第10節 全力射撃! 冥王星二連星会戦

(画面)宇宙戦艦メッロ外観。
(効果音)機動音。

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。艦長席に座ったまま,あごを引いてにらみつけているベルナルド。
(効果音)ブリッジ内機械音。

(画面)作業帽をかぶっているオサード。
オサード「・・・騒がないのか。地球人」

(画面)目を細めるベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・たとえ異星人であっても,人となりは判断できているつもりだ。逃げるつもりならば,わざわざここまで上がってくるようなことはすまい。目的があるのか。私を殺すつもりならば成功だ。今ここで私を撃つならば誰もそれを阻止するのは間に合わない」

(画面)相変わらず無表情のオサード。
オサード「潔い(いさぎよい)な。地球人」

(画面)ベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・しかし解せない。なぜ,お前がここにいる? お前はあの救命艇に乗っていなかったのか?」

(画面)無表情のオサード。
オサード「見ての通りだ」

(画面)目を見開くベルナルド。
ベルナルド「・・・!」
(画面)立ち上がるベルナルド。手前にはオサードの後ろ姿。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・その作業服! お前,まさか!」

(画面)振り返るブリッジスタッフたち。

(画面)無表情のオサード。

(画面)振り返るブリッジスタッフたち。姿勢を起こす面々。

(画面)身体の向きを変えて手前へ歩き出すスタッフ数人。
(ざわめき)

(画面)艦長席で立ち上がっているベルナルド。手前にはオサードの後ろ姿。
ベルナルド「・・・(右手でスタッフたちを制する)」

(画面)動揺しているブリッジスタッフたち。・・・視線を同じくして立ち止まる。
(ざわつき)

(画面)無表情のオサード。その後方にはブリッジスタッフたちが数人,彼の寸前で立ち止まっている。
オサード「・・・心配するな。地球人。この服の持ち主は生きている」

(画面)座らないベルナルド。疑心暗鬼の表情。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・お前たちは3人いた。救命艇に乗ったのも3人だ。しかしお前はここにいる。当艦の整備スタッフの服を着てだ。救命艇はあの艦隊に撃墜されている。お前の言っていることは矛盾している」

(画面)帽子を取るオサード。フロアへ帽子を捨て,ズボンのポケットに両腕を入れる。
オサード「矛盾していない。あの船に乗っていたのは2人だ。あの船に地球人は乗っていない」

(画面)オサードの姿勢を確認して艦長席へ腰かけるベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)嘘をつくな。お前は身代わりに私たちの仲間をあの救命艇に乗せたのか。事と次第によっては私はジュネーブ条約を破棄するぞ。ガトランティス人」

(画面)無表情のオサード。
オサード「もともとそのような約束事は我らには関係ない。ただ私が今言っている言葉は真実だ。あの船には2人しか乗っていなかった」

(画面)ベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)いや。3人乗っていた」

(画面)オサード。
オサード「なぜ,3人だったと分かる?」

(画面)ベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)報告を受けている」

(画面)オサード。
オサード「誰からだ?」

(画面)ベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)当艦のスタッフからだ」

(画面)ブリッジスタッフたちを背に立っているオサード。おもむろに右手をポケットから出して自らの胸付近へもっていく。
(画面)オサードの胸元にある小型の翻訳マイク。・・・その右手が胸元からむしりとられる。
(効果音)衣擦れ。

(画面)けげんな表情のベルナルド。

(画面)ブリッジスタッフたちを背に立っているオサード。・・・右手の翻訳マイクをフロアへ投げ捨てる。
(画面)無表情のオサードのアップ。わずかに顔を上げる。
オサード「・・・(ポルトガル語)・・・”救命艇には確かに2名しか乗船していませんでした。ベルナルド司令。”・・・スタッフの報告だ。これで信じるか。地球人」

(画面)目をみはるベルナルド。

(画面)海中に沈んでいる宇宙戦艦アンドロメダ。
(効果音)海中。

(画面)宇宙戦艦アンドロメダ機関室。宇宙服たちに囲まれている宇宙艇レネイドブーリーをバードビュー。・・・同艇の後部左舷へ回り込んで遊泳していく3人の宇宙服。
(効果音)海中。

(画面)宇宙艇レネイドブーリーの左舷後方の貨物用搬出口エアロックハッチが開く。・・・中に3点ほどの機械ユニットが入っている。
(効果音)ハッチ開閉音。海中。

(画面)3人の宇宙服の描写。左から,島。土方機関長。穴井教授。

(画面)宇宙艇レネイドブーリーの貨物用搬出エアロックハッチにある機械ユニットを取る両手。
(画面)ユニットを吟味している土方機関長。画面左から顔を出す島。
島「・・・どうですか。機関長。当艦のエンジンユニットとの互換性はありそうですか?」
土方「(ユニットから島へ)・・・まだ,何とも言えないな。実際に設置組付けしてみないことには」

(画面)ユニットを持っている穴井教授。
穴井「(ユニットをひっくり返す)・・・こりゃまた。何の金属かの。メイドインガミラスじゃな」

(画面)画面手前には土方機関長の左横顔。正面には島。
島「・・・とにかく至急,試してみてください。もはや宇宙服の酸素残量も少なくなってきました。設置できるか。作動するか。作動しても生命維持装置が復旧するか・・・。全てが分かるまでの酸素はもうぎりぎりの状態です」
土方「・・・(うなずく)・・・了解した。早速取りかかろう」

(画面)宇宙艇レネイドブーリー内部。デスラーの傷口の止血バンドを点検しているフロール。デスラーの意識は相変わらず無いようだ。
(効果音)内部機械音。
(画面)鮮血の跡のデスラーの左わき腹。フロールの両手がバンドを締める様子。

(画面)息をつくフロール。
フロール「・・・急いでくれよ。地球人。こっちも時間がない。・・・しかしそれにしてもこの艦。MSO規格でエンジン造ってんだろうな・・・。(ふと顔を上げる)」

(画面)デスラーの前にかがんでいるフロールの後ろ姿。彼女が見上げている先にはフロントガラスの外。・・・そのフロントガラスの外部から,何かが宇宙艇の内部をのぞきこんでいる様子・・・。
(効果音)内部機械音。

(画面)フロールのアップ。
(効果音)内部機械音。

(画面)アングルが内部からのフロントガラスの描写に変わる。・・・明らかに外部に宇宙服の姿。・・・のぞきこんでいる。
(効果音)内部機械音。

(画面)フロールのアップ。
(効果音)内部機械音。

(画面)宇宙服の沙織のアップ。
(効果音)海中。

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。無表情で見上げているオサード。
(効果音)ブリッジ内機械音。

(画面)ようやく肩の力が抜け始めるベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・目的は何だ? ガトランティス人」

(画面)ズボンのポケットに両腕を入れるオサード。
オサード「(ポルトガル語)・・・戦闘機を1機,進呈していただきたい」

(画面)首をかたむけるベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・拒否したら?」

(画面)オサード。
オサード「(ポルトガル語)お前たちの仲間を見つけ出すのに手間がかかる」

(画面)嘲笑するベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・なるほど。取り引きか。誇り高きガトランティス戦士は営利誘拐まがいも堪能ということか」

(画面)オサード。
オサード「(ポルトガル語)確認させてもらう」

(画面)にらみつけるベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)答えはノーだ。お前の取り引きには応じない」

(画面)オサード。
オサード「(ポルトガル語)・・・そうじゃない。あの時,お前が言っていた言葉だ」

(画面)にらみつけているベルナルド。

(画面)オサード。
オサード「(ポルトガル語)・・・たとえ死んでも,目的を達すればそれは勝利だと言っていたことだ。あれは本当か」

(画面)目を細めるベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・もうひとつ言っておく。地球人の男は自分の発した言葉を疑われるのを一番嫌うものだ」

(画面)見上げている目にわずかに感情の片鱗(へんりん)を見せるオサード。
オサード「(ポルトガル語)・・・生き残る可能性は極めて低い。しかし勝利する可能性はあるかも知れない」

(画面)再びけげんな表情を見せるベルナルド。

(画面)オサード。
オサード「(ポルトガル語)・・・コーテクはしばらくは攻撃をしかけてはこない。地球軍がお前たちに援軍を送ってくるかどうかを見極めようとしている。恐らく太陽系内の地球軍の武装配置を探ろうとしているのだ」

(画面)両手を組むベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・コーテク・・・。あの艦隊の司令官か」

(画面)オサード。
オサード「(ポルトガル語)・・・今,この対峙(たいじ)の時間はコーテクが握っている。なぜなら地球軍が自分たちから動き出さないということが分かっているからだ。よって,コーテクには今のところ自分の思い通りの時間が流れている。コーテクの中の時間が経過すれば,あの艦隊は動き出す。それが戦闘開始ということだ。そうなればお前たちの命も勝利もない」

(画面)身を乗り出すベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・何が言いたい? ガトランティス人」

(画面)オサード。
オサード「(ポルトガル語)・・・お前たちの目的は分かっている。我が本隊の規模を探りたいのだろう。偵察隊からの連絡をここで中継しようとしているのだな。しかしそれはすでにあの艦隊を含む我が軍には周知の事実だ」

(画面)言葉を発さないベルナルド。

(画面)静かに聞き入っているブリッジスタッフたち。

(画面)オサード。
オサード「(ポルトガル語)・・・あの距離では妨害電波も届かない。ゆえにコーテクはお前たちに発信される通信電波を監視している。お前たちの艦隊に偵察隊の通信が届き次第,コーテクは一気にお前たちを殲滅にかかる。地球へ通信する余裕さえも与えないはずだ」

(画面)ポーカーフェイスを装うベルナルド。

(画面)オサード。
オサード「(ポルトガル語)・・・通信を受けなくても敗北。通信を受けても敗北。しかも太陽系に軍備が無いことを暴露(ばくろ)されて,何の情報も得られないままに地球軍は,未知の我が本隊と背水の陣を布かなければならなくなる。それもまた敗北だ。このままでは間違いなく,そうなる」

(画面)のどを鳴らすベルナルド。

(画面)オサード。
オサード「(ポルトガル語)・・・言っておくが,本隊の規模についての情報を私に期待するな。ガトランティスの男も自分の発する言葉に責任を負っている。お前たちはすでに消滅しているかも知れない偵察隊の通信を待つしかないのだ。ただ・・・」

(画面)ベルナルド。

(画面)少し目を細めるオサード。
オサード「(ポルトガル語)・・・相手が,あのコーテクならば万が一でも違った結果が導き(みちびき)出せるかも知れない可能性を示唆(しさ)する」

(画面)前へ進み出るオサード。後ろのブリッジスタッフたちは立ち止まったまま。
オサード「(ポルトガル語)あの第3遊動機動艦隊はコーテクのワンマン艦隊だ。コーテクに率いられている戦士たちは知識はあるが知恵がない。コーテクの指示には忠実に正確に従えるが,自分の考えで行動を起こすことができない。コーテクの指示があるまでどの艦も1隻たりとも動かないだろう。艦隊としてはそれが長所であり,逆につけ入られる短所にもなりうる」

(画面)ベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・おまえは一体・・・?」

(画面)無表情のオサード。
オサード「(ポルトガル語)・・・コーテクは兵士を命あるものとして扱わない。あの捕虜への対応でそれは証明済みだ。よって,第3遊動機動艦隊で命あるものはコーテクだけだ。突破口を見出すにはこのポイントしかない。まず。対峙(たいじ)の時間をこっちが握ることだ。コーテクから時間を取り返す。先に仕掛けるのは向こうではない。こっちだ。・・・どうするのだ。地球人。これでもまだ取り引きに応じないのか。私を信じろとは言わない。しかし取り引きならば,耳を貸すぐらいのことはできるはずだ」

(画面)顔を見合わせるブリッジスタッフたち。

(画面)押し黙っているベルナルド。

(BGM)M−59
(画面)宇宙空間に停泊しているガトランティス第3遊動機動艦隊。178隻。
(効果音)複数の機動音。

(画面)宇宙戦艦コタックブリッジ内。計器へのぞき込む姿勢の背中から振り返るレーダー士。
(効果音)ブリッジ内機械音。
レーダー士「・・・! 提督! 地球艦隊に動きがあります!」

(画面)副官と打ち合わせしていたコーテクが振り返る。

(画面)レーダー士。
レーダー士「・・・地球の駆逐艦が3隻。我が艦隊の正面へ急速接近中!」

(画面)まゆをひそめるコーテク。
コーテク「・・・はあ? 向こうから動いたあ?」

(画面)宇宙空間を疾走する地球艦隊駆逐艦3隻。・・・アングルを追い抜き背を向ける。エンジンは全力噴射。はるか向こうの第3遊動機動艦隊へ向けて,まっしぐらに加速していく。左右に揺れる各艦。バランスはある程度無視されているようだ。
(BGM)M−59
(効果音)複数の噴射音。ドップラー効果。

(画面)宇宙戦艦コタックブリッジ内。上部スクリーンに映し出されている駆逐艦3隻。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(レーダー士の声)・・・減速の様子は見られません! さらに加速してきます!

(画面)首をかしげているコーテク。
コーテク「・・・さて。どうしたもんか。・・・(副官へ)とにかく迎撃態勢を布け。前衛に指示しろ」

(画面)右手を上げる副官。すぐに背を向ける。
(画面)マイクへ向かう副官のアップ。
副官「・・・前衛39から46へ! 砲撃準備!」

(画面)接近してくる地球軍駆逐艦3隻。
(効果音)複数の噴射音。
(BGM)M−59

(画面)迎撃態勢を整える第3遊動機動艦隊前衛。駆逐艦,巡洋艦,戦艦が主砲塔を回転させる。
(効果音)機械音。
(BGM)M−59

(画面)前衛巡洋艦ブリッジ内。艦長席に座っているガトランティス戦士。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(スタッフの声)・・・艦長! 敵駆逐艦接近! 0.05ガトランティスアワー!
艦長「・・・」
(画面)振り返っているレーダー士。
レーダー士「・・・射程距離内です! 艦長!」
(画面)冷や汗を流している艦長席のガトランティス戦士。
艦長「・・・まだだ! コーテク提督から発射命令が出ていない!」

(画面)接近してくる地球軍駆逐艦3隻。
(効果音)複数の噴射音。
(BGM)M−59

(画面)宇宙戦艦メッロ外観。
(効果音)機動音に機械音が断続的に続いている。

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。艦長席のベルナルド。
(効果音)規則正しい電子音。
(レーダー士の声)(ポルトガル語)・・・駆逐艦,敵艦隊へ接触まで,あと150秒!
ベルナルド「(ポルトガル語)全艦。ワープに備えろ! 各自ベルト着用!」
(BGM)M−59

(画面)宇宙空間で隊列を整えている地球艦隊,33隻。
(効果音)規則正しい電子音。

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。艦長席のベルナルド。
(効果音)規則正しい電子音。
(BGM)M−59(音量小さくなる)
(ベルナルドの声)(ポルトガル語)・・・対峙(たいじ)の時間を取り返すとはどういうことだ? ガトランティス人。
(ゆれる画面。回想シーンへ移行)

(画面)回想シーン。作業服のオサード。
オサード「(ポルトガル語)・・・今のような正面からの対峙では単なる消耗戦だ。それではこちらの数では対応しきれない。今のままでは,ただの戦力の引き算だ。相手の思うままのタイミングに翻弄(ほんろう)されることは避けられない。頼みの艦首波動砲ですら,数の優位で包囲されてしまえば,その効果を発揮することは難しくなる。・・・時間を取り返すというのは,こちらの都合で動ける時間を作るということだ。そのためには相手の視界から姿を消すしかない」

(画面)回想シーン。艦長席のベルナルド。

(画面)回想シーン。無表情のオサード。
オサード「(ポルトガル語)・・・この9番惑星には双子星がある。恐らくこの軌道上ならば,まもなくあの第3遊動機動艦隊とこの艦隊との対峙スペースに干渉(かんしょう)してくるはずだ。この双子星の干渉を利用して,この艦隊自体を第3遊動機動艦隊から見て死角となる双子星の裏側へ移動させる。あそこならばあの艦隊のレーダーシステムからも姿を消すことができるし,包囲される危険性もある程度回避することが可能だ」

(画面)回想シーン。ベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・それは無理だ。我々がカロンの裏側へ移動しようとすれば,あの艦隊はカロンの軌道を先回りして結局お互いにカロンの周りを等間隔で回り続けるだけだ。あの艦隊の死角へ回り込むことはできない」

(画面)回想シーン。オサード。
オサード「(ポルトガル語)・・・地球の艦は波動エンジン仕様だろう? 瞬時に双子星の裏側へ移動できるはずだ」

(画面)回想シーン。ベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・小ワープか? それも危険だ。空間の歪みの反応は隠しきれない。ワープ時に,それと気づかれて攻撃を受けたら一気に我々は壊滅だ。ワープ段階では迎撃もできない」

(画面)回想シーン。さらに歩み寄って艦長席のボックスに右ひじを引っ掛けるオサード。
オサード「(ポルトガル語)・・・優等生だ。地球人。そこまで分かっているのならば,話は早い。では証言しよう。・・・ガトランティスの戦士はプライドが高い。しかし。その戦士でさえも地球軍に対して畏怖の念(いふのねん)を抱いている事項が,実はふたつあるのだ」

(画面)回想シーン。指を立てるオサード。
オサード「(ポルトガル語)・・・ガトランティス戦士たちが畏怖しているふたつのもの・・・。ひとつは艦首波動砲。そしてもうひとつは・・・」

(現実に戻る)

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。艦長席のベルナルド。
(効果音)規則正しい電子音。
(BGM)M−59
(レーダー士の声)(ポルトガル語)・・・駆逐艦,敵艦隊へ接触まで,あと100秒!
ベルナルド「・・・(ポルトガル語)・・・空母サツマをはじめ,全空母。艦載機発進待機! ワープ明けに発進する!」

(画面)宇宙戦艦コタック外観。
(効果音)機動音。

(画面)宇宙戦艦コタックブリッジ内。前に出る副官。
(効果音)ブリッジ内機械音。
副官「・・・提督! 駆逐艦停まりません! まさか・・・。あ,あの戦法では・・・!? 早く迎撃命令を・・・!」

(画面)振り返りざま,にらみつけるコーテク。
コーテク「・・・副官。今度,俺に指図したら撃ち殺すからな・・・」

(画面)接近してくる地球軍駆逐艦3隻。
(効果音)複数の噴射音。
(BGM)M−59

(画面)迎撃態勢の第3遊動機動艦隊,前衛。
(効果音)機動音。

(画面)前衛巡洋艦ブリッジ内。顔色が変わるスタッフ。
(効果音)ブリッジ内機械音。
スタッフ「か・・・艦長! 地球の艦に減速の様子は見られません! 体当たりしてくるつもりです! ヤ,ヤマト戦法です!」
(画面)歯を鳴らす艦長。
艦長「・・・ぐ・・・! 地球人は気違いの集まりか! (スタッフへ)・・・コーテク提督の指示はまだか! 通信士! 発射許可を催促しろ! 我々は今,ヤマト戦法に遭遇している・・・!」
(スタッフの声)・・・地球軍駆逐艦,接近! 0.01ガトランティスアワー!
(BGM)M−59

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。艦長席のベルナルド。
(効果音)規則正しい電子音。
(BGM)M−59
(レーダー士の声)(ポルトガル語)・・・駆逐艦,敵艦隊へ接触まで,あと30秒!
ベルナルド「・・・」

(画面)宇宙戦艦メッロ艦載機格納庫。各戦闘機が立体ステージにてスタンバイしている。
(効果音)複数のアイドリング。

(画面)戦闘機のコクピット。ヘルメットのマイク調整をしているオサード。・・・ふと視線を向ける。

(画面)格納庫フロアボックスのシートベルトを締めながら,こちらをにらみつけている作業スタッフの男性。

(画面)”我関せず”で再びコクピットの計器に向かうオサード。

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。ボックスに身体を固定しているスタッフが振り返る。
(効果音)規則正しい電子音。
スタッフ「(ポルトガル語)駆逐艦自爆装置作動10秒前です!」
(画面)艦長席のベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・ワープ開始!」

(画面)前衛巡洋艦ブリッジ内。艦長席のガトランティス戦士。
艦長「・・・! う,撃てえ!」

(画面)主砲を全力発射する第3遊動機動艦隊前衛。光を引きずる砲弾十数条。
(効果音)発射音。重複。

(画面)宇宙空間に溶け込むように揺らいで消えていく地球艦隊,33隻。
(効果音)複数のワープ音。
(BGM)M−59

(画面)宇宙空間で同時に自爆する地球軍駆逐艦,3隻。・・・その爆光へ次々と突き刺さっていく前衛艦隊主砲の砲弾の束。
(効果音)複数の爆発音。多数の弾道音。

(画面)爆発の衝撃波で大きく揺らぐ第3遊動機動艦隊前衛の駆逐艦。巡洋艦。戦艦数隻。まばゆい爆光が画面を支配。
(効果音)すさまじい衝撃音。

(画面)前衛巡洋艦ブリッジ内。かたむく画面。衝撃。艦長席のガトランティス戦士。爆光で目をしかめている。
艦長「・・・! じ・・・自爆したあ・・・!」

(画面)前衛で爆光を輝かせているガトランティス第3遊動機動艦隊。
(効果音)機動音。爆発の余韻(よいん)。

(画面)爆光を浴びている宇宙戦艦コタック外観。
(効果音)機動音。爆発の余韻(よいん)。

(画面)宇宙戦艦コタックブリッジ内。フロアで腕組みして立っているコーテク。爆発の光が照らし出し,徐々におさまっていく。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(画面)唖然としている副官。
(画面)嘲笑しているコーテク。
コーテク「・・・やはり囮(おとり)だったか。どうせあの艦には誰も乗っていなかったんだろう。人が乗っているならばもう少し動きが違っていたはずだからな」
(画面)小さく震えている副官。

(画面)ぞっとする冷たい視線を流してくるコーテク。
コーテク「・・・ヤマト戦法ね・・・。地球人にしてはなかなかいいパフォーマンスだったな。しかし俺としたことがしくじったな。レーダー係に指示をだしておくのを怠ってしまった・・・」

(画面)振り返っているレーダー士。
レーダー士「・・・あ。敵の駆逐艦ですか・・・?」

(画面)眉間(みけん)にしわを寄せるコーテク。
コーテク「・・・全く。何もかも指示してやらなきゃならないのか。・・・地球艦隊の所在だよ。どうせ目を離していたんだろう?」

(画面)あっという表情のレーダー士。

(画面)宇宙空間に見える冥王星の大気圏層。画面右にはクレーターだらけの惑星カロンが軌道上を横切っている。
(BGM消える)

(画面)惑星カロンを別方向からの描写。

(画面)惑星カロンの冥王星側。冥王星光を浴びている惑星カロンの赤道付近。さらにゆっくりとクローズアップ。

(画面)惑星カロン上空で隊列を整えている地球艦隊,33隻。
(効果音)機動音。

(画面)宇宙戦艦メッロ外観。
(効果音)機動音。

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。艦長席のベルナルド。ブリッジ内はオレンジ色の非常照明に変わっている。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(スタッフの声)・・・(ポルトガル語)全艦。確認。ワープ成功しました。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・フユツキからの通信履歴はどうだ? ワープ中に通信がきていたということはないか?」
(画面)振り返る通信士。
通信士「(ポルトガル語)・・・ワープ中の履歴はありませんでした」
(画面)うなずくベルナルド。顔を上げる。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・あのガトランティス人の言う通りだ。これで我らの時間が稼げる。我らは目標を達成するまで生き続けなければならない。そのためだったら相手が悪魔だろうと何だろうと私は信じるぞ。(顔を向ける)艦載機発進! 交代制で惑星カロン各地平線へ散開。敵艦隊監視態勢にはいれ! 第2作戦にはいる!」

(BGM)M−55(ブラックタイガー出撃のテーマ)
(画面)宇宙空母サツマから次々と発進していく戦闘機隊。
(効果音)発進音。複数。

(画面)主力戦艦からも艦載機が発進していく様子。
(効果音)発進音。複数。

(画面)宇宙空間へ散開していく地球軍戦闘機隊。コスモタイガータイプ。
(効果音)散開。

(画面)宇宙戦艦メッロ外観。
(効果音)機動音。

(画面)宇宙戦艦メッロ艦載機格納エリア。・・・開いていく発着口。
(効果音)機械音。

(画面)宇宙戦艦メッロ内部。・・・外の宇宙空間へ発進していく戦闘機。戦闘機。戦闘機。連続。
(効果音)発進音。

(画面)滑走路へコンベアされる1機の戦闘機を外からのアングル。・・・コクピットへクローズアップ。
(画面)コクピットでバイザーを下ろすオサード。
オサード「・・・今のところは全て思う通りだ・・・。しかし。取り引きとはいえ何の根拠もなく,よくもここまで私の提案を実行したものだ。地球人はお人よしなのか。馬鹿なのか。・・・それとも肝が据わっているのか・・・。(操作)・・・ま,どこまで思う通りにいくか。とにかくやってみるとしよう・・・」
(画面)画面を横殴りに加速して滑走路を疾走する戦闘機。回転して追いかけるアングル。・・・宇宙空間のはるかへ飛び去っていく戦闘機。
(効果音)噴射音。ドップラー効果。

(画面)コクピットで親指を立てるひとりのパイロット。

(画面)コクピット内で家族の写真をフロントガラスにはさむパイロット。

(画面)地球艦隊周辺にて隊列を整える第1次戦闘機隊。
(効果音)機動音。噴射音。多数。

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。艦長席のベルナルド。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(BGM)M−55
(通信音声)(ポルトガル語)・・・第4チーム,スタンバイ!
(通信音声)(ポルトガル語)・・・第7チーム,スタンバイ!
(通信音声)(ポルトガル語)・・・第12チーム,スタンバイ!

(画面)コクピットでメットマイクへ叫ぶパイロット。
パイロット「第18チーム。スタンバイ!」

(画面)ある1機の戦闘機。・・・コクピットへクローズアップ。
(画面)コクピットの若いパイロット。
パイロット「(ポルトガル語)・・・第21チーム,スタンバイ!」
(通信音声)(ポルトガル語)・・・了解!
(画面)少し間をおく若いパイロット。
(BGM消える)
パイロット「(ポルトガル語)・・・あ,あの・・・」
(通信音声)(ポルトガル語)・・・何だ?

(画面)若いパイロットのアップ。
パイロット「(ポルトガル語)・・・はい。・・・あ,えっと・・・。一言,言っていいですか・・・?」
(通信音声)(ポルトガル語)・・・何だ! 手短かにせよ!
パイロット「(ポルトガル語)は,はい。えっと・・・」

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。マイクを持ちながらヘッド受信機を押さえているスタッフ。
スタッフ「(ポルトガル語)・・・何だ! 何か異常でも起こったか!」
(効果音)ブリッジ内機械音。

(画面)若いパイロットのアップ。
パイロット「(表情を引き締める)(ポルトガル語)・・・いえ。ただ・・・み,みなさんに・・・。みなさんに,ひとり残らずのみなさんに,・・・”はるかなるヤマトが加護たらんこと”を祈っています! 以上です! みなさん,死なないでください!」
(BGM)M−50

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。マイクを持ちながら目を丸くするスタッフ。
(BGM)M−50

(画面)顔を上げるパイロット。

(画面)後方を見やるパイロット。

(画面)どこかの機関ルームでエンジンチェックをしているスタッフが手を止める。

(画面)医療センターで腰を上げるスタッフ。

(画面)滑走路で案内灯を振っている作業員が一瞬,手が止まる。

(画面)無表情のオサード。

(画面)宇宙空母サツマ管制塔ブリッジ内。外を見つめている副官。
副官「・・・梶川司令・・・」

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。艦長席のベルナルド。
(BGM)M−50
ベルナルド「(うなずく)(ポルトガル語)・・・はるかなるヤマトが加護たらんことを・・・か。・・・シマ提督の言葉だ・・・」

(画面)整列完了している地球艦隊,33隻。・・・散開していく戦闘機隊。
(効果音)機動音。散開音。多数。
(BGM消える)

(画面)海中に沈んでいる宇宙戦艦アンドロメダ。
(効果音)海中。

(画面)水没している宇宙戦艦アンドロメダ機関室内。エンジン部外部遮断パネルを取り外している両腕の描写。・・・取り外されるパネル。パネル内部も水没している様子。
(効果音)海中。

(画面)目を細める土方機関長のアップ。
土方「・・・この星の海水が機器にどんな影響があるか・・・。(作業)・・・しかし,やるしかないか・・・」

(画面)エンジン内部を工具を使って作業する両手。

(画面)機関室内部に停止している宇宙艇レネイドブーリー。
(効果音)海中。

(画面)コクピットに座っているフロール。
(効果音)内部機械音。

(画面)集まっている宇宙服の乗組員たち。その中央には島の宇宙服。
(効果音)海中。

(画面)画面中央には島。放射状に彼の指示を待っている乗組員たち。島の向かって右には穴井教授。
島「・・・(見回す)ここは機関クルーに任せる。ブリッジスタッフはブリッジに戻って計器の点検チェック。(穴井教授へ)・・・教授は機関長に代わってブリッジ内ボックスでの機動チェックをお願いします。(南部へ)・・・副官は技術スタッフといっしょに生命維持装置の復旧に取りかかってくれ」

(画面)下士官敬礼をする乗組員たち。

(画面)少し前へ出てくる沙織。
沙織「・・・提督。あの異星人たちはどうするんですか?」

(画面)顔を向ける島。

(画面)沙織のアップ。

(画面)島と穴井教授のツーショット。
島「・・・ブリッジ内からアナライザーを通して交信。これは穴井測定士にお願いしたい。ここから外へ出てもらって当艦の左舷13番発着ハッチ付近で待機していただきます。電力が復旧次第,ハッチより艦内部へ収容・・・」
穴井「(島へ)・・・島提督。あのハッチは貨物用じゃぞ」
島「「(穴井教授へ)・・・他に充分なスペースで露出している外部ハッチがありません。教授」

(画面)穴井教授。
穴井「・・・貨物用ハッチじゃ生体チェックが出来ん。不用意に異星人を中に収容しては艦内が汚染される危険性があるぞい。しかもあの異星人たちが地球型の環境で健康でい続けることが出来るかどうか・・・」

(画面)さすがに言葉につまる島。

(画面)宇宙艇レネイドブーリーを背にしている沙織。
沙織「私がやります。提督」

(画面)島と穴井教授のツーショット。
穴井「・・・? やるって何をじゃ?」

(画面)沙織。
沙織「・・・生体チェックです。私があの宇宙船に乗り込みます」

(画面)島と穴井教授のツーショット。
穴井「・・・! (目を丸くする)・・・ば,ばか言うもんじゃ・・・!」

(画面)言葉をさえぎるように近づいてくる沙織。
沙織「・・・私が彼らの環境内で異常をきたさなければ,彼らとの環境を共有できる証明になります。私が船内で環境汚染の危険性をチェックします。それに彼らと直接,意思の疎通が図れます」

(画面)やりとりを見ているスタッフたち。

(画面)島と穴井教授のツーショット。
島「・・・残念だが許可できない。乗組員に危険な真似をさせるわけにはいかない」

(画面)黙りこくる沙織。・・・うつむく。

(画面)正面を見据えている島。

(画面)顔を上げる沙織。・・・おもむろに宇宙服の首の部分へ右手をかける。

(画面)目を細める島。
島「・・・! 穴井測定士!」

(画面)沙織の宇宙服の首のジョイント部から猛烈な勢いで吹きだす気泡。気泡の中で表情が険しくなる沙織。そのヘルメット内部へ海水が入り込んでいく様子。
(効果音)気泡の吹きだす音。

(画面)うろたえる穴井教授。
穴井「・・・! (困惑)・・・なんちゅうことを・・・!」

(画面)驚愕しているスタッフたち。

(画面)極寒の海中で宇宙服のヘルメットを脱ぐ沙織。束ねられている長い髪が海中に浮遊する。それでもしっかりとした顔つきで正面を見つめている。

(画面)島のアップ。

(画面)海中で視線を引きずって姿勢を反転させ,後方の宇宙艇レネイドブーリーへ泳いでいく沙織の後ろ姿。
(効果音)海中。

(画面)宇宙艇レネイドブーリー内部。コクピットのフロール。
(効果音)内部機械音。

(画面)宇宙艇レネイドブーリー内部。コクピットのフロール。
(効果音)内部機械音。
フロール「・・・(ふと視線を向ける)・・・あ,あうあ!」

(画面)宇宙艇レネイドブーリー内部から。フロントガラスの描写。・・・外部からヘルメットを脱いでいる沙織がのぞきこんでいる。

(画面)いの字のフロール。
フロール「・・・なんなんだ。あれは。地球人は両生類か・・・?」

(画面)フロントガラスの外で横方向へ指を差す沙織。・・・口からわずかに気泡がもれる。

(画面)驚きから,何かを悟るフロール。
フロール「・・・中に入れろってか。・・・やっぱ息できないんだな。(上を向く)」

(画面)上部計器類のスイッチを入れるフロールの右手。
(効果音)小さな金属音。

(画面)宇宙艇レネイドブーリーの左舷。・・・外倒しに開いていくエアロックハッチ。その中へすべりこんでいく沙織の姿。
(効果音)海中での開閉音。

(画面)島と穴井教授のツーショット。
島「(正面を向いたまま)・・・教授」
穴井「・・・(島へ視線)」
島「・・・他の乗組員たちが見ていました。しめしをつけなければなりません。命令無視の規律違反です。穴井測定士への処遇は艦内機能が回復次第,尋問によって決定します。教授にも尋問に出席していただきます。(穴井教授へ)・・・もちろん。全てが順調に進んで,安全性を確認の上ですが」

(画面)宇宙艇レネイドブーリーの左舷。・・・閉まっていくエアロックハッチ。
(効果音)海中での開閉音。

(画面)宇宙艇レネイドブーリー内部。二重ドアの中央で立っている沙織。急速に海水が放出されていく。・・・水面が顔を下回って空気中にさらされた途端に咳き込む沙織。二重ドアから完全に海水が抜かれて重い宇宙服を支えるように壁に手をつく。さらに咳き込む。
(効果音)海中から海水放出音。空気充填音。咳。

(画面)宇宙艇レネイドブーリー内部。開かれる内部ドア。・・・髪や顔を海水で濡らせている沙織が宇宙服を引きずる足取りで艇内へ入ってくる。震えている全身。
(効果音)ドアの開閉音。足音。内部機械音。

(画面)沙織のアップ。震えている。

(画面)コクピットに背を向けて翻訳機に口を近づけるフロール。
フロール「(ガミラス語)・・・ようこそ。宇宙艇レネイドブーリー号へ。地球人」

(画面)震えている沙織。・・・視線を右下へ向ける。

(画面)後部座席で意識のないデスラー。

(画面)目を細める沙織。

(画面)宇宙空間に停泊しているガトランティス第3遊動機動艦隊。178隻。
(効果音)複数の機動音。

(画面)宇宙戦艦コタックブリッジ内。腕を組んでフロアの中央に立っているコーテク。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(画面)恐縮した様子で立ち上がっているレーダー士。
レーダー士「・・・申し訳ありません。地球艦隊をレーダーで拾うことができません」

(画面)直立している副官がおそるおそる口を開く。
副官「・・・提督。地球艦隊は逃亡したのではないでしょうか・・・?」

(画面)不敵な笑みを向けるコーテク。
コーテク「ははは。やつらは偵察隊の通信波を受信していない。やつらの目的が我々の戦力の探索であることは分かっている。目的を達成せずに逃げ出す臆病者か。それとも目的を達成するために命を投げ出している愚か者か・・・。(スタッフへ)・・・あの9番惑星の双子星の軌道計算はできるか?」

(画面)計器類へ向かっているスタッフ。・・・すぐに後方へ顔を向ける。

(画面)前を見ているコーテクの表情。
(スタッフの声)・・・9番惑星を原点とした双子星の相対座標は,我が艦隊より前方EE70方向。手前右側をW方向へ自転しています。双子星による9番惑星食まで8.25ガトランティスアワー」
コーテク「(笑み)・・・間違いないな。地球艦隊は,あの双子星の後ろに隠れている」

(画面)まゆをひそめる副官。
副官「・・・逃げ出していないと・・・?」

(画面)うれしそうに笑顔をつくるコーテク。
コーテク「少しは楽しませてくれそうだな。考えたもんだ。あそこならば放射探知レーダーの死角に入る。あの星の裏側へ進まない限り,俺たちは地球軍の布陣や位置を探知できない。しかもあの状態ならばお互いの艦隊を先に確認できるのはやつらの方だ。地球艦隊は動かずにして俺たちに先制攻撃をしかけることができる。惑星を背にされてしまっては包囲作戦もスムーズにはいかない」

(画面)慎重に言葉を発する副官。
副官「・・・遠方から回り込むというのは・・・?」

(画面)顔を向けるコーテク。
コーテク「地球軍は布陣を整えて双子星の東西南北の地平線に探索を飛ばしているだろうな。多分戦闘機だ。700の戦闘機が交代で我々を警戒しているはずだ。350機の戦闘機のどれかが俺たちを見つけ次第,自分たちの艦隊へ連絡する。・・・とどのつまり常にやつらは俺たちの動きを事前に察知して死角へ死角へと回りこむことができるということさ」

(画面)考え込む副官。
副官「(顔を上げる)・・・それならば惑星の多方面から地球艦隊を挟み撃ちにする作戦ではいかがですか?」

(画面)外を見るコーテク。
コーテク「数の優位を放棄するつもりか? 惑星の地平線上を,戦力の分断された艦艇数で挑めばやつらの各個撃破の標的になる。しかも惑星上では空間に限りができて包囲するための展開も難しい。最初に接触する俺たちの前衛とやつらとの全軍とでは互角とはいかないにしても,ある程度の交戦条件が近づいてしまう」

(画面)副官。
副官「・・・ワープで一気に近づくというのは・・・?」

(画面)嘲笑するコーテク。
コーテク「・・・空間のゆがみ反応を察知されれば同じことだろう? やつらもワープができるのだ。しかもワープ時だけは艦隊は事故を防ぐために隊列をまとめなきゃならない。・・・ワープ明けに艦首波動砲を浴びる危険性もある」

(画面)コーテクが受け答えをしてくれていることに少し安堵している副官。
副官「・・・地球艦隊を後回しにされてはいかがでしょうか? 地球軍の目的は本星への連絡です。あのワープ通信設備を破壊することを優先なさっては・・・?」

(画面)鼻で笑うコーテク。
コーテク「あの9番惑星に近づくということはやつらに背中を向けるということだぞ。お前が行くのか? あのワープ通信施設は双子星の軌道干渉の障害を防止するためにその軌道上に近い9番惑星北極点に建設されている。9番惑星自体の自転に関わらず,今このタイミングでは,あの施設は双子星の方向を向いているんだ」

(画面)黙ってしまう副官。

(画面)違うスタッフが遠慮気味に手を上げる。

(画面)それに気づくコーテク。

(画面)スタッフが直立する。
スタッフ「・・・あの双子星は32ガトランティスアワー後には9番惑星の後方へ自転してしまいます。そうなればワープ通信施設を使用しなければならない地球艦隊は我々に対して隠れる場所を失い,双子星の利用価値はなくなると思われますが・・・?」

(画面)面白そうなコーテク。
コーテク「一番まともな意見だな。・・・確かに俺たちは待ってさえいれば,数の優位を取り戻すことができる。だがな。そもそものやつらの狙いがそれなのさ。少なくともそれだけの時間をやつらは自分たちのものにできる。その間にやつらは偵察隊の連絡を無事に待つことができるのよ。どうだ? それじゃあまりにも小ざかしいと思わないか? ガトランティス屈指の名門艦隊が発展途上国の戦術に振り回されるんだぞ。今,ガトランティス連邦の本隊は俺たちの戦いに注目している。俺たちに負けず劣らずプライドの高い連中だ。そいつらを喜ばせるような戦い方をしたいのか?」

(画面)スタッフも黙りこくる。

(画面)宇宙を見やるコーテクのアップ。
コーテク「やつらは目的を達成するしないに関係なく,この均衡(きんこう)状態のうちにワープによる戦線離脱も可能だ。散々待ったあげくに逃げられたとあっては,本隊全軍に対して赤っ恥をかくだけだぞ。しかも俺は,大帝閣下に20ガトランティスアワーと期限を切っている。言った言葉には責任とプライドと面子(めんつ)がかかっているんだ。(スタッフたちへ)・・・いいか。ガトランティスの誇りにかけて変更はありえないからな。地球艦隊への攻撃は予定通りに行うぞ。攻撃開始まであと,12ガトランティスアワーだ」

(画面)立ちすくんでいる副官とスタッフ。

(画面)海中に沈んでいる宇宙戦艦アンドロメダ。
(効果音)海中。

(画面)水没している宇宙戦艦アンドロメダ機関室内。エンジン部外部遮断パネルを取り付けている両腕の描写。
(効果音)海中。

(画面)宇宙服の土方機関長。頭部メットの耳の部分へ左手を持っていく。
土方「(左手で操作)・・・ユニットの取り付けを完了した。補助エンジン回路を点検してくれ」

(画面)宇宙戦艦アンドロメダブリッジ内。機関コントロールボックスへ向かっている穴井教授。
穴井「(操作)・・・鬼が出るか,蛇が出るか・・・。どっちに転んだとしても,もうわしらにはここを脱出する酸素も残っとらんし・・・」

(画面)操縦席でコンソールパネルを操作している薮。
薮「・・・操縦回路点検中・・・。クリア。タキオン残量確認・・・。クリア・・・」

(画面)艦長席の島。
島「・・・副官。生命維持装置チェック」

(画面)南部が振り返る。
南部「・・・艦内酸素濃度,8パーセント。・・・気温摂氏,氷点下173度。・・・パネルが電気表示されました。エネルギーによる電圧が復旧しつつありますがまだ具体的な作動は確認されません・・・」

(画面)太田も宇宙服を向ける。
太田「・・・レーダー回路に破損箇所は認められません。こちらも電力が復旧しています。レーダー機動準備中・・・」
(効果音)少しずつ小さな電子音。

(画面)パネルに向かっている相原。
相原「・・・こっちは良くないな。通信回路に不備があるようです。電力作動が感じられません。引き続き検査しています」
(効果音)小さな電子音。

(画面)ブリッジ後方からの全容。非常照明の中で,各部署からカラフルな電子発光が点灯し始めている。
(効果音)複数の電子音。

(画面)海中に沈んでいる宇宙戦艦アンドロメダの左舷のアップ。その脇を航行している宇宙艇レネイドブーリー。
(効果音)海中。噴射音。

(画面)宇宙艇レネイドブーリー内部。意識のないデスラーの横にしゃがみこんでいる沙織。
(画面)沙織のアップ。
(効果音)内部機械音。
(画面)コクピットで操縦管を握っているフロール。翻訳機を左肩に縛り付けている。
フロール「(自らの左肩へ)・・・(ガミラス語)・・・エアロックハッチはあれでいいのか?」

(画面)宇宙戦艦アンドロメダ左舷。フラットだが明らかにハッチと思われる装甲板に宇宙艇レネイドブーリーが接近していく。
(効果音)海中。噴射音。

(画面)宇宙艇レネイドブーリー内部。顔を上げている沙織。
(効果音)内部機械音。
沙織「(ガミラス語)・・・そう。まだ電力が回復していないようだから,ここで待機していて。電力が回復すればハッチは開放するわ」

(画面)宇宙戦艦アンドロメダ左舷。エアロックハッチに接舷する宇宙艇レネイドブーリー。
(効果音)海中。噴射音。金属音。

(画面)宇宙艇レネイドブーリー内部。大きく息をつくフロールの後ろ姿。左側から振り返る。
(効果音)内部機械音。
フロール「(ガミラス語)・・・電力が回復しなかったらどうなる?」

(画面)デスラーの脇にしゃがんでいる沙織。
沙織「(ガミラス語)・・・アンドロメダの乗組員は全員,死ぬことになるわ。そしてこの男もね」

(画面)コクピットから離れ,左肩を正面に向けてフロアにあぐらをかくフロール。手前には沙織の後頭部の描写。顔だけ向けるフロール。
フロール「(目を細める)(ガミラス語)・・・お前はガミラス語を話せる。この男のことも分かるのか」

(画面)意識のないデスラー。

(画面)沙織のアップ。
沙織「(ガミラス語)・・・知らないはずがないわ。この男は地球人類最大の敵よ。この男のせいで何億もの地球人の命が失われてしまった」

(画面)左肩を向けているフロール。
フロール「(ガミラス語)・・・だがこの男は最後の土壇場で地球に加担している」

(画面)見透かすような表情の沙織。
沙織「・・・(ガミラス語)・・・あなた。ガトランティス人でしょう?」

(画面)ぎくりとするフロール。

(画面)デスラーへ目を細める沙織。
沙織「(ガミラス語)・・・敵戦力の弱点を,偶然のドサクサ紛れでチクったぐらいで恩人扱いされるほどこの男の罪は軽くないわ。しかもこの男のおかげでヤマトは地球艦隊と合流できなかった。この男は地球に加担したんじゃないの。加担するんだったら戦地へ遅れているヤマトではなく,地球艦隊に弱点を教えていたはずよ。この男はただ,ヤマトに思いをはせていただけ・・・」

(画面)首を傾げるフロール。
フロール「(ガミラス語)・・・ずいぶんとこの男の気持ちが分かるんだな」

(画面)不敵な笑みの沙織。
沙織「(ガミラス語)・・・この男はね。私の母の仇(かたき)なの」

(画面)ため息をつくフロール。
フロール「(ガミラス語)・・・あうあ。まったく仇(かたき)の多いやつだな。この男は」

(画面)後部座席で相変わらず意識のない「この男」。・・・ガミラス語では「デスラー」の名には,崇拝(すうはい)の形容詞をつけなければならない。どうやらこのふたりはデスラーを崇拝していないようだ。

(画面)宇宙空間に停泊しているガトランティス本隊。
(効果音)膨大な数の機動音。

(画面)宇宙戦艦ヤマト外観。
(効果音)機動音。

(画面)宇宙戦艦ヤマト第1艦橋内。艦長席で頬杖をついているレック。
(効果音)艦橋内機械音。

(画面)直立するゲーニッツ。
ゲーニッツ「・・・大帝閣下。あらゆる方面へ無人探索カプセルを飛ばしておりますが,地球軍の偵察隊は確認できませんでした。どうやらあのイージス艦のみが偵察目的であったと思われます」

(画面)艦長席で笑みを浮かべるレック。
レック「なるほどね。やはり地球軍の台所事情は,相当の火の車のようだ。私の予想がかなり現実味を帯びてきたということだな」

(画面)ゲーニッツ。
ゲーニッツ「・・・第3遊動機動艦隊へ通信なさっては・・・? 偵察隊なき今,もはや通信に気をまわす必要もなくなったと存じます」

(画面)顔を向けるレック。
レック「偵察隊の探索は終了してくれ。ただそれをコーテクへ通信するのはどうかな。その通信を地球艦隊に傍受されてしまえれば地球人たちがあの場所で頑張っている理由が消滅してしまう。すぐに逃げられてしまうぞ。そうなれば太陽系内の軍備の有無を確認できなくなってしまうじゃないか」

(画面)胸に手をあてるゲーニッツ。
ゲーニッツ「・・・大帝閣下。地球人に戦力など残っていません。大帝閣下の予想が的中したのです。この上は全軍をあげて太陽系へ進軍なさってはいかがでしょうか。9番惑星艦隊ごときは障害物にさえなりません。一気に地球へ進行し,亡き先代のご無念をお晴らしくださいませ」

(画面)じろりとにらむレック。
レック「・・・この本隊を見られて地球軍に降伏でもされたら,計画は水泡に帰す。わざわざコーテクに行かせた意味がなくなるだろう。私の予想の判定を,お前なんかにしてもらうつもりはないよ。ゲーニッツ・・・」

(画面)こわばるゲーニッツのアップ。

(画面)宇宙空間に浮かぶ冥王星。

(画面)海中の宇宙艇レネイドブーリー。
(効果音)海中。

(画面)宇宙艇レネイドブーリー内部。驚愕している沙織の表情。
(効果音)内部機械音。
沙織「・・・! (ガミラス語)・・・3万隻ですって!」

(画面)フロアであぐらをかいているフロール。
フロール「(ガミラス語)・・・多分それ以上の艦艇数だ。一気に進行してくればこの太陽系はレック・アルドの艦隊で埋め尽くされる」

(画面)しばし呆然とする沙織。・・・顔を上げる。
沙織「(ガミラス語)・・・すぐ近くまで迫っているのね? もう太陽系に進行しているの?」

(画面)首を傾げるフロール。
フロール「(ガミラス語)・・・さて,どうかな。私はレック・アルドを昔から知っているが,あいつは実戦を戦ったことがないからな」

(画面)沙織。
沙織「(ガミラス語)・・・レック・・・アルド・・・」

(画面)フロール。
フロール「(ガミラス語)・・・今現在のガトランティス連邦の元首だ。レック・アルド・ズォーダー。あいつの父のゾッド・アルド・ズォーダーは,地球時間1恒転前に宇宙戦艦ヤマトに殺されている」

(画面)見つめている沙織。
沙織「(ガミラス語)・・・あなた・・・。あなた・・・何者なの・・・?」

(画面)黙っているフロール。

(画面)見つめている沙織。

(画面)息を大きくついて,あぐらで前のめりになるフロール。
フロール「(顔を上げる)(ガミラス語)・・・私の名は,フロール・レイム・ズォーダー。・・・レック・アルドとは同じ父を持つ」

(画面)しばらく絶句している沙織。

(画面)宇宙戦艦アンドロメダブリッジ内。計器パネルをにらんでいる南部。
(効果音)ブリッジ内電子音。
(画面)パネル画面の表示。1次曲線と2次曲線の交差が徐々に上昇していく様子が映し出されている。
(画面)パネルをにらんでいる南部のアップ。光が照らし始める。ヘルメットのフルバイザーにパネル画面が反射している。その反射は南部の眼鏡にさえも影響をおよぼし始める。
南部「(表情に変化)・・・! ・・・あ,上がってきた・・・! 9パーセント・・・10パーセント・・・」

(画面)振り返る南部。
南部「提督! 生命維持装置が作動し始めました! 酸素濃度が回復していきます! 空調も動いています! 艦内温度上昇中!」

(画面)様々な色の光を点滅させていく計器類の描写。
(効果音)複数の電子音。

(画面)艦長席で安堵の表情を浮かべる島。

(画面)操縦席で天をあおぐ薮。
薮「た・・・助かったあ・・・!」

(画面)握手を交わしている太田と相原。

(画面)抱き合っているアナライザーとソマリア・ギル。
ギル「(英語)・・・いやあ。うれしいな。これでまだ生きられる・・・!」
アナライザー「・・・イヤア。ボク モ ヒトリボッチ ニ ナラナクテ スンダ!」

(画面)機関コントロールボックスの表示が徐々に回復していく様子。
(効果音)電子音。

(画面)機関コントロールボックスでうれしそうにしている穴井教授。
穴井「・・・補助エンジンは何とかアイドリング状態に入ったぞい。艦内の環境が改善するまであと20分もあれば充分じゃ」

(画面)艦長席で,うなずく島。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(ソマリア・ギルの声)・・・ぐぎえ〜!
島「・・・? (右へ振り向く)」

(画面)あお向けに倒れているソマリア・ギル。顔色が真っ青で舌がべろりと垂れている。ヘルメットが外されており,彼の頭付近に転がっている。宇宙服の乗組員があわててソマリア・ギルの顔に酸素吸入ジャバラホースを押し付けている。そばにはアナライザーが冷めた仕草。
南部「おいおい! 何でヘルメットが外れてるんだ!」
薮「・・・もう大丈夫だと勝手に思い込んで,自分でヘルメット脱いじゃったらしいんですよお!」
相原「とにかく,早くヘルメットかぶせろ!」
太田「気絶してるぞ! 人工呼吸だ! 人工呼吸だ!」
穴井「早く,蔵造を呼んでくるんじゃ! こういう時は医者じゃろうが!」
アナライザー「バカ ダ。バカ ダ。スジガネイリ ノ バカ ダ。シネ シネ イッソ シネ」

(画面)海中の宇宙艇レネイドブーリー。
(効果音)海中。

(画面)宇宙艇レネイドブーリー内部。デスラーのそばで立ち上がっている神妙な面持ちの沙織。
(効果音)内部機械音。
沙織「(ガミラス語)・・・今までのことは大体分かったわ。プリンセス。・・・でも問題はこれからよね?」

(画面)フロアにあぐらをかいているフロール。見上げる。
フロール「(ガミラス語)・・・フロールでいいぞ。分かってもらえて,うれしい」

(画面)見下ろしている沙織。
沙織「(ガミラス語)・・・話しは分かったけれど,信じたわけじゃないわ。・・・そのガトランティス艦隊はいつごろ太陽系に攻め込んでくるの?」

(画面)頭をかくフロール。
フロール「(ガミラス語)・・・そうだな。実はあまり分からない。ただ・・・」

(画面)見下ろしている沙織。

(画面)見上げるフロール。
フロール「(ガミラス語)ただ・・・。あの9番惑星に地球艦隊が残っているうちは,レック・アルドは全軍を動かすようなことはしないだろうな」

(画面)まゆをひそめる沙織。
沙織「(ガミラス語)・・・なぜ? だって艦隊は3万隻なんでしょう? 冥王星に残っている地球艦隊なんて,ほんの数十隻程度なのよ。どうしてその程度の艦隊が太陽系進行の障害になるっていうの?」

(画面)腕を組むフロール。
フロール「(ガミラス語)・・・さっきも言ったと思うが,レック・アルドの地球進行はあくまでも政治目的だ。つまり支持率を上げるための国民たちへのデモンストレーションにすぎない。レック・アルドの理想は,味方はひとりの犠牲もなく敵を全滅させることにある」

(画面)呆れ顔(あきれがお)の沙織。
沙織「(ガミラス語)・・・え? だって,戦争をしかけてきたのはガトランティスの方じゃない! 味方が無傷で相手が全滅なんて,そんな都合のいい戦争聞いたことがないわ。たとえ戦力に差があったって必ず双方に死者は出るのよ。それが戦争というものだわ」

(画面)渋い顔のフロール。
フロール「(ガミラス語)・・・もちろん,そうだ。あのレック・アルドもそれくらいの理屈は知っているだろう。しかしあくまでも理屈としてだ。レック・アルドは今まで内勤,内政が専門で実戦を経験したことがない。勝つか負けるかの命のやりとりなどとは無縁の世界で生きてきた世間知らずだ。・・・だから戦争をするにしても間違いなく勝てると実感できるまで戦うようなことはしない。ましてや今回は政権を固めるための宣伝効果を狙っている戦争だ。勝つにしても傷だらけでの勝利では,そもそも国民に対して意味がない」

(画面)呆れ顔(あきれがお)の沙織。
沙織「(ガミラス語)・・・なんて理由なの。私たちの地球を攻める理由が,そんなにくだらないことだったなんて・・・」

(画面)さらに表情が渋くなるフロール。
フロール「(ガミラス語)・・・レック・アルドは1隻の敵を倒すにしても艦隊を使うだろう。そうでなければ相手の意表を突く奇襲作戦か。あのイミテーションの戦艦がいい例だ。又は,捨石(すていし)として,死んでも国内から批判される危険の少ない低俗の戦士たちの下位艦隊を使って,相手が弱ったときに最強の精鋭艦隊をぶつけていく。・・・まったく同じ父を持つ者としては涙が出るほどせこい戦術だ。・・・我が父は最低の男ではあったが,戦術の天才だった。レック・アルドは悲しいかな,父の最低の部分しか受け継いでいない」

(画面)見つめている沙織。

(画面)指を立てるフロール。
フロール「(ガミラス語)・・・あの地球艦隊がなぜあそこで粘っているかは知らないが,私だったらまずあの宙域から姿を消すように指示をかけるな。レック・アルドに対して,あの艦隊を消息不明にするのだ。それだけでガトランティス本隊は太陽系進行がさらに遅れる。レック・アルドは予定外の敵の攻撃に柔軟(じゅうなん)な対応ができない。敵は常に自分の目の前に置きたい論理なのだ」

(画面)見つめている沙織。
(効果音)甲高い(かんだかい)電子音。
沙織「・・・(遠くを見るまなざし)」

(画面)海中。宇宙戦艦アンドロメダ左舷発着ハッチ。・・・徐々にその外扉が開いていく。
(効果音)海中での開閉音。

(画面)宇宙艇レネイドブーリー内部。顔を向ける沙織。
(効果音)内部機械音。
沙織「(ガミラス語)・・・アンドロメダの電力が復旧したわ。少なくとも貴女は私たちの命の恩人ということね。貴女の目的がなんであれ・・・」

(画面)立ち上がるフロール。コクピットへ歩を進める。・・・コクピットに腰を下ろす。
フロール「(顔を向ける)(ガミラス語)・・・信じてくれるのかな。サオリ」

(画面)微笑む沙織。
沙織「(ガミラス語)・・・その質問には後で答えるわ。・・・ようこそ。宇宙戦艦アンドロメダへ」

(画面)宇宙空間に停泊しているガトランティス第3遊動機動艦隊。178隻。
(効果音)複数の機動音。

(画面)宇宙戦艦コタックブリッジ内。フロアで腕組みをしているコーテクを左斜めからの描写。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(スタッフの声)・・・予定の12ガトランティスアワーが経過しました。
コーテク「・・・(笑み)・・・よし。(腕をほどく)・・・全艦,ワープ! (腕を振り上げる)・・・進撃を開始しろ!」

(BGM)M−46
(画面)宇宙空間にて,その雄姿を揺らめかせる第3遊動機動艦隊。
(効果音)空間のゆがみ。

(画面)惑星カロン宙域。待機している戦闘機。
(効果音)噴射音。
(BGM)M−46

(画面)コクピットのパイロット。目を見開く。
パイロット「(ヘッドマイクへ)(ポルトガル語)・・・敵艦隊にワープ反応! 全艦,警戒されたし!」

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。艦長席のベルナルド。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(BGM)M−46
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・敵艦隊は小ワープだ! ワープアウトポイント計測! 進路反転180度! 惑星カロンを背に向けよ! 戦闘機,全機発進! 砲雷撃戦(ほうらいげきせん)用意! 波動砲エネルギー充填!」

(画面)惑星カロンを背に隊列を整えていく地球艦隊。33隻。
(効果音)複数のエンジン音。
(BGM)M−46

(画面)宇宙空間に消えていく第3遊動機動艦隊。178隻。
(効果音)ワープ音。複数。

(画面)戦闘機コクピットのオサード。
オサード「・・・来るな・・・。どこだ。どこに出てくる。・・・コーテク」

(画面)正面には冥王星。画面下部には惑星カロンの地平線。冥王星方面へ艦首を向けて隊列を完了させる地球艦隊。33隻。戦闘機隊。683機。
(効果音)複数のエンジン音。
(BGM)M−46

(画面)回転するアングル。引かれていく。・・・画面右端に惑星カロン。左端に冥王星。・・・さらに回転するアングル。画面が冥王星へ接近。さらに回転するアングル。画面中央に大きく冥王星。かなたの惑星カロンの姿がゆっくりと冥王星の大気圏層の影に没していく。・・・そして惑星カロンが冥王星の影にすっかり隠れる。画面には冥王星のみ。・・・。・・・冥王星宙域の宇宙空間にぼんやりと空間のゆがみ。ひとつやふたつではない。それは178個のワープアウト現象。
(効果音)複数のワープ音。
(BGM)M−46

(画面)宇宙空間に姿を現すガトランティス第3遊動機動艦隊。178隻の艦隊が冥王星光に照らし出される。
(効果音)ワープ音から複数の機動音へ。

(画面)第3遊動機動艦隊を後方から。正面には大きく冥王星の姿が間近に圧倒的な存在。惑星カロンの姿は見えない。
(効果音)複数の機動音。

(画面)宇宙戦艦コタックブリッジ内。フロアで腕組みをしているコーテク。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(スタッフの声)・・・ワープ完了。9番惑星・・・正面N方向。双子星・・・同方向。星食状態。・・・地球艦隊の位置は未確認。
コーテク「(笑み)・・・それはやつらも同じことさ」

(画面)宇宙空間で臨戦態勢の地球艦隊。33隻。戦闘機隊。683機。
(効果音)複数の機動音。

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。艦長席のベルナルド。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(スタッフの声)・・・(ポルトガル語)・・・敵艦隊,捕捉できません!
(BGM)M−46

(画面)移動を始めるガトランティス第3遊動機動艦隊。画面手前へ艦首を転換。
(効果音)複数のエンジン音。

(画面)宇宙戦艦コタックブリッジ内。腕を前へ出すコーテク。
(効果音)ブリッジ内機械音。
コーテク「全艦。デスバデーター,パラノイア,第一陣発進。パラノイア隊は前衛へ」

(画面)冥王星大気圏層をかすめるように前進する第3遊動機動艦隊。・・・発進していくデスバデーター隊。パラノイア隊。
(効果音)複数のエンジン音。戦闘機発進音。
(BGM)M−46

(画面)惑星カロンを背にして臨戦態勢の地球艦隊。33隻。
(効果音)複数の機動音。

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。振り返る通信士。
(効果音)ブリッジ内機械音。
通信士「(ポルトガル語)・・・提督。戦闘機隊のガトランティス人から通信が入っています。いかがなさいますか」
(画面)顔を向けるベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・通信を全艦通信回路へ開放してくれ」

(画面)天井パネルへ映し出されるオサード。
(効果音)電子音。

(画面)見上げているベルナルド。

(画面)スクリーンのオサード。
オサード「(ポルトガル語)コーテクは9番惑星の真裏(まうら)へワープアウトした。こちらの先制をかわすには確かにそのポイントしかない」

(画面)見上げているベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)向かってくるのか?」

(画面)スクリーンのオサード。
オサード「(ポルトガル語)そうだ。コーテクは動き始めたら躊躇(ちゅうちょ)はしない。あの9番惑星のいずれかの影から姿を現す」

(画面)見上げているベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・迎え撃つしかないだろう」

(画面)スクリーンのオサード。
オサード「(ポルトガル語)駄目だ。それでは消耗戦になる。コーテクの術中にはまる。戦闘機隊を収容しろ。ワープ準備だ」

(画面)まゆをしかめるベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・我々はここを離れるわけにはいかない。ワープ通信施設が丸裸になる」

(画面)スクリーンのオサード。
オサード「(ポルトガル語)第3遊動機動艦隊のレーダ探知範囲に入れば手遅れになる。やつらは,お前たちが施設にこだわってこの場を動かないと思い込んでいる。それならば,いかにコーテクとはいえ通信施設破壊を悟るには若干(じゃっかん)のタイムラグが出る。今のやつの目的は,お前たちなのだ」

(画面)冥王星をかすめるように前進している第3遊動機動艦隊。178隻。
(効果音)複数のエンジン音。
(BGM)M−46

(画面)冥王星をバックに航行している宇宙戦艦コタック。
(効果音)エンジン音。

(画面)宇宙戦艦コタックブリッジ内。フロアで腕を組んでいるコーテク。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(スタッフの声)・・・まもなくレーダー探知が双子星宙域を捉えます。
コーテク「・・・全艦,微速前進。拡翼隊形。ゆっくりとだ。艦首波動砲警戒」

(画面)冥王星をかすめるように前進している第3遊動機動艦隊。178隻。ゆっくりと宇宙艦同士の間隔が広がっていく。
(効果音)複数のエンジン音。
(BGM)M−46

(画面)やや左寄りの眼下に冥王星大気圏層を見下ろすアングル。ゆっくりと前進していく視界。・・・そして冥王星大気層からゆっくりと姿を昇らせてくる惑星カロン。昇る。昇る。さらに昇る。
(効果音)複数のエンジン音。

(画面)宇宙戦艦コタックブリッジ内。コーテクのアップ。
(効果音)ブリッジ内機械音。

(画面)冥王星大気圏層を見下ろすアングル。前進。さらに前進・・・。やがて,はるか前方に惑星カロンが完全な姿を現してくる。
(効果音)複数のエンジン音。
(BGM)M−46

(画面)宇宙戦艦コタックブリッジ内。計器に向かっているレーダー士。明らかに表情に変化が見える。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(画面)振り返るレーダー士。
レーダー士「・・・! 提督! い,いません! 双子星周辺宙域に地球艦隊の姿が見えません!」
(画面)顔を向けるコーテク。

(画面)はるか前方に惑星カロン。左眼下には冥王星の大気圏層。画面中央には第3遊動機動艦隊を後方からの全容。第3遊動機動艦隊は前進しており,冥王星は相対的に後方へゆっくりと移動している。・・・そしてその第3遊動機動艦隊,178隻の背後に・・・。つまりその画面手前に空間のゆらぎ。ワープアウトの現象。・・・徐々にその姿を現してくる33個の光。

(画面)宇宙戦艦コタックブリッジ内。驚愕するレーダー士のアップ。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(画面)再び振り返るレーダー士。
レーダー士「・・・て,提督! 後方に艦隊反応! 距離,0.02ガトランティスアワー!」

(画面)目を見張る副官。
副官「な! 何だと・・・!」

(画面)振り返るコーテク。

(画面)隊列を整えている33隻の地球艦隊を真正面から。主力戦艦2隻が前衛。
(効果音)複数のエンジン音。エネルギー充填音。

(画面)宇宙戦艦メッロ外観。
(効果音)エンジン音。
(BGM)M−46

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。艦長席のベルナルド。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(スタッフの声)(ポルトガル語)・・・敵艦隊捕捉! 11時45分の方向! 距離,5万宇宙キロ!
ベルナルド「(ポルトガル語)戦闘機,全機発進! 全艦,艦隊戦隊形をとれ! 波動砲発射直後に砲撃を開始せよ!」

(画面)地球艦隊から次々と発進していく戦闘機隊。
(効果音)発進音。多数。
(BGM)M−59

(画面)コクピットのオサード。
オサード「・・・コーテク。お前は動くやつだ。ならば,この宇宙でお前が確実にいない場所は先ほどまでお前がいた場所だ。しかもそこは,必ずお前の背後になる。先制の貴公子も平和ボケで勘が鈍ったか」

(画面)波動砲口にタキオンの光の粒子を集めている地球艦隊前衛の主力戦艦2隻。装甲には日の丸のペイント。
(効果音)エネルギー充填音。
(BGM)M−59

(画面)主力戦艦ブリッジ内。ガンレバーを握っている日本人戦士。
(効果音)エネルギー充填音。
戦士「・・・ターゲットスコープ,オープン! 電影クロスゲージ,明度,20!」

(画面)宇宙戦艦コタックブリッジ内。腕を組んでいるコーテク。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(スタッフの声)・・・後方の艦隊よりエネルギー反応! タキオンです!

(画面)顔色が変わる副官。
副官「・・・か,艦首波動砲・・・!」

(画面)主力戦艦の艦首の描写。2門の波動砲口に飽和するタキオンの光。
(効果音)エネルギー充填音。
(BGM)M−59

(画面)宇宙戦艦コタックブリッジ内。腕を組んでいるコーテク。
(効果音)ブリッジ内機械音。
コーテク「進路反転は後回しにしろ。展開するのが先だ。艦首波動砲の効果エリアからの離脱を急げ」

(画面)主力戦艦ブリッジ内。ガンレバーの戦士を正面から。手前にはターゲットスコープ。
(効果音)エネルギー充填音。
戦士「・・・目標! 敵艦隊,後衛! 総員,対ショック,対閃光防御!」

(画面)対閃光ゴーグルをかける主力戦艦艦長。

(画面)対閃光ゴーグルをかける戦士。

(画面)対閃光ゴーグルをかける各スタッフたち。

(画面)コクピットのパイロット。メットの耳部分を操作。・・・バイザーが黒く変色する。

(画面)同じくバイザーを対閃光モードにするオサード。

(画面)対閃光ゴーグルをかける宇宙空母サツマの副官。
副官「・・・梶川司令・・・!」

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。対閃光ゴーグルをかけるベルナルド。

(画面)主力戦艦の艦首の描写。2門の波動砲口に飽和するタキオンの光。・・・まばゆく光る艦首。
(効果音)エネルギー充填音。
(BGM)M−59

(画面)後ろ向きのまま展開していくガトランティス第3遊動機動艦隊。178隻。

(画面)主力戦艦ブリッジ内。戦士のアップ。
戦士「・・・発っ射ぁあ!」

(画面)ガンレバーの引き金を引く戦士の右手。トリガーが戻る。
(効果音)小さな金属音。

(効果音)無音。
(BGM一時停止)

(画面)地球艦隊前衛。真横に並んでいる主力戦艦2隻。それぞれの艦首をそれぞれの中心に一気に強い閃光がほとばしる。光に支配される画面。・・・そしてその光は輝きから一方方向へ押し出される光の帯へ変化。・・・アングルが左方向へ回転。2本の巨大な光の弾道が左から右方向へ,すさまじい光の塵(ちり)を振りまきながら画面を横殴りに通過していく。
(効果音)光の轟音。

(画面)閃光に照らし出される対閃光ゴーグルの戦士。
戦士「・・・いっけえ!」

(画面)閃光に照らし出される主力戦艦艦長と各スタッフたち。
(効果音)光の轟音。

(画面)閃光の行方を見定めるオサード。対閃光バイザーのため表情は分からない。
(効果音)光の轟音。

(画面)宇宙空間を疾走する巨大な光の砲弾,2条。タキオン力学の法則によりお互いに融合して混ざり合い,同じ方向へ向けてその規模を倍増させていく。
(効果音)光の轟音。

(画面)赤い光に照らし出される宇宙戦艦メッロブリッジ内。対閃光ゴーグルをかけているベルナルド。
(効果音)光の轟音。

(画面)宇宙戦艦コタックブリッジ内。青い閃光に照らされるコーテク。
(効果音)光のドップラー効果。

(画面)青い光を避けるように右手をかざして目を細める副官。
副官「(おびえている)」

(画面)展開を続けるガトランティス第3遊動機動艦隊。・・・やがて画面が光に満ち溢れる。
(効果音)光の轟音。

(画面)宇宙空間を画面左から右方向へ,弾道を引きずりながら突き進む光の砲弾。・・・突然,はじけるようにその光の帯を大きく拡散させて広がっていく。その帯の直径を何倍にも膨れ(ふくれ)上がらせながら光の砲弾が何条にも弧を描いて疾走。
(効果音)拡散音。光の轟音。

(画面)宇宙戦艦コタックブリッジ内。青い閃光に照らされるコーテク。
(効果音)光のドップラー効果。
(スタッフの声)・・・エネルギー波,接近! 直撃します!

(画面)展開を続けるガトランティス第3遊動機動艦隊,後衛。駆逐艦。巡洋艦。戦艦。・・・青い光が照らし始める。
(効果音)複数のエンジン音。近づいてくる光の轟音。

(画面)展開を続けるガトランティス第3遊動機動艦隊,後衛。駆逐艦。巡洋艦。戦艦。・・・それらの宇宙艦へ,覆いかぶさるように襲いかかる光の砲弾,数条。逃げ遅れた不幸な乗組員たちの命とともに,その宇宙艦の集団を霞む(かすむ)ようにたちまち原子単位に分解していく。さらに光に巻き込まれる宇宙艦。爆発。爆発。さらに爆発。
(効果音)光の轟音。着弾。

(画面)爆光にゆらぐ宇宙戦艦コタックブリッジ内。かたむく画面。さすがに腕をほどいてバランスをとるコーテク。
(効果音)爆裂音。きしむ金属音。人の倒れる音。警報。

(画面)フロアへ倒れこむ副官。
(効果音)転倒。

(画面)次々と蒸発していく戦艦。駆逐艦。潜宙艦。
(効果音)爆発音。多数。
(BGM)M−59

(画面)ぐらつきながら爆発宙域を背に艦首を転回させている宇宙戦艦コタック。
(効果音)爆発音。多数。

(画面)宇宙戦艦コタックブリッジ内。ボックスシートに右手をかけて外を見ているコーテク。
(効果音)爆発音。連続。
(スタッフの声)・・・衝撃波,被弾破片,拡散! 隊列乱れます! 

(画面)衝突する宇宙艦同士。前半分がなくなっている巡洋艦がバックの冥王星へ落下していく様子。
(効果音)衝突音。爆発音。

(画面)火柱を吹き上げながら傾いていく戦艦。はるか向こう側で爆光を放つ駆逐艦。
(効果音)金属音。爆発音。

(画面)多数の爆発光に照らし出されている地球艦隊。33隻。
(効果音)はるかな衝撃音。多数。

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。対閃光ゴーグルを外すベルナルド。
(効果音)ブリッジ内機械音。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・艦隊前進! 砲撃開始! 戦闘機隊,前へ!」

(画面)加速する地球艦隊を左斜め正面からアングル固定。バックには冥王星。・・・次々と各艦から発射されるショックカノン。対艦ミサイル。魚雷。
(効果音)複数のエンジン音。発射音。

(画面)ガトランティス第3遊動機動艦隊,後衛。各宇宙艦の反転は間に合っておらず,隊列は乱れている。・・・その中へ飛び込んでいく多数のショックカノンの弾道。直撃するミサイル。ぐらつく巡洋艦。
(効果音)複数の弾道音。
(BGM)M−59

(画面)地球艦隊と冥王星をバックに画面を通過していく戦闘機隊。683機。
(効果音)多数の推進音。ドップラー効果。

(画面)地球艦隊を後方から。・・・未だ圧倒的な規模を誇っているガトランティス第3遊動機動艦隊へ向けてショックカノンや魚雷を連射。遠ざかっていく戦闘機隊。
(効果音)複数のエンジン音。推進音。

(画面)反転しているガトランティス宇宙艦の左舷に直撃するショックカノンの砲弾。穴があく装甲。大きくかたむく宇宙艦。
(効果音)直撃。きしむ艦体。

(画面)宇宙艦ブリッジ内。体勢を崩すガトランティス戦士たち。
(効果音)きしむ艦内。
(スタッフの声)・・・左舷被弾,損傷! 地球艦隊,接近!

(画面)宇宙空間。画面左から右へ疾走していく地球艦隊戦闘機隊。
(効果音)複数の推進音。

(画面)宇宙空間。反転して画面右から左へ方向を変えるデスバデーター隊。
(効果音)複数の推進音。

(画面)コクピットでマイクに叫ぶ地球艦隊戦闘機パイロット。
パイロット「(ポルトガル語)・・・前方からカブトガニの群れがくるぞ! 角度範囲,176宇宙ラジアン!」
(BGM)M−59

(画面)パイロットの視界。前方から向かってくるデスバデーター隊。多数。
(効果音)複数の噴射音。

(画面)地球艦隊を背に向かってくる戦闘機隊。
(効果音)複数の噴射音。

(画面)2対のミサイルを発射する戦闘機。・・・後方へ流れる2基のミサイルがたちまち戦闘機の速度を上回り前方へ加速。間髪入れずに機銃掃射を始める戦闘機。ミサイル発射痕を抜き去る機体。
(効果音)ミサイル発射。機銃発射音。

(画面)対抗してミサイルと機銃を発射するデスバデーター隊,各機。
(効果音)ミサイル発射。機銃発射音。複数。

(画面)宇宙空間の地球軍戦闘機隊の編隊。ところどころで爆光。撃墜される戦闘機。数機。
(効果音)複数の推進音。撃墜。撃墜。

(画面)冥王星の巨大な背景。お互いに入り乱れて戦闘を開始する地球軍戦闘機隊とデスバデーター隊。被弾して画面手前下部へ退場していくデスバデーター。
(効果音)多数の推進音と機銃。ミサイル。入り乱れる。

(画面)発射管を握っている地球軍パイロット。
パイロット「・・・! (発射ボタンを押す)」
(効果音)発射ボタン。
(BGM)M−59

(画面)顔色が変わるデスバデーターパイロット。

(画面)デスバデーターパイロットの視界。・・・向かってくる地球軍戦闘機。機銃が発射されている。
(効果音)機銃音。
(パイロットの声)・・・うわああ!
(画面)白くなる。

(画面)爆光を放つデスバデーターを上部から通り過ぎていく地球軍戦闘機。
(効果音)爆発音。機銃音。推進音。

(画面)画面左上から,きりもみ状態で画面右下へ墜落していく地球軍戦闘機。アングル回転。・・・爆発する同機。画面手前を通過するデスバデーター。
(効果音)エンジン不調。爆発音。

(画面)ショックカノンを連射している地球艦隊。
(効果音)発射音。弾道音。

(画面)反転途中で主砲を発射しているガトランティス駆逐艦。・・・ショックカノンが直撃。その艦首から大きく揺らぐ艦体。
(効果音)直撃。きしむ艦体。

(画面)宇宙戦艦コタックブリッジ内。腕組みをしているコーテク。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(スタッフの声)・・・当艦隊後衛と地球艦隊が交戦状態に入りました!
(画面)冷や汗の副官。
副官「・・・提督! 後衛は戦力が手薄です! 空母やミサイル艦は中衛から前衛へ集中しています! 後衛への戦力補充を・・・」
(画面)無視するコーテク。
コーテク「・・・後衛には,そのまま進路反転を継続。地球艦隊を迎撃。その他の艦は艦隊レベルの転進を開始。ミサイル艦は前面へ」

(BGM)M−59
(画面)艦体が穴だらけのガトランティス駆逐艦。・・・そこへさらに直撃する対艦ミサイル2基。ついにたまらずその中央から強烈な爆光を放って大爆発する同艦。
(効果音)直撃。爆発音。

(画面)たくみな操縦で砲弾をかわしながら機銃を発射している地球軍戦闘機1機。・・・画面右から火を噴いて落ちていくデスバデーター。
(効果音)噴射音。機銃音。撃墜。

(画面)その戦闘機コクピットを外観から。視線を左へ向けるオサード。

(画面)応戦を続けている後衛とは対照的にゆっくりと戦場を転進し始めるガトランティス第3遊動機動艦隊,中衛,前衛。つまり満身創痍の後衛を盾(たて)にして,その間に正面へ回り込もうとしているのだ。
(効果音)複数のエンジン音。戦闘音。

(画面)バイザーの中の無表情のオサード。
オサード「・・・後衛を切り捨てたか。お前らしいな。コーテク。しかし,だからこそ計算しやすい」

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。艦長席のベルナルド。
(BGM)M−59
(効果音)ブリッジ内機械音。
(レーダー士の声)(ポルトガル語)・・・敵艦隊に動きがあります!
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・よし。全艦隊,隊列を整えろ! 全艦,全速急降下! 下げ舵いっぱい!」

(画面)操縦管を押し下げる操縦士。
(効果音)加速エンジン音。
操縦士「(ポルトガル語)・・・下げ舵いっぱい! 全速急降下!」

(画面)それぞれの艦首を下げて加速を始める地球艦隊。33隻。驚くべきことにまだ1隻の沈没もない。
(効果音)急降下加速。エンジン音。多数。

(画面)宇宙空母サツマ管制塔ブリッジ内。艦長席に座っている副官。
(効果音)加速エンジン音。
副官「・・・全戦闘機隊! 我に続け! 下げ舵いっぱあい!」
(画面)操縦管を握っている操縦士。
操縦士「・・・下げ舵いっぱあい! よおそろお!」

(画面)急速にその艦首を下げ始める宇宙空母サツマ。
(効果音)急降下加速。

(画面)被弾して大きくかたむいているガトランティス巡洋艦。
(効果音)エンジン不調。

(画面)非常灯下で目を見張るガトランティス戦士。
(効果音)艦内不調。
戦士「・・・! し,下へ・・・?」
(BGM)M−59

(画面)ガトランティス第3遊動機動艦隊。混乱している後衛。そして反転している前衛。中衛。・・・その下へ潜り込むように,死に物狂いで急降下を開始している地球艦隊と戦闘機隊を後方からのアングル。
(効果音)エンジン全開。多数。

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第11節 嗚呼! さらば,冥王星地球艦隊