)」

(画面)艦長席の島。霞み(かすみ)の中,前を見据えている。
(効果音)形容し難い些細な連続音。

(画面)まゆをしかめて耳を押さえている沙織。
(効果音)形容し難い些細な連続音。
沙織「・・・何・・・? 何なの? これって・・・。このものすごい数の心の流れは・・・? (白い息)」

(画面)何かに気づく表情の沙織のアップ。かすかな淡い光が顔を照らしている。

(画面)ブリッジ中央にある次元羅針盤。・・・淡い黄色い光を発している。アンドロメダを模った(かたどった)羅針が意味不明に不規則に動いている。

(画面)目を見張る穴井教授。
穴井「・・・何じゃ? 入れるスイッチを間違えたか・・・?」

(画面)宇宙空間を慣性航行している宇宙戦艦アンドロメダ。・・・周回しているデスバデーター戦闘機1機。
(効果音)噴射音。

(画面)デスバデーターコクピット。操縦しているパイロット。
(効果音)噴射音。

(画面)デスバデーターコクピットの計器類の描写。円形パネルの表示。・・・そこには何も表示されていない。
(効果音)噴射音。電子音。

(画面)デスバデーターコクピット。パイロットが通信マイクへ首を傾ける。
(効果音)噴射音。

(画面)フルフェイスメットのデスバデーターパイロットのアップ。
(効果音)噴射音。
パイロット「・・・副官。目標に変化は見られません。やはりエネルギー放射,生命反応,ともにゼロです」

(画面)ガトランティス本隊右翼の第2遊動機動艦隊。先頭の宇宙戦艦エルディーノ。
(効果音)膨大なエンジン音。

(画面)宇宙戦艦エルディーノブリッジ内。通信マイクに向かっているカントレムールの背中。・・・納得するように1回うなずいて身体を起こす。
(効果音)ブリッジ内機械音。

(画面)天井スクリーンで腕組みをしているバルゼー。

(画面)艦長席で軍帽を向けるエルダ。

(画面)進み出てくるカントレムール。立ち止まり,胸に手を当てて頭を下げる。
カントレムール「(頭を上げる)・・・提督。状況に変わりはございませなんだ。バルゼー提督の取越し苦労だったようですな」

(画面)うなずいて左上の天井を見上げるエルダ。
エルダ「バルゼー」

(画面)天井スクリーンで腕組みをしているバルゼー。

(画面)見上げるエルダをハイアングル。
エルダ「・・・どうやらお前の目論見違い(もくろみちがい)だったようだ。偶然が重なっただけだ。やはりあれは難破船だったぞ」

(画面)天井スクリーンで腕組みをしているバルゼー。

(画面)宇宙空間を慣性航行している宇宙戦艦アンドロメダ。・・・周回しているデスバデーター戦闘機1機。・・・そしてきびすを返して画面右端へ向けて退場していく同機。
(効果音)噴射音。遠ざかっていく。

(画面)宇宙空間を遠ざかっていくデスバデーター戦闘機。
(効果音)遠ざかっていく噴射音。

(画面)宇宙戦艦アンドロメダブリッジ内。液晶画面に照らされる相原。画面はクリアになっている。身体をひねる相原。
相原「・・・観測員よりメール。カブトガニが遠ざかっていきます・・・。(白い息)」

(画面)コンソールボックスの沙織。
沙織「・・・あのパイロットの操作に乱れはありません。私たちの存在は感知されていないものと思われますが・・・。(白い息)」

(画面)当惑しているブリッジスタッフたちの表情をスライドアングル。
(複数のざわめき)

(画面)緊張の姿勢を崩さない島。
島「・・・油断は禁物だ。(穴井教授へ)・・・教授。直ちに艦内電源のチェックを。(土方機関長へ)・・・機関長。エンジンの点検を急いでくれ・・・!」

(画面)電源レバーを押し上げたままの穴井教授。ため息をつく様子。
穴井「・・・やれやれ。おかしいのう。どうやら維持表示は消えとっても,何とかコーティングは健在じゃったのかいの・・・。(白い息)」
(ここでコンソールや計器類に次々と電子光が灯り始める)
(効果音)複数の電子音。
穴井「(目を丸くする)・・・な,何じゃい・・・! 今ごろ電源が入りよった・・・! (白い息)」

(画面)宇宙空間を慣性航行している宇宙戦艦アンドロメダ。・・・やがて各箇所から次々と光が漏れ始める。
(効果音)徐々に大きくなる機動音。

(画面)宇宙戦艦アンドロメダブリッジ内。コンソールボックスへ向かっている土方機関長。
(効果音)ブリッジ内機械音。
土方「・・・補助エンジン,起動しました。・・・60%・・・。70%・・・。(白い息)」

(画面)操縦管を握る薮。
薮「・・・補助エンジン回路との接続,確認しました。(白い息)」

(画面)不審な表情で計器類をチェックしている穴井教授。
(効果音)操作音。
穴井「・・・生命維持装置,再起動完了じゃ。しかし,それにしてもこりゃ。ちょっとばかり,起動まで時間がかかりすぎじゃったな。次元羅針盤の動きもおかしかったしのお。こりゃまた再点検じゃな。(白い息)」

(画面)安堵して後ろを向いている南部。・・・コンソールに点滅信号。
(桂隊長の声)・・・副官さんよお! 応答しろい!
南部「・・・! (慌ててマイクへ向かう)・・・はい! こちら南部! (白い息)」
(桂隊長)・・・分かってるよ。
南部「・・・(我)」

(画面)艦内滑走路にて待機中のブラックタイガークラシック。内部照明が明るくなっており,数機のクラシック機が照らし出されている。
(効果音)電源電子音がわずかに響き渡っている。

(画面)コクピットの桂隊長。フルフェイスメットのマイクに語りかけている。
桂「・・・どうなってんだ,副官さん! 艦内電源が入ってんぞ! 切り抜けたのか。見つかったのか?」

(画面)ブリッジ内。通信マイクへ向かっている南部。
南部「あ・・・。すまなかった。とりあえず今は緊急の危機は起きていない。連絡が遅れてしまってすまない。通信回路にトラブルがあってな。(白い息)」

(画面)コクピットの桂隊長。フルフェイスメットのマイクに語りかけている。
桂「何だい。出番なしかい。じゃ,やつらをやり過ごしたってこったな?」

(画面)ブリッジ内。通信マイクへ向かっている南部。
南部「ああ。いや。実はまだ分からないんだ。とりあえずブラックタイガー隊の第一陣は護衛として再度発進だ。残りは待機解除。ゆっくり休んでくれ。(白い息)」

(画面)コクピットでメットを外す桂隊長。
桂「(にやり)・・・ゆっくりと休めってよ。やれやれ。過保護なこった・・・。(白い息)」

(画面)ブリッジ内。艦長席の島。
島「・・・太田。敵艦隊は・・・? (白い息)」

(画面)顔を向ける太田。
太田「レーダーエリアからは完全に外れています。接近してくる影もありません。(白い息)」

(画面)振り向いている相原。
相原「不審な通信の傍受は認められません。(白い息)」

(画面)コンソールボックスの土方機関長。
土方「補助エンジン異常認めず。100%リカバリー完了しています。(白い息)」

(画面)艦長席でうなずく島。
島「・・・薮。進路を修正。予定航路を維持。補助エンジン全開。(白い息)」

(画面)腕を引き締めて操縦管を握る薮。
薮「了解。補助エンジン全開。予定航路へ修正・・・。(操作)(白い息)」
(効果音)高まる機動音。

(画面)コンソールボックスで腑に落ちない表情の沙織。
沙織「(つぶやく)・・・それにしても,さっきのは何だったのかしら・・・? (白い息)」

(画面)通常の動きを見せている次元羅針盤。

(画面)宇宙戦艦アンドロメダ艦尾。4対の補助エンジン口全てに光が満ち溢れて,一気に噴出すエネルギーの帯。
(効果音)エンジン噴射音。

(画面)宇宙空間の宇宙戦艦アンドロメダを右ななめ前方からのアングル。・・・画面へ迫る同艦左舷。画面を左へ通過。アングルが回転。艦尾の描写になり,宇宙空間を遠ざかっていく宇宙戦艦アンドロメダ。
(効果音)エンジン音。ドップラー効果。

(画面)宇宙空間に浮かぶ惑星ガトランティス。
(BGM)M−1A

(画面)惑星ガトランティス中央都市の情景。そびえ立つ大帝総督府ビル。

(画面)総督府内部通路。歩いてくる大きな人影。近づいてくるアングル。
(効果音)足音。

(画面)人影の視界と同じアングル。かなり高い位置。大きな歩幅のペースで接近する出入り口ドア。・・・直前で開け放たれたそのドアの向こう側で総督府司令センター内部の慌しさ(あわただしさ)が目の当たりとなる。
(効果音)足音。ドアの開閉音。センター内機械音。電子音。スタッフのざわめき。足音。ドアの開閉音。

(画面)総督府司令センター内部。センターボックスへ立つ軍服の巨体。男性も顔負けのがっちりとした体格のガトランティス女性戦士。肌の色は濃い緑色。鋭い瞳と軍帽の下の刈り上げられている髪の色は黒。なぜか右手には太く青いこん棒が握られている。左手で何度も受け止められるこん棒。
(効果音)センター内機械音。電子音。
女性戦士「星系に侵入した未確認飛行物体のその後の経過を報告せい!」

(画面)そのいつもと変わらぬ大きな声に一斉に注目するガトランティス人スタッフたち。畏怖のまなざし。
(BGM)M−1A

(画面)大きな女性戦士の上半身の描写。
(字幕)大帝総督府長官 サエラ・ド・ラーゼラー(画面下部横文字)

(画面)スタッフのひとりが緊張気味に近づいて右手を上げる。
スタッフ「(手を下ろす)・・・ラーゼラー長官。我が星系に侵入した船の国籍が判明いたしました。サンザー星系イスカンダル籍です。イスカンダル王家の紋章が船に刻印されているとのことで・・・」

(画面)上から見下ろすサエラ。
サエラ「・・・イスカンダル? なぜイスカンダルの船が,我が首都星系まで出張って(でばって)きているのか」

(画面)見上げているスタッフ。
スタッフ「・・・それは,ただいま調査中です」

(画面)恫喝(どうかつ)するサエラ。
サエラ「遅い! 船影確認から0.1ガトランティスアワーも経過しているのだ! 私は大帝閣下から留守を任されているのだぞ! 平和な時間の長さに戦士としての機敏(きびん)さも廃れ(すたれ)きったか,ばか者! 呼びかけは行っているのか!」

(画面)身体と髪の毛が後方へなびいているスタッフ。恐縮の体(てい)。
スタッフ「・・・! はい・・・! まもなくイスカンダル船とのコンタクトが・・・」

(画面)さえぎるサエラ。
サエラ「経過はいらぬ! 結果を報告せよ!」

(画面)右手を上げて,そそくさとその場を去るスタッフ。

(画面)顔を誰よりも高く上げるサエラ。
サエラ「・・・イスカンダル王家の紋章だと・・・。タキオンの暴走でイスカンダル人はほとんど滅亡しているはず。あの船に乗っている王族となると・・・女王スターシアか。・・・我が夫を殺した宇宙戦艦ヤマトの建造に加担した女。・・・食えない。一体何をたくらんでいる。いずれにしても,ただではおかぬ」
(効果音)何かが握りつぶされる音。
(BGM消える)

(画面)宇宙空間を航行している宇宙船イスカンダリア。・・・その両脇へ並びかけるガトランティス哨戒(しょうかい)艇,計2隻。
(効果音)複数のエンジン音。
(通信音声)・・・この宙域を航行するにあたって,貴船に通告する! ここはガトランティス連邦内ガトラン系である! 貴船は我が連邦との事前のアポイントメントを有しておらず,これは明らかに不当なる領宙侵犯である! 貴船に過失があったとは認められない! 退去を通達するには貴船は余りにも我が連邦領域に深く侵入してきており,それは我が連邦に対する意図的な目的があるものと判断する! ただちに今の航行を中断し,我が指示に従え! 繰り返す! これは警告ではない! 通告である! ただちに投降せよ!

(画面)宇宙船イスカンダリアブリッジ内。座っているスターシア。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(通信音声)・・・ただちに投降せよ! 不法入国で逮捕する!
スターシア「・・・(立ち上がる)」

(画面)集まってくるガミラス人スタッフたち。
スタッフ「・・・女王・・・」

(画面)見回すスターシア。
スターシア「・・・投降します。心配にはおよびません。彼らも私の命を奪おうとはしません。ただ,あなた方の身柄については何とか帰国できるよう取り計らうつもりです」

(画面)集まっているガミラス人スタッフ。
スタッフ「・・・女王に救われたこの命です。女王は私たちの恩人です。どのようなことになっても恨みはいたしません」

(画面)目を細めるスターシア。
スターシア「あきらめることは許しません。私に何の策もないとでも思うのですか?」

(画面)集まっているガミラス人スタッフ。

(画面)微笑むスターシア。
スターシア「私を信じてください。あのデスラーが戻るまで,あなた方をひとりとして死なせはしません。(顔を上げる)」

(画面)宇宙空間を航行している宇宙船イスカンダリア。・・・その両脇のガトランティス哨戒艇,計2隻。
(効果音)複数のエンジン音。

(画面)宇宙空間を航行する宇宙戦艦アンドロメダ。周囲にはブラックタイガークラシック隊が護衛として飛行している。
(効果音)エンジン音。複数の噴射音。

(画面)艦内通路。歩いている4人。・・・左から佐渡医師。フロール・レイム・ズォーダー。南部。桂隊長。電力節約のためか,照明は暗くスライド通路は停止している。
(効果音)4人の足音。

(画面)4人を胸から上の描写。いや,フロールだけは肩から上の描写。アングルは4人に固定。
(効果音)4人の足音。
佐渡「(南部へ)・・・捕虜への尋問になぜプリンセスが必要になるんだ? 南部さん」
南部「(前を向いたまま)・・・提督と教授が対応したんだが,全然らちがあかないんだ。とにかくプリンセスに会わせろってきかないらしい。会わせるまでは何も話すつもりはないって言っているんだ・・・」
佐渡「・・・全く。おかげで私まで同行しなければならなくなってしまった・・・。確かに捕虜は同じガトランティス人ではありますが,それは少し危険ではないですか? プリンセスは本国では政治犯として追われていた身の上だ。その捕虜は当然,拘束しているんでしょうね?」
南部「いや。いたって自由だ。ただ椅子に座らせているだけだ」
佐渡「(片手でこめかみを握る)・・・島さん・・・。まったく・・・」
南部「とにかくプリンセスを同席させるのは提督の命令だからな・・・」
フロール「(佐渡医師へ)・・・私は隅(すみ)に置けないってことか? サド」
佐渡「(こめかみを握ったまま)・・・地球語,間違えていますよ。プリンセス」

(画面)左方向からのアングル。南部の影から顔を出す桂隊長。
桂「それにしても,副官さんよぉ。俺が呼ばれるってのはどういうわけなんだ? 俺は,どう考えたって全く関係ないと思うんだが?」
南部「それも捕虜の,たっての希望らしい」
桂「(自分を指差す)希望だぁ? ・・・というこたぁ,俺も隅に置けないってことかよ」

(画面)左方向を見て,口を”いの事”にするフロール。
フロール「カツラ。それにしてもお前,ごつい顔だな。ヒゲをつけたらザバイバルそっくりになるぞ」

(画面)南部と桂隊長。
桂「・・・(にらみつける)・・・カツラって,少し気安いぞ。お姫さん。それにその振り,全然今の話の筋に乗っかってないだろうが。話を聞いていたのかよ。それにつけても何だい。そのザバイバルってのは?」
南部「・・・(笑いをかみ殺す)」

(画面)尋問室。テーブルを前にして座っている島。向かって右には穴井教授。

(画面)同じテーブルを前に座っているオサード。無表情。

(画面)出入り口スライドドアが開かれて,南部が入ってくる。
(効果音)ドアの開閉音。
南部「・・・連れてきました。提督」

(画面)左上を見上げる島と穴井教授。
島「・・・ご苦労さん。座ってくれ」

(画面)出入り口スライドドアから入室する南部。後から入ってくる桂隊長。そしてフロール。佐渡医師は一番最後。・・・閉まるスライドドア。
(効果音)ドアの開閉音。

(画面)見上げているオサード。

(画面)腰かけるフロール。しっかりと前を見据える。

(画面)見つめるオサード。無表情。

(画面)左から,島。穴井教授。南部。桂隊長。フロール。佐渡医師。
穴井「(テーブルへ手を組んで前のめり)・・・さてと。お前さんの要望はこの通り。全部のんだぞい。指揮官が寛大でよかったのう。これで話をしてもらえるんじゃろうな?」

(画面)見つめているオサード。

(画面)腰かけているフロール。視線を合わせている。

(画面)見つめているオサード。・・・突然立ち上がる。
(効果音)椅子のずれ。

(画面)見上げる島。穴井教授。南部。桂隊長。フロール。佐渡医師。・・・南部と桂隊長も立ち上がって銃を構える。
(効果音)椅子のずれ。銃の金属音。
島「待て! 銃を下ろせ! 南部! 桂!」

(画面)立ち上がっているオサード。・・・身体を右斜めへ向けて,かかとを打つ。右手を上げる。
(効果音)かかとを打つ音。

(画面)座ったまま顔を上げているフロール。隣の佐渡医師は立っている。

(画面)島,フロール以外は全員,立ち上がっている。

(画面)右手を上げているオサード。・・・少し視線を上に上げる。
オサード「・・・ガトランティス連邦軍,第156遊動機動艦隊,第2爆撃機隊所属,6号機パイロット,オサードです。・・・プリンセスにはご機嫌うるわしく。祝着(しゅうちゃく)です」

(画面)座ったまま顔を上げているフロール。

(画面)目を丸くする桂隊長。
桂「・・・この間と,しゃべり方が全然違うじゃねえか」

(画面)思い当たる表情の島。
島「・・・オサード・・・?」

(画面)宇宙戦艦アンドロメダ艦内通路に見える赤十字のペイントのスライドドア。ショルダー銃をかけている警備兵が両脇を固めている。

(画面)医務室。ベッドの脇の椅子に腰かけて足を組んでいるデスラー。肌の色はすっかり黄色みがかった肌色になっている。コーヒーカップから湯気の出ている飲み物を飲んでいる。
デスラー「(顔を上げて微笑)・・・苦いが,悪くないね。マゼラン産のサカムリとよく似た味だ・・・」

(画面)並んで座っている綾乃と沙織。

(画面)ベッド脇のスタンドにコーヒーカップを置くデスラー。
デスラー「私の束縛(そくばく)を解く許可はもらっていたのかね? もし私が暴れても,あなた方うら若きご婦人たちがおふたりで私を押さえ込むとでも?」

(画面)並んで座っている綾乃と沙織。
綾乃「・・・あなたはそんなことはしないと思います」

(画面)微笑むデスラー。
デスラー「ふふ。許可はもらっていないということか。これは驚いた。地球軍の規律というのはそれほどに甘いということかな」

(画面)息を呑む綾乃。

(画面)にらみつける沙織。
沙織「単にあなたは運がよかっただけよ。正式ではないけれど,提督には暗黙の了承を得ているの。ここの指揮官は聡明で寛大なのよ。他の船では,こうはいかなかったわ。ただ部屋の外には武装している警備兵がいるってことを忘れないで」

(画面)再びコーヒーを飲むデスラー。
デスラー「なるほど。運の強さに関しては確かにそうらしいね」

(画面)見つめる綾乃。
綾乃「・・・プリンセス・フロールから聞きました。あなたはこのアンドロメダを救うために戦って負傷したって・・・。提督はじめ,クルーは皆感謝しています。でも,あなたほどの方がなぜ? 目的は何だったのですか?」

(画面)顔を向けるデスラー。
デスラー「アンドロメダ・・・か。それがこの船の名かね。いい船だ。おかげで私も久しぶりにリラックスしている」

(画面)立ち上がる沙織。
沙織「・・・人の話を聞かないところは,相変わらずね。デスラー! 確かにあなたはこの船を救ったかも知れないけど,あなただって同時に命を救われているんですからね。私たちに立場が有利だと思っていたら大間違い。もっと質問には素直に応えるべきだわ!」

(画面)目を丸くするデスラー。
デスラー「・・・相変わらず・・・か。そういえば無線通信で話したガミラス語の声は君だね? そうだろう?」

(画面)立ち上がったままの沙織。

(画面)微笑むデスラー。コーヒーを飲む。
デスラー「・・・おふたりの名前も教えてくれるかな? お近づきのしるしに」

(画面)左には立ち上がっている沙織。右には座っている綾乃。
綾乃「そうですね。・・・ガミラス人には,ファーストネームを言ったほうがいいかしら。(胸に手)・・・私はアヤノです。(右手を伸ばす)・・・そして彼女は,サオリ・・・」

(画面)スタンドにカップを置いて,立ち上がり直立するデスラー。かかとを打って胸に手をあてる。たなびくマント。
デスラー「(顔を下げる)あいさつが遅れてしまって申し訳ない。アヤノ。私がガミラス総統デスラーだ。(顔を上げる)それと・・・サオリ・・・か。よろしく。サオリ・・・。(微笑)・・・いい名前だね。以前の名よりも優しい響きだ」

(画面)立ったまま電気に打たれたようになる沙織。
沙織「(目をみはる)・・・!」

(画面)綾乃も同様に目を見開く。

(画面)呆然と立ちすくんでいる沙織。
沙織「・・・あなた・・・!」

(画面)胸に手をあてて直立しているデスラー。

(画面)沙織のアップ。
沙織「(みるみる怒りへ)・・・気づいていたのね・・・」

(画面)再び座りなおし,足を組んでコーヒーカップを口へ運ぶデスラー。

(画面)立ったまま身体全体を震わせ始める沙織。
沙織「・・・あなたの・・・せいで・・・!」
(BGM)N−1

(画面)コーヒーを飲むデスラー。

(画面)沙織を見上げる綾乃。
(BGM)N−1

(画面)くやし涙を目にいっぱい溜める沙織。
沙織「・・・あ,あなたのせいで・・・! あなたのせいで,私の母は死んだのよ! 覚えているでしょう?! ・・・あなたは読心能力を持つサイレン人の母を単なる戦略の道具に使ったわ! 道具としてね! ヤマトのクルーの個人データーを盗むことが目的だった。でも結局,沖田艦長にそれを見破られて逆にガミラスの秘密を知っている私たちが邪魔になった・・・! ガミラスの栄光か栄華が知らないけれど・・・! あなたは秘密保持のためだけに母と私のいる星を破壊しようとしたのよ! 母がどんな気持ちで自殺したか! 分かる? どんなに悲しかったか・・・。どんなに惨めだったか・・・」
(BGM)N−1

(画面)コーヒーを飲むデスラー。

(画面)懸命に涙をこらえている沙織。
沙織「・・・自分の家族もろくに守れない男がどうやって国全体を守れるとでも思っていたの?! お笑い種(ぐさ)だわ! あなたは最初からあのヤマトに勝てるはずはなかった・・・! ヤマトのクルーたちはみんな,それぞれの家族のために戦っていたの! 家族を捨てたあなたは敗れるべくして敗れたのよ! このひとでなし! ・・・私は・・・私はあの時以来ずっと,あなたを憎むことだけを心の支えに生きてきた! あなたを追いかけて・・・。あなたを追いかけて・・・。・・・死んだと思っていたのに・・・!」
(BGM)N−1

(画面)コーヒーを飲むデスラー。
デスラー「簡単だったはずだ」

(画面)立ち上がっている沙織。・・・ついに涙がこぼれる。
(BGM)N−1

(画面)コーヒーを飲み干すデスラー。スタンドへコーヒーカップを置く。
デスラー「・・・その憎しみは簡単にかなえられていたはずだが?」

(画面)立ち上がっている沙織。あごから涙が落ちる。
(BGM)N−1

(画面)正面を見ている綾乃。

(画面)顔を上げるデスラー。
デスラー「(笑み)・・・それでも助けてもらって感謝しているよ。ジュラ」

(画面)立ち上がっている沙織。
(BGM)N−1

(画面)沙織の様子を見る綾乃。
(BGM)N−1

(画面)見上げているデスラー。
(BGM)N−1

(画面)立ち上がっている沙織。・・・急に力が抜けるように椅子へ座り込む。
(BGM消える)

(画面)沙織の様子を見ている綾乃。
(デスラーの声)・・・アヤノ。
綾乃「・・・(顔を向ける)」

(画面)組んでいるひざの上で手をからめているデスラー。
デスラー「親切なお心遣い,痛み入る。恐らく,あなたの上官のみなさんは今,席を外している最中なんだね? しかしそれでも,やはり規律は守ったほうがいいだろう。いずれにしても私はあなたの上官たちから尋問を受けることになる。だからそれまでは,またさっきのようにベッドへ私を縛り付けておいてくれないかな。気づかれないぐらいに元通りにね。(微笑)」

(画面)見つめている綾乃。
綾乃「・・・デスラー総統。あなたは他の捕虜とは違います。あなたの行動はプリンセスが証明しています。・・・このアンドロメダには,島提督をはじめヤマトの元乗員が全員,乗り組んでいます。皆,あの時のあなたの言葉を覚えているのです。”私の心は君たちに近い”とあなたは,おっしゃった。ベッドに縛り付けたのは,あなたに現状を理解してもらうまでの一時的な処置です。もう,必要ありません」

(画面)思案するデスラー。
デスラー「・・・そんなこと言ったかな・・・? ・・・シマ・・・か。(微笑)・・・まあ,いいだろう。それではお言葉に甘えるとしようか・・・。(コーヒーカップを差し出す)・・・アヤノ。これをもう一杯いただけるかな? 実は気に入った」

(画面)宇宙空間を航行する宇宙戦艦アンドロメダ。周囲にはブラックタイガークラシック隊が護衛として飛行している。
(効果音)エンジン音。複数の噴射音。

(画面)宇宙戦艦アンドロメダブリッジ内。操縦席のシートを回して見入っている薮。
(効果音)ブリッジ内機械音。

(画面)コンソールボックスから顔を上げている土方機関長。

(画面)ヘッドマイクを向けている相原。

(画面)ブリッジ中央に設置されている次元羅針盤のそばで頭部を点滅させているアナライザー。
(効果音)電子音。連続。

(画面)けげんな表情の太田。
太田「・・・アナライザー。おまえ,さっきから何をしているんだよ?」

(画面)次元羅針盤から動かないアナライザー。
(効果音)電子音。連続。

(画面)つぶやく薮。
薮「・・・壊れたり直したりを繰り返して,おかしくなっちゃったのかな・・・?」

(画面)コンソールボックスの土方機関長。
土方「教授に診てもらったほうがいいだろう。ここのところちょっと過酷なことが続いたからな。アナライザーに限らず,アンドロメダの各機関もあまり調子がよくないようだし」

(画面)ヘッドマイクを外す相原。
相原「そうだよな。送信機能もまだ回復していないしな」

(画面)息をはく太田。
太田「機械だけじゃなく,人間も診てもらったほうがいいかもな。俺も佐渡先生に相談してみるか。(腹をさする)」

(画面)次元羅針盤のそばで頭部を点滅させているアナライザー。
(効果音)電子音。連続。

(画面)艦内尋問室。テーブルを前に座り,正面を見据えているオサード。

(画面)座っている島。穴井教授。南部。桂隊長。フロール。佐渡医師。

(画面)テーブルの上で両ひじに体重をかける島。
島「・・・あなたはなぜあの時,地球側に味方をしたんですか? 地球艦隊は,圧倒的に不利だったはずだ。しかもあなた自身には何のメリットもない・・・」

(画面)無表情のオサード。

(画面)前を見ている島。
島「我々はあの戦いのさなか,あなたと敵司令官の通信のやりとりを傍受していました。あの時のあなたは明らかにガトランティス艦隊と敵対していました。なぜですか?」

(画面)無表情のオサード。
オサード「・・・どうにも地球人というのは理解に苦しむ人種だな」

(画面)座っている島。穴井教授。南部。桂隊長。フロール。佐渡医師。

(画面)無表情のオサード。
オサード「ガトランティス人は,勝てる採算がとれるまではけして戦いを挑むようなことはしない。戦って負けるとわかっている戦いは最初からしないのだ。しかしあの地球人は,それでもあの宙域を一歩も動こうとはしなかった。負けると分かっていたにもかかわらずだ」
(BGM)M−11

(画面)聞く体勢の島。
(BGM)M−11

(画面)無表情のオサード。
オサード「・・・しかもあの地球人は身分不相応(ふそうおう)にも,この私に説教を始めたのだ。”おまえは何のために戦うのだ”と。”生きる死ぬは目的ではなく結果でしかない”と。地球人の目的は”生き続けて守りたいものを守り続けることだ”と」

(画面)黙っている島。
(BGM)M−11

(画面)無表情のオサード。
オサード「・・・それでも結果として,たとえ死んだとしても,守りたいものを守りきったのならば,それはすなわち勝利だと・・・」

(画面)フロール以外の地球人は全員,うつむいている。
(BGM)M−11

(画面)無表情のオサード。
オサード「その地球人の言葉はガトランティス人にとって,完全に根本的な思想を超越(ちょうえつ)しているものだ。だから私は,その地球人の思想を実感してみたくなった」

(画面)穴井教授。
(BGM)M−11

(画面)顔を上げる島。
島「・・・貨物船を盗もうとしたのは・・・?」

(画面)無表情のオサード。
オサード「・・・あの地球人は最後の最後で私の理解できない行動をとった。絶好の好機に艦首波動砲を撃たなかった。撃てば勝っていた。しかし撃たなかった。どうしても納得がいかない。あの地球人の勝利とは一体何だったのか。私は完全に地球人の思想を把握できなかった。どうすれば地球人の思想を実感できるか・・・。私は再びコーテクと相対するつもりだった。他にとる行動が思いつかなかった」

(画面)にらみつけている桂隊長。
(BGM)M−11

(画面)見つめる島。・・・そして好意の笑顔を向ける。
島「・・・オサード君。・・・ベルナルド司令は勝利した。ここにいる地球人全員には,それが分かっている・・・」
(BGM)M−11

(画面)無表情のオサード。
オサード「地球人。人間は死ねば,そこで終わる。存在しなくなってしまう。ガトランティス人とて死者の魂を弔う(とむらう)心は持っている。しかし死者はあくまでも敗北者だ。この世界には絶対に戻ってこない。死んだ者が実際に現実世界に干渉(かんしょう)し,勝利することなどあり得ない」

(画面)うつむいて聞いている佐渡医師。
(BGM)M−11

(画面)おだやかな表情の島。
島「・・・私の死んだ友が言っていた言葉がある。”命とは何十年かで終わってしまうような,ちっぽけなものじゃない。この宇宙全体に広がって永遠に続くものだ”とね。その友の生き様は今でも現実世界に生きる我々の心に干渉し続けている」

(画面)島を見つめる南部。
(BGM)M−11

(画面)無表情のオサード。
オサード「それが地球人の勝利か」

(画面)思案する島。
島「・・・そうだな・・・。言葉だけで理解してもらうのは難しいかも知れないな」
(BGM消える)

(画面)無表情のオサード。

(画面)物思いにふける仕草の島。

(画面)無表情のオサード。・・・少し表情が動く。
オサード「・・・地球人。提案がある」

(画面)再び視線を合わせる島。

(画面)無表情のオサード。
オサード「私を,この戦艦の戦列に加えろ」

(画面)さすがに目を見開く島。穴井教授。南部。桂隊長。フロール。佐渡医師。
穴井「・・・なんじゃと? 今,何と言ったんじゃ? お前さん,自分の立場が分かっとるのか?」

(画面)無表情のオサード。
オサード「見たところ,この戦艦は万全ではない。助けは多いに越したことはないはずだ」

(画面)その言葉に食いつく桂隊長。
桂「・・・きっさまあ! おい! ガトランティス人! 黙って聞いてりゃ,いい気になりやがって! 俺たちじゃ,ふがいないって言いてえのか! ガトランティス人には礼節(れいせつ)と常識っつうもんがねえのか! 地球人をなめんじゃねえぞ,この野郎! 提督が優しいからって図に乗ってんじゃねえ! 誰が,貴様の助けなんざ・・・」

(画面)視線を正面に戻すオサード。
オサード「あのザバイバルに似ている男がこの戦艦の戦闘機隊隊長か?」

(画面)立ち上がってテーブルへ左足を踏み出す桂隊長。南部が懸命に押さえている。
桂「だれがザバイバルじゃあ! こらあ!」
南部「・・・! (一生懸命)」

(画面)冷静に見つめる島。
島「・・・そうだ」
(桂隊長の声)・・・ザバイバルはどうなるんじゃあ!

(画面)無表情のオサード。
オサード「あの隊長の配下に入りたい」

(画面)その体勢のまま固まる南部と桂隊長。

(画面)表情の真意を引き出そうとする島。
島「・・・どうしてかな?」

(画面)無表情のオサード。
オサード「私の裏の裏をかいた初めての地球人だ。一目(いちもく)置ける」

(画面)固まっている南部と桂隊長。

(画面)表情の真意を引き出そうとする島。
島「(目を細める)・・・理由はそれだけかね?」

(画面)初めて,笑みらしい表情を浮かべるオサード。
オサード「・・・シマ提督。おまえには,あの時の地球人と同じ気質を感じる。相手がおまえだからこの提案をしている。私はまだ目的を達していない。・・・地球人にとっての勝利を実感したい。互いの戦力にこだわらずに,守りたいものを守る戦いをしてみたくなった。(視線をフロールへ)」

(画面)見つめているフロール。

(画面)視線を戻して無表情のオサード。しかし決心している様子がにじみ出ている。
オサード「・・・プリンセスがこの戦艦にいるのならば,私はこの戦艦を守るために戦う。守ることに関してけして妥協(だきょう)はしない。間違いなく,おまえたちの役に立つ。戦闘機隊に加えてもらいたい。もちろん一番下っ端(したっぱ)でいい」

(画面)固まっている南部と桂隊長。

(画面)うなる穴井教授。
穴井「けた外れの図々しさじゃな・・・」

(画面)いやな予感がしている佐渡医師。
佐渡「(つぶやく)・・・この船は一体何だ・・・? 変なのばかりが集まってくる・・・」

(画面)見つめているフロール。

(画面)身を乗り出す島。目を細める。
島「・・・オサード君。ここで君を信用しろというのか・・・? このわずかな時間だけで?」

(画面)無表情のオサード。長い前髪から光る瞳がのぞく。
オサード「私を信じなくてもいい。これは取り引きだ」

(画面)宇宙空間に浮かぶ惑星ガトランティス。

(画面)ガトランティス地表に広がる近代都市のまばゆい夜景。この地方は夜である。

(画面)絶壁の上にそびえ立ち,光の放射を数本放っているオルカバーン刑務所。
(字幕)オルカバーン刑務所(画面下部横文字)

(画面)ガトランティスの夜空を接近してくる大気圏専用小型航空艇1隻。
(効果音)風圧。エンジン音。

(画面)オルカバーン刑務所を上空から。丸いドーム上の離発着用ポートハッチ。・・・やがて蓮(はす)の花状に八方からゆっくりとドームハッチが開いていく様子。
(効果音)開閉機械音。

(画面)夜空をさらに接近してくる小型航空艇。・・・画面にその航空艇の右舷がアップ。通過。アングル回転。前方に見える絶壁の刑務所へ遠ざかっていく小型航空艇。
(効果音)風圧。エンジン噴射音。ドップラー効果。

(画面)オルカバーン刑務所司令センター内部。後ろ手に立っている痩せ型のガトランティス人。
(効果音)内部機械音。
(字幕)オルカバーン刑務所所長 ウッダー(画面下部横文字)
(スタッフの声)・・・所長。
ウッダー「・・・(顔を左へ)」

(画面)書類を持っているスタッフ。
スタッフ「・・・まもなく総督府のラーゼラー司令が到着いたします」

(画面)げんなりした表情のウッダー所長。
ウッダー「・・・分かった。ポートへ迎えに行こう。手はずに抜かりはないな?」
(スタッフの声)・・・はい。

(画面)オルカバーン刑務所を上空から。全開しているポートのドームハッチ。刑務所外周やポート内の修理は完了しているようである。・・・やがて画面左側から入場してくる小型航空艇。画面中央のポートへゆっくりと降下していく様子。
(効果音)風圧。エンジン音。ドップラー効果。

(画面)ポート内部から見上げるアングル。夜空からポート内へ降下してくる小型航空艇。さらに降下。
(効果音)ポート内のこもるエンジン音へ。

(画面)ポート内滑走路入り口が画面右側。・・・画面左側から滑走路へ進入していく小型航空艇。
(効果音)遠ざかるエンジン音。

(画面)滑走路終着部奥のロビーで直立しているウッダー所長と3人のスタッフ。

(画面)襟(えり)の乱れを直しているウッダー所長。

(画面)滑走路を手前へ疾走してくる小型航空艇。
(効果音)エンジン音。タイヤ音。

(画面)画面右側にウッダー所長とスタッフたちの左後ろ姿。画面中央に滑走路終点。・・・小型航空艇が減速して機首を右へ旋回。左舷の乗降用ハッチを正面へ向ける。停止する小型航空艇。
(効果音)エンジン音。タイヤ音。停止。

(画面)航空艇ハッチの描写。・・・ハッチが上から外倒しに開いていく様子。
(効果音)開閉音。

(画面)喉を鳴らすウッダー所長とスタッフ。
(効果音)開閉音。・・・そして停止。

(画面)路面に着底している階段式のハッチを降りてくるたくましくも大きな軍服の太もも。
(効果音)足音。きしむハッチ。

(画面)整列して右手を上げるウッダー所長とスタッフたち。
ウッダー「・・・ラーゼラー司令。遠路はるばる恐縮であります!」

(画面)小型航空艇を背に,青いこん棒を左手で何回も受け止めながら仁王立ちしているサエラ。遠近感が感じられない。
サエラ「・・・(険しい瞳)」

(画面)緊張の面持ちで前へ進み出るウッダー所長。
ウッダー「・・・まずは,長旅でお疲れでしょう。暖かいサカムリ茶でも・・・」

(画面)路面を後方へ蹴り跳ばすように歩き始めるサエラ。
サエラ「いらぬ! 余計な,もてなしは不要!」

(画面)目の前にウッダー所長がいないかのごとくに,ぐんぐん前進するサエラ。・・・あわててニアミス気味に左へ避けて,小走りでサエラにどうにか並びかけるウッダー所長。圧倒的な体格の差。

(画面)歩いているサエラを正面から。向かって右側には小走りのウッダー所長。
サエラ「スターシアの様子はどうか!」
ウッダー「はい・・・。いたって神妙な態度です・・・。3652特別独房へ監禁しております。ラーゼラー司令がお越しになるまで尋問はするなとのお言いつけでしたので,それ以上はちょっと・・・。あと船には12人のガミラス人がいまして・・・」
サエラ「スターシアの様子を訊いたのだ! 質問に応えるだけでよい!」
ウッダー「(狼狽)・・・はい・・・! 申し訳ありません・・・! (頭を下げる)」

(画面)小走りのまま右上へ,ためらいがちに顔を上げるウッダー所長をハイアングル。
ウッダー「・・・あの。司令。大帝閣下のお留守にこのようなことが起きまして,あの。刑務所サイドといたしましては今後,どのような対応をいたせばよろしいのかと・・・?」

(画面)左下へ鋭い視線を向けるサエラをローアングル。すぐに前方を見るサエラ。
サエラ「・・・おまえの対応は不要だ! 今,ガトランティス連邦は地球進行作戦で星雲全域にマゼラン・ネットをオープンしている! 恐らくすでにこの事態はウーム連邦の知るところとなっているはずだ! 永世中立国イスカンダルの女王への処遇は今,この時も星雲規模でリアルタイムで注目されている! ここで下手な対応でもしようものなら同盟問題だぞ! これは極めてデリケートな問題なのだ! もし何か起きたら,お前の首をとばすだけでは追いつかぬ! 今後は全て私の指示に従ってもらうからな! 所長!」

(画面)冷や汗を流しているウッダー所長。
ウッダー「・・・は,はい・・・。デリケート・・・ですか」

(画面)にやりと笑うサエラ。
サエラ「いいか! 所長! 私の指示をしくじるなよ! おまえも前の所長みたいになりたくはなかろう!」

(画面)刑務所内。3652特別独房。かつてデスラーが監禁されていた部屋である。しかし今回は明るい照明が施され,ベッドの代わりに大きなテーブルに椅子。テーブルの上には様々な機械が設置されている。そしてスターシアはその椅子に座っている。・・・ゆっくりとスターシアの左ななめ正面へクローズアップ。
スターシア「・・・(少し,うつむき加減)」

(画面)座っているスターシアを正面から。
スターシア「・・・(何かに気づいて顔を上げる)」

(画面)画面手前には座っているスターシアの後ろ姿。向こう正面上部には大きなガラススクリーン。そしてその向こうの部屋に,こん棒を何回も左手で受け止めながら大きく立ちはだかっているサエラ・ド・ラーゼラー。

(画面)にらみつけているサエラのアップ。こん棒の衝撃で揺れている身体。

(画面)負けじと視線を返しているスターシア。毅然(きぜん)とした表情。

(画面)にらみつけているサエラ。・・・ふと,すさまじい笑みを浮かべる。
サエラ「・・・ようこそ! 我がガトランティスへ! スターシア!」
(BGM)P−3B

(画面)にらみかえしているスターシア。
(BGM消える)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

更新予定