第11節 嗚呼! さらば,冥王星地球艦隊

(画面)宇宙戦艦コタックブリッジ内。振り向くレーダー士。
(効果音)全開エンジン音。
レーダー士「・・・地球艦隊が我が艦隊の下方へ進路をとっています!」

(画面)仰ぎ見る副官。
副官「・・・提督! 我が艦隊も下方へ進路転換を・・・!」

(画面)腕組みをしているコーテク。
コーテク「コースは変えるな。(副官をにらみつける)・・・艦隊がそう簡単に進路を変えられるわけないだろう。艦同士の距離を考えろ。俺たちは何隻いると思ってんだ」

(画面)画面上部にはガトランティス第3遊動機動艦隊が転進している様子。・・・画面中央には隊列を整えて疾走している地球艦隊。33隻。
(効果音)エンジン全開複数。
(BGM)M−59

(画面)全速で航行する地球艦隊,正面の描写。
(効果音)エンジン全開複数。

(画面)第3遊動機動艦隊上部のパラノイア戦闘機隊。
(効果音)複数の噴射音。

(画面)下方を見やるパラノイア戦闘機パイロット。・・・あごを振る。

(画面)下方へ展開していくパラノイア戦闘機隊。多数。すさまじい数。画面を埋め尽くす。
(効果音)噴射音。多数。

(画面)見上げる地球軍戦闘機パイロット。

(画面)上方へ迎え撃つために急上昇する地球軍戦闘機隊。
(効果音)噴射音。多数。

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。艦長席のベルナルド。
(効果音)全開エンジン音。
(レーダー士の声)(ポルトガル語)・・・”蚊トンボ”の編隊が接近してきます! 数え切れません!

(画面)迫ってくるパラノイア戦闘機隊。機銃を連射する。光で埋め尽くされる画面。
(効果音)無数の機銃発射音。

(画面)上昇している地球軍戦闘機隊の全容。ところどころで煙を引きずって離脱する戦闘機数機。・・・爆発。爆発。応戦の機銃発射を開始する各戦闘機。
(効果音)爆発音。数回。機銃発射音。噴射音。多数。

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。艦長席のベルナルド。
(効果音)全開エンジン音。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・各艦,対空射撃準備! くるぞ!」

(画面)向かってくるパラノイア戦闘機隊。撃墜光。撃墜光。
(効果音)爆発音。多数。噴射音。機銃発射音。

(画面)地球軍戦闘機隊とパラノイア戦闘機隊が宇宙空間で混ざり合うように交錯し始める。無数にまたたく機銃の光の乱舞。
(効果音)無数の噴射音。機銃発射音。撃墜。直撃。

(画面)地球軍戦闘機隊とパラノイア戦闘機隊の攻防をローアングルから。撃墜されていく双方の戦闘機。・・・しかし圧倒的な物量を誇るパラノイア戦闘機隊が攻防をすり抜けて接近してくる。地球軍戦闘機隊は防ぎきれない。
(効果音)爆発音。多数。噴射音。機銃発射音。多数。

(画面)応戦している地球軍戦闘機隊。機銃直撃を受けて次々に画面から退場していく。
(効果音)爆発音。多数。噴射音。機銃発射音。

(画面)機銃の直撃を受ける地球軍戦闘機。ぐらついて火を噴く。
(効果音)直撃。エンジン不調。

(画面)火を噴いている戦闘機コクピット。ところどころから火花が飛び散る計器類。・・・顔を両腕でかばう若いパイロット。
パイロット「(ポルトガル語)・・・! ・・・! お,お母さん!」

(画面)爆光を放って爆発する地球軍戦闘機。・・・その脇をすり抜けていくパラノイア戦闘機隊。多数。
(効果音)爆発音。噴射音。多数。

(画面)パラノイア戦闘機パイロットの視界。・・・眼下に見えてくる地球艦隊を上方から。
(効果音)噴射音。

(画面)地球艦隊駆逐艦ブリッジ内。背中を向けたままのレーダー士。
レーダー士「・・・上方角36度! 蚊トンボが来ます!」
(画面)艦長席の日本人戦士。
艦長「全砲塔,照準合わせ! 全砲門。・・・ってええ!」

(画面)駆逐艦を左斜め前方から。その全主砲から発射されるショックカノン9条。
(効果音)主砲発射音。弾道音。
(BGM)M−59

(画面)機銃を撃ち続けているパラノイア戦闘機隊,前衛。・・・ショックカノンの砲弾がかすめて爆発する数機。
(効果音)爆発音。多数。噴射音。機銃発射音。

(画面)パラノイア戦闘機隊へショックカノンとパルスを撃ち続けている巡洋艦。パラノイア戦闘機からのミサイル攻撃で各部から爆光を放っている。かたむく巡洋艦。
(効果音)噴射音。爆発音。撃墜音。きしむ金属音。

(画面)パラノイア戦闘機隊。その1機がミサイルを発射する。
(効果音)噴射音。ミサイル発射音。

(画面)宇宙空母サツマのバードビュー。・・・遠ざかっていくミサイル。さらに遠ざかっていくミサイル。・・・そして宇宙空母サツマの滑走路中央へミサイルが直撃。爆発。
(効果音)遠ざかる噴射音。爆発音。

(画面)宇宙空母サツマ管制塔ブリッジ内。ぶれる画面。衝撃。艦長席で両腕をふんばっている副官。
(効果音)直撃音。きしむ金属音。
(スタッフの声)・・・中央滑走路被弾! 蚊トンボ隊は当艦正面へ!
(画面)歯を食いしばる副官。
副官「対空砲火を正面へ集中させろ! ・・・パイロットたちの帰るところを守れ! 応戦!」
(画面)振り返るレーダー士。
レーダー士「・・・! 後方より敵戦闘機編隊が接近してきます! カブトガニです!」
(画面)顔を向ける副官。

(画面)宇宙空間。猛烈な速度で画面に迫ってくるデスバデーター戦闘機隊。画面を通過していく。
(効果音)噴射音。多数。ドップラー効果。

(画面)デスバデーターのパイロットの視界。正面に地球艦隊後衛の駆逐艦。主砲を合わせている。・・・そして手前に向けて発射されるショックカノンの弾道。回転する視界。
(効果音)発射音。噴射音。

(画面)地球艦隊駆逐艦に次々と襲いかかるデスバデーター戦闘機隊。各所から火を噴き始める同艦。
(効果音)直撃。直撃。直撃。

(画面)駆逐艦ブリッジ内。度重なる直撃。フロントガラススクリーンにはひび割れが起きて,計器類からも出火している。・・・そして爆発。吹き飛ぶブリッジスタッフ。
(スタッフの声)・・・わああ!
(画面)艦長席のアンゴラ戦士。
艦長「(ポルトガル語)・・・体勢を立て直せ! 応戦だ!」
(画面)振り返るスタッフ。
スタッフ「(ポルトガル語)・・・エンジンをやられました! 艦内で遊爆が始まっています!」
(画面)顔色が変わる艦長。
艦長「(ポルトガル語)・・・総員,退艦準備・・・!」
(爆発で白くなる画面)

(画面)各所から噴いている火柱が太くなり融合する駆逐艦の装甲。・・・次の瞬間,まばゆい爆光を放って機関部から大爆発を起こす同艦。退避するデスバデーター戦闘機隊。数機が爆発に巻き込まれる。
(効果音)大爆発。

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。振り返るスタッフ。
(BGM)M−59
(効果音)エンジン全開。
スタッフ「(ポルトガル語)・・・8番駆逐艦,沈没!」
(画面)顔を向けているベルナルド。
(レーダー士の声)(ポルトガル語)・・・提督!
ベルナルド「・・・! (声の方へ視線を向ける)」

(画面)計器類から目を離していないレーダー士。
レーダー士「(ポルトガル語)・・・敵艦隊下部中央エリアへ到達いたしました!」

(画面)正面へ向き直り,表情を引き締めるベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)(スタッフへ)・・・4番戦艦と11番戦艦へ指示! 上げ角84度! 波動砲エネルギー充填開始! 3番艦と7番艦は各戦艦の護衛にまわれ! 全艦。ハープーンミサイル発射態勢! 戦闘機隊を発射エリアから退避させよ!」

(画面)地球艦隊上方からの急速なクローズアップ画面。・・・艦隊中央には主力戦艦タイプが2隻。徐々に艦首が上部へ持ち上げられていく様子。
(効果音)エネルギー充填音。複数。機動音。噴射音。

(画面)主力戦艦ブリッジ内。人工重力機構は各艦独立しているため,上げ舵が進んでも乗組員の体勢自体に影響はない。艦長席のアンゴラ戦士の緊張気味の表情。
(効果音)エネルギー充填音。
(スタッフの声)(ポルトガル語)・・・波動砲エネルギー充填80パーセント・・・!
艦長「(ポルトガル語)・・・11番艦から距離をとれ! 今回は波動エネルギーを融合させるな!」

(画面)地球艦隊を上方からのアングル。ただ,2隻の主力戦艦のみが艦首を上方へ向けている。他の宇宙艦からは完全に艦の向きが直角に異なっている。・・・さらにお互いの距離を離れさせていく両艦。
(効果音)エネルギー充填音。複数。

(画面)地球艦隊上部エリアから転回して離脱していく地球軍戦闘機隊各機。退避するのも命がけである。パラノイア戦闘機の追撃を受けて撃墜されていく戦闘機数機。
(効果音)噴射音。撃墜音。

(画面)地球艦隊巡洋艦ブリッジ内。艦長席の日本人戦士。
(効果音)ブリッジ内機械音。
艦長「・・・ハープーンミサイル,照準合わせ!」

(画面)巡洋艦上部装甲部。射出口ハッチが4門開いていく。
(効果音)ハッチ開閉音。
(BGM)M−59

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。艦長席のベルナルド。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(スタッフの声)(ポルトガル語)・・・ハープーン発射態勢。全艦確認しました!
ベルナルド「(うなずく)・・・(ポルトガル語)ハープーンミサイル全弾,発射!」

(画面)地球艦隊巡洋艦ブリッジ内。艦長席の日本人戦士。
(効果音)ブリッジ内機械音。
艦長「・・・ハープーンミサイル全弾,発っ射ぁ!」

(画面)巡洋艦上部装甲部。全開している射出口ハッチからミサイルが飛び出す。発射後に拡散する煙が氷の粒となってきらめく。
(効果音)発射音。複数。

(画面)地球艦隊が画面下部。・・・それぞれのその艦上部から次々と真上に打ち出されるミサイル群。発射痕多数。
(効果音)発射音。多数。

(画面)地球艦隊を真上からの描写。2隻の主力戦艦だけは艦首をこちらへ向けている。その他の各艦から発射された多数のハープーンミサイルが画面手前へ猛速度で接近してくる。たちまち画面を手前に突き抜けるように退場していくミサイル群。ミサイル群。
(効果音)発射音。多数。ドップラー効果。

(画面)ハープーンミサイルに接触して粉々に砕け散るパラノイア戦闘機数機。
(効果音)接触。接触。爆発。爆発。

(画面)宇宙空間を散開しているパラノイア戦闘機の大群を上方から。ハープーンミサイルがそれぞれの活路を見出してその大群にそれぞれの穴をこじあけて上昇してくる。
(効果音)噴射音。多数。

(画面)下方からのローアングル。発射痕を引きずりながら上昇していくハープーンミサイル群。多数。そしてその先には,今まだ転回している途中のガトランティス第3遊動機動艦隊がその艦底を無防備に見せている。
(効果音)遠ざかっていく噴射音。
(BGM)M−59

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。艦長席のベルナルド。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(スタッフの声)(ポルトガル語)・・・全弾,ノーマル! 不具合は1基もありません!

(画面)ガトランティス軍,戦艦ブリッジ内。振り返るレーダー士。
(効果音)エンジン音。
レーダー士「下方よりミサイル群,接近! 直撃します!」
(画面)顔を向ける艦長席のガトランティス戦士。
艦長「・・・! 迎撃しろ! ミサイル発射! 弾幕をはれ!」
(画面)前へ出るスタッフ。
スタッフ「・・・コーテク提督の承認を・・・!」
(画面)鬼気迫る艦長の表情。
艦長「そんな時間があるか! 死にたいのか! 早く命令を遂行せよ!」

(画面)下方からのローアングル。発射痕を引きずりながら上昇していくハープーンミサイル群。多数。
(効果音)遠ざかっていく噴射音。

(画面)ミサイルを前方へ連続発射するガトランティス戦艦。・・・ミサイルはコースを変えて艦の下方へ退場。
(効果音)発射音。連続。

(画面)次々と迎撃用ミサイルを発射するガトランティス第3遊動機動艦隊。
(効果音)発射音。連続。

(画面)向かってくる地球軍のハープーンミサイル群。
(効果音)噴射音。多数。

(画面)上方から降下してくるガトランティス軍の迎撃ミサイル群。
(効果音)噴射音。多数。

(画面)艦首を真上に向けている地球艦隊主力戦艦。タキオンの光が艦首に集まり始めている。
(効果音)エネルギー充填音。

(画面)主力戦艦ブリッジ内。ガンレバーを握っているアンゴラ戦士。アングルは戦士が真上をにらんでいる描写。
(効果音)エネルギー充填音。
戦士「(ポルトガル語)・・・波動砲シリンダー,最終セーフティロック解除!」

(画面)向かってくる地球軍のハープーンミサイル群。
(効果音)噴射音。多数。

(画面)上方から降下してくるガトランティス軍の迎撃ミサイル群。
(効果音)噴射音。多数。

(画面)地球軍のハープーンミサイルとガトランティス軍の迎撃ミサイルが交錯。まばゆい爆光。
(効果音)爆発前の短い周波。

(画面)個々の爆光が融合し,大きな光となって宇宙空間を照らし出す。爆発。爆発。さらに爆発。
(効果音)爆発の連鎖。

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。艦長席のベルナルドの顔を照らす,かなたの爆光。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(BGM)M−59

(画面)ガトランティス戦艦ブリッジ内。揺らぐ艦内。近い宙域での爆光に見舞われている艦長席のガトランティス戦士。
(効果音)衝撃波。
艦長「(歯を食いしばる)・・・ち,地球人め・・・!」

(画面)地球艦隊を真上から。艦首を向けている主力戦艦2隻の砲口にはタキオンの光が飽和状態。
(効果音)エネルギー充填音。複数。

(画面)主力戦艦ブリッジ内。ガンレバーを握っているアンゴラ戦士の正面。
戦士「(ポルトガル語)・・・ターゲット・スコープ,オープン!」
(画面)ガンレバーを握っているアンゴラ戦士の正面。・・・ターゲット・スコープがその表情を隠す。
(効果音)エネルギー充填音。小さな金属音。

(画面)ミサイル同士の爆光が消えて,元の闇を取り戻す宇宙空間。

(画面)ガトランティス戦艦ブリッジ内。血相を変えて振り向くレーダー士。
(効果音)エンジン音。
レーダー士「か,艦長ぉ! 下方にエネルギー反応! タ,タキオンです!」
(画面)鋭く顔を向ける艦長席のガトランティス戦士。
艦長「・・・! 何を見ていたのだ! なぜ今になって・・・!」
(画面)当惑するレーダー士。
レーダー士「ミサイル同士の衝撃波で,感知が遅れました!」
(画面)艦長席を立ち上がるガトランティス戦士。
艦長「急げ! 退避だ! 前方の艦に打電しろ! 邪魔だ! どけ!」

(画面)加速を始めるガトランティス戦艦。・・・進路上の駆逐艦に接近。ニアミス寸前。
(効果音)エンジン全開。

(画面)艦同士の距離が狭まって渋滞状態を起こし始めるガトランティス艦隊。・・・接触する艦体。飛び散る火花。ぐらつく巡洋艦。
(効果音)エンジン全開複数。接触音。エンジン不調。

(画面)ガトランティス第3遊動機動艦隊を下方から見上げるアングル。・・・艦隊中央から徐々に前後に隊列が離れ,それぞれの方向へ分断されていく様子。
(効果音)多数のエンジン全開音。

(画面)主力戦艦ブリッジ内。ガンレバーを握っているアンゴラ戦士の正面。対閃光ゴーグルを装着している。
戦士「(ポルトガル語)・・・拡散波動砲,発射!」

(画面)直角アングルのガンレバー。引き金を引くアンゴラ戦士の右手。トリガーが引き戻される。
(効果音)小さな金属音。

(画面)タキオンの光が集中している主力戦艦の波動砲口。・・・光がまばゆく飽和。一気に画面を支配する巨大な閃光。

(画面)真上を向いている主力戦艦2隻を前後に垣間見るアングル。それぞれの艦首から発射される巨大なタキオンの光の砲弾。
(効果音)複数の衝撃発射轟音。

(画面)主力戦艦ブリッジ内。ガンレバーを握ったまま歯を食いしばっているアンゴラ戦士。猛烈な赤い光。

(画面)画面下部から真上に向けてばく進する巨大な2本の光の柱。
(効果音)光の轟音。

(画面)パラノイア戦闘機隊をバードビュー。下方のまばゆいふたつの青い光が徐々に大きく浮き上がってくる。やがて衝撃波にぐらつき始める各戦闘機。
(効果音)光の轟音。膨大なドップラー効果。

(画面)前面ガラススクリーンのコクピットに座っているパラノイアパイロット。眩しい光に腕をかざす様子。・・・白くなる画面。
(効果音)光の轟音。

(画面)パラノイア戦闘機隊を真横からのアングル。・・・下から突き上げる膨大な光。たちまち蒸発していく戦闘機隊。
(効果音)光の轟音。

(画面)真上へ,ばく進しているタキオンの砲弾。2条。・・・それぞれがほとんど同じタイミングでその光の柱を大きく拡散させる。
(効果音)光の轟音。拡散音。複数。

(画面)見下ろすアングル。大きく広がっていくふたつの青い光。
(効果音)光の轟音。

(画面)ガトランティス戦艦ブリッジ内。艦長席のガトランティス戦士のアップ。下から突き上げる青い光。恐怖から絶望の表情へ。そして再び恐怖の表情。右手で下からの光をさえぎろうとする動作。
(効果音)光の轟音。
艦長「・・・う,うわああ!」

(画面)下からの膨大な光がガトランティスの艦艇をのみこんでいく。・・・原型を大きく揺らぎさせてその存在を光と融合させていく戦艦。巡洋艦。潜宙艦。
(効果音)光の轟音。

(画面)ガトランティス第3遊動機動艦隊をエリアからの正面アングル。後方で光とともに蒸発していく艦艇から遠ざかるように手前へ加速している各宇宙艦の様子。後方ではさらに遊爆が始まり,逃げ遅れた艦が爆発。破片に巻き込まれた駆逐艦が大きくかたむく様子。
(効果音)光の轟音。爆発音。被弾。きしむ金属音。多数。

(画面)ガトランティス第3遊動機動艦隊を見上げるアングル。その中央の左右で大きく爆発が集中している。・・・前衛と後衛は分断されてそれぞれ別の方向へ動き始めている。
(効果音)爆発音。多数。エンジン加速音。

(画面)光に照らし出されている宇宙戦艦コタック外観。
(効果音)周辺の爆発音。多数。

(画面)宇宙戦艦コタックブリッジ内。フロアで腕組みをしているコーテク。ブリッジ内にも光が入り込んでいる。
(効果音)周辺の爆発音。多数。
(画面)青ざめた副官が歩み寄る。
副官「・・・提督! 艦隊中央付近に艦首波動砲が直撃しました! 隊列が乱れています! 分断します!」

(画面)じろりと一瞥(いちべつ)するコーテク。
コーテク「慌てるな。みっともない。隊列を整えるように各班へ伝達しろ。勢力は,まだはるかに俺たちが上回っているんだぞ」

(画面)正面へ向き直るコーテクのアップ。
コーテク「(笑み)・・・しかしそれにしても。なかなかやるな。地球人。まさかこれほどの手ごたえがあるとは思わなかったな。ははは」

(画面)隊列を整える地球艦隊。32隻。ほとんどの艦が被弾して傷だらけである。戦闘機も,もはや96機。
(効果音)複数の機動音。噴射音。
(BGM)M−59

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。艦長席のベルナルド。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(画面)前へ進み出るスタッフ。
スタッフ「(ポルトガル語)・・・全艦,魚雷,ミサイル撃ちつくしました。もうエネルギー砲しか残っていません」

(画面)顔を向けるベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・艦隊を二手(ふたて)に分けろ。一方は敵艦隊前衛へ。もう一方は後衛だ。交戦は避けろ。敵艦隊のレーダーに対して故意にその艦影を示せ。6番駆逐艦と空母サツマは当艦の脇へ布陣。戦闘機隊は全機サツマへ収艦。整備と補給を急げ」

(画面)下士官敬礼するスタッフ。・・・その場を去る。

(画面)正面を向くベルナルド。
(BGM消える)

(画面が揺れる。回想シーンへ移行)

(画面)回想シーン。惑星カロンを背に隊列を整えている地球艦隊。33隻。戦闘機隊683機。
(ベルナルドの声)(ポルトガル語)・・・ただでさえ戦力が劣っている我が艦隊をさらに二手(ふたて)に分けるというのか・・・?

(画面)回想シーン。見上げている艦長席のベルナルド。

(画面)回想シーン。スクリーンのオサード。
オサード「(ポルトガル語)・・・そうだ。反転をしている艦隊はある意味,進路が定まっていない状態だ。つまり攻撃の態勢をとりにくい状況にあるといっていい。反転している間に艦隊中央に攻撃を受けることはやつらにとってほとんど唯一のウィークポイントなのだ」

(画面)回想シーン。見上げている艦長席のベルナルド。

(画面)回想シーン。スクリーンのオサード。
オサード「(ポルトガル語)・・・混乱したワンマン艦隊がその統制を失うことほど,やっかいなことはない。もともと自分たちで判断したことのない連中が自分たちの独断で事態の打開を模索(もさく)しようとするのだ。当然,気の利いた戦術などとれるはずもない。ほとんどこちらが想像しやすい動きを見せるはずだ」

(画面)回想シーン。見上げている艦長席のベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・進路が定まっていない艦隊は,二手(ふたて)に分かれた我々を追って同じように二手に分かれると・・・?」

(画面)回想シーン。無表情のオサード。

(画面)回想シーン。見上げている艦長席のベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・仲間を囮(おとり)にしろというのか?」

(画面)回想シーン。無表情のオサード。
オサード「(ポルトガル語)・・・囮(おとり)と見殺しとの区別を履き違えるな。コーテクとやり合うのなら,このどちらかを選ばなければならないのだ。それがいやならワープでさっさと母星へ引き上げればいい」

(画面)回想シーン。見上げている艦長席のベルナルド。

(画面)回想シーン。無表情のオサード。
オサード「(ポルトガル語)・・・コーテクの乗る戦艦コタックは艦隊全体を把握するため,常に艦隊中央に布陣している。今回もそうだ。艦隊がお前たちを追って二分されれば,コタックの布陣している艦隊中央部は手薄になる。そこへ生き残っている全ての戦闘機隊を突入させろ。戦艦コタックを判別できるのは私だけだ。私が戦艦コタックへたどり着いたら,お前たちにビーコンサインを送る。私がコーテクを挑発している間に戦闘機隊は撤収。お前はビーコンエリアをロックオンして,艦首波動砲で戦艦コタックを撃て」

(画面)回想シーン。見上げている艦長席のベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・お前はどうなる?」

(画面)回想シーン。ほんのわずかに表情がゆるむオサード。
オサード「(ポルトガル語)・・・私の安全を懸念(けねん)するのか? まったく地球人というのは・・・。私はお前たちとは違う。死ねば敗北だと思っている。動作の遅いお前たちのエネルギー砲など,いくらでも回避できる。いいか。地球人。絶対に躊躇(ちゅうちょ)はするな。どんなことがあっても必ず撃て。このタイミングを逃せば,お前たちに明日はない。忘れるな」

(現実に戻る)

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。艦長席のベルナルド。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(スタッフの声)(ポルトガル語)・・・敵艦隊が二手(ふたて)に分かれていきます!

(画面)ガトランティス第3遊動機動艦隊の全容。・・・艦隊の中央を境(さかい)にそれぞれ逆の方向を向いてしまっている艦隊。ゆっくりとその中央部からお互いに離れていく様子。
(効果音)複数のエンジン音。

(画面)ガトランティス艦隊前衛を引っ張っている地球艦隊。15隻。後方から追ってくる巨大艦隊。ミサイルやビーム砲が通過していく。
(効果音)複数のエンジン音。ミサイル,主砲発射音。多数。

(画面)ガトランティス艦隊後衛を引っ張っている地球艦隊。14隻。やはり後方から追ってくる巨大艦隊。ミサイルやビーム砲が通過していく。ミサイルがそのうちの1隻を直撃。ぐらつく。
(効果音)複数のエンジン音。ミサイル,主砲発射音。多数。

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。艦長席のベルナルド。
(効果音)ブリッジ内機械音。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・戦闘機隊を敵艦隊中央部へ突入させろ! 波動砲エネルギー充填開始!」

(画面)戦闘機コクピットで計器類のチェックをしているオサード。

(画面)顔を上げるオサードのアップ。

(画面)宇宙戦艦メッロの脇を固める駆逐艦1隻と宇宙空母サツマ。・・・その3隻を背に向けて宇宙空母サツマの滑走路を手前へ離陸を開始する96機の戦闘機隊。
(効果音)噴射音。多数。
(BGM)M−55

(画面)宇宙空母サツマ管制塔ブリッジ内。艦長席の副官。
(画面)管制塔から見る離陸していく戦闘機隊の様子。
(画面)艦長席の副官。
(効果音)管制塔ブリッジ内機械音。
(スタッフの声)・・・全機,無事に滑走路を離発しました!
副官「(つぶやく)・・・はるかなるヤマトが加護たらんことを・・・」

(画面)画面にアップになっている地球軍戦闘機隊。アングルの遠近感の影響で後方の3隻の宇宙艦がぼやけていく。
(効果音)複数の噴射音。

(画面)コクピットのオサード。

(画面)戦闘機隊を真横からのアングル。隊列が徐々にまとまっていく様子。
(効果音)複数の噴射音。

(画面)中央から二手に分かれていくガトランティス第3遊動機動艦隊。その中央部へ向けて,吸い込まれるように遠ざかっていく96機の戦闘機。
(効果音)遠ざかっていく複数の噴射音。

(画面)宇宙空間に浮かぶ宇宙戦艦コタック外観。
(効果音)機動音。
(BGM)M−55

(画面)宇宙戦艦コタックブリッジ内。振り向くレーダー士。
(効果音)ブリッジ内機械音。
レーダー士「・・・隊列密度,減少! E方向から小金属反応! 数,96! 地球軍の戦闘機です!」
(画面)舌打ちをするコーテク。
コーテク「・・・まったく。勝手に動き回ってくれる・・・! (副官へ)艦隊の隊列を元に戻させろ! 何をやってるんだ!」

(画面)恐縮している副官。
副官「・・・申し訳ありません。呼びかけているのですが,艦隊規模での移動がスムーズに運びません・・・」

(画面)腕を組んだまま,ため息をつくコーテク。
コーテク「・・・しょせんは,でくの坊の集まりか・・・。(顔を向ける)・・・戦闘配備だ! 艦載機を発進させろ。1番から4番砲塔の照準。対空射撃を準備だ!」

(画面)右腕を上げて,背中を向ける副官。立ち去っていく。

(画面)苦みばしった表情のコーテクのアップ。
コーテク「・・・やれやれ。コタックが直々(じきじき)の迎撃とはね・・・。発展途上国の,しかも弱小艦隊相手に・・・」

(画面)宇宙戦艦コタックから発進してくるデスバデーター戦闘機隊。・・・展開して画面間際を通過していく。4つの主砲を回転させ始める宇宙戦艦コタック。
(効果音)複数の発進音。主砲回転音。

(画面)向かってくる地球軍戦闘機隊。96機。
(効果音)複数の噴射音。

(画面)コクピットのオサード。

(画面)向かってくるデスバデーター戦闘機隊。
(効果音)複数の噴射音。

(画面)向かってくる地球軍戦闘機隊。96機。
(効果音)複数の噴射音。

(画面)コクピットのオサード。
(効果音)噴射音。
オサード「・・・あの戦闘機隊はコタックチームだ。やはりここで,うろうろしていたのか。全ては計算通りだ」

(画面)向かってくる地球軍戦闘機隊。96機。・・・回転するアングル。画面を通過していく戦闘機隊。さらに回転するアングル。・・・はるかからこちらへ向かってくるデスバデーター戦闘機隊に向けて加速していく地球軍戦闘機隊。
(効果音)複数の噴射音。ドップラー効果。

(画面)コクピットのオサード。操縦管を引き上げる。
(効果音)加速噴射音。

(画面)展開する地球軍戦闘機隊。96機。
(効果音)複数の加速噴射音。
(BGM)M−55

(画面)そして交錯する地球軍戦闘機隊とデスバデーター隊。入り乱れる。機銃連射。撃墜される地球軍戦闘機。
(効果音)入り乱れる噴射音。噴射音。機銃発射音。多数。撃墜。

(画面)ガトランティス艦隊前衛を引き付けている地球艦隊。15隻。・・・すぐ後方まで迫ってくるガトランティス艦隊。すり抜けて通過してくる魚雷群。・・・地球艦隊の1隻にミサイルが直撃。かたむく巡洋艦。
(効果音)複数のエンジン音。ミサイル発射音。多数。直撃音。きしむ艦体。

(画面)巡洋艦ブリッジ内。ぶれる画面。衝撃。つかまり立ちしてふんばるスタッフ。
(効果音)衝撃音。きしむ金属音。
スタッフ「・・・両舷被弾! 速力ダウン! ミサイル群,接近!」
(画面)両腕に力をこめている艦長席の日本人戦士。
艦長「・・・回避だ! 面舵・・・」
(ブリッジ内が爆光に包まれる)

(画面)ミサイル群を一身に浴びて爆光を放って真っ二つに裂ける巡洋艦。・・・大爆発。
(効果音)大爆発。

(画面)速力を上げる宇宙戦艦メッロ。宇宙空母サツマ。駆逐艦の正面アングル。
(効果音)エネルギー充填音。

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。艦長席のベルナルド。
(効果音)エネルギー充填音。
(スタッフの声)(ポルトガル語)・・・波動砲,エネルギー充填。90パーセント!

(画面)宇宙戦を演じている地球軍戦闘機隊とデスバデーター隊。交錯する機銃。ミサイル。地球軍の戦闘機にはすでにミサイルは搭載されていない。機銃のみでの応戦。撃墜される地球軍戦闘機。撃墜されるデスバデーター。
(効果音)入り乱れる噴射音。噴射音。機銃発射音。多数。撃墜。

(画面)コクピットのオサード。・・・引かれるアングル。戦闘機の全容。トリッキーな動きでミサイルと機銃をかわす。すばやく転回。
(効果音)噴射音。機銃音。ミサイル弾道音。

(画面)接近してくる5機のデスバデーター。
(効果音)噴射音。複数。
(BGM)M−55

(画面)操縦管を操るオサード。・・・機銃ボタンを押す。

(画面)5機のデスバデーターを下方からのアングル。その間を蛇行して通過していく戦闘機。・・・退場。・・・前衛から次々と火を噴いて爆光を放って爆発していく5機のデスバデーター。
(効果音)機銃音。5つの爆発。連続。

(画面)宇宙戦を繰り広げている地球軍戦闘機隊とデスバデーター隊。・・・それを背にして宙域を離脱していく1機の地球軍戦闘機。
(効果音)遠ざかる機銃音。連鎖。噴射音。

(画面)コクピットで目を細めるオサード。

(画面)宇宙空間ではるかな距離に見えてくる宇宙艦。

(画面)コクピットで目を細めるオサードのアップ。

(画面)近づいてくる宇宙艦をクローズアップ。・・・紛れも無く,それはガトランティス第3遊動機動艦隊旗艦。宇宙戦艦コタックの雄姿。

(画面)コクピットで目を細めるオサードのアップ。
オサード「・・・とらえたぞ。コーテク」

(画面)ガトランティス艦隊,後衛を引き付けている地球艦隊。すでに数は8隻にまで減っている。・・・さらに後方で爆発を起こす空母。残りは7隻となる。
(効果音)爆発。エンジン音。ミサイル発射音。多数。

(画面)宇宙空間を疾走する宇宙戦艦メッロ。宇宙空母サツマ。駆逐艦。
(効果音)複数のエンジン音。エネルギー充填音。
(BGM消える)

(画面)宇宙空母サツマ管制塔ブリッジ内。艦長席の副官。
(効果音)エンジン音。
副官「・・・まだか。まだか。ビーコンは・・・」

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。艦長席のベルナルド。
(効果音)エネルギー充填音。
(スタッフの声)(ポルトガル語)・・・波動砲,エネルギー充填完了!
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・ビーコンはまだか・・・?」

(画面)振り返る砲術士。
砲術士「(ポルトガル語)・・・まだです! 目標,未確定! ターゲット・スコープ,オープンできません!」

(画面)艦長席のベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・もう少し待て。必ずビーコンはくる」

(画面)前へ進み出るスタッフ。
スタッフ「(ポルトガル語)・・・提督。私は不思議に思っているのです。・・・提督はなぜ,それほどまでにあのガトランティス人を信じることができるのですか? 敵方の捕虜だったやつですよ。教えてください。もうこれが最後かも知れませんので」

(画面)目を丸くするベルナルド。帽子をかぶりなおす。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・そうだな。・・・まあ。・・・強いて言えば・・・」

(画面)スタッフ。

(画面)顔を上げる艦長席のベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・やつは私を信じさせようとはしていなかった。・・・ということかな」

(画面)まゆをひそめるスタッフ。
スタッフ「(ポルトガル語)・・・え・・・?」

(画面)笑顔を向けるベルナルド。非常にめずらしいことである。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・こんな戦争ばかりの世の中で,人を信じさせるのは容易なことではない。みんな心に余裕もなく,隙あらば他人を落としいれようとしている連中が多かったのも確かだ。・・・あの宇宙戦艦ヤマトでさえ,かつて万人を信じさせることはできなかった・・・。そんな中で,しかもこんな緊迫した状況の中で,あのガトランティス人は,何と。・・・この私に”信じなくてもいい”と言ったのだよ。これは”取り引き”だと。・・・調子のいい言葉ばかりを使う昨今(さっこん)の地球人たちなんかよりは,よほど信頼が置けるとは思わないかね?」

(画面)宇宙空間を疾走する宇宙戦艦メッロ。宇宙空母サツマ。駆逐艦。
(効果音)複数のエンジン音。エネルギー充填音。

(画面)宇宙戦艦コタック外観。
(効果音)機動音。

(画面)宇宙戦艦コタックブリッジ内。フロアで腕組みをしているコーテク。・・・ふと何かに気づく素振り。
(効果音)ブリッジ内機械音。
コーテク「・・・(顔を上げる)」

(画面)振り返る通信士。
通信士「・・・提督! 強制通信が入っています!」

(画面)振り返るレーダー士。
レーダー士「・・・提督! レーダーに反応! 距離は・・・」

(画面)見上げるコーテクのアップ。

(画面)宇宙戦艦コタックブリッジ内の天井パネル。

(画面)見上げている副官。

(画面)見上げているレーダー士。

(画面)見上げている通信士。

(画面)見上げているコーテク。

(画面)宇宙戦艦コタックブリッジ内の天井パネル。・・・画面スクリーンに真横に電子ラインが走り,バイザーをあげているオサードの姿が映し出される。
(効果音)電子音。

(画面)見上げているコーテク。・・・ふと口元に嘲笑がゆっくりと浮かぶ様子。
コーテク「・・・ほう・・・」

(画面)スクリーンで無表情のオサード。

(画面)遅れて気づき,目を見張る副官。
副官「・・・! き,貴様・・・! オ,オサード・・・! 生きていたのか・・・!」

(画面)スクリーンで無表情のオサード。

(画面)見上げているコーテク。
コーテク「・・・ははは。これは傑作だ。オサード。・・・何だ? その格好は? かつてのエースパイロットも落ちたものだな。156艦隊に左遷された後は地球人の手下か? もう,失うものは何もないというやつか?」

(画面)スクリーンで無表情のオサード。

(画面)見上げているコーテク。
コーテク「・・・なるほど。謎は解けたぞ。今回,あまりにも地球人たちの動きが良すぎたからな。全部,お前の入れ知恵だな。そうだろう? 何だ? 俺に対する恨みか? 見下げ果てたな。オサード。そんな安っぽい感情が,お前にもあったとはな・・・!」

(画面)スクリーンで無表情のオサード。
オサード「問答無用だ。死ね。コーテク」

(画面)笑みを浮かべているコーテク。しかし顔には,ひとすじの汗。

(画面)コクピットのオサード。計器類のボタンを押す。
(効果音)ビーコン。

(画面)宇宙戦艦コタック外観。・・・急激に遠ざかる。たちまち見えなくなる同艦。
(効果音)ビーコン。

(画面)宇宙空間。回転する星空。
(効果音)ビーコン。

(画面)宇宙空間。・・・急速にクローズアップ。後方へ流れる星々。
(効果音)ビーコン。

(画面)クローズアップする宇宙空間。後方へ流れる星々。・・・かなたの点。急速に近づく。あっという間に宇宙戦艦メッロと宇宙空母サツマ。駆逐艦の外観。
(効果音)ビーコン。

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。ヘッドホンを支えて振り向く通信士。
(効果音)ビーコン。
通信士「(ポルトガル語)・・・! きました! ビーコンです! 10時半の方向! 距離,10万7千宇宙キロ先にある金属反応が戦艦コタックです!」

(画面)振り向くレーダー士。
レーダー士「(ポルトガル語)・・・レーダー確認しました!」

(画面)艦長席のベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・艦首照準合わせ! ターゲット・スコープ,オープン!」

(画面)艦首を左方向へ振る宇宙戦艦メッロ。
(効果音)機動音。

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。砲術士の正面。目の前にはターゲット・スコープ。
砲術士「(ポルトガル語)・・・電影クロスゲージ,明度20! 目標! 戦艦コタック!」

(画面)宇宙空間を疾走する宇宙戦艦メッロ。宇宙空母サツマ。駆逐艦。宇宙戦艦メッロの艦首には最後のタキオンの光が集まっている。
(効果音)複数のエンジン音。エネルギー充填音。

(画面)海中に沈んでいる宇宙戦艦アンドロメダ。
(効果音)海中。

(画面)宇宙戦艦アンドロメダブリッジ内。照明も通常に戻っている。艦長席に座っている島。すでに宇宙服の束縛から解放されて提督装になっている。軍帽を左方向へ向ける島。
(効果音)ブリッジ内機械音。
島「・・・機関長。機関部修理は,あとどのくらいかかりそうですか」

(画面)ブリッジ左部コントロールボックスへ戻っている土方機関長の背中。やはり宇宙服ではない。・・・振り返る土方機関長。
(画面)向き直る土方機関長。
土方「(思案)・・・被弾した穴の補修に手間取っている。補助エンジン出力の電力では,やはりメインエンジンよりは溶接効率が落ちてしまうからな。・・・そうだな。あと4時間はかかるだろう・・・。しかもそれで終わりじゃない。それから機関室の水抜きを行って,海水に侵食された機器類のチェックもしなければならないから・・・どう,ひいき目で見積もっても,作業完了まであと24時間は見ないと試験さえできない状況だな・・・」

(画面)海中。宇宙戦艦アンドロメダ艦尾部分。・・・大きく開いた穴の付近で作業している作業員スタッフたち。
(効果音)海中。溶接音。

(画面)宇宙戦艦アンドロメダブリッジ内。うつむいて息を抜く島。
(効果音)ブリッジ内機械音。
島「・・・そうですか・・・。(左へ視線)・・・相原。通信システムの復旧はどんな具合だ?」

(画面)ブリッジ左サイドで顔を向ける相原。やはり当惑の表情。
相原「・・・何とか,受信はできそうです。・・・でも送信システムには,まだ不備があるらしく,こちらから通信を発することができません。原因は究明中ですが,まだしばらくかかりそうです」

(画面)艦長席の島。
島「・・・受信ができるだけでも幸運と見なければならないな。復旧と平行して,冥王星宙域での通信傍受につとめてくれ。何か情報が入ってくるかも知れない」

(画面)相原。
相原「わかりました。(作業に戻る)」

(画面)宇宙戦艦アンドロメダ艦内廊下。赤い十字マークの出入り口ドアのペイント。

(画面)宇宙戦艦アンドロメダ医務室。点滴用パックを並べている白衣姿の森 綾乃。・・・後ろのデスクで片付けている佐渡医師が顔を向ける。
佐渡「・・・大丈夫か。森くん」
綾乃「(振り向く)」
(画面)微笑む綾乃。
綾乃「もう大丈夫です。先生。ご心配かけて申し訳ありませんでした」

(画面)うなずく佐渡医師。ひざに飛び乗る子猫。
佐渡「・・・しかし。あぶないところだったんだぞ。一歩遅れていたらどうなったことか」

(画面)綾乃に近づくアナライザー。
(効果音)アナライザー機械音。
アナライザー「・・・ソーデス。ボク モ トテモ シンパイ シマシタ。モリ サン。アナタ ニ ナニカ アッタラ ボク アタマ マルメナキャ イケナイ カト オモッテマシタ」
綾乃「(笑顔でアナライザーの頭をなでる)・・・ありがとう。あなたのおかげよ。アナライザー。頭,丸めないでよかったわ」

(画面)顔を上げる綾乃。
綾乃「・・・提督が私を助けてくださったのですね」

(画面)ふと視線を下げる佐渡医師。
佐渡「・・・普段から冷静な島さんが,あんなに取り乱した姿は初めて見たよ。・・・どんなことをしてでも君を助けるんだと。絶対に死なせてはいけないと言っていた」

(画面)うつむいている綾乃。

(画面)視線を上げる佐渡医師。
佐渡「・・・だがね。一番最初に森くんの異変に気づいたのは,実は穴井さんなんだよ。みんなといっしょにブリッジにいた穴井さんが,なぜ医務室にいた君のことが分かったのか・・・」

(画面)顔を上げる綾乃。
綾乃「・・・穴井さんは・・・?」

(画面)佐渡医師。
佐渡「収容した異星人たちといっしょに個室に入ってもらっている。異星人のひとりは意識不明だ。生体チェックと治療を施す(ほどこす)にも,医務室がこの有様ではね。応急的に止血処置はしたが,かなりの出血だったようだ。しかし輸血をしようにも地球人の血液では・・・」

(画面)後ろで機器を持ち上げているアナライザー。手前に綾乃。
綾乃「・・・確か,生体的にはガミラス人は地球人とあまり変わらないと・・・? イスカンダル作戦当時の検査データーでは・・・」

(画面)何ともいえない表情をする佐渡医師。
佐渡「じっちゃんのデーターではね。だがね。・・・森くんは今,復帰したからあの異星人を見ていないだろうが・・・実は少し妙なんだ」

(画面)綾乃の表情。

(画面)宇宙戦艦アンドロメダブリッジ内。振り向く太田。
(効果音)ブリッジ内機械音。
太田「・・・レーダーが復旧しました! 天井スクリーンパネルに全画面表示できます!」

(画面)顔を上げる島。

(画面)ブリッジを前方からのアングル。薮を手前に一斉に見上げているブリッジスタッフたち。

(画面)何も映っていないブリッジ内天井パネル。

(画面)操作する太田。

(画面)電子ラインが真横に走って天井パネルに宇宙空間が映し出される。
(効果音)電子音。

(画面)ブリッジを後方からのビュー。天井パネルに映っている宇宙空間。
(南部の声)・・・何も見えないな。・・・地球艦隊はどこだ・・・?

(画面)計器類に向かっている太田。
太田「・・・アンドロメダが沈んでいるほぼ真上の宙域です」

(画面)口をへの字にしている穴井教授。
穴井「・・・もしかしたら,わしらは置いてけぼりをくったかも知れんなあ」

(画面)艦長席の島。
島「探索エリアを移動してみてくれ」

(画面)操作する太田。
太田「わかりました。(さらに操作)」

(画面)天井パネルの宇宙空間が左へ移動していく様子。・・・何も見えない。

(画面)宇宙戦艦アンドロメダ医務室。目を細める綾乃。
綾乃「・・・あの異星人が妙って,どういうことですか?」

(画面)ペンで頭をかく佐渡医師。
佐渡「・・・あの異星人たちの肌の色だよ。確か,じっちゃんのデーターではガミラス人は肌が濃い青色だったと記録されていた。しかし,今ここへ収容された異星人たちの肌は黄色みがかった肌色だ。どうもガミラス人の特徴と食い違っているんだ」

(画面)綾乃。
綾乃「・・・ガミラス人じゃない・・・? じゃ,ガトランティス人?」

(画面)軽く首を振る佐渡医師。
佐渡「分からないな。・・・1年前に地球へ攻め込んできたガトランティス人の肌は薄い緑色だったが・・・」

(画面)あごに指をあてる綾乃。
綾乃「・・・どういうことかしら・・・?」

(画面)デスクに向かう佐渡医師。
佐渡「・・・ま。森くん。とにかくこの医務室を片付けるのが先だ。あの異星人たちには悪いが今のところ他に方法がない・・・」

(画面)あごに指をあてる綾乃。
綾乃「・・・もしかしたら・・・」

(画面)顔を向ける佐渡医師。

(画面)あごに指をあてている綾乃。
綾乃「・・・穴井さんが何か知っているのかも知れないわ。(顔を向ける)・・・先生。私,穴井さんと話をしてみたいんですけど」

(画面)目を丸くする佐渡医師。
佐渡「(首を振る)・・・森くん。それは駄目だね。まだ異星人たちの生体チェックをする設備が復旧していない。それまではあの個室は立ち入り禁止だ。しかも穴井さんは規律違反で島さんからの処分を待っている身の上だからね。他のクルーとの接触は固く禁じられている」

(画面)キャップを取る綾乃。
綾乃「(顔を向ける)・・・先生。あの異星人は死にかけているんでしょう? そんな,のんびりしたことを言っていたら手遅れになりますよ。とにかくどんな訳があろうと,あの異星人たちは私たちの命の恩人なんです。恩を仇で返すようなことをしたら地球人はこの宇宙で,物笑いの種になるわ」

(画面)うろたえる佐渡医師。
佐渡「・・・いや。しかし。もし汚染でもされたら・・・」

(画面)髪をほどく綾乃。
綾乃「穴井さんなら,異星人を助ける方法を何か知っているかも知れない。初めて言葉を交わしたときからそんな気がしてたんです・・・」

(画面)顔色が変わる佐渡医師。
佐渡「・・・森くん。何をするつもりだ・・・?」

(画面)白衣の胸のボタンに手をかける綾乃。
綾乃「・・・きっと何か訳があるのよ。(ボタンを外し始める)・・・」

(画面)白衣の胸のボタンに手をかける綾乃のアップ。
綾乃「(顔を向ける)・・・汚染が心配なら宇宙服を着ます。着替えます。先生。それとも私の行動を最後までご覧になりますか?」

(画面)顔をひきつらせる佐渡医師のアップ。

(画面)あわてて立ち上がる佐渡医師。ひざから飛び降りる子猫。
佐渡「わったった。出て行きます! 出て行きます! (退場)」

(画面)開かれる医務室の出入り口スライドドア。そのそばに立っているアナライザー。
アナライザー「ミマス」
佐渡「(とびこむ)・・・出て行け! (アナライザーを廊下へ蹴り出す)」
(効果音)衝撃音。

(画面)医務室前の廊下。閉められるスライドドア。ドアの前でうなだれる佐渡医師。子猫。かたわらにはバラバラになったアナライザー。
(画面)ため息をつく佐渡医師。
佐渡「・・・余計なことを言ってしまった」
(画面)ふりあおぐ佐渡医師。
佐渡「・・・島さんが言っていたことを思い出したよ。森 雪さんの家系の女性は一度言い出したら引かないんだったな・・・」

(画面)宇宙戦艦アンドロメダブリッジ内。計器類の光があたっている太田の顔。
(効果音)ブリッジ内機械音。
太田「(操作している)・・・! 何だ・・・?」

(画面)艦長席で顔を向ける島。

(画面)振り返る太田。
太田「提督! 多数のエネルギー反応が確認されました! 冥王星南半球上空です! スクリーン投影します!」

(画面)見上げる島。

(画面)天井パネル・・・画像が動いて,ある1点で停止する。そこで徐々にクローズアップされてくる映像。

(画面)見上げている南部。

(画面)口をへの字にしている穴井教授。

(画面)目を細める島。

(画面)天井パネル・・・徐々に拡大されてくる映像。

(画面)天井パネル・・・そして・・・徐々に拡大されてくる映像に現れるガトランティス第3遊動機動艦隊。6隻の地球艦隊に追い討ちをかけている様子が映し出される。
(BGM)M−10

(画面)目を見開く島。

(画面)驚愕の南部。
南部「あ・・・! あれは・・・!」

(画面)穴井教授も驚きを隠せない。
穴井「・・・艦隊じゃ・・・! しかも大艦隊じゃ!」

(画面)色を失っている相原。
相原「・・・地球艦隊が・・・やられている・・・!」

(画面)歯を食いしばっている土方機関長。
土方「くそ! ここで手をこまねいてるだけか・・・! 波動エンジンさえ動いてくれれば!」

(画面)じっと見上げている島。
島「・・・ベルナルド司令・・・」

(画面)天井パネルに映し出されているガトランティス第3遊動機動艦隊と地球艦隊。
(BGM消える)

(画面)ガトランティス第3遊動機動艦隊前衛に追われている地球艦隊6隻。ミサイルや主砲が追い抜くように通り過ぎていく。
(効果音)ミサイル発射音。複数。主砲,魚雷発射音。多数のエンジン音。
(BGM)M−46

(画面)地球艦隊主力戦艦の艦尾に着弾するミサイル。爆発。ぐらつき速力が落ちる主力戦艦。
(効果音)直撃。爆発音。きしむ金属音。

(画面)主力戦艦ブリッジ内。かたむく画面。椅子につかまって転倒を防ぐスタッフ。
(効果音)衝撃音。
スタッフ「(ポルトガル語)・・・機関部,損傷! 速力ダウン!」
(画面)艦長席の戦士。
戦士「(ポルトガル語)・・・ベルナルド司令・・・! 頼みます! 必ず,必ず・・・」
(爆発で白くなる画面)

(画面)大爆発を起こす主力戦艦。残り5隻。
(効果音)爆発音。

(画面)手前へ迫ってくる宇宙戦艦メッロ。宇宙空母サツマ。駆逐艦の3隻。宇宙戦艦メッロの艦首に飽和しているタキオンの光。
(効果音)複数のエンジン音。エネルギー充填音。
(BGM)M−46

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。艦長席のベルナルド。
(効果音)エネルギー充填音。
(スタッフの声)(ポルトガル語)・・・波動砲,発射準備完了! 発射カウントダウン!
ベルナルド「・・・」

(画面)冥王星をバックに宇宙戦艦コタック外観。
(効果音)機動音。

(画面)宇宙戦艦コタックブリッジ外観。ブリッジ正面でホバリングしている地球軍コスモタイガータイプ戦闘機1機。
(効果音)機動音。

(画面)コクピットのオサード。バイザーを上げているその表情に変化はない。

(画面)宇宙戦艦コタックブリッジ内をバードビュー。見上げているブリッジスタッフたち。副官。腕組みをしているコーテク。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(画面)さすがにその顔から笑みが消えているコーテクのアップ。

(画面)コクピットのオサード。
オサード「・・・終わりだ。コーテク。お前が消えれば艦隊は瓦解(がかい)する。有名な舞台俳優を失った後の,レック・アルド・ズォーダーが国民に言い訳する姿が見ものだ」

(画面)再び笑みを浮かべるコーテク。
コーテク「・・・お前に興味があるとは思えないが・・・?」

(画面)無表情のオサード。

(画面)海中に沈んでいる宇宙戦艦アンドロメダ。
(効果音)海中。
(BGM消える)

(画面)宇宙戦艦アンドロメダブリッジ内。振り返る相原。
(効果音)ブリッジ内機械音。
相原「・・・! 戦闘宙域内にて交信波が探知されました! 発信元と発信先は極めて近距離! 微弱です!」

(画面)艦長席の島。
島「・・・傍受レベル,マックス。地球のものか?」

(画面)ヘッドマイクを押さえている相原。再び振り返る。
相原「・・・地球の言語ではありません! 翻訳システムを作動させます!」

(画面)艦長席の島。

(画面)宇宙戦艦コタックブリッジ外観。ブリッジ正面でホバリングしている地球軍コスモタイガータイプ戦闘機1機。
(効果音)機動音。

(画面)コクピットのオサード。
オサード「・・・これはすでに戦争ではない。自慰(じい)のシナリオによって作られたパフォーマンスだ。最後まで本隊を動かさず,事前に舞台造りを整えてから地球へ向けての聖戦のパレードか。国民に示す見え透いた茶番でしかない。お前はあのお坊ちゃんの,地球までの舞台の花道を演出している裏方(うらかた)にまで落ちぶれた。戦争屋としてのプライドをお前は捨てたのだ」

(画面)嘲笑するコーテク。
コーテク「ははは。オサード。天才も地球の犬になって,その目も曇ったと見えるな。見えないのか? これは立派な戦争だ」

(画面)無表情のオサード。
オサード「そのようなことを言っていいのか? 私はお前に逃げ道を与えてやっているのだ。戦争屋が戦争で殺されるのではなく,茶番で死んだとなれば,その方がよほど,お前の面目が保てるはずだ」

(画面)腕組みをしているコーテク。
コーテク「・・・オサード。お前は,ひとつ大きな誤解をしているな。融通のきかない天才ゆえの落とし穴だ」

(画面)無表情のオサード。

(画面)笑みを浮かべるコーテク。
コーテク「・・・お前の目的は何だ? お前は何のために戦っている? 相手が俺だったからか? それとも自分のプライドのためか? 国を裏切ったお前にすでに帰るところはない。地球の戦艦は艦首波動砲でここを狙っているんだろ? それならばお前はなぜ,ここに留まっている? 俺と運命をともにするつもりか? 死を覚悟しているのか? それならお前はとっくに負けを認めているということだ。死は敗北に他ならない。死を覚悟している者の命なんかゴミ同然だ。プライドを捨てているのはお前の方だ」

(画面)無表情のオサード。
オサード「お前が死ねば,目的は達成される」

(画面)笑い声をあげるコーテク。
コーテク「はははは・・・! これは驚いた! 地球人の毒気に骨抜きにされたか,天才! (嘲笑)・・・それではその地球人たちの目的は何だ? お前と同じ目的なのか? どうだ?」

(画面)無表情のオサード。

(画面)嘲笑のコーテク。
コーテク「・・・ふふ。まだ分からないか? 天才?」

(画面)無表情のオサード。

(画面)嘲笑のコーテク。
コーテク「・・・そもそも,なぜ地球人たちがこの宙域にこだわったんだ? 俺たちの本隊を探りに向かった偵察隊の情報を,地球へ中継するためだろうが?」

(画面)無表情のオサード。

(画面)嘲笑のコーテク。
コーテク「・・・なぜコタックが,わざわざこのポイントで停泊していると思ってるんだ?」

(画面)無表情のオサード。

(画面)勝ち誇った笑みを浮かべるコーテク。
コーテク「・・・気づいたようだな。天才。・・・その通りだ。・・・あの地球人たちは,艦首波動砲を撃たない・・・。ふふふふ。・・・お前の負けだ。オサード・・・!」

(画面)無表情のオサード。

(画面)無表情のオサード。
(画面)操縦管を握っているオサードの右手。親指をはじいて機銃発射ボタンを出す。間髪入れずに発射ボタンを押す親指。

(画面)機銃を連射する戦闘機の正面の描写。機首から機銃の羅列(られつ)が連続で発射される。
(効果音)機銃発射音。

(画面)宇宙戦艦コタックブリッジ内。横っ飛びでフロアをすべるコーテク。
(効果音)機銃発射音。

(画面)ブリッジ正面フロントガラスに機銃痕が次々と突き刺さる。ガラスに入っていく蜘蛛の巣状のクラック。
(効果音)機銃発射音。ガラス着弾。連続。

(画面)呆然と立ちすくんでいる副官の表情。
(効果音)機銃発射音。ガラスが割れかかる音。

(画面)内部気圧の圧力に負けて四散するフロントガラス。猛烈な気圧の減少。漆黒の宇宙空間へ吸い出される。
(効果音)機銃発射音。ガラスが割れる音。猛烈な空気の流れ。

(画面)機銃の弾丸で蜂の巣になって,吹っ飛ぶ副官。
(効果音)機銃発射音。猛烈な空気の流れ。

(画面)ガラスを失っているブリッジ正面フロント。・・・上部から素早く下ろされる遮断シャッター。気圧の流れが止まる。非常照明が点灯する宇宙戦艦コタックブリッジ内。
(効果音)警報。

(画面)フロアへ倒れこんでいるコーテクのアップ。非常照明が顔を照らしている。
コーテク「・・・対空射撃,連続だ! 戦闘機隊を戻らせろ! 裏切り者を逃すなよ!」

(画面)宇宙戦艦コタックブリッジ外観。反転する戦闘機。同艦の対空射撃の砲弾が戦闘機を次々とかすめていく。
(効果音)対空放射。連続。戦闘機の加速音。

(画面)操縦管を握っているオサード。
(効果音)加速音。

(画面)画面手前へ殺到してくるデスバデーター戦闘機隊。画面を埋め尽くす。
(効果音)複数の噴射音。

(画面)画面を遠ざかっていくオサードの戦闘機。・・・画面向こう正面から迫ってくるデスバデーター戦闘機隊。・・・上昇するように方向を変えるオサードの戦闘機。数珠繋ぎ(じゅずつなぎ)に戦闘機を追って上昇するデスバデーター戦闘機隊。オサードの戦闘機をかすめていく多数の機銃の弾光。かわして宇宙空間を遠ざかっていくオサードの戦闘機。
(効果音)遠ざかって行く複数の機銃音。噴射音。

(画面)コクピットのオサードを左側面から。顔を向けるオサード。
(効果音)噴射音。

(画面)宇宙空間に漂っている戦闘機の残骸。多数。・・・地球軍戦闘機隊は壊滅している。

(画面)遠ざかっていくオサードの戦闘機。それを追うデスバデーター戦闘機隊。・・・遠ざかっていく。
(効果音)複数の噴射音。機銃音。遠ざかる。

(画面)宇宙空間を航行している宇宙戦艦メッロ。宇宙空母サツマ。駆逐艦。
(効果音)複数のエンジン音。

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。艦長席のベルナルド。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(画面)詰め寄るスタッフ。
スタッフ「(ポルトガル語)・・・司令! 戦闘機隊が全滅してしまいました! 今からでも間に合います! 早く,波動砲の発射許可を!」

(画面)苦渋の表情のベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・あの戦艦の直線上の位置にワープ通信施設があるのだ・・・! 波動砲を撃てば施設が破壊される・・・!」

(画面)必死のスタッフ。
スタッフ「(ポルトガル語)・・・司令! このままでは手遅れになります! 敵を引き付けている戦士たちを見殺しになさるおつもりですか!」

(画面)苦渋の表情のベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・ここで施設を破壊してしまえば,戦って死んでいった戦士たちに顔向けできない! 作戦中止だ! 引き付けている艦隊に撤退命令を・・・!」

(画面)スタッフの表情。
スタッフ「(沈痛)(ポルトガル語)・・・無理です・・・。司令・・・」

(画面)ガトランティス艦隊に追われて被弾し,ぼろぼろになっている3隻の地球の宇宙艦。・・・さらに1隻が撃沈される。・・・もはや速力も落ちてガトランティス艦隊がすぐ背後まで迫っている。・・・さらに1隻が木っ端微塵に砕け散る。
(効果音)爆発音。連続。膨大な発射音。被弾。被弾。

(画面)最後の1隻となった主力戦艦ブリッジ内。赤い非常灯が点滅。艦長席で覚悟の表情の戦士。
(効果音)不調機械音。
艦長「(マイクを手に)・・・艦長だ。みな,よく戦ってくれた。諸君を地球へ帰してやれなかった私の力の無さを許してほしい。しかし単体レベルでは間違いなく諸君はあの敵をはるかに凌駕(りょうが)していた。諸君は私の誇りであり,そして地球連邦軍の誉れ(ほまれ)である。諸君の戦いは未来永劫(えいごう)に語り継がれるであろう。・・・あの,遥かなる我が宇宙戦艦ヤマトのように・・・」

(画面)ミサイルを蜂の巣状に浴びて,大きくかたむく主力戦艦。
(効果音)多数の直撃。悲鳴を上げる艦体。

(画面)海中に沈んでいる宇宙戦艦アンドロメダ。
(効果音)海中。

(画面)宇宙戦艦アンドロメダブリッジ内。艦長席でまゆをひそめている島。
(効果音)ブリッジ内機械音。

(画面)冷や汗を流して見上げている相原。

(画面)同様に見上げている南部。土方機関長。太田。

(画面)苦痛の表情の穴井教授。
土方「・・・ベルナルド司令は,常に人の命を優先していたはずじゃ・・・! なぜ,今になってこの土壇場で・・・!」

(画面)艦長席の島。
(画面)島のアップ。

(画面)回想シーン。17名の生存者を説得しながら,笑顔を振り向かせる古代 進。

(画面)歯を食いしばる島。
島「・・・古代・・・。 お前もそうだったのか・・・? お前も,地球を守るために戦って死んでいった者たちの気持ちを考えたのか・・・?」

(画面)海中に沈んでいる宇宙戦艦アンドロメダ。
(効果音)海中。

(画面)宇宙空間に浮かぶ冥王星。

(画面)宇宙戦艦コタック外観。
(効果音)機動音。

(画面)宇宙戦艦コタックブリッジ内。照明が回復している。腕を組んでいるコーテク。
(効果音)ブリッジブリッジ内機械音。
(画面)前へ進み出るスタッフ。書類を読む。
スタッフ「艦隊前衛と後衛から報告。・・・追撃していた地球艦隊は全艦,撃沈したとのことです」

(画面)顔を向けないコーテク。
コーテク「・・・オサードはどうした?」

(画面)書類から目を離さないスタッフ。
スタッフ「・・・我が戦闘機隊の機銃が数発,機体をかすめて失速。9番惑星の大気圏内へ墜落したとのことです」

(画面)顔を向けるコーテク。
コーテク「残骸や遺体の確認は・・・?」

(画面)顔を上げるスタッフ。
スタッフ「報告にはありません」

(画面)目を細めるコーテク。
コーテク「・・・報告したやつは下位艦隊へ左遷(させん)だな。(レーダー士へ)・・・地球艦隊の残りは?」

(画面)振り返るレーダー士。
レーダー士「・・・宇宙艦レベルが3つです。他の反応はありません。戦闘機も飛んでいません」

(画面)鼻を鳴らすコーテク。
コーテク「・・・全く。第3遊動機動艦隊としては,けして褒められた戦いじゃなかったな! この戦役が終わったら,みっちりお前たちを鍛えなおしてやるからな! (スタッフへ)・・・早く隊列を整えさせろ! まだやつらには戦艦が残っている。俺を撃とうとしたやつだ。艦首波動砲が未発射のままだぞ。これ以上,みっともない姿をさらすなよ! 急げ!」

(画面)隊列を整え始めるガトランティス第3遊動機動艦隊。
(効果音)まとまり始める多数の機動音。

(画面)宇宙戦艦コタック外観。・・・ゆっくりと他の宇宙艦の陰にかくれていく・・・。やがて完全に見えなくなる同艦。
(効果音)増大していく機動音。

(画面)隊列を整え始めるガトランティス第3遊動機動艦隊。
(効果音)まとまり始める多数の機動音。

(画面)太陽系を遠く離れた宇宙空間。

(画面)静寂が支配している漆黒の暗闇・・・最初はまたたく星々と見分けがつかない些細(ささい)な物体・・・。しかしそれは間違いなくその宇宙空間を移動しており,なおかつこちらへ向けて接近している。星ではなく隕石でも彗星でもない。・・・それは自然のものではない。・・・さらに接近。画面に近づくにつれ,その見たままの大きさも拡大していく様子。・・・その形状は流線型であり,それでいて自発的な推進機能は搭載されていない。・・・それは,かつてそれを発射した宇宙艦からの初速をそのままに慣性運動しているだけである。・・・さらに接近。その流線型の金属製カプセルが画面を手前に通過する。・・・回転するアングル。・・・遠ざかる金属カプセル。

(画面)金属カプセルにアングルが固定。わずかにその進路方向に向かって反時計回りに回転している。・・・やがてそれは何かに反応するかのようにその外部面のランプを数個点滅させ始める。・・・もしかしたらその金属カプセルには,はるか太陽系の外で無念の思いを散らせた亡霊の執念が宿っていたのかも知れない。・・・その外部面に小さな穴が4つ開くと,それぞれ細長い金属のアンテナらしきものが突き出してくる。そしてそれがそれぞれ伸びきった後,アンテナの先端にも光が点滅し始める。回転している4本のアンテナ。
(効果音)アンテナが点滅した直後に発せられる電子音。

(画面)宇宙空間に浮かぶ冥王星。
(効果音)電子音。

(画面)宇宙戦艦アンドロメダブリッジ内。ヘッドマイクを押さえる相原。
(効果音)電子音。

(画面)宇宙戦艦コタックブリッジ内。反応している通信士。
(効果音)電子音。

(画面)宇宙空母サツマ管制塔ブリッジ内。通信装置を操作する通信士。
(効果音)電子音。

(画面)はるかかなたの太陽の小さな光へ向けて遠ざかっていく通信カプセル。

(ナレーション)・・・その通信カプセルは,その宙域にいた全ての者たちに分け隔てなく通信波を送り続けて,そして通り過ぎていった。忠実にプログラムをこなして役目を終えたその通信カプセルは太陽の光も届かない闇の中でその機能を永久に沈黙させた。そしてそのまま太陽系の中心に向けて・・・地球方向へ向けて遠ざかっていく・・・。かつて交わした約束を果たすために・・・。

(画面)宇宙戦艦メッロ外観。
(効果音)電子音。

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。振り返る通信士。
(効果音)電子音。
通信士「(ポルトガル語)・・・司令! 通信です! フユツキからです!」

(画面)鋭く反応するベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・きたか・・・! 通信形態は・・・?」

(画面)背中を向ける通信士。
通信士「(ポルトガル語)・・・電信文と,録画映像です! (振り返る)・・・ただ・・・」

(画面)艦長席のベルナルド。

(画面)悲壮感の表情の通信士。
通信士「(ポルトガル語)・・・通信元が移動しています。太陽系の内側へ遠ざかっていきます。推進機能はありません・・・」

(画面)艦長席のベルナルド。
ベルナルド「・・・!」

(画面)静まり返っているブリッジスタッフたち。

(画面)悟るベルナルド。ゆっくりとうつむく。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・そうか。・・・そうか。・・・」

(画面)見つめているブリッジスタッフたち。

(画面)ゆっくりと顔を上げるベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・カジカワ司令。・・・貴方の勇気と,実行力と,・・・そして見事な機転に私は心から感銘する・・・。我々は貴方を信じて待っていてよかった。・・・貴方の犠牲はけして無駄にはしない・・・」

(画面)宇宙空母サツマ管制塔ブリッジ内。必死に感情を抑えている副官。
(効果音)管制塔ブリッジ内機械音。
副官「・・・梶川司令・・・。待っていてください・・・。直(じき)にそちらへ参ります」

(画面)加速し始める宇宙戦艦メッロ。宇宙空母サツマ。駆逐艦。
(効果音)複数のエンジン加速。

(画面)宇宙戦艦コタックブリッジ内。進み出る通信士。
(効果音)ブリッジ内機械音。
通信士「提督! 地球の偵察隊の通信です! 我らの状況がつぶさに記録されています!」

(画面)笑みを浮かべるコーテク。
コーテク「ははは。やるな。面白い。(スタッフへ)全艦,妨害電波レベルAだ! ・・・前衛はあの3隻の行く手を阻め! ワープしようとしたら一気に殲滅だ! 中衛左翼のミサイル艦隊は集中隊形で9番惑星へ照準! ワープ通信施設を破壊しろ! もうあの施設に利用価値はない」

(画面)右手を上げるブリッジスタッフたち。

(画面)コーテクのアップ。
コーテク「・・・ふふ。これで間違いないな。援軍なんて来やしない。太陽系内はからっぽだ。俺たちの本隊は何の障害もなく地球まで行けるってわけだ。・・・これで俺たちの情報がやつらに漏れなければ完璧ということだな。ま,どのみちやつらに通信なんかできっこない。やつらと9番惑星の間には俺たちが陣取っている。9番惑星に近づくことさえできないだろう。かといって,あそこからじゃ妨害電波で通信施設までの送信なんかできやしない。偵察隊の連絡が少し遅かったようだな。地球人。ははは」

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。艦長席のベルナルド。
(効果音)規則正しい電子音。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・ワープ準備! あの艦隊をかわすぞ! 何としてでも冥王星へ行くのだ!」

(画面)さらに加速し始める宇宙戦艦メッロ。宇宙空母サツマ。駆逐艦。
(効果音)複数のエンジン加速。

(画面)前方に輝く冥王星。それを背に立ちはだかるガトランティス第3遊動機動艦隊。131隻。その圧倒的な勢力へ向けて加速していく最後の地球艦隊3隻。
(効果音)複数のエンジン加速音が多数の機動音にかき消される。
(BGM)M−13B

(画面)宇宙戦艦コタックブリッジ内。振り返るレーダー士。
(効果音)ブリッジ内機械音。
レーダー士「・・・地球艦隊周辺に空間のゆがみ! ワープイン現象です!」

(画面)腕を組んでいるコーテク。
コーテク「(笑み)血迷ったか! 地球人! (スタッフへ)・・・前衛部隊主砲照準だ! やつらはワープ準備で迎撃も迂回もできないぞ! これで終わりだ!」

(画面)主砲砲塔を回転させて照準を合わせる第3遊動機動艦隊前衛。
(効果音)金属回転音。機動音。多数。

(画面)加速してくる宇宙戦艦メッロ。宇宙空母サツマ。駆逐艦。
(効果音)複数のエンジン加速。

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。艦長席で毅然(きぜん)と前を見据えているベルナルド。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(BGM)M−13B

(画面)腕を前へ出すコーテク。
コーテク「・・・全艦。主砲,発射!」

(画面)ガトランティス艦隊前衛の宇宙艦から次々と発射される主砲の弾道。その数。無数。
(効果音)多数の発射音。

(画面)加速している宇宙戦艦メッロ。宇宙空母サツマ。駆逐艦。
(効果音)複数のエンジン加速。

(画面)宇宙空間をつんざく無数の主砲の弾道。
(効果音)膨大な弾道音。

(画面)宇宙空間に揺らぎ始める宇宙戦艦メッロと宇宙空母サツマ。・・・しかし傍らの駆逐艦には揺らぎの反応はない。ゆっくりと両艦の前へその雄姿を進み出させ,その両艦をかばうように艦体を横付けに覆い隠す駆逐艦。
(効果音)エンジン音。

(画面)揺らいでいる宇宙戦艦メッロと宇宙空母サツマを後方から。・・・前方のガトランティス第3遊動機動艦隊から発射されている無数の主砲の弾道がまっしぐらにこちらへ迫ってくる。両艦と無数の弾道の間に入り込むように艦体を横付けで慣性航行している駆逐艦。
(効果音)ワープ音開始。エンジン音。迫ってくる弾道音。
(BGM)M−13B

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。艦長席のベルナルド。
(効果音)電子音。

(画面)駆逐艦ブリッジ内。艦長席のアンゴラ戦士。姿勢を正す。
(効果音)ブリッジ内機械音。
艦長「・・・(敬礼)」

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。艦長席のベルナルド。ゆっくりとその右手を上げる。
(効果音)電子音。
ベルナルド「・・・(敬礼)」

(画面)宇宙空母サツマ管制塔ブリッジ内。艦長席で敬礼する副官。
(効果音)電子音。

(画面)ワープ態勢で揺らいでいる宇宙戦艦メッロと宇宙空母サツマの前にその艦体を横付けしている駆逐艦。
(効果音)ワープ音。

(画面)画面へ殺到してくる主砲の弾光。多数。
(効果音)大きくなる弾道音。多数。

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。敬礼しているベルナルド。
(効果音)電子音。

(画面)そして次々と駆逐艦の右舷に着弾する主砲の砲弾。直撃光。大きくかたむく駆逐艦。
(効果音)多数の直撃音。きしむ艦体。

(画面)駆逐艦ブリッジ内。ぶれる画面。左腕で身体を支えながらそれでも敬礼を続けるアンゴラ戦士。点滅する照明。非常灯が点る。
(効果音)多数の直撃。

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。敬礼しているベルナルド。・・・敬礼したまま,徐々にその姿が揺らいでいき,空間へ消えていく。
(効果音)ワープ音。

(画面)主砲の大群にさらされている駆逐艦の後ろで,その姿を宇宙空間へ溶け込ませていく宇宙戦艦メッロと宇宙空母サツマ。・・・やがてその雄姿が完全に宇宙空間へ没していく。
(効果音)ワープ音。複数。

(画面)駆逐艦ブリッジ内。艦長席で敬礼を続けるアンゴラ戦士。・・・爆光で画面が満ち溢れる。
(効果音)爆発音。

(画面)宇宙空間ですさまじい爆発を遂げる駆逐艦。強烈な光が画面を支配。
(効果音)大爆発。

(画面)画面に圧倒的な存在をみせる冥王星。そこへ向かっているガトランティスのミサイル艦隊を後方のアングル。
(効果音)複数のエンジン音。

(画面)冥王星宙域のミサイル艦隊。集中隊形からマルチ隊形へ変化。先頭のミサイル艦。
(効果音)複数のエンジン音。

(画面)ミサイル艦ブリッジ内。艦長席のガトランティス戦士。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(BGM)M−13B
(スタッフの声)・・・9番惑星のワープ通信施設へロックオンしました!
艦長「(笑み)・・・よし! 全艦。ミサイル発射!」

(画面)ミサイル艦の艦体全身から次々と発射されるミサイル群。最後に艦首の2基の大型ミサイルも発艦。2基のジョイントが外され宇宙空間へ弾き飛ばされる。
(効果音)複数の発射音。

(画面)画面いっぱいに広がって右から左へ推進していくミサイル群。
(効果音)複数の噴射音。

(画面)画面に圧倒的な存在をみせる冥王星。・・・そこへ吸い込まれるように向かっていく多数のミサイル群。
(効果音)遠ざかる多数の噴射音。

(画面)画面に圧倒的な存在をみせる冥王星。・・・その画面中央手前に空間のゆがみの反応。
(効果音)空間のゆがみ。

(画面)ミサイル艦ブリッジ内。艦長席のガトランティス戦士。
(効果音)ブリッジ内機械音。

(画面)画面に圧倒的な存在をみせる冥王星。・・・その画面中央手前に実体化してくるふたつの光。
(効果音)空間のゆがみ。

(画面)ミサイル艦ブリッジ内。艦長席のガトランティス戦士。
(効果音)ブリッジ内機械音。
艦長「・・・!?」

(画面)画面に圧倒的な存在をみせる冥王星。・・・その画面中央手前に出現する宇宙戦艦メッロと宇宙空母サツマ。
(効果音)ワープアウト。

(画面)冥王星を背に,立ちはだかる宇宙戦艦メッロを真正面からのアングル。
(効果音)エネルギー充填音。
(BGM)M−13B

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。艦長席のベルナルド。
(効果音)エネルギー充填音。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・させないぞ! ガトランティス人ども!」

(画面)ミサイル艦ブリッジ内。驚愕する艦長席のガトランティス戦士。
(効果音)ブリッジ内機械音。
艦長「・・・! ・・・ち・・・地球の戦艦だ・・・!」

(画面)迫ってくるミサイル群。
(効果音)多数の噴射音。

(画面)タキオンの光が満ち溢れる宇宙戦艦メッロ艦首。
(効果音)エネルギー充填音。
(BGM消える)

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。艦長席のベルナルド。対閃光ゴーグルをかけている。
(効果音)エネルギー充填音。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・拡散波動砲! 発射!」

(画面)まばゆい光を放つ宇宙戦艦メッロ艦首。・・・白くなる画面。さらにまばゆい光が輝く。さらにまばゆく光が輝く。
(効果音)一瞬無音。・・・直後にすさまじい発射轟音。

(画面)画面を支配していた光が膨大な光の帯へ変化して,左から右への一方方向へ押し出される。・・・アングルが回転。宇宙戦艦メッロの右斜め後方まで。・・・向かってくるミサイル群と,油断してその隊列を”ひとつにまとめている”ガトランティスミサイル艦隊。・・・その方向へ,まっしぐらに立ち向かっていくタキオンの光の砲弾。
(効果音)光の轟音。

(画面)宇宙戦艦コタックブリッジ内。不覚のコーテク。
(効果音)ブリッジ内機械音。
コーテク「・・・! (振り返る)・・・!」

(画面)赤い光に満ちている宇宙戦艦メッロブリッジ内。対閃光ゴーグルのベルナルド。
(効果音)轟音。

(画面)宇宙空間で大きく拡散するタキオンの光の帯。
(効果音)光の轟音。拡散音。

(画面)迫ってくるミサイル群。
(効果音)多数の噴射音。

(画面)ミサイル艦ブリッジ内。艦長席から立ち上がるガトランティス戦士。
(効果音)ブリッジ内機械音。
艦長「・・・全艦! 退避・・・!」

(画面)迫ってくるミサイル群。・・・たちまち膨大な光の波に押し流される。蒸発していくミサイル。
(効果音)光の轟音にかき消される多数の噴射音。

(画面)ミサイルを飲み込んだ青い光がさらに拡散して向かってくる。・・・さらに画面までも飲み込んでいく。
(効果音)光の轟音のドップラー効果。

(画面)ミサイル艦ブリッジ内。艦長席から立ち上がっているガトランティス戦士。青い光が照らし出している。
(効果音)。
艦長「(恐怖)・・・わあああ・・・!」

(画面)ガトランティスミサイル艦隊に覆いかぶさるように着弾していくタキオンの砲弾。ミサイル艦13隻をたちまち飲み込んでいく。
(効果音)光の轟音。多数の爆発音。

(画面)ミサイル艦ブリッジ内。艦長席から立ち上がっているガトランティス戦士の恐怖の表情が光に凍りついたまま溶けていく様子。
(効果音)光の轟音。

(画面)隊列を崩す余裕もなく,次々と爆発を連鎖させるガトランティスミサイル艦隊。・・・その破片さえも破壊されていく。
(効果音)光の轟音。

(画面)海中に沈んでいる宇宙戦艦アンドロメダ。
(効果音)海中。

(画面)宇宙戦艦アンドロメダブリッジ内。冷や汗を流している島。少し顔色が悪い。見上げている視線を外す。
(効果音)ブリッジ内機械音。
島「・・・機関長! アンドロメダはまだ動きませんか!」
(画面)沈痛の土方機関長。
土方「駄目だ。提督。まだ装甲の修理が完了していない」
(画面)視線を変える島。
島「相原・・・! 送信は・・・!」
(画面)振り向き,首を振る相原。
相原「・・・送信はできません。提督・・・」

(画面)歯を食いしばる島。

(画面)近づく穴井教授。
穴井「・・・島提督・・・。もう,あきらめるんじゃ。たとえ修理が完了したとしても,肝心のコスモナイトユニットがなければ,アンドロメダはメインの波動エンジンを作動させられん。補助エンジンだけじゃ,主砲はおろかミサイルさえも撃てんぞい。そんな状態で発進できたとしても,なす術も無く敵の的(まと)になるだけじゃ・・・」

(画面)冷や汗が止まらない島。
島「・・・きょ,教授は,このまま黙って見ていろと言うんですか・・・!(ぐらつく)」

(画面)穴井教授。

(画面)身体が震え始める島。
島「・・・な,仲間が・・・目の前で,命がけで・・・戦って・・・いるんですよ・・・!」

(画面)けげんな表情に変わる穴井教授。

(画面)顔面蒼白の島。
島「・・・ベルナルド・・・司令・・・! (顔が下を向く)」

(画面)振り返る薮。

(画面)艦長席に突っ伏す島。両腕が前に投げ出される。

(画面)目を見開く南部。
南部「・・・提督!」

(画面)倒れている島の横へ駆け寄る穴井教授。背中へ手を置く。顔を上げる。
穴井「(南部へ)・・・蔵造を呼ぶんじゃ。急げ。艦内放送は使っちゃいかん」

(画面)返事もせずに慌てて駆け去る南部。

(画面)宇宙戦艦コタック外観。
(効果音)機動音。

(画面)宇宙戦艦コタックブリッジ内。身体を震わせているコーテク。
(効果音)ブリッジ内機械音。
コーテク「・・・くそったれが。虫けらどもめ・・・! 悪あがきもいい加減にしろよ・・・! 貴様たちは負けたんだ! とっとと死んじまえっつうの! (スタッフへ)・・・9番惑星へ向かえ! もはや,やつらにはエネルギーさえ残されていないぞ! こしゃくな戦艦と空母を血祭りにあげろ! 破片さえも残すな!」

(画面)背景に冥王星。すでに攻撃能力を喪失している地球艦隊2隻に向かって動き始めるガトランティス第3遊動機動艦隊。118隻。
(効果音)複数のエンジン音。

(画面)宇宙空間に浮かぶ地球。

(画面)青空をバックに日本自治区地球防衛司令部の全容。

(画面)地球防衛司令部内。司令センターのバードビュー。
(効果音)センター内雑音。
(画面)計器類へ向かっている女性スタッフ。・・・後ろを向く。
スタッフ「・・・司令長官!」

(画面)一番高い場所のステージで顔を向ける藤堂司令長官。

(画面)振り向いている女性スタッフ。
スタッフ「・・・ワープ通信からの受信信号です! 受信回路開きます!」

(画面)目を見開く山南司令。
山南「・・・! 本当にきたのか!」

(画面)前へ出る藤堂司令長官。
藤堂「・・・つないでくれ」

(画面)宇宙空間に浮かぶ冥王星。

(画面)冥王星大気圏内。主砲やミサイルを発射し続けるガトランティス艦隊。
(効果音)機動音。発射音。多数。

(画面)冥王星大気圏内。ワープ通信施設に横付けするように停泊している宇宙戦艦メッロ。その前にはワープ通信施設と宇宙戦艦メッロを守るように,その巨体を横向きに立ちはだかっている宇宙空母サツマ。・・・すでに敵艦隊からの攻撃により,宇宙空母サツマの左舷にはミサイルやエネルギー砲の直撃による火柱が所々から上がっている。宇宙空母サツマもショックカノンでの懸命の応戦。・・・宇宙空母サツマの巨体にさえぎられて,まだ宇宙戦艦メッロとワープ通信施設には今のところ攻撃による直撃は免れ(まぬがれ)ている。・・・直撃を受けて大きくぐらつく宇宙空母サツマ。
(効果音)直撃音。多数。きしむ金属音。発射音。

(画面)宇宙空母サツマ管制塔ブリッジ内。ぐらつく画面。非常灯が点滅している。艦長席で踏ん張っている副官。さらに衝撃。ぶれる画面。
(効果音)直撃音。連続。
(画面)ぐらつく身体を支えて軍帽をかぶりなおす副官。
副官「・・・ショックカノン連続発射だ! 照準にはこだわるな! 地球への通信が終わるまで何としてでもメッロと通信施設を守るんだ!」

(画面)左舷にミサイルを直撃される宇宙空母サツマ。大きくきしむ艦体。
(効果音)直撃音。爆発。

(画面)宇宙空母サツマ管制塔ブリッジ内。衝撃でフロアへ投げ出されるスタッフたち。
(効果音)衝撃音。
(画面)艦長席で踏ん張っている副官。
(スタッフの声)・・・左舷,機関部損傷! 消火不能!
副官「・・・死んでたまるか・・・! 目的を達するまでは殺されても死なないぞ! ベルナルド司令・・・! 慌てないように正確に・・・。(衝撃で身体がぐらつく)・・・でも,少し急いでください・・・!」

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。振り向く通信士。
(効果音)宇宙空母サツマが受けている直撃音。多数。
通信士「(ポルトガル語)・・・ワープ通信,アクティブです! 通信可能です! 妨害電波の影響は微弱!」
(画面)顔を向けるベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・よし。つないでくれ」

(画面)振り返るレーダー士。
レーダー士「(ポルトガル語)・・・司令! 北東4キロ付近の海底に巨大な金属反応があります! 大きさは300メートル前後・・・」

(画面)まゆをひそめるベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・300メートル・・・?」

(画面)考える素振りのベルナルド。・・・そして突然に驚く表情のベルナルド。・・・やがて何かに気づいたように微笑んでみせる。そして。まばたきをするその宇宙戦士の瞳にはいつしか,うっすらと涙が浮かんでいる。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・そうか。・・・そうか。・・・(通信士へ)・・・通信士。ワープ通信と平行して通常通信もアクティブにしてくれ」

(画面)まゆをひそめる通信士。
通信士「(ポルトガル語)・・・え? 司令。もうこの宙域に味方はいませんよ・・・? それに敵にも通信が傍受されてしまいます」

(画面)やさしく微笑むベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・いいから・・・」

(画面)海底に沈んでいる宇宙戦艦アンドロメダ。
(効果音)海中。

(画面)宇宙戦艦アンドロメダブリッジ内。艦長席の島の右腕に血管注射をしている佐渡医師。
佐渡「(聴診器を戻す)・・・医務室で少し休んだ方が・・・」
島「・・・大丈夫だよ。佐渡先生・・・」

(画面)厳しい表情の佐渡医師。
佐渡「・・・島さん! 医師権を発動します! 医務室へ来てください! これは命令ですよ!」
(画面)顔を上げる島。顔色が悪い。
島「・・・命令には従うよ。佐渡先生。・・・ただ。今は待ってくれ。私はあの地球艦隊を見届けなければならない。地球の人々のために命を散らして戦った戦士たちを,この目に焼き付けておきたいんだ。たのむ」

(画面)厳しい表情の佐渡医師。

(画面)ヘッドマイクを押さえて振り返る相原。
相原「・・・戦艦メッロから地球への通信が始まりました! (ここで腑に落ちない表情)・・・あれ? 待てよ。おかしいな。・・・これはワープ通信のはずなのに・・・。何でここで受信できるんだろう・・・?」

(画面)艦長席の島と佐渡医師。・・・島へクローズアップ。

(画面)何かを悟ったような島のアップ。しばらく目を閉じる。
島「(目を開ける)・・・相原。受信音声を艦内全域に流してくれ。天井パネルへ全画面表示・・・」

(画面)振り返っている相原。

(画面)並んで立っている南部と穴井教授。

(画面)振り返っている薮。

(画面)顔を向ける土方機関長。

(画面)おだやかな表情になる島。
島「・・・ベルナルド司令。・・・ありがとう。私は忘れません」

(画面)宇宙空間に浮かぶ地球。

(画面)地球司令部センター内部。後方からの描写。・・・スクリーンにラインが走ってベルナルドの姿が映し出される。
(効果音)電子音。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・日本自治区防衛軍司令部へワープ通信伝達しています。映像と音声の確認」

(画面)見上げている藤堂司令長官と山南司令。
藤堂「・・・良好だ。続けてくれたまえ」

(画面)スクリーンのベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・確認完了。報告します。・・・ガトランティス本隊の位置と,その規模の詳細が判明いたしました・・・」

(画面)冥王星大気圏内。敵艦隊の攻撃を一身に浴びて,ぼろぼろになっている宇宙空母サツマ。・・・さらに主砲が直撃。爆光。
(効果音)爆発。きしむ艦体。

(画面)宇宙空母サツマ管制塔ブリッジ内。ブリッジスタッフたちがフロアへ倒れている。そのほとんどがすでに動かない。衝撃。かたむく艦内。スタッフの屍(しかばね)がフロアをすべっていく。直撃。爆光。

(画面)目を開けたまま血だらけで倒れて絶命している副官。

(画面)宇宙空母サツマへ,さらにミサイルが続けざまに直撃。爆発。・・・ついにその巨体のバランスが崩れる。冥王星の重力の影響を徐々に受け始めて落下を始める同艦。
(効果音)直撃。爆発。エンジン不調。悲鳴をあげる巨艦。

(画面)宇宙空母サツマの描写。・・・それは穴だらけでぼろぼろに崩れている。火を放って噴出す黒い煙でそのかつてのシルエットを思い出すことさえ難しくなっている。・・・そして決定的な爆発が艦内で起こり,画面下部へゆっくりと退場していく・・・。その巨艦に守られていた宇宙戦艦メッロが徐々に露出されていく。
(効果音)爆発。エンジン不調。悲鳴をあげる巨艦。

(画面)冥王星の海へ,その巨体を叩きつける宇宙空母サツマ。おおきな水柱を上げて極寒の海中へ雄姿を徐々に没していく・・・。
(効果音)水の轟音。噴出す気体。蒸気。

(画面)地球司令部センター内部。スクリーンのベルナルド。
(効果音)内部機械音。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・これだけの規模の大艦隊が狭い太陽系内部へ侵入するとなれば,余計な距離を航行すること自体に無理があるとみるべきでしょう。彼らとしては地球への最短距離を取らざるを得ません。となると,その距離,方向,そして太陽を回る地球の公転のタイミングなどで予想できる結論としては,全軍をもって彼らが地球へ進行できる時期は,今からおよそ2週間後。9月上旬頃ではないかと思われます」

(画面)色を失う司令部スタッフたち。
(ざわめき)

(画面)藤堂司令長官と山南司令。
山南「・・・あと,たった2週間か・・・」

(画面)スクリーンのベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・彼らはその時期までに太陽系の外周戦力を一掃しておきたかったのでしょう。彼らは地球へ進行を開始するよりも以前に我々にその本隊の姿を見られることを極力避けたかったに違いありません。・・・本隊の圧倒的な規模を知った我々が降伏してしまうことを懸念(けねん)したのです。政治的理由での戦争では,降伏した相手に攻撃を加えることはできません。・・・つまり,ここで我々には2つの選択肢が用意されたことになります・・・」

(画面)宇宙戦艦アンドロメダブリッジ内。見上げているブリッジスタッフたち。

(画面)地球司令部センター内部。藤堂司令長官のアップ。。
(効果音)内部機械音。
藤堂「・・・戦うか。降伏するか。ということかね? しかし彼らは話し合いの場は持たないということではなかったのかね?」

(画面)スクリーンのベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・それは降伏という選択肢がない場合です。トウドウ司令。これだけの戦力を率いているということは膨大な数の支持者をも率いていることになります。降伏している相手の話も聞かずに攻撃したとあっては,2代目元首の支持率は地に落ちる。降伏という用件ならば,彼らは話を聴かざるを得ません」

(画面)ガトランティス艦隊駆逐艦ブリッジ内。ブリッジスタッフたちにもこの通信は聞こえているようだ。
(効果音)ブリッジ内機械音。通信音声。

(画面)冥王星大気圏内。主砲やミサイルを発射するガトランティス艦隊。
(効果音)複数のエンジン音。ミサイル,主砲発射音。

(画面)ついにその攻撃の直撃を左舷に浴びる宇宙戦艦メッロ。強度は宇宙空母サツマよりも数段落ちる。たちまち大きく揺らぐ同艦。爆光と火柱にさらされて沈黙する第1主砲。残りの主砲から応戦のショックカノンが連射。
(効果音)連続する直撃音。爆発連鎖。主砲発射音。

(画面)スクリーンの中で大きくゆらぐ宇宙戦艦メッロブリッジ内。辛うじてバランスを取るベルナルド。
(効果音)衝撃音。連続。

(画面)息を呑む宇宙戦艦アンドロメダブリッジスタッフたち。

(画面)前へ出る藤堂司令長官。
藤堂「・・・! ベルナルド司令!」

(画面)衝撃の中で,前を見据えるスクリーンのベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・トウドウ司令。添付したデータにはガトランティス本隊の詳細な配備や補給船団の位置関係が記録されています。カジカワ司令の命と引き換えに得たものです。・・・これをどう使うかは後の人たちに任せます。(衝撃)・・・! う! たとえその結論が降伏であっても構いません。それでも我々の戦いは無駄であったとは思いません。だから・・・」

(画面)冥王星大気圏内。攻撃の手を緩めないガトランティス艦隊。
(効果音一時停止)
(BGM)回想

(画面)爆光にまみれる宇宙戦艦メッロ。もはや応戦する気配は沈黙している。
(BGM)回想

(画面)衝撃の中で,前を見据えるスクリーンのベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・地球にとっての一番・・・いい方法を・・・」
(BGM)回想

(画面)見上げている島。
(BGM)回想

(画面)藤堂司令長官。
(BGM)回想
藤堂「・・・よく分かったよ。ベルナルド司令。ご苦労だった」

(画面)衝撃の中で,前を見据えるスクリーンのベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・報告は以上です・・・。ですが,ひとつだけ・・・」
(BGM)回想

(画面)藤堂司令長官。
藤堂「・・・何かね? ベルナルド司令」
(BGM)回想

(画面)スクリーンの中で照れ笑いを浮かべるベルナルド。
(BGM)回想
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・あ,あの・・・。私事ですが・・・」

(画面)藤堂司令長官。
藤堂「・・・言ってみたまえ。ベルナルド司令」
(BGM)回想

(画面)スクリーンの中で思い切って口を開くベルナルド。
(BGM)回想
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・あの。私には娘がいまして・・・」

(画面)見上げている島。
(BGM)回想

(画面)藤堂司令長官。
(BGM)回想

(画面)ひとりの女性の腕の中で眠っている幼い女の子。
(BGM)回想

(画面)スクリーンでぎこちない表情を見せるベルナルド。
(BGM)回想
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・あの。・・・娘に,伝えてもらえませんか? あの。う,宇宙で一番,愛していると・・・」

(画面)ガトランティス艦隊駆逐艦ブリッジ内。一瞬,手が止まるブリッジスタッフ。
(BGM)回想

(画面)砲撃が止むガトランティス艦隊。
(BGM)回想

(画面)見上げている島。
(BGM)回想

(画面)司令センター内。少し,まばたきをする藤堂司令長官。
藤堂「(顔を上げる)・・・それは出来ない。ベルナルド司令。・・・それは貴官が伝えるのだ」
(BGM)回想

(画面)スクリーンのベルナルド。
(BGM)回想

(画面)顔を上げている藤堂司令長官。
藤堂「・・・貴官らしくないな。貴官は自分で言った言葉を忘れたのかね? ・・・この任務が完了したら,ここへ帰ってくると言ったではないか」
(BGM)回想

(画面)宇宙戦艦コタックブリッジ内。激怒するコーテク。
(BGM)回想
コーテク「何やってるんだ! 馬鹿野郎が! 手をゆるめるな! (スタッフへ)・・・妨害電波を切れ! 地球人は何の話をしているんだ!」

(画面)ガトランティス艦隊駆逐艦ブリッジ内。再び手を動かし始めるブリッジスタッフ。
(BGM)回想

(画面)砲撃を開始するガトランティス艦隊。
(BGM)回想

(画面)スクリーンで目を丸くしているベルナルド。
ベルナルド「(苦笑)(ポルトガル語)・・・ははは。そうでした。了解しました。トウドウ司令。それでは今から地球へ帰還します。(敬礼)」
(BGM)回想

(画面)島のアップ。
島「ベルナルド司令!」
(BGM)回想

(画面)満身創痍(まんしんそうい)の宇宙戦艦メッロ。・・・その全艦体へ着弾するミサイル群。エネルギー砲。
(BGM)回想

(画面)ついに耐え切れずに,すさまじい爆光を放って大爆発する宇宙戦艦メッロ。
(BGM)回想

(画面)スクリーンで毅然(きぜん)とした表情で敬礼しているベルナルド。・・・白くなるスクリーンの映像・・・。
(BGM消える)

(画面)彼らが命を賭けて守り続けたワープ通信施設とともに,その雄姿をまばゆい爆光の中で木っ端微塵に散らしていく宇宙戦艦メッロ。
(効果音)大爆発。

(画面)宇宙空間に浮かぶ冥王星に光る爆光。

(画面)司令センター内部。ステージの手すりに両手をかけてうつむき,がっくりと肩を落としている藤堂司令長官。

(画面)艦長席で顔を伏せる島。

(画面)冥王星大気圏内。・・・瓦礫(がれき)の山となり,完全に破壊されている地球軍冥王星基地。

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第12節 カウントダウン! 14万8千光年を隔てる民族の心