第13節 アンドロメダ浮上! 復活への逃避行

(画面)宇宙空間に浮かぶ惑星イスカンダル。

(画面)惑星イスカンダル地表。セントラルシティのマザータウンの全容。

(画面)メインコンピューターが真正面に大きく存在感。それへ向かって座っているスターシアの後ろ姿。両肩が微妙に動いており,キーボードを操作している様子。
(効果音)電子音。

(画面)キーボードを操作しているスターシアを正面から。険しい表情だがやはり美しい。
(効果音)操作による電子音。

(画面)メインコンピューターのディスプレイの描写。・・・そこへ打ち込まれるイスカンダル文字。表示される字幕は全て画面下部へ横文字。
(効果音)電子音。

(字幕)クエスチョン。・・・コンピューター。ガトランティスリレー衛星についての質問。その機能についての概要。

(字幕)アンサー。・・・カンゼン ナル ムジン セイギョ ノ わーぷツウシン ヨウ チュウケイ エイセイ デス。
(字幕)・・・ソレ ジタイ ニ ドクジ ノ キョウリョク ナ わーぷツウシンゆにっと ガ トウサイ サレテ イマス。
(字幕)・・・1ツ ノ エイセイ デ ヤク 3000コウネン ハナレタ チュウイキ ヘ らいぶ デノ ジョウホウ デンタツ ガ カノウ デス。
(字幕)・・・コレダケ ショウキボ ノ わーぷツウシンゆにっと ハ カコ ノ でーたー デハ ホウコク サレテ イマセン。
(字幕)・・・99.99ぱーせんと ノ カクリツ デ アラタニ カイハツ サレタ シンガタ ダト オモワレ マス。

(画面)険しい表情が崩れないスターシア。
(効果音)電子音。

(画面)メインコンピューターのディスプレイの描写。・・・そこへ打ち込まれるイスカンダル文字。
(効果音)電子音。

(字幕)クエスチョン。・・・コンピューター。今現状のリレー衛星の具体的配列は探れるか?

(字幕)アンサー。・・・アマリニモ コウダイ ナ えりあ デス。
(字幕)・・・ギンガケイ マデ ノ グタイテキ ナ ハイチ マデ ヲ シラベル ト ナルト カナリ ノ ジカン ガ ヒツヨウ ト ナリマス。
(字幕)・・・タダ。カクリツ ト シテ ソノ ハイレツ ヲ ヨソウ スル コト ハ カノウ デス。

(字幕)・・・それでいい。コンピューター。

(字幕)アンサー。・・・ココカラ ハ カノウセイ ノ ハンイ ノ ブンセキ デス。シツモン ハ ウケツケ ラレマセン。
(字幕)・・・がとらんてぃすカンタイ ニ ジュウゾク シテイル チュウケイ ヨウ ウチュウセン カラ ワクセイがとらんてぃす マデ ノ ぽいんと ハ オソラク ケイ53ぽいんと。52コウテイ ダト オモワレマス。
(字幕)・・・ヨッテ シヨウ サレテイル チュウケイ エイセイ ハ ケイ51キ。・・・カンカク ハ ヤク2902コウネン。
(字幕)・・・ギンガケイ ノ おくとぱすチュウイキ ヲ ウカイ シタト シテモ ソノ セイノウ ニハ シショウ ナイ モノト オモワレマス。

(画面)考え込む素振りのスターシア。・・・再びキーボードを操作し始める。
(効果音)電子音。

(画面)メインコンピューターのディスプレイの描写。・・・そこへ打ち込まれるイスカンダル文字。
(効果音)電子音。

(字幕)クエスチョン。・・・コンピューター。配列されているガトランティスリレー衛星のうち,ひとつでもその機能を停止した場合のシミュレーションを再現。

(字幕)アンサー。・・・コノ エイセイ ハ リョウシこんぴゅーたー ニ ヨル アンゼンしすてむ ヲ 5ダンカイ モウケテ イマス。
(字幕)・・・エイセイ ジタイ ニ ドクジ ノ ゲイゲキしすてむ ヲモ ユウシテ オリ
(字幕)・・・ソレ ジタイ ノ キノウ テイシ ヲ グウゼンセイ ニ ユダネル コト ハ いすかんだるレキ 5ネン ハ カイム デス。
(字幕)・・・ソレ ヲ フマエタ ウエ デ カイトウ サセテ イタダク ノナラバ 
(字幕)・・・エイセイ51キ ノウチ 1キ デモ キノウ ガ テイシ スレバ イマ ゲンザイ オコナワレテイル シマウチュウ カン ノ チュウケイ ハ シャダン サレルデショウ。

(画面)椅子の背もたれに寄りかかるスターシア。

(画面)メインコンピューターのディスプレイの描写。・・・そこへ打ち込まれるイスカンダル文字。
(効果音)電子音。

(字幕)・・・ありがとう。

(字幕)・・・ドウ イタシ マシテ。

(画面)立ち上がるスターシアの背中。・・・こちらを振り向く。

(画面)スターシアのアップ。

(画面)うつむいて立っている古代 守。

(画面)スターシアのアップ。
スターシア「・・・マモル」

(画面)顔を上げる古代。
守「・・・何をするつもりだい。スターシア」

(画面)見つめているスターシア。

(画面)表情がくもっている古代。自身の心の葛藤(かっとう)に苛まれて(さいなまれて)いる様子。
守「・・・ガミラスの残存艦隊が発進準備を進めているようだが。君が指示を出したのか?」

(画面)見つめているスターシア。
スターシア「・・・マモル。少し休んでいた方がいいわ。現状を受け止めるにはまだ貴方の心は充分に落ち着いていないから」

(画面)近くのソファーに腰かける古代。うつむく。
守「・・・どうして今まで話してくれなかったんだ? ヤマトの事も,ガトランティスの事も・・・進の事もだ・・・」

(画面)見つめているスターシア。・・・歩み寄ってくる。

(画面)ソファーに座ってうつむいている古代。・・・ソファーを後ろから回り込んで,古代の左隣に腰かけるスターシア。

(画面)古代の横顔へ話しかけるスターシア。
スターシア「・・・マモル。貴方は忙しかった。そして目的を持っていたわ。故郷を離れて私のところへ残ってくれた貴方の心をいたずらに乱したくはなかった・・・。話したところで,どうにもならない。知らない事が貴方のためだと思っていたのよ」

(画面)顔を上げる古代。画面右にはスターシアの後頭部。
守「(苦笑)・・・分かっていたよ。スターシア。そう。分かっていた。・・・ただ,どうしても訊かずにはいられなかった。君を責める事なんか出来やしない。・・・だけど,俺はもう・・・知ってしまったんだ。スターシア。・・・あの艦隊を発進させて何をするつもりなんだ?」

(画面)やさしく微笑むスターシア。
スターシア「・・・それも貴方は分かっているはずよ。マモル」

(画面)視線を外して下を向く古代。
守「・・・確かに数珠(じゅず)つなぎのリレー衛星の1基を破壊すれば,あの忌まわしい中継は遮断されるだろう。しかし実際に太陽系で起こっている戦争を食い止める事にはならないよ」

(画面)遠くを見るまなざしのスターシアの横顔。
スターシア「そうね。・・・でもレック・アルド・ズォーダーにとってはこの中継は実際に起こす戦争よりも重要なことよ」

(画面)顔を向ける古代。
守「・・・! 戦争よりも? 人の命よりも重要だって?」

(画面)振り向きうなずくスターシア。
スターシア「・・・そう。あの若者にとって,戦争は単なるゲーム。戦艦や戦闘機などの見た目の華麗さのみに捕らわれて,それによって失われる人命は戦争の勝敗を決めるポイントぐらいにしか考えていないわ。それと引き換え,この戦争中継は彼にとっては今後の自分の運命を左右しかねない現実問題としての位置を占めているの。国民たちへ偉大なる自分の父を越える力を誇示するには,ただ戦争に勝利するだけでは不充分。視覚的なメディアは彼にとって最も重点を置くべき要素なのよ。マモル」

(画面)うつむいている古代。
守「・・・その不充分な勝利が地球の敗北なんだ・・・。地球人類の滅亡なんだよ。スターシア・・・」

(画面)見つめているスターシア。
スターシア「・・・マモル。私はまだあきらめていないのよ」

(画面)再び顔を上げる古代。

(画面)見つめているスターシア。
スターシア「・・・確かに衛星を破壊して止められる戦争ではないかも知れない。でもね。マモル。レック・アルド・ズォーダーに揺さぶりをかけられる可能性を残すことができる」

(画面)まゆをひそめる古代。

(画面)毅然(きぜん)とした表情になるスターシア。
スターシア「・・・レック・アルド・ズォーダーにとって衛星を破壊されることは重要な作戦の一部を破壊されることと同じ。そしてこのリレー衛星は一方通行ではない。分かる? マモル。確かに私は艦隊をもって衛星1基を破壊するために出撃する。でもその前に私は低いけれど,わずかな可能性に賭けてみるわ」

(画面)宇宙空間に浮かぶ惑星イスカンダル。画面右後方には惑星ガミラスが見える。・・・やがて,惑星イスカンダルの赤道付近から複数の金属の輝きが上昇してくる。次第に実体を現してくる金属の集団。・・・そしてそれは,デストロイヤー艦を主軸とするガミラス残存艦隊である。デストロイヤー艦,11隻。空母,2隻。・・・そして眩い輝きを放つ宇宙船,1隻。計14隻。
(効果音)複数のエンジン音。

(画面)艦隊の先頭を航行する宇宙船。パールホワイトの船体。シンプルだが華麗な姿を見せている。
(字幕)恒星間航行宇宙船イスカンダリア(画面下部横文字)
(効果音)エンジン音。

(画面)マザータウン内部。スクリーンには遠ざかるガミラス艦隊が映っている。それを見上げるように立っている古代 守の後ろ姿。

(画面)見上げている古代のアップ。

(揺らぐ画面。回想シーンへ移行)

(画面)回想シーン。顔を向けているスターシア。
スターシア「・・・銀河系からこちらへ情報を送れるのなら,その逆も可能よ。私はまずリレー衛星のシステム回路へ入り込んで,レック・アルド・ズォーダーへ直接,通信を試みてみるつもり・・・」

(画面)回想シーン。まゆをひそめている古代。

(画面)回想シーン。見つめるスターシア。
スターシア「・・・彼に停戦を呼びかけてみるわ。従わなければ衛星を破壊すると。破壊する前にこのリレー衛星を使って,先代ズォーダーがおこなった理不尽(りふじん)な銀河系進出の全貌を,ガトランティス国民たちやウーム連邦へ暴露(ばくろ)するともね・・・。いったん開放されたガトランティスチャンネルは,たとえガトランティス本星の通信施設であっても,直ちに遮断するにはあまりにも広大な範囲にネットを広げすぎている。・・・マスコミ操作によって真相を知らされていないガトランティス国民たちは一斉に動揺するわ。レック・アルド・ズォーダーがどんなに急いで銀河系から帰ってきたとしても,120自転の時間がかかる。今,ガトランティス連邦に残されている軍備はわずか。停戦同盟に疑問を持ったウーム連邦が,この機に動き出すことを彼は必ず危惧(きぐ)するはずよ」

(画面)回想シーン。目を見開く古代。
守「・・・スターシア・・・。君は星雲内に戦争を誘発するつもりなのか・・・!」

(画面)回想シーン。静かに首を横に振るスターシア。
スターシア「・・・取り引きよ。マモル。取り引きとは,最悪の状況になれば成立しないわ。レック・アルド・ズォーダーは今までと同様にマスコミ操作を続けることが出来る。そして太陽系は生き残る。・・・地球は,今のままでは戦って生き残る可能性はないの。もはやこれ以外に地球からあの大艦隊を遠ざける方法はない・・・」

(画面)回想シーン。黙っている古代。

(画面)回想シーン。熱っぽく見つめるスターシア。古代にしか見せない表情である。
スターシア「・・・貴方の故郷を救いたいのです。マモル。だって,せっかく苦しい思いをしてヤマトが守ってきた星だもの。そのためにはどんな嘘も狂言も私は使うつもり・・・」

(画面)回想シーン。顔を向ける古代。
守「・・・スターシア。俺も一緒にいくよ」

(画面)回想シーン。再び首を横に振るスターシア。
スターシア「・・・マモルは残って。この問題には確かに太陽系が関わっているけれど,この話は同じ星雲人同士で話したほうがいいわ。地球人の貴方が横にいれば,かえって話が混乱してしまう恐れがある。それに貴方にはもう少し休んでいてもらいたいの。心配はいらないわ。私は戦いに赴く(おもむく)わけではないから。私が向かう衛星はガトランティス連邦領内から1200光年は離れている。領内のわずかな戦力ではガトランティスといえども私たちに追いつくことはできないわ。貴方はここに残ってガミラス難民の人たちについていてあげて」

(画面)回想シーン。見つめている古代。

(現実に戻る)

(画面)スクリーンを見上げている古代のアップ。

(画面)宇宙空間を航行している宇宙船イスカンダリア。
(効果音)エンジン音。

(画面)宇宙船イスカンダリアブリッジ内。ボックスの無い指揮席に座っているスターシア。
(効果音)ブリッジ内機械音。

(画面)前を向いているスターシアの左斜めアップ。

(画面)アングル回転。宇宙空間を遠ざかっていく宇宙船イスカンダリアと13隻のガミラス残存艦隊。
(効果音)複数のエンジン音。ドップラー効果。

(画面)宇宙空間に浮かぶ冥王星。

(画面)海中に沈んでいる宇宙戦艦アンドロメダ。艦橋や所々の展望窓から光がもれている。
(効果音)海中。

(画面)宇宙戦艦アンドロメダブリッジ内。ブリッジ内を後方からのバードビュー。それぞれのブリッジスタッフたちが所定の位置で作業している様子。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(土方機関長の声)・・・補助エンジン,出力回路・・・第3段階テスト,クリア・・・。
(薮の声)・・・了解。システム,アップロード開始・・・完了。
(土方機関長の声)・・・発進前チェック,80%完了・・・。

(画面)コンソールへ向かっている穴井教授。
穴井「・・・艦内電力は完全に回復したぞい。デジタル回路に不備無しじゃ・・・」

(画面)どこかの艦内通路をフロアすれすれのアングル。・・・何者かの足が交互にフロアを踏みしめて歩いている。
(効果音)足音。

(画面)ブリッジ内。操作している太田。
太田「・・・レーダー出力は万全。100%復旧しました。今現状,冥王星大気圏内,付近宙域共にイレギュラーの金属反応,エネルギー反応,確認されません・・・」

(画面)どこかの艦内通路。アングルが少し上へ。歩いている者の下半身の描写。
(効果音)足音。

(画面)ブリッジ内。ヘッドマイクを押さえている相原。
相原「・・・送信回路復旧中。・・・発進前に間に合いそうもありません。受信回路は問題ありません。・・・宙域付近の交信,送受信波は皆無・・・」

(画面)どこかの艦内通路。アングルは歩いている者の胸付近正面を描写している。顔は見えない。軍服の上から提督装の上着を羽織っている。その者の後方には彼に連いて歩いている佐渡医師が固い表情で歩いている。
(効果音)複数の足音。

(画面)ブリッジ内。方位距離測定ボックスへ両手をついている南部が顔を上げる。
(効果音)ブリッジ内機械音。
南部「(右へ視線)・・・発進前に必要なテストはほぼ完了しています。教授。・・・残りの復旧作業は航行中でも継続可能です。すぐにでもアンドロメダを発進させるべきではありませんか・・・?」

(画面)ボックスの椅子に座っている穴井教授の後ろ姿。
穴井「・・・発進か・・・」

(画面)顔を向けている南部。

(画面)ゆっくりとボックスの椅子を回転させる穴井教授。腕を組む。
穴井「(口をへの字)・・・じゃがなあ。副官。ここは少し発進を遅らせたほうがいいと思うんじゃが・・・」

(画面)腑に落ちない表情の南部。
南部「・・・遅らせる? わざと発進させないということですか? 教授」

(画面)腕を組んだまま険しい表情を返す穴井教授。
穴井「・・・考えてもみい。ガトランティスの大艦隊がこっちに向かっとる最中じゃぞ。補助エンジンしか動かないアンドロメダなんぞ,すぐ後ろから追いつかれてしまうわい。追いつかれたが最後,わしらは後ろから蜂の巣じゃ」

(画面)振り返っている薮。

(画面)身体を起こす南部。
南部「・・・いや。しかし・・・。教授」

(画面)腕を組んでいる穴井教授。
穴井「副官。気持ちは分かるが,ここはあえて発進を遅らせるのが得策だと思うんじゃが・・・。大艦隊がこの宙域を通過していくのをやりすごしてからその後に発進すれば,少なくとも大艦隊への遭遇を遅らせることができる。その間に充分な復旧もできるというもんじゃ」

(画面)右手をボックスから離す南部。
南部「教授。それでは連合艦隊へ合流すること自体難しくなります。アンドロメダ1隻ではあの大艦隊に太刀打ちできません・・・」

(画面)険しい表情の穴井教授。

(画面)詰め寄る南部。
南部「・・・教授・・・!」
(効果音)出入り口ドアの開く音。
南部「・・・(振り向く)」
(効果音)出入り口ドアの閉まる音。

(画面)振り返っている太田。

(画面)振り返っている薮。

(画面)振り返っている相原。

(画面)振り返っている土方機関長。

(画面)顔を上げる穴井教授。

(画面)歩く視界アングル。宇宙戦艦アンドロメダブリッジ内を左後方から。・・・顔を向けている相原をやり過ごして,土方機関長と目を合わせる。右の階段へ視線。・・・上っていく自らの両足。・・・上りきった正面には艦長専用の椅子が見える。・・・近づいていく視界。・・・やがてその椅子に腰かける安定した視界のアングルになる。・・・正面には振り向いている薮。・・・右へ視線。太田。穴井教授の視線。手前には歩み寄ってくる南部の姿。
(効果音)足音。椅子に座る。

(画面)見上げている南部のアップ。
南部「・・・提督・・・」

(画面)艦長席に座っている島 大介。目深に軍帽をかぶっている。
島「・・・(南部へ)・・・副官。今現状のアンドロメダ復旧の概略を報告してくれ」

(画面)驚いたような表情の薮。
薮「提督・・・!」

(画面)安堵するように微笑する土方機関長。

(画面)ヘッドマイクを外す相原。
相原「・・・もう,よろしいんですか? 提督」

(画面)見つめる穴井教授。視線を動かす。

(画面)艦長席左下のフロアに立っている佐渡医師。・・・視線が合う。

(画面)軽くうなずく穴井教授。

(画面)視線を左下へ外す佐渡医師。

(画面)穴井教授。

(画面)ほっとした様子の太田。
太田「・・・いや,よかった。一時はどうなるかと心配しましたよ。提督」

(画面)笑顔を向ける島。
島「・・・心配かけてすまなかった。少し疲れがたまっていたらしくてね。もう大丈夫だ」

(画面)顔を横へ向ける南部。佐渡医師のいる方向。

(画面)下を向くように視線を合わせない佐渡医師。顔を上げるが視線を合わせない。
佐渡「(島へ視線)・・・島さん。それでは私は。異星人たちへの処置がありますので・・・」

(画面)左下へうなずく島。
島「・・・ありがとう。佐渡先生。あとでそちらへ行かせてもらうよ」

(画面)会釈もそこそこに艦長席の向こう側へ歩いていく佐渡医師。・・・姿が隠れていく。
(効果音)足音。出入り口ドアの開閉音。

(画面)顔を横へ向けている南部。

(画面)佐渡医師から南部へ視線を戻す島。
島「(微笑)・・・いいかな? 副官」

(画面)我に返るように顔を上げる南部。
南部「・・・! あ・・・(下士官敬礼)・・・はい!」

(画面)目を丸くして敬礼を返す島。
島「(手を下ろす)命令はしていない。敬礼は必要ないぞ。副官」

(画面)艦内通路を歩いている佐渡医師の左横アングル。
(効果音)足音。

(画面)険しい表情の佐渡医師のアップ。
(効果音)足音。

(画面)艦内通路。赤十字のマークのある出入り口ドアの描写。

(画面)医務室内部。輸血装置に溜まっている赤い血液。正常なヘモグロビンの色である。ガミラス人の場合は不調が起こると,このヘモグロビンの色が緑色へと変化する。
(効果音)電子音。

(画面)医務室のベッドに仰向けに寝かされている穴井沙織。左腕の内側から伸びている輸血用チューブ。右腕には生体チェック用のセンサーがはさみこまれている。
(効果音)電子音。

(画面)チェックセンサーを調整している森 綾乃。・・・ふと首を向ける。
(効果音)電子音。

(画面)ベッドに寝かされている沙織。・・・アングルが右へ移動。輸血用チューブが伸びている。・・・そして沙織の左横のベッドにやはり仰向けに寝かされているデスラー。彼の右腕には伸びている輸血用チューブがつながっている。デスラーの肌の色は青色。
(効果音)電子音。

(画面)顔を移動させる綾乃。手にはカルテのボードを持っている。
綾乃「・・・気分はどう? 穴井さん」

(画面)ベッドの上で顔を向ける沙織。
沙織「(微笑)・・・最悪よ」

(画面)微笑する綾乃。
綾乃「・・・でしょうね」
(効果音)出入り口ドアの開閉音。

(画面)後ろ姿から振り返る綾乃。ベッドには沙織とデスラー。
(効果音)電子音。

(画面)後ろで閉まるドアを背に医務室内へ歩み入って来る佐渡医師。
(効果音)足音。電子音。出入り口ドアの開閉音。

(画面)身体を向ける綾乃。
綾乃「・・・提督のご様子は・・・? 先生」

(画面)目を大きく開け閉めして,険しい表情を打ち消そうとする佐渡医師。
佐渡「(顔を上げる)・・・大丈夫だ。森くん。(ベッドから再び視線を向ける)・・・輸血の具合はどうだ?」

(画面)カルテを見て顔を上げる綾乃。
綾乃「順調です。・・・あと1段階で完了します。先生」

(画面)うなずく佐渡医師。
佐渡「・・・あと2段階に増やしてくれ。1段階の輸血量を少なくして細かく時間を割る」

(画面)カルテを持って立っている綾乃。後方のベッドでは顔を向けている沙織。
(効果音)電子音。

(画面)小さくため息をつく佐渡医師。
佐渡「・・・発進体制がかかるかも知れない。輸血を中断しなければならなくなる・・・」

(画面)カルテを持っている綾乃。
綾乃「・・・アンドロメダが発進するんですか?」

(画面)今度は小さくうなずく佐渡医師。
佐渡「・・・島さんは・・・発進しようとするだろう。(小声でうつむく)・・・多分,すぐにでもね・・・」

(画面)ブリッジ内。目を丸くしている穴井教授。
穴井「・・・! 発進ですと?! 島提督。それは無茶じゃ・・・!」

(画面)艦長席から顔を向けている島。
島「アンドロメダはすぐにでも発進できるとのことですが。教授」

(画面)画面左手前には島の左斜め後方。画面中央に歩み寄ってくる穴井教授。
穴井「・・・アンドロメダの機能の問題ではない。タイミングの問題じゃ・・・!」

(画面)やりとりを黙って見ている土方機関長。

(画面)艦長席の島。穴井教授の次の言葉を待っている様子。

(画面)両手を前へ出す穴井教授。
穴井「・・・アンドロメダは補助エンジンしか動かん。攻撃も出来なければ,ワープも出来ん。補助エンジン全開で地球へ向かったとしても到着まで1ヶ月はかかる。そんな状態で今発進したらガトランティス艦隊の追撃を受けるのは必至じゃ。死ににいくようなもんじゃぞ」

(画面)艦長席から見つめている島。
島「・・・1ヶ月ですか。地球まで。(南部へ)・・・副官」

(画面)前へ進み出る南部。
南部「はい」

(画面)艦長席の島。
島「ガトランティスの大艦隊が地球へ到着する予想はあとどのくらいだ?」

(画面)直立している南部。右には穴井教授。
南部「・・・はい。あと,地球時間で12日足らずではないかと」
穴井「(前へ)・・・島提督。アンドロメダはどのみち間に合わんのじゃ。ここで急いで発進することに何の意味もない・・・」

(画面)艦長席で,にこりと笑顔をつくる島。
島「(笑顔)・・・12日か。じゃあ,間に合うかも知れませんね。教授」

(画面)動きが止まっている南部と穴井教授。
穴井「・・・会話が成立しとらんぞ。島提督」

(画面)視線を遠くへ見やる島。
島「・・・薮。進路時間のシミュレーションだ」

(画面)操縦席を立ち上がってこちらへ身体を向ける薮。
薮「・・・え? は,はい!」

(画面)並んでいる南部と穴井教授。

(画面)艦長席の島。
島「・・・航路時間計算プログラムを起動させてくれ」

(画面)きょとんとする薮。
薮「・・・はい。えっと。・・・でも地球までならば,先ほど・・・」

(画面)艦長席の島。
島「地球じゃない。・・・土星までだ」

(画面)ぴくりとする薮。

(画面)同じタイミングで艦長席を見上げる穴井教授と南部。

(画面)顔を向ける土方機関長。
土方「・・・! (うなる)・・・そうか・・・。その手があったか・・・!」

(画面)振り返っている太田。

(画面)振り返っている相原。

(画面)コンソールへ向かっている薮の背中。・・・再び振り返る。
薮「・・・えっと・・・。補助エンジン全開で・・・土星へ到着するのは,地球時間で11日・・・。いや。12日かな・・・」

(画面)うなずく島。左下へ視線を向ける。
島「機関長。補助エンジンを発進モードへ」

(画面)下士官敬礼する土方機関長。
土方「分かった! (足早にブリッジを立ち去っていく)」

(画面)見上げている穴井教授と南部。

(画面)おだやかな表情の島。瞳が輝いている。
島「・・・タイタン基地にはアンドロメダに適合するコスモナイトユニットがあります。地球にも在庫があるので,基地からは強いて引き上げないとタイタンの司令官が言っていたことを思い出しました。(穴井教授へ)・・・もしかするとガトランティス艦隊に追いつけるかも知れませんよ。教授。しかし時間との勝負です。コスモナイトユニット設置直後にアンドロメダは一気に地球へ向けてワープする。そこまでの時間だけは,さすがにケースバイケースです。ですが,うまくいけば連合艦隊への合流も可能です。敵艦隊に奇襲もかけられる。拡散波動砲で敵艦隊のどてっ腹に風穴を開けてやりましょう」

(画面)見上げている穴井教授と南部。
穴井「・・・島提督。しかし・・・敵艦隊に追いつかれるぞい・・・」

(画面)艦長席の島。
島「我々は地球へ向かうわけではありません。土星へのコースは敵艦隊の地球へのコースをわずかに外れています。3万隻の大艦隊がたった1隻のアンドロメダを追ってこの太陽系内でコースを変えることは考えにくい」

(画面)見上げている穴井教授と南部。
南部「・・・でも。それでも,もし追撃してきたら・・・?」

(画面)静かに見つめる島。
島「・・・その時は逃げる。逃げて,逃げて逃げまくる。(笑顔)・・・マゼラニック・ストリームの時のようにね」

(画面)大宇宙に映える大マゼラン星雲。・・・左へ回転するアングル・・・。画面右へ回り込んでいく大マゼラン星雲の全容。・・・画面左側から非常に希薄(きはく)な光の帯が出現。その光の帯は,はるかかなたの宇宙空間へ伸びている。
(字幕)マゼラニック・ストリーム(画面下部横文字)
(画面)・・・マザラニック・ストリームをバックに画面右端から現れる人工衛星。
(字幕)ガトランティス製リレー通信衛星No.5(太陽系より約13万6千光年)(画面下部横文字)

(画面)宇宙空間。・・・ぽつりと現れる金属的な輝き。・・・計14個。

(画面)・・・宇宙空間のかなたから姿を徐々に現して向かってくるガミラス残存艦隊と宇宙船イスカンダリア。
(効果音)複数のエンジン音。

(画面)宇宙船イスカンダリアブリッジ内。指揮席に座っているスターシア。
(効果音)ブリッジ内機械音。
スターシア「・・・(上を見上げる)」

(画面)画面手前にスターシアの後ろ姿。・・・天井パネルに映し出されているリレー衛星。

(画面)振り返るガミラス人戦士。肌の色は青色。
戦士「・・・リレー衛星を補足しました。まもなくシステム侵入可能宙域へ到達いたします」

(画面)うなずくスターシア。
スターシア「(左へ)・・・バイパス衛星の射出準備を」
(スタッフの声)・・・了解。

(画面)宇宙空間へ停泊する宇宙船イスカンダリアとガミラス残存艦隊。14隻。
(効果音)複数の機動音。

(画面)正面にガトランティスリレー衛星。それに対峙(たいじ)するガミラス残存艦隊と宇宙船イスカンダリアを後方から。
(効果音)複数の機動音。

(画面)宇宙船イスカンダリア船首の描写。・・・ハッチが開いて人工衛星が船外へゆっくりと姿を現してくる。
(効果音)金属音。

(画面)宇宙船イスカンダリアブリッジ内。正面を向いているスターシア。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(スタッフの声)・・・バイパス衛星射出準備完了。
(スタッフの声)・・・ワープ通信ユニットへ接続準備開始・・・。
(スタッフの声)・・・女王!
スターシア「・・・(瞳を右へ)」

(画面)振り向いているガミラス人スタッフ。
スタッフ「・・・前方にワープアウト現象です! 複数! 艦隊反応です!」

(画面)顔を向けているスターシア。まゆをひそめる。

(画面)正面にガトランティスリレー衛星。それに対峙(たいじ)するガミラス残存艦隊と宇宙船イスカンダリアを後方から。・・・その間へ割り込むように出現し始めるワープアウトの光。その数,20。
(効果音)複数の機動音。ワープアウト音。
(BGM)D−1B

(画面)宇宙船イスカンダリアブリッジ内。険しい表情のスターシア。
(効果音)ブリッジ内機械音。
スターシア「・・・バイパス衛星の射出を中止。全艦,迎撃態勢へ。(うつむき,唇へ指をあてる)・・・ガトランティス守備艦隊が持ち場を離れたというの・・・? しかもこんなに早く・・・。ここは領域ではないというのに・・・」

(画面)リレー衛星を覆い隠すように次々と出現する宇宙艦。
(効果音)ワープアウト。複数。

(画面)宇宙船イスカンダリアブリッジ内。正面を向いているスターシア。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(スタッフの声)・・・女王! 通信回路へ受信! 前方の艦隊からだと思われます!
スターシア「・・・つなぎなさい」
(スタッフの声)・・・はっ!

(画面)ワープアウトを完了させている艦隊。20隻。先頭に一際(ひときわ)奇抜なスタイルの赤い宇宙戦艦が停泊している。
(効果音)複数の機動音。
(BGM)D−1B
(字幕)宇宙戦艦パムフ(画面下部横文字)

(画面)宇宙船イスカンダリアブリッジ内。見上げているスターシアのアップ。
(効果音)ブリッジ内機械音。

(画面)画面手前に見上げているスターシアの後ろ姿。正面上方には天井パネルに映し出されている艦隊率いる赤い戦艦。・・・やがてその映像が揺らぎ,横の電子ラインがスクリーンを横断し始める。
(効果音)電子音。
(通信音声)・・・忙しいところ,ごめんなさいね・・・。

(画面)目を細めるスターシア。

(画面)宇宙船イスカンダリアブリッジ内。天井パネルへ映し出される赤い軍服のパメラ・ストリーム。後方にはビリュー・ルーが控えている。
パメラ「(笑顔)・・・初めてお目にかかるわ。イスカンダルの女王・・・」

(画面)目を細めているスターシア。

(画面)スクリーンで笑顔を崩さないパメラ。
パメラ「ふふふ。ふうん。絶世の美人だって聞いていたけど,思ったほどでもないわね」

(画面)椅子の背もたれに寄りかかる素振りで顔を上げるスターシア。
スターシア「ガトランティス人ですね。あなた」

(画面)スクリーンのパメラ。
パメラ「申し遅れたわ。ごめんなさい。・・・私はパメラ・ストリーム。惑星ビーメラ方面作戦司令官ってとこ?」

(画面)見上げているスターシア。周辺のガミラス戦士たちも同じ様に見上げている。
スターシア「・・・分かっていたの? それとも予想していたのかしら」

(画面)コケティッシュに笑うパメラ。
パメラ「・・ふふ。そのどちらでもないわ。マゼラニック・ストリームの異次元断層は私の庭みたいなものよ。あなたがどんなに動きまわったとしても,結局私はあなたを先回りできるわ。スターシア。リレー衛星はマゼラニック・ストリームにならって設置されているんですもの。おあいにく様」

(画面)目を細めるスターシア。
スターシア「・・・つまり私たちの邪魔をするということですね」

(画面)スクリーンから宇宙船イスカンダリアブリッジ内を見渡すパメラ。
パメラ「怖い顔ね。せっかくの美人が台無しよ。ふふ。ま,最初はレックに頼まれてこの仕事を引き受けたのは確かだけどね。でもね。私的には,それだけの理由ってわけじゃないの。(見回す)・・・周りにいる男たちはガミラス人ね。美味しそうな男たちだわ。うらやましい。スターシア。いい男たちに囲まれて,女冥利に尽きるってものね」

(画面)目を細めているスターシア。

(画面)臨戦体勢で見上げているガミラス戦士たち。

(画面)スクリーン上で小さくため息をつくパメラ。
パメラ「・・・あ〜あ。でも残念。ガミラスの男って,ひとりの女しか愛せないのよね。すごい人種なのに,もったいないわ。今あなたの周りの戦士たちは,みんな敵意の目で私を見てるもの・・・」

(画面)目を細めているスターシア。

(画面)口をとがらせて首をかしげるパメラ。
パメラ「・・・あのガミラス人もそうだったわ。・・・私の色香に落ちなかっただけじゃなく,選りによって。・・・この私に”自信を持て”だなんて慰め(なぐさめ)の言葉をかけてくれたのよ。屈辱だったわ。生まれてこのかた,これほど男を憎んだことはない・・・」

(画面)思い当たる表情のスターシア。
スターシア「・・・ビーメラ・・・?」

(画面)スクリーン上で,ぞっとするような表情に変貌するパメラ。
パメラ「・・・だからねえ。スターシア。・・・だから私,あなたを殺すことにしたの・・・。ガミラス人は愛する女が死ねば,違う女を愛することが出来るようになるでしょ。ふふ。だからねぇ。スターシア。お願いだから死んでちょうだい。・・・だって,あなたさえ死んでくれれば,あのガミラス人の心は私のものになるんですもの・・・」

(画面)立ち上がるスターシア。右手に握られているリモコン・ガンをまっすぐ真正面に構える。
(効果音)エネルギー充填音。

(画面)リモコン・ガンを構えるスターシアのアップ。ガンの銃口とスターシアの顔の遠近感。
スターシア「・・・どうやら更生の余地はないようですね・・・」
(スタッフの声)・・・タキオンエネルギー充填開始・・・!
(効果音)エネルギー充填音。

(画面)宇宙船イスカンダリア船首の描写。船首の砲口へ集まっていくタキオンの光。
(効果音)エネルギー充填音。

(画面)余裕の笑顔のパメラ。
パメラ「・・・それ,艦首波動砲なの? まあ,こわあい。私を撃つつもり? でもいいの? スターシア。永世中立国のイスカンダルがガトランティス連邦の艦隊を攻撃なんかして。・・・あなたが今ここで,しようとしていた行為はイスカンダルが中立国だからこそ理屈が通ることなんじゃないの? 何をするつもりだったの? 衛星の破壊? それとも星雲へのゲリラ放送かしら? そんなバイパス衛星なんか持ち出して。・・・ウームにしろガトランティスにしろ,一度戦火を交えた中立国家の言葉なんか誰も信用してくれないわよ。単なるガトランティスへの個人的な言いがかり程度にしか受け取ってもらえないわ。それでも引き金を引くの? スターシア」

(画面)リモコン・ガンを構えているスターシアのアップ。ガンの銃口とスターシアの顔の遠近感。
スターシア「・・・では,今のあなたは何なのです。パメラ。あなたは私の艦隊を撃とうとしている。それこそ内政干渉の重大な同盟違反にはならないのかしら」
(効果音)エネルギー充填音。
(BGM)D−1B

(画面)くすくす笑うパメラ。
パメラ「・・・スターシア。レックはなぜ,この任務を私に任せてくれたと思う? それはね。今の私の立場がガトランティスにとって,とても都合がいいからなの。私は一度,正規軍を外されている。今の私は正規軍じゃないわ。正規軍でない私があなたを撃っても単なる局地的な混乱で片付けられる。でもね。逆にあなたが私を撃った場合,その途端に私はその功績を認められて名誉ある正規軍に復帰できるの。地球進行作戦を守った英雄としてね。イスカンダルは大いなる大義名分のもとに,ガトランティス連邦と同盟国のウーム連邦両国を敵にまわすことになるわ。ふふ。つまりくだけて言うと,私はあなたを撃てるけど,あなたは私を撃てないってこと。撃ったら最後。イスカンダルは大マゼラン星雲の7割から集中砲火よ。・・・あきらめなさい。スターシア。あなたの負けよ。銃を下ろしなさい」

(画面)リモコン・ガンを構えているスターシアのアップ。
(BGM消える)

(画面)海中に沈んでいる宇宙戦艦アンドロメダ。
(効果音)海中を震わせる機動音。

(画面)宇宙戦艦アンドロメダブリッジ内。操縦管を握りしめながら計器類をチェックしている薮。
(効果音)ブリッジ内機械音。補助エンジンアイドリング。
薮「・・・補助エンジンエネルギー充填・・・。90%・・・」

(画面)艦長席の島。
島「(南部へ)・・・副官。全乗組員へ発進体勢指示」

(画面)下士官敬礼を返して背中を向ける南部。艦内放送マイクへ身をかがめる。

(画面)艦内放送マイクへ向かっている南部。
南部「・・・全乗組員へ。全乗組員へ。これより本艦は発進体制に入る。担当者は速やかに持ち場につけ。担当以外の者は各自ベルト着用。衝撃に備えよ」

(画面)宇宙戦艦アンドロメダ機関室。計器類へ向かっている土方機関長。
(効果音)エンジンアイドリング。
(南部の艦内音声)・・・発進カウントダウンは,今より300秒とする。200秒後に傾いた艦体を修正する。ベルト未着用の担当者はバランスに留意せよ・・・。
(画面)上を向いて計器類をチェックしている土方機関長。・・・ふと下を向いてズボンの後ろポケットへ左手を入れる。
(画面)画面に入ってくる土方機関長の左手。・・・そこには若い女性が赤ん坊を抱いている写真が握られている。
(画面)唇をしめる土方機関長。
土方「・・・坂本・・・」

(画面)宇宙戦艦アンドロメダスタンバイルーム。ベルトをしめて待機しているブラックタイガー隊員たち。
(効果音)エンジンアイドリング。
(画面)シートに座っている桂隊長。
桂「三郎太!」
(画面)シートに座っている三郎太が首を向けようとする。しかし実際,振り向けてはいない。
三郎太「・・・はい! 隊長! 何すか?」
(画面)シートに座っている桂隊長。
桂「アンドロメダが冥王星を出てったら,俺たちは交代制で発進だからな!」
(画面)シートに座っている三郎太が振動で震え始める。
三郎太「はは・・・はっしんんっすねえぇ・・・!」
(画面)振動に負けないように大きく声を張り上げる桂隊長。
桂「・・・いいか! お前ら! アンドロメダは補助エンジンのみの稼動で主砲もミサイルもパルスさえも撃てねえ! 敵からの追撃を受けたら,俺たちだけが頼みの綱だぞ! 俺たちしかアンドロメダを守れねえんだ! 気ぃ引き締めろよ! 何としてでもタイタンまでお袋さんを無事に連れていこうぜ!」
(隊員たちの声)・・・おおお!

(画面)宇宙戦艦アンドロメダ医務室。シートに座っている佐渡医師。その横には綾乃もベルトを固定している。アナライザーは壁の手すりにつかまっている。
(効果音)エンジンアイドリング。
(画面)固定されているふたつのベッド。向こう側にデスラー。手前側には沙織。
沙織「(後悔)・・・やっぱり輸血なんてするんじゃなかったかな・・・」
(南部の艦内音声)・・・発進カウントダウン200秒!
(画面)シートに固定されているフロール。
フロール「(いの字)・・・やけに揺れるな・・・。大丈夫なのか? この地球の船は・・・?」

(画面)シートに固定されているアメリカ空間騎兵隊の面々。
(効果音)エンジンアイドリング。
(画面)上をきょろきょろしているソマリア・ギル。
ギル「(英語)・・・レムナントより乗り心地が悪いな」

(画面)留置個室のシートでベルトをしめているオサード。
(効果音)エンジンアイドリング。
(画面)見上げるオサードのアップ。
オサード「・・・(無表情)」

(画面)宇宙戦艦アンドロメダブリッジ内。操縦管を握っている薮。ぶれる画面。
(効果音)エンジンアイドリング。
薮「・・・補助エンジン,エネルギー充填100%・・・」
(画面)艦長席の島。
島「艦体,起こせ」
(画面)操縦管を強く握りしめる薮。
薮「・・・はい! 艦体,起こします! (操縦管を引く)」

(画面)岩盤に食いついている宇宙戦艦アンドロメダ艦首艦体部分。振動とともにゆっくりと起き上がる。さらに岩盤へ食いつく。崩れる岩盤。
(効果音)海中での振動音。岩盤が崩れる音。

(画面)海中。海底の岩盤を削るようにゆっくりと艦体を垂直に立て直していく宇宙戦艦アンドロメダの全景。岩や石が崩れ落ちていくさま。
(効果音)海中での機動音。岩盤が崩れる音。
(BGM)F−4

(画面)宇宙戦艦アンドロメダブリッジ内。コンソールをにらむ太田。
(効果音)エンジンアイドリング。
太田「・・・海面水位,艦橋と平行へ・・・」

(画面)宇宙戦艦アンドロメダ機関室。艦内マイクへ話しかける土方機関長。
(効果音)エンジンアイドリング。
(BGM)F−4
土方「・・・補助エンジン,異常認めず・・・」

(画面)宇宙戦艦アンドロメダブリッジ内。操縦管を握る薮。
(効果音)エンジンアイドリング。
薮「・・・発進準備,完了しました」
(画面)艦内マイクへ向かう南部。
南部「・・・発進まで60秒・・・」

(画面)艦長席の島。
島「アンドロメダ,浮上」
(画面)操縦管を握る薮。
薮「はい。アンドロメダ,浮上します。(操縦管を引き上げる)」
(効果音)操縦管の金属音。徐々におさまっていくアイドリング音。

(画面)海中に沈んでいる宇宙戦艦アンドロメダ。・・・画面全体が振動。振動によるレンズ効果で宇宙戦艦アンドロメダの雄姿がゆがんで見える。・・・岩盤を崩れさせてゆっくりと真上へ上昇を始める宇宙戦艦アンドロメダ。
(効果音)大きくなる機動音。海中での岩盤の音を凌駕。
(BGM)F−4

(画面)右へかたむく宇宙戦艦アンドロメダブリッジ内を後方からのバードビュー。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(穴井教授の声)・・・岩盤離脱成功。装甲板損傷なし。浸水認めず。
(南部の声)・・・発進まで30秒・・・。

(画面)操縦管を握る薮。
薮「・・・補助エンジン,ローからセカンドへ・・・」

(画面)海中を航行する宇宙戦艦アンドロメダ。
(効果音)エンジン音。
(薮の声)・・・補助エンジン最大出力まで,あと10秒。
(BGM)F−4

(画面)宇宙戦艦アンドロメダブリッジ内。艦内マイクへ向かっている南部。
(効果音)ブリッジ内機械音。
南部「・・・発進まであと,10秒」

(画面)冥王星の海面を上方からのアングル。高速で画面下方向へアングルが移動している。

(画面)冥王星の海面を上方からのアングル。高速で画面下方向へアングルが移動している。・・・やがて波間から見える海中に宇宙戦艦アンドロメダの上方の姿が見え隠れし始める。アングルは宇宙戦艦アンドロメダに固定。浮上するにしたがって次第にはっきり見えてくる宇宙戦艦アンドロメダ。海面に向けて大きくなってくる様子。
(南部の声)・・・8・・・7・・・6・・・。

(画面)宇宙戦艦アンドロメダブリッジ内。緊張の面持ちの薮。
薮「補助エンジン,出力最大へ・・・!」
(南部の声)・・・5・・・4・・・。

(画面)宇宙戦艦アンドロメダ機関室。計器をにらんでいる土方機関長。
(南部の声)・・・3・・・2・・・。

(画面)宇宙戦艦アンドロメダブリッジ内。艦長席の島。
島「・・・アンドロメダ,発進!」

(画面)操縦管を引き上げる薮。
薮「・・・はい! アンドロメダ,発進します!」

(画面)まばゆく全開する宇宙戦艦アンドロメダの4つの補助エンジン口。
(効果音)補助エンジン全開。

(画面)冥王星の海面。
(効果音)さざなみ。
(BGM)F−4

(画面)冥王星の海面。・・・海中からの圧力により隆起(りゅうき)してくる波。・・・そして唐突(とうとつ)に海面を突き破って宇宙戦艦アンドロメダの突起する艦首方位レーダーが,冥王星大気圏内へ姿を現す。一気に海面にその雄姿を浮かび上がらせてくる宇宙戦艦アンドロメダ。重力の少ない冥王星では海面でのジャンプはそれほど必要ない。ゆっくりと海面の束縛(そくばく)から解放されてさらに冥王星大気中へ浮かび上がっていく。・・・アングル回転。左舷から艦尾に向けて,海面の波をエンジン噴射で蹴散らしていく宇宙戦艦アンドロメダ。
(効果音)水の轟音。エンジン噴射。機動音。

(画面)バックに冥王星。画面手前へ向けて上昇する宇宙戦艦アンドロメダ。
(効果音)エンジン音。

(画面)画面右下方に冥王星の大気圏。多くの地球人たちが散っていった宙域へ加速していく宇宙戦艦アンドロメダの右舷。
(効果音)エンジン音。
(BGM消える)

(画面)宇宙戦艦アンドロメダブリッジ内。艦長席の島。
(効果音)ブリッジ内機械音。
島「・・・総員。この宙域に散っていった全ての人々の魂へ敬礼」
(BGM)M−7

(画面)ブリッジ内で整列して下士官敬礼をするブリッジスタッフたち。
(BGM)M−7

(画面)機関スタッフも敬礼している。
(画面)敬礼している土方機関長。
土方「・・・坂本。お前の死は無駄にしないぞ」
(BGM)M−7

(画面)敬礼しているブラックタイガー隊員たち。
(BGM)M−7

(画面)敬礼しているアメリカ空間騎兵隊隊員たち。
(BGM)M−7

(画面)医務室で沈痛な表情の佐渡医師。
佐渡「・・・頼む。間に合ってくれ・・・」

(画面)艦長席で上官敬礼をしている島。
(BGM)M−7

(画面)漆黒の宇宙空間へ向けて遠ざかっていく宇宙戦艦アンドロメダの艦尾。・・・小さくなっていく。
(効果音)エンジン音。ドップラー効果。
(BGM)M−7

(ナレーション)・・・それは危険覚悟の逃避行である・・・。後に太陽系会戦の歴史にその名を知らしめることになるその宇宙戦艦は土星へと向けて旅立っていく。それはけして平坦な道のりではない。しかしそれでも行かねばならなかった。それが果たして間に合ったのか。どのような形で歴史に名を刻んだのか・・・。それを知るのはそれほど遠い未来ではない・・・。ガトランティス大艦隊が地球本星へ攻め込むまで,あと12日・・・。あと12日しかないのだ・・・。
(BGM消える)

(画面)宇宙空間に映える大マゼラン星雲。

(画面)画面左から右へ隊列を整えている宇宙船イスカンダリア先頭のガミラス艦隊。14隻。
(効果音)複数の機動音。エネルギー充填音。

(画面)画面右から左へ隊列を整えている宇宙戦艦パムフ先頭のガトランティス艦隊。20隻。
(効果音)複数の機動音。

(画面)宇宙戦艦パムフブリッジ内。艦長席のパメラへ近づいていくビリュー・ルー。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(画面)直立するビリュー・ルー。
ビリュー「・・・パメラ様。我らは退避態勢に入らなくてもよろしいのですか? 艦首波動砲が発射されれば艦隊は全滅してしまいます」

(画面)艦長席で笑みを浮かべるパメラ。
パメラ「ふふ。ビリュー・ルー。大丈夫よ。イスカンダルの女王は撃たないわ。撃てば女王の思惑(おもわく)が全部台無しになるもの。そもそも銀河系と大マゼラン星雲との島宇宙間の騒動を自分の思惑通りに混乱させてきた張本人ですからね。ここにきて思惑から外れる行為は絶対にしないわ。あの顔を見て分かるでしょ? 頑固(がんこ)そうな顔してるじゃない? あの女」

(画面)パメラの顔を見つめているビリュー・ルー。

(画面)優越の表情のパメラ。
パメラ「・・・全艦に攻撃態勢を指示して。主砲をあの艦隊に集中させておいて。あの宇宙船のタキオンの光が消えたら攻撃開始よ。でも女王の宇宙船は,そこそこ傷つける程度にね。女王を殺すのは一番最後。ガミラスは中立国じゃないから,ガミラス艦隊だけを残すのは危険よ。指揮権のある女王が生きている間はあの艦隊は私たちに攻撃はしてこないわ。ま,攻撃してきてもこっちは数で優ってるし。まとまった攻撃なんか出来っこないわ。いい男たちを殺すのは胸が痛むけれど。まあ,仕方がないわね」

(画面)正面へ整列しているガミラス艦隊。先頭の宇宙船イスカンダリア。船首に輝くタキオンの光。
(効果音)複数の機動音。エネルギー充填音。

(画面)宇宙船イスカンダリアブリッジ内。リモコン・ガンを構えているスターシア。
(効果音)エネルギー充填音。

(画面)体勢をひねっているガミラス人スタッフ。
スタッフ「・・・充填完了しました。女王」

(画面)リモコン・ガンを構えているスターシアのアップ。ガンの銃口とスターシアの顔の遠近感。・・・対閃光ゴーグルをかけるスターシア。
(効果音)エネルギー充填音。
スターシア「・・・」

(画面)宇宙戦艦パムフブリッジ内。艦長席で優越のパメラ。
(効果音)宇宙船イスカンダリアのエネルギー充填音。

(画面)リモコン・ガンを構えているスターシアのアップ。ガンの銃口とスターシアの顔の遠近感。・・・銃口が前へ突き出される・・・。
(効果音)エネルギー充填音。

(画面)宇宙戦艦パムフブリッジ内。艦長席で優越のパメラ。・・・ふと,まゆをひそめる。
(効果音)宇宙船イスカンダリアのエネルギー充填音。

(画面)リモコン・ガンを構えているスターシアのアップ。ガンの銃口とスターシアの顔の遠近感。
(効果音)エネルギー充填音。

(画面)リモコン・ガンを持つスターシアの右手。引き金にかけられている人差し指。・・・引き金に力がこめられる。
(効果音)エネルギー充填音。

(画面)宇宙戦艦パムフブリッジ内。正面に艦長席のパメラ。手前で背中から振り返るビリュー・ルー。
(効果音)宇宙船イスカンダリアのエネルギー充填音。

(画面)リモコン・ガンを構えているスターシアのアップ。ガンの銃口とスターシアの顔の遠近感。
(効果音)エネルギー充填音。

(画面)リモコン・ガンを持つスターシアの右手。引き金にかけられている人差し指。・・・そして引き金が引かれる。
(効果音)エネルギー充填音。・・・小さな金属音。

(画面)宇宙船イスカンダリア船首。砲口へ飽和する閃光。
(効果音)エネルギー充填音。そして静寂。

(画面)宇宙船イスカンダリア先頭のガミラス艦隊。・・・まばゆい光が画面いっぱいに満ち溢れる。さらに白く輝く画面。
(効果音)光の咆哮。

(画面)前方のガミラス艦隊へ対峙(たいじ)しているパメラ艦隊を後方からのアングル。前方からまばゆく輝く青い光が迫ってくる。
(効果音)光の咆哮。

(画面)宇宙戦艦パムフブリッジ内。フロントガラスから前方をのぞむアングル。立ち上がっている女性スタッフたちの背中。・・・前方の宇宙空間から迫ってくる青い光。たちまちブリッジ内を閃光で埋め尽くす。両手をかざす女性スタッフたち。
(効果音)光の咆哮。
(スタッフの声)・・・きゃああ!

(画面)艦長席のパメラの姿も光に埋もれていく様子。・・・目を見開くパメラ。
(効果音)光の咆哮。
パメラ「・・・! う,うそ!」

(画面)宇宙空間で広がる閃光に埋め尽くされてバランスを崩していくパメラ艦隊。・・・全艦が光にのみこまれる。
(効果音)光の咆哮。

(画面)宇宙戦艦パムフブリッジ内。閃光の中で目を細めているビリュー・ルーのアップ。
(効果音)光の咆哮。

(画面)光に包まれている宇宙空間。
(効果音)光の咆哮。

(画面)少しずつ光が弱まり,視界が回復していく様子。・・・やがて漆黒の宇宙空間がそれまでと同じ星々のパノラマを復活させていく。
(効果音)光の咆哮。・・・そして徐々におさまっていく。・・・静寂へ。

(画面)宇宙空間。星々が点々としている。

(画面)宇宙空間を狭しと航行しているガトランティス大艦隊。30000隻超。
(効果音)膨大なエンジン音。
(BGM)M−1A

(画面)周辺の艦隊に守られるように航行している宇宙戦艦ヤマト。
(効果音)膨大なエンジン音。

(画面)宇宙戦艦ヤマト第1艦橋内。艦長席で頬杖をついているレック・アルド・ズォーダー。
(効果音)艦橋内機械音。
(ゲーニッツの声)・・・大帝閣下。
レック「・・・(視線を向ける)」

(画面)直立しているゲーニッツ。・・・前かがみになる。
ゲーニッツ「(体勢を戻す)・・・まもなく外周惑星宙域です。太陽系ラインを突破いたします。地球軍らしき金属反応,エネルギーは確認されていません。星雲へのライブ放送はいかがいたしましょうか。予定を早めても差し支えないと思いますが」

(画面)艦長席で笑みを浮かべるレック。
レック「・・・あくまで予定厳守だよ。ゲーニッツ。前回のデモ放送で言った時間通りだ。予定が違えば視聴者たちにあらぬ疑念を生じさせることにもなる。早くても遅くてもよくない」

(画面)直立しているゲーニッツ。
ゲーニッツ「・・・パメラ・ストリームよりワープ通信が入りました。イスカンダルのスターシアが我が軍のリレー衛星へゲリラ活動を決行しようとしているようですが」

(画面)余裕の表情のレック。
レック「そんな事は当初から予想に易かったよ。ゲーニッツ。でもあの女王が中立の立場を利用して動いたとしても,パメラが立ちふさがればそんなものは蟷螂の斧(とうろうのおの)にすぎない。中立国は先制できないからね。我が艦隊のワープチャンネルが分からないスターシアはリレー衛星を使って私へ通信を試みようとしたんだろうがね。(ふと考え込む)・・・しかし,スターシアは絶世の美女と聞く。話ぐらいはしてもよかったかな」

(画面)ゲーニッツ。
ゲーニッツ「地球壊滅が成就されれば,次はイスカンダルです。その時に大帝閣下の思い通りになさればよろしいのでは・・・?」

(画面)にやりと笑うレック。
レック「・・・今回のイスカンダルの行動はいくらでもでっち上げられるね。パメラに上手に証言してもらおう。中立を放棄したイスカンダルなんか,どうにでもなる。ウーム連邦への同盟違反にもならないし・・・。ふふ。予定通りだ。楽しみだね」
(BGM消える)

(画面)宇宙空間。星が点々としている。

(画面)隊列を乱しているパメラ艦隊。20隻。
(効果音)複数の機動音。

(画面)宇宙戦艦パムフブリッジ内。艦長席でかざしていた右手を下ろすパメラ。
(効果音)ブリッジ内機械音。
パメラ「・・・? (しぱしぱ)・・・え? どうなってるの? (視線を左へ)・・・ビリュー・ルー?」

(画面)すでに前へ進み出て直立しているビリュー・ルー。
ビリュー「パメラ様。ガミラス艦隊が消滅しました」

(画面)隊列を乱しているパメラ艦隊を後方からのアングル。・・・その前方には漆黒の宇宙空間が広がるのみ。
(効果音)複数の機動音。
(BGM)C−2

(画面)宇宙戦艦パムフブリッジ内。艦長席で目を丸くするパメラ。
(効果音)ブリッジ内機械音。
パメラ「・・・消えた? だって,さっきのは艦首波動砲じゃないの?」

(画面)ビリュー・ルー。
ビリュー「艦首波動砲ではありません。我が艦隊には傷一つもついていません」

(画面)今度は違う意味で目を見張るパメラ。
パメラ「・・・! ・・・だまされたっていうの? あれは光だけ・・・?」

(画面)ビリュー・ルー。
ビリュー「空砲です。殺傷能力はありませんでした。単なる目くらましです。この宙域からワープで脱出することが目的だったようです」

(画面)隊列を乱しているパメラ艦隊を後方からのアングル。・・・その前方には漆黒の宇宙空間が広がるのみ。
(効果音)複数の機動音。

(画面)宇宙戦艦パムフブリッジ内。驚きから理解への表情のパメラ。・・・やがて真顔へ。さらに心の奥からふつふつと湧き上がってくる怒りへと変貌する。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(BGM)C−2

(画面)唇を噛みしめるパメラのアップ。
パメラ「・・・こしゃくだわ・・・! イスカンダルの女王! だって,今ものすごくびっくりしたのよ! ああ! 腹が立つ! (立ち上げる)・・・ビリュー・ルー! ガミラス艦隊のワープ進路を調べて! すぐに追っかけるのよ!」

(画面)直立しているビリュー・ルー。
ビリュー「すでに解析にとりかかっています。パメラ様」

(画面)自尊心回復に躍起になるパメラの怒りの表情。
パメラ「・・・絶対に逃がさないわ,スターシア! そのとり澄ました顔をめちゃくちゃにしてあげるから! 絶対に逃がさない!」

(画面)隊列を整え始めるパメラ艦隊。
(効果音)複数の機動音。
(BGM消える)

(画面)宇宙空間を航行している宇宙戦艦アンドロメダ。その周囲には30機ほどのブラックタイガークラシックが同艦を守るように取り巻いている。
(効果音)補助エンジン音。複数の噴射音。

(画面)宇宙戦艦アンドロメダブリッジ内を後方からのバードビュー。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(南部の声)・・・今現状のタイタン到着予定を報告・・・。
(薮の声)・・・ノーマルです。誤差は3%未満。・・・到着予定は138時間後です。副官。

(画面)顔を向ける南部。
南部「太田。付近宙域の反応はあるか」

(画面)振り返る太田。
太田「異常ありません。金属反応,エネルギー反応,確認されません」

(画面)ヘッドマイクを左手で押さえている相原。
相原「・・・こちらもイレギュラーの電波の受信なしです。副官」

(画面)親指で口を押さえる南部。
南部「・・・あと138時間か。予定だと,そろそろガトランティス艦隊がこの軌道上を横切るはずだ。(薮へ)・・・薮。ガトランティス艦隊の進路とアンドロメダとの進路の傾きのずれはどのくらいだ?」

(画面)しばらく計算している様子の薮の背中。・・・振り返る。
薮「・・・敵艦隊の進路との角度は52.3宇宙ラジアンです。・・・土星軌道基準の2次元平面での角度は約30度。距離として最小82万6千宇宙キロまでアンドロメダへ接近してくると思われます。副官」

(画面)うつむく南部。
南部「・・・微妙だ。その距離は。それはあくまでも敵艦隊が一直線に並んでいた場合を想定している。(歩き出す)・・・確かイージス艦冬月は60万宇宙キロ手前で,停泊している敵艦隊の目の前に遭遇した。実際に隊列を組んで航行する3万隻の大艦隊の広がりは恐らく120万宇宙キロを超えているはずだ。となると・・・」

(画面)顔を向けている太田。
太田「敵艦隊とアンドロメダとの距離は・・・20万宇宙キロそこそこにまで縮まるということですか・・・? 充分にレーダー探知可能エリアですよ。副官」

(画面)振り返っている薮。
薮「それならば少し進路を外側へ変更しますか? 敵艦隊から離れる方向へ・・・」
(土方機関長の声)・・・いかん!
薮「・・・(顔を遠くへ向ける)」

(画面)コンソールボックスへ向かっている土方機関長。
土方「そんなことをしたら,失われる距離と時間の喪失は計り知れない。ただでさえアンドロメダはぎりぎりの航海スケジュールで航行しているんだ。これ以上の遅れは取り返しがつかん。連合艦隊への合流はおろか,会戦にも間に合わなくなってしまうぞ」

(画面)絶句する薮。

(画面)振り返っている相原。

(画面)うつむいている太田。

(画面)眼鏡を外す南部。レンズを拭いて再びかけ直す。
南部「・・・やっぱり島提督のお言葉を信じるしかないのか。大艦隊が,よちよち歩きの戦艦を無視してくれることを・・・か・・・」

(画面)宇宙戦艦アンドロメダ艦内の1室の出入り口。両側に警備兵が直立している。
(字幕)尋問室(画面下部横文字)

(画面)尋問室内部。テーブルの上で両指を組んでいる島 大介。向かって左側には穴井教授。右側には佐渡医師が座っている。
島「・・・あなたの健康状態は良好です。どうやらガトランティス人と地球人はお互い極めて近い環境で進化してきた人種のようですね」

(画面)テーブルを前に座っているフロール・レイム・ズォーダー。胸には翻訳マイク。彼女の左横には穴井沙織が座らされている。故意に穴井教授の正面からは外されているようだ。
フロール「恐縮だ。キャプテン・シマ。地球人のここまでの親切で丁寧な待遇には心から感謝している」

(画面)やわらかい表情の島。
島「・・・ある程度の話は聴きました。当艦の機械的不備と私の健康上の問題から,あいさつが遅れてしまって大変申し訳ないと思っていますよ。プリンセス」

(画面)緊張の面持ちのフロール。
フロール「・・・フロールでいいぞ。キャプテン・シマ」

(画面)島と両側の穴井教授と佐渡医師。
島「わかりました。私のことも,島と呼んでください。ミス・フロール。(笑顔)」

(画面)少しだけ緊張を解くフロール。
フロール「・・・どこまで信用している? シマ。このガトランティス人の言い分を」

(画面)笑顔の島。
島「そうですね。半分くらいですか」

(画面)表情がやわらぐフロール。
フロール「正直だな」

(画面)笑顔を収めて向き直る島。
島「・・・ミス・フロール。もうすぐ戦争が始まります。あなたの国と私たちの国とね。戦力は圧倒的にあなたがたが有利です。あなたが本当にガトランティス連邦のプリンセスならば何とかこの戦争を回避するようにあなたの国民を説得することはできませんか?」

(画面)苦しげな表情になるフロール。
フロール「・・・それは・・・むずかしいだろうな。ガトランティス国民たちは地球人が自分たちの指導者を騙し撃ちした極悪非道の人種だと思い込んでいる。中央集権国家の特性だ。マスコミも自国に有利な理屈で情報を改ざんしているのだ。だから,そこから説明を始めるにしても今回はあまりに時間がなさすぎる」

(画面)かるく息をついて背もたれに寄りかかる島。

(画面)うつむいているフロール。
フロール「私はネットワークコンピューター操作に通じている。ガトランティスの嘘の情報など私には通用しない。前回のヤマトとの戦いは不幸だった。あれは我が父の完全なエゴによる侵略だった。動機は子供でも予想できるほど単純なものだ。ただ,その父がヤマトに殺されたことはこの私でも予想の外だったがな。とにかく非は我がガトランティスにある。しかし国民たちにはそのように伝えられてはいない。テレザートの罪人を追って銀河系への調査中に,罪人をかくまう地球人から奇襲を受けたと報道されているのだ」

(画面)少しだけ身を乗り出す島。
島「ミス・フロール。実は私はそのヤマトに乗っていた」

(画面)顔を上げるフロール。

(画面)テーブル面へ視線を注ぐ島。
島「たくさんの仲間が死んだ。かけがえのない仲間たちだった。中には無二の親友もいた。もはや失った仲間は戻ってこない。それは白色彗星のガトランティスも同じことだったはずだ。(顔を向ける)同じことは繰り返したくない。だからできれば戦争は回避したい」

(画面)顔を上げているフロール。・・・再びうつむく。
フロール「・・・そうだったのか。すまない。我が父に成り代わって詫びる。私も同じ気持ちだ。戦争など馬鹿げている。この戦争を避けたいとは強く感じている。・・・(顔を上げる)・・・しかし,シマ。実際にそれはもはや不可能だ。この太陽系にはすでに800万人のガトランティス戦士が進行している。個々の力では,どうすることも出来ない」

(画面)黙っている島。

(画面)苦渋のフロール。
フロール「・・・本当は,私は地球との文化交流を望んでいたのだ。私は地球の民主主義を学びたかった。すばらしい政治システムだと思っている。そのシステムがあればガトランティス国民だって本当の情報を知ることが出来て,政治にも参加できる。戦争だって簡単には起こせなくなるに違いないのに・・・」

(画面)黙っている島。・・・微笑む。
島「・・・ミス・フロール。宇宙戦艦アンドロメダは貴女を歓迎します。我が艦には民主主義に関するデータバンクもあります。自由に閲覧(えつらん)なさっても結構ですよ」

(画面)島を見る穴井教授。
穴井「・・・! 島提督・・・!」

(画面)穴井教授へ顔を向ける島。
島「・・・教授。問題はありませんよ。もうこの戦争で彼女が与える影響はほとんど残されてはいないようです。彼女の行動に関わらず戦争は起こる。それに彼女は私たちの命の恩人です。これ以上の嫌疑(けんぎ)は不要です」

(画面)笑顔のフロール。
フロール「感謝する。シマ」

(画面)佐渡医師を見る島。
島「佐渡先生。ミス・フロールに艦内を案内してやってください。データバンクも含めてね。彼女の健康状態の管理もお願いします。なにしろ地球型の環境ですからね。まだ油断は禁物です」

(画面)うなずく佐渡医師。
佐渡「わかりました。(立ち上がる)・・・では行きましょう」

(画面)尋問室内部からの出入り口ドア。開かれたドアから出て行くフロールと佐渡医師。両側の警備兵が敬礼する姿が見える。・・・閉まるスライドドア。
(効果音)ドアの開閉音。足音。

(画面)その様子を目で追っていた島。・・・再び正面へ向き直る。
島「・・・さて。穴井測定士」

(画面)沈黙を守っていた沙織が顔を向ける。
沙織「はい。提督」

(画面)島と穴井教授。
島「・・・教授から聴きました。ガミラス人は地球型の大気でも大丈夫なようですね。何せ君は2年近くも地球に住んでいたのですから。ならば医務室にいる彼も大丈夫でしょう。輸血後の体調はどうですか?」

(画面)苦笑する沙織。
沙織「・・・本当に優しいひと。・・・地球人だと偽った(いつわった)あげくに規律違反を犯した私の身体を心配してくれるんですか?」

(画面)島と穴井教授。
穴井「(小声)・・・沙織!」
島「(微笑)もちろん。君も私にとっては大切な仲間だからね」

(画面)うつむいている沙織。

(画面)島と穴井教授。

(画面)うつむいている沙織。・・・顔を上げる。
沙織「・・・本当に申し訳ありませんでした。提督」

(画面)微笑む島。

(画面)顔を上げている沙織。
沙織「・・・あのガミラス人を見たんですか?」

(画面)うなずく島。

(画面)興味深げに見つめる沙織。
沙織「・・・やっぱり,分かったんですか?」

(画面)見返している島。
島「忘れるわけはない」

(画面)かるくため息をつく沙織。
沙織「忘れるわけはない・・・か。そうですよね。でも。(顔を上げる)・・・提督は忘れていることもあったんですよ」

(画面)見返している島。

(画面)見つめる沙織。
沙織「・・・私のことは覚えていてくれてなかったんですね。提督。2年前ヤマトがイスカンダルへ向かう途中のサイレン第二惑星で私は提督と会っていたのに」

(画面)首をかたむける島。
島「会っていた・・・? ・・・確かにヤマトはサイレンに着陸したが,あそこにいた女性は・・・」

(画面)見つめる沙織。
沙織「あれが私です。今は名前も肌の色も違うけど。ここの太陽系の光のおかげね」

(画面)沙織を見つめる島。

(画面)見つめる沙織。
沙織「私は母より能力が劣っていた。増幅装置がないと人の心は読めなかった。忌まわしいガミラス人の血は私からサイレン人特有の美しい肌の色と強力な読心能力を奪った。あげくにはヤマトへの対策のためにサイレン本星から惑星がひとつしかない恒星系へ隔離されて,最後には母まで奪われてしまった。それも全てはガミラスのため。あの男の野心のためだった。その惑星には能力増幅装置があったから,私でも母と父の気持ちは読めたわ。あろうことかあの男はガミラス人のくせに選りによって愛する女を自殺に追い込んだ人でなしなのよ」

(画面)沙織を見つめる島。

(画面)見つめる沙織。
沙織「・・・でも提督はあのガミラス人とは違った。2年前のあの時,私は提督の心を読んでいたんです。あの時,提督はひとりの女性を愛していた。そして提督は何よりもその女性の幸せを願っていた。自分の幸せを差し置いてまで」

(画面)はっと思い出す素振りの島。
島「・・・思い出した。確か,君の名前はジュ・・・」

(画面)さえぎるように話し出す沙織。
沙織「提督。私はあくまでもガミラスとサイレンのハーフです。私が大丈夫だったからって,あのガミラス人が大丈夫とは限らない。ガミラス人は空気中にある程度の放射能が含有されていないと窒息する人種です。この宇宙空間には必ずある程度の放射能が含まれているけど,仮にこの艦内で放射能がゼロの区画があれば,そこへ連れていけばあのガミラス人は死にます。気をつけてください。地球人は放射能ゼロの環境でも生きられる。だからイスカンダルの女王はガミラス人が恐れるコスモクリーナーを地球に進呈したのよ。放射能値をゼロにするコスモクリーナーさえ地球にあればガミラス人は地球進行をあきらめるしかなかったから」

(ここで突然,艦内に警戒警報が鳴り響く)

(画面)天井へきょろきょろする穴井教授。
穴井「な,なんじゃ・・・! 来よったのか・・・!」
(効果音)艦内警報。

(画面)島のアップ。
(効果音)艦内警報。

(画面)沙織のアップ。
(効果音)艦内警報。

(画面)島を見ている穴井教授。
(効果音)艦内警報。

(画面)立ち上がる島。
(効果音)艦内警報。

(画面)見上げる沙織のハイアングル。
(効果音)艦内警報。

(画面)立ち上がっている島と穴井教授。
(効果音)艦内警報。
島「穴井測定士」

(画面)立ち上がる沙織。
(効果音)艦内警報。

(画面)毅然(きぜん)と正面へ直立している島。
島「ただいまこれより貴官の謹慎を解く。直ちに持ち場へ戻り,業務へ復帰するように。以上だ」

(画面)下士官敬礼する沙織。
(効果音)艦内警報。

(画面)敬礼を返す島。
(効果音)艦内警報。

(画面)30機ほどのブラックタイガークラシックを率いて宇宙空間を航行する宇宙戦艦アンドロメダ。
(効果音)補助エンジン音。複数の噴射音。警報音。

(画面)宇宙戦艦アンドロメダブリッジ内。顔色を変えて振り向く太田。
(効果音)ブリッジ内機械音。警報音。
太田「・・・副官! 多数の金属反応と大規模なエネルギー放射がレーダーエリアに侵入してきました!」
(BGM)D−1B

(画面)表情が緊張する南部。
南部「方位は!? 距離は!?」
(効果音)出入り口ドアの開閉音。
(沙織の声)・・・待ってください! すぐに調べます!
南部「・・・! (振り返る)」

(画面)ブリッジ右側コンソールボックスへ駆け寄る沙織。下士官敬礼。
沙織「穴井測定士。謹慎が解けました! 業務へ復帰します! ご命令を!」

(画面)振り返っている南部。
南部「・・・穴井測定士。レーダーエリアに侵入してきた金属反応の方位と距離を報告せよ」

(画面)下士官敬礼している沙織。
沙織「分かりました! (コンソールへ向かう)」

(画面)ほっとした表情の薮。・・・すぐに緊張の面持ちで前を向く。
(BGM)D−1B

(画面)コンソールボックスから顔を上げる沙織。
沙織「・・・7時35分の方向! 距離,58万宇宙キロ! アンドロメダと進行方向は一致していませんが距離は接近しています!」

(画面)振り返っている太田。
太田「レーダーエリアを最大にしても拾いきれません! (計器類へ向かう)・・・何て規模だ・・・」
(効果音)出入り口ドアの開閉音。
(島の声)・・・太田。私語は慎む(つつしむ)ように。
太田「・・・(振り向く)」

(画面)艦長席へ座る島。駆け足で横切っていく穴井教授。
島「(南部へ)副官。ご苦労だった」

(画面)わずかに肩の力が抜ける南部。・・・穴井教授に肩を叩かれて振り返る様子。

(画面)艦長席の島。
島「・・・総員,警戒態勢! (南部へ)ブラックタイガーを艦内へ収容してくれ。ただし,すぐに発進できるように各機内で待機。(土方機関長へ)・・・機関長。ブラックタイガー収容後に補助エンジン停止。慣性航行維持。(穴井教授へ)・・・教授。一時的に全ての電源を切ります。生命維持装置もです」

(画面)振り返る穴井教授。
穴井「全員,激しい運動は禁止じゃぞ。トイレも我慢じゃ! わしらはしばらく死人じゃからな!」

(画面)下士官敬礼をする南部と土方機関長。
(BGM消える)

(画面)補助エンジンの光が消えて宇宙空間を慣性航行し始める宇宙戦艦アンドロメダ。艦からもれている全ての光が消えていく。
(効果音)消えるエンジン音。警報音も消える。

(画面)宇宙空間を航行するガトランティス本隊。30000隻超。
(効果音)膨大なエンジン音。
(BGM)M−1A

(画面)本隊右翼に展開しているガトランティス第2遊動機動艦隊。188隻。
(効果音)膨大なエンジン音。

(画面)宇宙空間を航行する桃色の宇宙戦艦エルディーノ。
(効果音)膨大なエンジン音。

(画面)宇宙戦艦エルディーノブリッジ内。前へ進み出る副官参謀カントレムール。
(効果音)ブリッジ内機械音。
カントレムール「・・・提督。レーダーが金属反応を捉えたようですがじゃ。金属組織はガトランティスのものじゃないと」

(画面)艦長席で軍帽を振り向かせるエルダ。
エルダ「この宙域でガトランティスでないというなら,敵艦ということか」
(カントレムールの声)・・・御意(ぎょい)。
エルダ「詳細を報告せよ」

(画面)下げた頭を低く元に戻すカントレムール。
カントレムール「・・・数はひとつ。大型艦のようですじゃ,艦載機も飛んではいないようじゃし,エンジン噴射を含むエネルギー放射が認められんです。我が本隊の向かう進路とは全く違う方向へ慣性移動してるだけじゃ。どうやら9番惑星で被弾した地球の船じゃな。ならば,かなり時間が経っていることじゃろう。廃墟の難破船ではないかと・・・」

(画面)きっと視線を向けるエルダ。
エルダ「お前の見解など訊いてはいない。それが事実と分かった時に報告せよ。カントレムール」

(画面)深々と頭を下げるカントレムール。
カントレムール「(頭を上げる)・・・提督。大帝閣下へご報告は・・・?」

(画面)目を細めるエルダ。
エルダ「当然だ。お前の見解以外を報告せよ。電信でいい」

(画面)宇宙空間を航行する宇宙戦艦エルディーノ。
(効果音)膨大なエンジン音。

(画面)宇宙空間を航行する宇宙戦艦バルゼミア。
(効果音)膨大なエンジン音。

(画面)宇宙戦艦バルゼミアブリッジ内。艦長席のバルゼー。
(効果音)ブリッジ内機械音。
バルゼー「ナスカ。あの漂流船をどう見る?」

(画面)ボードを持って直立するナスカ。
ナスカ「あのトンガリ帽子タイプは地球の戦艦です。強力な艦首波動砲を備えています。もしあの戦艦の機能が生きていればたとえ1隻でも我が軍に多大なダメージを与えることができるでしょう。提督が私に求めている見解はあの戦艦が生きているか死んでいるかということですか」

(画面)艦長席のバルゼー。
バルゼー「そうだ」

(画面)ナスカ。
ナスカ「・・・死んでいるかも知れません。死んでいるふりをしているかも知れません。しかし生きているならばむしろ我が本隊から離れようとするはずです。目的が予想できません。提督。ですが,たった1隻です。この件はエルダ提督が大帝閣下へすでに報告済みです。命令が下れば撃沈させますし,なければ,やり過ごすまでです。それほど気にとめることもないように思われますが・・・?」

(画面)艦長席のバルゼー。
バルゼー「ナスカ。思い出せ。ヤマトはただ1隻で我が彗星要塞の前に立ちふさがったのだ」

(画面)宇宙空間を進軍するガトランティス巨大艦隊。30000隻超。・・・アングル移動。
(効果音)膨大なエンジン音。

(画面)・・・アングル移動。宇宙空間を慣性航行している宇宙戦艦アンドロメダの描写。艦の全ての光が消えている。
(BGM)M−1A

(画面)暗闇に包まれている宇宙戦艦アンドロメダブリッジ内。後方からのバードビュー。

(画面)暗闇で操縦管を握っている薮。
薮「・・・気づかれたら,おしまいかも・・・」

(画面)暗闇で主電源コンソールにへばりついている穴井教授。
穴井「わしらは死んどるぞ。わしらは死んどるぞ。だから,とっとと行ってくれい」

(画面)暗闇で目だけが光っている土方機関長。

(画面)暗闇で冷や汗を流している南部。

(画面)暗闇で,使用できないヘッドマイクをかけている相原。

(画面)暗闇で,電源の入っていないパネルを見ている太田。

(画面)暗闇で正面を見据えている沙織。

(画面)艦長席で,目を閉じている島。

(画面)暗闇の艦内滑走路。待機しているブラックタイガークラシック。

(画面)暗闇のコクピットの中でむずむずしている三郎太。
三郎太「・・・やば。トイレ行っとくんだった」

(画面)暗闇で,ぎらぎらしている桂隊長。
桂「・・・来るなら来やがれ。こんちくしょうめ・・・」

(画面)暗闇のスタンバイルームで,他の空間騎兵隊隊員たちと息を殺しているソマリア・ギル。
ギル「(英語)・・・神に祈ってくれ・・・」

(画面)暗闇のデータ室のボックスに座っているフロール。
フロール「(振り向く)・・・ドクター・サド。後で地球のキーボードの配列を教えてくれ」

(画面)暗闇で苦笑する佐渡医師。
佐渡「・・・生きていたら」

(画面)暗闇の監禁室。窓の外を見ているオサードの後ろ姿。
(画面)オサードの左横顔のアップ。画面左には丸い窓ガラス。オサードの顔が映っている。

(画面)暗闇の医務室。シートに座って待機している森 綾乃。横には電源が切られているアナライザー。
(後方からの声)・・・ずいぶんと暗いね。今は停電中かね。看護士さん?
綾乃「・・・! (ぴくり)」
(画面)振り向く綾乃のアップ。
綾乃「・・・え?」

(画面)暗闇の艦長席で目を開ける島。

(画面)ゆっくりと慣性で遠ざかる宇宙戦艦アンドロメダの艦尾。
(BGM)M−1A

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第14節 領宙侵犯! 太陽系,そしてガトラン系