第9節 冬月無残! ガトランティス超巨大艦隊遭遇

(画面)宇宙空間。巨大な規模を誇っているガトランティス本隊。
(効果音)無数の機動音。

(画面)宇宙空間に停泊している宇宙戦艦ヤマト。
(効果音)機動音。

(画面)宇宙戦艦ヤマト第1艦橋内。頬杖をついて艦長席に座っているレック・アルド・ズォーダー。
(効果音)艦橋内機械音。
(画面)頬杖をついているレックのアップ。
(画面)前へ進み出て頭を下げるゲーニッツ。
ゲーニッツ「(顔を上げる)・・・大帝閣下。第156遊動機動艦隊が壊滅いたしました。9番惑星周辺の地球艦隊は健在。デスラーに関しましては情報不足です」

(画面)そのままの体勢で笑みを浮かべるレック。
レック「地球艦隊の残存艦艇数は?」

(画面)書類を見やるゲーニッツ。
ゲーニッツ「・・・40隻には満たないとのことです」

(画面)体勢を変えないレック。
レック「上出来だね。もともとイメルには勝利など期待していなかった。少しでも地球艦隊の数を減らしてくれれば,それでよかったのだ。156艦隊などガトランティスの落ちこぼれ集団だったからね。上位艦隊に推挙(すいきょ)してやるとの甘い餌(えさ)に簡単につられるような凡庸(ぼんよう)な頭の連中だ。自分たちが出世できると本気で思い込んでいたのかね。あわれなやつらだ」

(画面)ゲーニッツ。
ゲーニッツ「まことに。・・・ですが,大帝閣下。地球艦隊の数を減らすだけでよいとは・・・?」

(画面)頬杖の手を替えるレック。
レック「ふふふ。あの時,地球艦隊への攻撃を中断して156艦隊に任せたのはね。ゲーニッツ。・・・明らかに艦隊戦に耐えられない艦艇数の味方艦隊に対して地球軍がどのような対処をするのかを見たくなったからだよ」

(画面)考え込む素振りのゲーニッツ。

(画面)軽く鼻から息を抜くレック。
レック「・・・分からないか? ゲーニッツ。今,地球艦隊は艦艇数を減らしている上に傷ついている。我らの新しい艦隊とまともに戦える状態にあると思うかね?」

(画面)顔を向けるゲーニッツ。
ゲーニッツ「我がガトランティス艦隊の前には,ひとたまりもないでしょう」

(画面)言い聞かせる表情のレック。
レック「いいかね。ゲーニッツ。そもそも我らの目的は何だ?」

(画面)レックへの対応に慎重になり始めるゲーニッツ。
ゲーニッツ「・・・。地球の壊滅では・・・?」

(画面)身体を起こすレック。
レック「・・・我ら本隊が,ここに停泊しているのはなぜだ?」

(画面)自分の言葉の対応に迷う様子のゲーニッツ。

(画面)両手指をからめてあごをのせるレック。
レック「・・・背後や側面からの挟撃(きょうげき)を避けるために外周惑星艦隊の各個撃破を進めるのが優先されているからだろう? 地球軍の全兵力をある程度把握してこそ初めて本隊が動けるんだよ。ゲーニッツ。この戦いは本国へライブで中継されるのだ。わずかでも我々が傷つくところは見せたくない。完全無欠の勝利こそが最も肝要なんだよ」

(画面)ゲーニッツ。
ゲーニッツ「・・・はい」

(画面)再び頬杖をつくレック。
レック「・・・今の地球艦隊の艦艇数では我らに対抗できないというのは地球軍も分かっているはずだ。156艦隊は60隻あったのだからね。となると地球軍は,これからどういう対処をしてくると思う?」

(画面)顔を上げるゲーニッツ。
ゲーニッツ「再び援軍を繰り出してくるのでは・・・?」

(画面)笑みを浮かべるレック。
レック「・・・援軍をよこさなかったら?」

(画面)まゆをひそめるゲーニッツ。
ゲーニッツ「・・・え?」

(画面)微笑したままのレック。
レック「・・・言い換えようか? ゲーニッツ。・・・”援軍として差し向ける艦隊が近くに存在していなかったら?”・・・どうだ?」

(画面)ゲーニッツ。
ゲーニッツ「・・・」

(画面)顔を左へ向けるレック。
レック「・・・第3艦隊のコーテクへ通信をつないでくれ」

(画面)振り返る通信要員。
通信要員「・・・はっ。(背中を向ける)」

(画面)いまひとつ理解できない表情のゲーニッツ。
ゲーニッツ「・・・第3遊動機動艦隊ですか? ・・・もしやあの程度の地球艦隊に,上位艦隊を差し向けるおつもりですか」

(画面)頬杖をしたまま顔を向けるレック。
レック「(笑み)・・・私は教師ではない。お前を教育するつもりもない。少ない言葉で,ある程度の理解をしてくれないと困るよ。ゲーニッツ」

(画面)天井パネル。・・・真横に電子ラインが走り,やさ男のコーテクの上半身が映し出される。
(効果音)電子音。
コーテク「(意図的な,すまし顔)・・・お呼びですか! 大帝閣下殿! (右手を上げる)」

(画面)ハイアングル。見上げている艦長席のレックと傍らのゲーニッツ。
レック「ふふふ。相変わらず分かりやすいね。コーテク」

(画面)にやりと笑うコーテク。
コーテク「・・・9番惑星の地球艦隊を任せてくれると勘違いをしている次第です」

(画面)レックの左斜めアップ。
レック「・・・もし,お前に任せたらどう戦うのかな?」

(画面)片目をつむって指を立てるコーテク。
コーテク「事前に聞いていただけるとは,うれしいですね。先代の時はいつも事後報告で怒られてばかりだったのでね。ありがたい。ありがたい。(にやり)・・・では,つつしんで説明させていただきましょう。大帝閣下殿」

(画面)目を丸くしているゲーニッツとは対照的に微笑して頬杖を替えるレック。
レック「うかがおうか」

(画面)薄ら笑いを浮かべているコーテク。
コーテク「・・・まず,我が第3遊動機動艦隊の姿を地球艦隊にご検分願う。圧倒的な数の差を見せびらかすというわけです。地球人たちはさぞやびっくりすることでしょうな。・・・しかし我々はまだ攻撃は仕掛けない。しばらくそこで,地球人たちとにらめっこでもしましょうか」

(画面)レックとゲーニッツ。

(画面)こめかみをかくコーテク。
コーテク「・・・そうですね。20ガトランティスアワーほど・・・」

(画面)レックとゲーニッツ。
ゲーニッツ「(前へ)・・・まる1日も戦わずに対峙すると・・・? 戦えばその10分の1の時間で片がつくのだぞ・・・!」

(画面)両手の平を見せるコーテク。
コーテク「・・・怒らないでくださいな。総司令官殿。・・・実はちょっと知りたいことがあってね」

(画面)ゲーニッツ。
ゲーニッツ「・・・何をだ?」

(画面)目を細めて顔を近づけるコーテク。
コーテク「・・・この太陽系にあの9番惑星艦隊の援軍に来られる地球艦隊が,今どのくらい残っているのかな・・・なんてね」

(画面)微笑するレックと目を細めるゲーニッツ。

(画面)表情が冷ややかに変化していくコーテク。
コーテク「・・・20ガトランティスアワーも待つんですよ。他の外周惑星に艦隊が残っていれば,この間みたいに援軍に駆けつける時間は充分あるでしょう。・・・ま,戦争ってのは基本的に”陣地取り合戦”ですからね。だから今のところはまだ9番惑星は地球人のものだ。前回の大帝閣下殿みたいに一気に全滅させてしまえば,援軍を差し向けること自体にあきらめもつくでしょうが,自分たちの陣地内で生き残っている艦が1隻でもいればむざむざ見殺しにも出来ないでしょう。味方の援軍に駆けつけるのが自然ってものですよ」

(画面)面白そうに聞いているレック。
レック「・・・耳が痛くなることを言ってくれるね」」

(画面)胸に手をあてるコーテク。
コーテク「いやはや。失礼いたしました。悪い意味はありませんよ。・・・とにかく私はこの攻略には徹底的に時間をかけるつもりだということを言いたかっただけでね。20ガトランティスアワー待った後も,ゆっくりと1隻ずつ始末していきますよ。最後の1隻までね。・・・そしてこれだけ充分な時間があったにもかかわらず,最後の1隻が沈没するまで地球艦隊が1隻も援軍に駆けつけず仲間を見殺しにしたということになれば,ちょっと理屈に合わなくなってくるんですね。なぜなら失うものがあまりにも深刻なレベルになってしまうからです」

(画面)目を見開いているゲーニッツ。

(画面)薄ら笑いのコーテク。
コーテク「・・・地球人はまず,大切な仲間を失う。9番惑星も前線基地も失うかな。あのワープ通信施設もか。そしてもうひとつ・・・」

(画面)笑みをつづけているレック。

(画面)再び冷ややかな表情になるコーテク。
コーテク「・・・外周惑星に軍備勢力がいると私たちに思い込ませていたブラインド・カーテンもね」

(画面)口を開けているゲーニッツ。
ゲーニッツ「が・・・外周惑星には地球艦隊は1隻もいないと・・・」

(画面)にこりと笑うコーテク。
コーテク「さすが,総司令官殿だ! 鋭いご指摘ですな! そうか。そういうことか。それでさっきの理屈が合ってくるってものですよ! もしそうならば,いつまでもこんなところに本隊が停泊している意味はないんだな。だって一気に地球へ進行できるわけですから」

(画面)満足気なレック。
レック「・・・コーテク。お前に任せるよ。好きなようにやってくれ」

(画面)右手を上げるコーテク。
コーテク「おお! ありがたきしあわせ! つつしんでお受けいたしましょう! (右手を下ろす)・・・ところで大帝閣下殿・・・」

(画面)レックとゲーニッツ。
レック「何かね?」

(画面)のぞきこむような仕草のコーテク。
コーテク「・・・9番惑星の地球艦隊はなぜ逃げないんですかね? 援軍を待っているんですかね? 今なら逃げられるはずなのに。・・・それとも,どこかからの連絡でも待っているんですかね?」

(画面)頬杖から少しあごを上げるレック。
レック「(笑み)・・・ふふふ。なるほど。考えておこう」

(画面)スクリーンの中で直立するコーテク。
コーテク「では! これから出撃いたします! 大帝閣下万歳! (右手を上げる)」
(スクリーン表示消える)
(効果音)電子音。

(画面)見上げているゲーニッツの横顔。
(レックの声)・・・ゲーニッツ。
ゲーニッツ「・・・(顔を向ける)」

(画面)鋭い笑顔のレック。
レック「・・・こういうやり取りがとても楽なんだよ。分かってほしいな」

(画面)宇宙空間に広がっているガトランティス本隊の中からゆっくりと発進してくるガトランティス第3遊動機動艦隊,178隻。
(効果音)複数の機動音。

(画面)宇宙戦艦コタック外観。奇抜なデザインである。
(効果音)エンジン音。

(画面)宇宙戦艦コタックブリッジ内。艦長席には座らずにブリッジ中央で腕組みしているコーテク。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(画面)コーテクの後ろ姿が画面右側。左側へコーテクに向かうように直立する副官の姿。
副官「・・・提督。隊列の再整列完了いたしました。高速航行準備できています」
(画面)腕組みしたまま顔を向けるコーテク。
コーテク「個人的な意見でかまわない。貴官の率直な意見を聞こうか」
(画面)かかとを打つ副官。
副官「(思案)・・・まず,提督へ質問させていただきます無礼をお許しください」
(画面)コーテク。
コーテク「許そう」
(画面)少し間をあけて顔を上げる副官。
副官「・・・提督は,すでに太陽系には我々に対抗しうる艦隊勢力は存在していないとお考えでしょうか?」
(画面)目を細めて笑みを浮かべるコーテク。
コーテク「・・・地球はガミラスからの戦争時代が長い。物量の消費も莫大(ばくだい)なものだったはずだ。だから,もしそうだったとしても俺は何の不思議も感じないがね。むしろあんな1個惑星国家で,こんな短い時間にリカバリーを繰り返すこと自体が不思議だとは思わないか?」
(画面)直立している副官。
副官「・・・同意です。先ほどの問いに答えます。もはや地球には戦う余力は残っていないものと判断しています。提督」
(画面)面白そうに笑顔を見せるコーテク。
コーテク「ははは。安心して答えたな。副官。(片目をつむる)・・・しかしね。俺の本心は前者ではなく,むしろ後者だったんだがね」
(画面)副官。

(画面)笑みを浮かべて見上げるコーテク。
コーテク「・・・もし,こうならどうだ? 地球は最初から,我らがガトランティスであったと見破っていて,我らの戦術を逆手にとり,すでに外周戦力の全てを地球本星へ集結させていたとしたら・・・?」

(画面)副官。

(画面)笑顔を向けるコーテク。
コーテク「地球は我らの戦力をある程度予想していた・・・。戦力の分散を避け地球本星の対空防衛設備も味方につけて,とっくに全軍事力をもって我らに備えているかも知れない」

(画面)副官。
副官「・・・まさか。宇宙戦争経験もろくに積んでいない原始人ですよ。地球人は」

(画面)にこにこしているコーテク。
コーテク「・・・戦いの鉄則だよ。攻める側と守る側とでは,圧倒的に守る側が有利だ。その場合の兵力の比較は単純に数の引き算では計りきれない。もしも地球軍の中に,その鉄則をわきまえているやつがいるとしたならば・・・」

(画面)副官。

(画面)ゆっくりと冷たい表情になるコーテク。
コーテク「・・・けっこう侮り(あなどり)がたい存在かも知れないねえ。俺はそれを確かめたいんだ。むしょうにね」

(画面)副官。

(画面)宇宙空間を航行する第3遊動機動艦隊,178隻。
(効果音)複数のエンジン音。

(画面)冥王星宙域に停泊している宇宙戦艦メッロをはじめとする地球艦隊,36隻。
(効果音)複数の機動音。

(画面)宇宙戦艦メッロ艦内。通路に,ショルダー銃をかけて直立している兵士。その背後には大きなガラススクリーン。・・・ゆっくりと画面が左へ移動。兵士の姿が画面右端へ退場してガラススクリーンの中の部屋の様子が一望できる。その部屋には3つのベッド,椅子,1つの大きなテーブル。・・・テーブルについている3人の男が確認できる。

(画面)部屋の内部。四角いテーブルの各辺にひとつの辺を残して座っている3人の男たち。肌の色はライトグリーン。しっかりと顔を上げている男がひとり。残りのふたりは両肘をテーブルについてうつむいている様子。

(画面)顔を上げているひとりの男の描写。まだ若い。長い前髪に鋭い瞳。着ている戦闘機服は地球のものではない。
(字幕)第156遊動機動隊爆撃機隊所属パイロット戦士 オサード(画面下部横文字)

(画面)テーブルにうつむいていた男のひとりが顔を上げる。細面(ほそおもて)の戦士。
戦士A「・・・オサード。俺たちはこれからどうなると思う・・・?」

(画面)オサード。無反応。

(画面)もうひとりの男がにらみつける。髭面(ひげづら)の戦士。
戦士B「・・・お前は安心だろうさ。なんせ,地球人たちに魂を売ったんだからな・・・! 地球人の奴隷として生き長らえる道を選んだんだからな! べらべらと地球人の尋問に答えやがって! 大体,貴様は・・・」

(画面)感情のかけらも感じられないオサードの表情。
オサード「・・・ここにいて,生き長らえることができると思っているのか?」

(画面)応えないふたりの男。

(画面)オサード。
オサード「甘い考えは捨てたほうがいい。助けは来ない。実際,俺たちと同じ境遇の仲間たちを殺したのは地球人ではない」

(画面)応えないふたりの男。

(画面)オサード。
オサード「この艦隊は傷ついている。もはやまともに戦うことさえできないだろう。しかし撤退する様子は見られない。この艦隊は全滅するのを覚悟しているようだ。そして今俺たちはこの艦隊の中にいる」

(画面)髭面の戦士が立ち上がる。
戦士B「・・・大体,貴様は最初から気にくわなかったんだ! IQ220の天才パイロットかなんか知らないが,第3遊動機動隊からこっちに左遷(させん)された落ちこぼれだろうがよ! 俺たちと同等なんだよ,お前は! 生意気に俺たちを見下すような話し方をするのはやめろ!」

(画面)細面の戦士が口を開く。
戦士A「・・・手立てはあるのか? このままここで死ぬのを待つのか・・・?」

(画面)表情も視線も変えないオサード。
オサード「地球人の取り決めでは,捉えた敵は傷つけたり殺したりはしてはいけないことになっている。・・・ジュネーブ条約と呼ばれるものだ。非常に特異な決まりごとだが,実際にその前例も報告されているらしい。ましてや全滅を覚悟している艦隊だ。後のことを懸念している様子も見られない。充分つけいる隙があると判断できた。だからここで地球人とある取り引きをした」

(画面)細面の戦士。
戦士A「・・・取り引き?」

(画面)視線を向けるオサード。
オサード「地球人たちに俺たちの実態と目的を証言する代わりに宇宙艇を1隻ゆずり受ける」

(画面)息を呑む細面の戦士。

(画面)激昂する髭面の戦士。
戦士B「きっさまあ! 自分の保身のために仲間を売ったのかあ! それでも誇り高きガトランティス戦士か! この裏切り者め!」

(画面)動じないオサード。
オサード「(見上げる)・・・お前はここに残るということだな?」

(画面)言葉に詰まる髭面の戦士。

(画面)不安そうな表情の細面の戦士。
戦士A「・・・しかしそれでは,ここを出ても裏切り者として処刑されてしまう・・・」

(画面)相変わらず表情が変わらないオサード。
オサード「証拠はあるのか?」

(画面)見つめているふたりの戦士。
(BGM)

(画面)オサードの瞳に光が宿っている。
オサード「・・・この艦隊は間違いなく壊滅する。そして地球本星もだ。地球の船を”強奪”した俺たちの行動を証言できる人間など,どこにもいない」

(画面)見つめているふたりの戦士。
戦士A「お・・・お前は・・・大帝閣下に嘘の報告をしろと・・・?」
戦士B「・・・(何度もうなずく)」

(画面)無表情のオサード。
オサード「・・・嘘? 何のことだ?」
(BGM消える)

(画面)海中に沈んでいる宇宙戦艦アンドロメダ。
(効果音)海中。

(画面)宇宙戦艦アンドロメダ艦内。宇宙服を着ている乗組員たちが集結している大広間。乗組員たちの後ろ姿が立ち並ぶ中でひとり正面を向いて立っている島。

(画面)佐渡医師の傍らの椅子に腰かけている宇宙服。・・・顔を上げる。バイザーの中の顔は森 綾乃。アナライザーに支えられている。

(画面)集結している乗組員を見回す島。正面へ視線を固定する。
島「・・・地球連邦連合艦隊司令官,宇宙戦艦アンドロメダ艦長の島だ。まずは,当艦の被った(こうむった)状況に対しての乗組員全員の尽力と協力に心からの敬意と感謝の意を述べたい」

(画面)宇宙服を着ている南部,相原,太田,薮,ソマリア・ギル。

(画面)乗組員たちのヘルメットから見える島の上半身の描写。
島「・・・しかし,当艦の状況は想像以上に悪く,もはやこれ以上の修復は不可能であるとの結論を出さざるを得ない。生命維持装置も動かず,宇宙服の酸素残量も残り少なくなっている。よって,私はここで苦渋の決断を下す決意を固めた次第だ」

(画面)穴井教授と沙織。

(画面)島のアップ。
島「(深呼吸)・・・非常に遺憾だが,ここでアンドロメダを自沈させる」

(画面)土方機関長。

(画面)ざわつく乗組員たち。お互いに顔を見合わせる様子。
(効果音)ざわめき。
乗組員「・・・自沈!?」
乗組員「・・・アンドロメダを自沈させてどうなさるおつもりですか!」
乗組員「(前へ)艦を自沈させるなんて,あなたそれでも艦長ですか!」
乗組員「この艦からどうやって脱出するんですか!」

(画面)見回す島。自然と治まる艦内。
島「・・・測定結果では今アンドロメダは水深52メートルの位置にある。諸君らは宇宙服の推進装置のアシストで各自,海中を泳いで脱出してもらう」

(画面)ざわつく乗組員たち。

(画面)島。
島「冥王星の気圧は地球の10分の1だ。水深52メートルとはいってもその水圧は地球の陸上の気圧の半分にも満たない。宇宙服の能力にはいささかの不安要素もない。アンドロメダが沈んでいるポイントから南西220メートルに陸地の反応がある。諸君らは艦を脱出後,速やかに陸地へ上陸して待機。全員脱出確認後,アンドロメダを爆破する」

(画面)穴井教授のアップ。

(画面)島。
島「・・・その爆発が冥王星宙域の地球艦隊に察知され,救助の船がくるのを待つ。もうこれしか諸君らの命を救う方法はない」

(画面)静かになっている乗組員たち。

(画面)海中に沈んでいる宇宙戦艦アンドロメダ。
(効果音)海中。

(画面)冥王星大気圏内。・・・はるか向こうから接近してくる宇宙艇レネイドブーリー。一気に画面を通過。
(効果音)噴射音。ドップラー効果。
(画面)遠ざかっていく宇宙艇レネイドブーリー。

(画面)宇宙艇レネイドブーリー内部。コクピットのフロール。
(効果音)内部機械音。
フロール「(歯を食いしばっている)・・・くそ! 間に合うか! (後ろへ)デスラー! 気をしっかりもてよ! 地球の戦艦にも医者ぐらいいるはずだ!」

(画面)後ろの座席で薄笑いしているデスラー。しかし髪は乱れ,顔中あぶら汗。

(画面)遠ざかっていく宇宙艇レネイドブーリー。
(効果音)噴射音。

(画面)宇宙戦艦アンドロメダ大広間。乗組員の前に立っている島。
島「・・・負傷者や女性には男性乗組員が4人ずつチームをつくってバックアップする。それ以外の男性乗組員は2人ずつペアを組んで脱出する。単独行動は禁止だ。酸素消費量には個人的なばらつきがある。今から各自の酸素消費量をチェックする。余っている宇宙服の圧縮酸素をそのレベルに従って振り分ける。各自の荷物はあきらめてくれ。身につけられるものも重量が嵩む(かさむ)ものは放棄してもらう。パートナーに必要以上の負担をかけることは許されない」

(画面)前へ出る相原。
相原「・・・提督。地球艦隊は敵艦隊と交戦中では・・・? 我々に気づく余裕がありますか?」

(画面)薮。
薮「・・・もしも,地球艦隊が・・・いなかったら・・・?」

(画面)顔を向ける島。
島「・・・その質問に答える術(すべ)はない。あくまでも仮定の話だからだ。仮定の話をするのならば,ひとつだけ私から質問させてもらう。もしこれが沖田艦長だったらどうだ? ・・・あの人は,あきらめることを一番嫌っていたはずだ。 今頃,怒鳴りつけられていたぞ。ふたりとも」

(画面)うつむくふたり。

(画面)その時突然,ふたりを押しのけるように前へ出る沙織。驚いたように彼女を見る相原と薮。
(効果音)足音。衣擦れ。

(画面)見つめる島。

(画面)仰ぎ見る沙織。
沙織「・・・提督! お願いです! もう少しだけ待ってもらえませんか!」

(画面)動じる様子のない島。

(画面)沙織。さらに前へ。
沙織「・・・向かっているんです! 今,こっちへ向かっているんです! 提督!」

(画面)わずかに目を細める島。

(画面)沙織の背中へ手をあてて,たしなめる穴井教授。
穴井「沙織。よさんか。もう決まったことなんじゃ。これ以上決定を遅らせたらクルー全員の命に関わってくるんじゃぞ」
沙織「(穴井から島へ)・・・ガミラス人は傷ついています! 治療が必要なんです! 提督! アナライザーをブリッジのあの位置へ戻してもらえませんか! 必ず連絡が入ってくるはずです! 私は正常です。信じてください。提督! (穴井教授へ小声でささやく)・・・5分以内でこの艦を脱出するなんて無理です。おじい様・・・!」
穴井「・・・! (驚愕)」

(画面)見つめている島。

(画面)冥王星宙域に停泊している地球艦隊。36隻。
(効果音)複数の機動音。

(画面)宇宙戦艦メッロ外観。
(効果音)機動音。

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。レーダー士が振り返る。
(効果音)ブリッジ内機械音。
レーダー士「(ポルトガル語)・・・複数の金属反応とエネルギー反応を検知! 艦隊反応です! 距離,32万宇宙キロ!」
(画面)緊張する艦長席のベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・来たか・・・! 全艦戦闘態勢! (通信士へ)・・・フユツキからの連絡はまだか?」

(画面)通信士。
通信士「(ポルトガル語)・・・まだです! 提督! フユツキへ健在確認の通信を送りますか?」

(画面)顔を振るベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・いかん。そんなことをしたらフユツキの所在を敵に感知されてしまう危険がある。後にも先にも交わす通信は一度きりだ。我らはここで受信態勢を維持する」
(画面)通信士。
通信士「(ポルトガル語)・・・しかし提督。フユツキがすでに撃沈されていたとしたらいかがなさいますか? 我々は来るあてのないものをここで待ち続けているだけかも知れません」

(画面)顔を向けるベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)この事態での仮定の質問は禁じる。宇宙戦艦ヤマトに乗っていた日本人たちのことを思い出せ。あの時,あの日本人たちに保障やあてなどあったのか? 日本艦隊の日本人たちが見ているぞ。腰をすえて信じろ! 我々アフリカ人の意地とプライドをかけて,ここを死守し最後の瞬間まで保障なき連絡を待つ!」

(画面)冥王星宙域に停泊している地球艦隊。36隻。
(効果音)複数の機動音。

(画面)隊列を整えつつ,停泊態勢に入るガトランティス第3遊動機動艦隊。178隻。
(効果音)複数の機動音。

(画面)停泊している宇宙戦艦コタック。
(効果音)機動音。

(画面)宇宙戦艦コタックブリッジ内。中央で立って腕組みしているコーテク。
(効果音)ブリッジ内機械音。

(画面)直立する副官。
副官「・・・本隊へ連絡しなくても,よろしいのですか? 提督」

(画面)顔を向け,笑顔を見せるコーテク。
コーテク「ははは。俺に野暮(やぼ)な真似をさせたいのか。副官。あのイージス艦は我々を見て,逃走する気配は見せたが引き返す様子は見られなかった。我々を本隊としては見ていなかったということだ。しかも我々から攻撃を受ける危険性も承知の上であえて我が艦隊の探査範囲へ入ってきた。イージス艦なら通信の傍受も盗聴も容易だろうよ。たった1隻の宇宙艦に艦隊があたふたするなんて,みっともないと思わないか? しかもあの地球人たちは命を捨ててかかっている。生きることをあきらめている連中など,ほっといても自滅するだけだ。俺たちの相手にはならないよ。ほっとけ,ほっとけ」

(画面)黙っている副官。

(画面)すでに違うことを考え始めているコーテク。
コーテク「・・・さてと。シャワーでも浴びてくるかな。しばらく留守をたのむよ。副官。(歩き出す)」

(画面)コーテクの背中へ頭を下げる副官。
副官「・・・承知いたしました」

(画面)宇宙空間。星が点々としている。
(効果音)宇宙空間。

(画面)宇宙空間。・・・小さくぽつりとひとつの光。・・・接近してくる光。やがてそれは徐々に実体を伴って大きくなってくる。・・・ブリッジ上部にフェーズドアレイレーダーを装備している宇宙艦。画面に接近してアップ。右舷から艦尾へアングルが回転。
(効果音)エンジン音。ドップラー効果。

(画面)その宇宙艦の左斜め正面。大型ではない。
(効果音)エンジン音。
(字幕)地球防衛軍日本自治区第10管区艦隊所属 イージス艦冬月(画面下部横文字)

(画面)イージス艦冬月ブリッジ内。艦長席に座っている梶川司令。照明はオレンジ一色。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(画面)レーダー士のアップ。レーダー機器の光がぼんやりと彼の顔を照らしている。
レーダー士「・・・フェーズドアレイレーダーの探査角度が限界にきています。イージスシステムの続行には,さらなる目的宙域の特定が必要です。司令」
(画面)梶川司令。
梶川「・・・この方角で正しいはずなんだが・・・。ガトランティス艦隊は潜宙艦のような強力なステルス機能がある。やみくもに探し続けたあげくに,気がついたら敵本隊に囲まれていたなどという事態だけは出来るだけ避けたいものだ・・・。(通信士へ)敵方の通信電波はどうだ?」
(画面)振り向く通信士。
通信士「通信の痕跡はありません」
(画面)あごに触れる梶川司令。
梶川「・・・(レーダー士へ)敵艦隊遭遇時の敵宇宙艦の進行角度をフェーズドアレイに固定し続けろ。(通信士へ)・・・あの艦隊は間違いなく我々に気づいていたはずだ。引き続き通信電波の傍受につとめろ」

(画面)宇宙空間を遠ざかっていくイージス艦冬月。
(効果音)エンジン音。

(画面)冥王星宙域の地球艦隊。36隻。
(効果音)複数の機動音。

(画面)停泊している宇宙戦艦メッロ。
(効果音)機動音。

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。艦長席のベルナルド。
(効果音)ブリッジ内機械音。

(画面)2人の警備兵に両脇を固められて正面へ向き直るオサード。

(画面)艦長席のベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・約束を果たす。当艦発着口に救命艇を準備した。通信設備も設置している。あのガトランティス艦隊へ向かうがいいだろう」

(画面)無表情のオサード。
オサード「死ぬつもりか。地球人」

(画面)ベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・どういうことかな? ガトランティス人」

(画面)静かに見つめるオサード。
オサード「・・・今ここで私たちを解放するということだ。戦闘が始まれば捕虜の開放どころではなくなると踏んだのだろう? この艦も無事では済まないと考えている証拠だ。確かにお前の判断は正しい。あの艦隊はガトランティス軍屈指の第3遊動機動艦隊だ。かつて私も所属していたことがある。お前たちは万がひとつでも,あの艦隊に勝利することは不可能だ」

(画面)笑みを浮かべるベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・私は約束を果たすだけだ。私は人を盾(たて)にして戦うことは好きではないし,ましてや君たちに人質としての価値があるかどうかも疑わしい。それに我が艦隊は負けるとは考えてはいない。死ぬつもりなど毛頭ない」

(画面)オサード。
オサード「我がガトランティスの資料では,地球人は自分自身の命に執着しない人種とある。自らの手で自らの命を絶つことに誇りを持っている種族だと」

(画面)見つめているベルナルド。

(画面)無表情のオサード。
オサード「宇宙戦艦ヤマト・・・。あの戦艦は,かつて我々が考えもつかなかった戦法で大帝閣下を倒した。・・・我々ガトランティス人には,命をもって命を奪うなどという非生産的な思考はない。戦って,生きていれば勝利。死ねば負けだ。しかしお前たちは,あのヤマトの行為による結果を勝利と考えている。違うか?」

(画面)背もたれに寄りかかるベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・侵略者の理屈であり,典型的な強者の論理だな。君は,一体何のために戦っているのだ?」

(画面)無表情のオサード。

(画面)目を細めるベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・他人を攻め続けてきた者の目的ほど淡白で面白みに欠けるものはない。ゆえにその者は同じ行為を何度も繰り返すのだ。君は何かを守るために戦ったことはないのか。自尊心とか国家などという漠然(ばくぜん)としたものではなく,もっと奥が深いものだ。ガトランティスの資料は間違っているね。国に帰ったら,すぐに訂正したまえ。地球人は死ぬためには戦わない。自分たちにとっての大切なものを守り続けるために戦うのだ。我々地球人は最後の瞬間まで生き続けようとする。生き続けなければ守れないからだ。生と死は目的ではなく,あくまでも結果でしかない。しかしそれでも守りたいものを守りきったのならば,それはすなわち勝利なのだ」

(画面)無表情のオサード。

(画面)両指をからませるベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・あの艦隊に帰ったら司令官に伝えたまえ。我々地球人は貴官の艦隊と堂々と正面から戦って勝利する所存(しょぞん)であると。死ぬつもりはさらさらない。むしろ生き残って生き残ってそれでも戦い続けるつもりだ。くれぐれも地球人を甘く見てはいけないとね。もちろんこれは,はったりではない」

(画面)無表情のオサード。

(画面)冥王星宙域の地球艦隊。36隻。
(効果音)複数の機動音。

(画面)ガトランティス本隊の全容。
(効果音)膨大な機動音。

(画面)停泊している宇宙戦艦ヤマト。
(効果音)機動音。

(画面)宇宙戦艦ヤマト第1艦橋内。進み出るゲーニッツ。
(効果音)艦橋内機械音。
ゲーニッツ「大帝閣下。第3遊動機動艦隊から通信文が入っております」
(画面)頬杖から顔を上げるレック。
レック「(けげんな表情)・・・何だって? ゲーニッツ」
(画面)レックのリアクションに不思議そうな表情をするゲーニッツ。
ゲーニッツ「・・・はい。(通信文へ)・・・”地球のイージス艦が1隻,我が本隊を探索している由(よし)。ご警戒なされますように”とのことです」
(画面)まゆをしかめるレック。
レック「・・・それはコーテクからか?」
(画面)ゲーニッツ。
ゲーニッツ「・・・いえ。戦艦コタックの副官参謀からですが」
(画面)嘲笑して頬杖をつくレック。
レック「やれやれ。ここにも馬鹿がいたか」

(画面)宇宙空間を航行するイージス艦冬月。
(効果音)エンジン音。

(画面)イージス艦冬月ブリッジ内。通信士が振り返る。
(効果音)ブリッジ内機械音。
通信士「通信電波の反応がありました! 太陽系方面から発信された光通信です!」
(画面)目を輝かせる梶川司令。
梶川「よし! きたか! (レーダー士へ)・・・フェーズドアレイレーダーへ電波発信先のポイントを照合しろ!」

(画面)イージス艦冬月のブリッジの上部。小型アンテナを組み合わせた8角形のレーダーが照準を合わせる様子。
(効果音)電子音。

(画面)イージス艦冬月ブリッジ内。今度はレーダー士が振り返る。
(効果音)ブリッジ内機械音。
レーダー士「発信先が判明しました! ここより11時半の方向。342万宇宙キロ!」
(画面)振り返る通信士。
通信士「・・・通信は地球のイージス艦を警戒するようにとの内容です!」
(画面)艦長席の梶川司令。
梶川「(腕を前へ)・・・事は一刻を争うぞ! ワープ準備!」
(画面)前へ進み出るスタッフ。
スタッフ「司令! ここでワープ航法を敢行(かんこう)すれば,目的宙域から離脱する際にワープが即時に実行できません!」
(画面)顔を向ける梶川司令。
梶川「・・・敵は我々がイージス艦であると見破っている。この通信で敵はその傍受を警戒してさらに発信先のポイントから移動する可能性がある。今度逃げられたら,いつまた本隊を見つけられるかどうか分からん。我々と先ほどすれ違った敵艦隊は冥王星へ向かっていったのだ。目的は間違いなく地球艦隊だ。あの規模の艦隊を相手にすれば地球艦隊も無事では済むまい。地球艦隊がやられてしまえば地球へ通信する者がいなくなってしまう。このタイミングを逃せば地球へ情報を報告する機会を永久に失うかも知れん」

(画面)宇宙空間を航行するイージス艦冬月。・・・空間の歪みと共に揺らぐ艦体。静かに空間へ溶け込んでいく。
(効果音)ワープ音。

(画面)宇宙戦艦コタックブリッジ内。床を転げる副官。
(効果音)ブリッジ内機械音。転倒音。

(画面)さめた表情で冷たく見下ろしているコーテク。

(画面)口からの血を手の甲で拭う(ぬぐう)副官。うつむいたまま。

(画面)空気までも凍らせる冷たい視線のコーテクのローアングル。
コーテク「・・・ほっとけと言ったのは命令だったんだけどね。俺が必要としているのは地味で忠実な馬鹿だ。スタンドプレイを好む目立ちたがり屋の馬鹿じゃあない。忘れるなよ。副官。もしも今度この言葉を忘れたら,あのオサードのように下位艦隊へとばされるからな」

(画面)うつむいたままの副官。

(画面)宇宙空間へ揺らぎながら徐々に実体を取り戻していくイージス艦冬月。
(効果音)ワープ音。

(画面)イージス艦冬月を正面からのアングル。
(効果音)至近距離の膨大な機動音。多数。
(BGM)M−53A

(画面)イージス艦冬月を右舷からのアングル。
(効果音)至近距離の膨大な機動音。多数。
(BGM)M−53A

(画面)イージス艦冬月を右斜め後方からのアングル。
(効果音)至近距離の膨大な機動音。多数。
(BGM)M−53A

(画面)イージス艦冬月ブリッジ内。オレンジ色の照明。ブレーキを失った水門のごとくに,下あごを落下させているレーダー士の表情。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(BGM)M−53A
(画面)小刻みに震える通信士。
(画面)冷や汗が吹きだしているスタッフ。
(画面)さすがに色を失う梶川司令。
梶川「・・・な・・・なんということだ・・・」

(画面)イージス艦冬月を右斜め後方からのアングル。・・・同艦を中心に引かれていくアングル。遠くなっていく同艦にしたがって,その周辺の宇宙空間も画面の中へ描写されていく。・・・さらに遠くなっていくイージス艦冬月。宇宙空間の星々が点在する。アングルが起き上げるように上昇。同時にイージス艦冬月も画面左下へ移動。さらに移動。そして・・・。
(BGM)M−53A
(効果音)至近距離の膨大な機動音。多数。

(画面)そして・・・そのアングルの移動の果てに・・・残りの画面面積の全てのそれを埋め尽くすごとく,画面からはみ出さんばかりに絶大な規模を誇るガトランティス大艦隊が出現。その部分の宇宙空間の星々全てがその大艦隊の影にかくれてしまっている。左下には豆粒大に小さく映るイージス艦冬月。
(効果音)至近距離の膨大な機動音。多数。
(BGM)M−1A

(画面)イージス艦冬月ブリッジ内。オレンジ色の照明。レーダー士を振り向く梶川司令。
(効果音)ブリッジ内機械音。
梶川「・・・レーダー! ワープアウトポイントを確認しろ! 近すぎる!」
(画面)うろたえているレーダー士。
レーダー士「ま・・・間違いあ・・・ありません! 通信発信先より60万宇宙キロ手前にワープアウトしています!」
(画面)正面へ愕然(がくぜん)とする梶川司令。
梶川「・・・! な,なんだと・・・!」

(画面)頬杖をついているレック・アルド・ズォーダー。
レック「・・・あのような小さなハエなど,別にうっとうしいとも思わないが・・・」
(BGM)M−1A

(画面)立っているゲーニッツ。

(画面)笑みを浮かべるレックのアップ。
レック「・・・私は,きれいな宇宙(そら)が好きなんだよ。ゲーニッツ」
(BGM消える)

(画面)見つめているゲーニッツ。

(画面)宇宙空間に浮かぶ青い地球。

(画面)アングル移動。緑の森をかわして接近してくる近代都市。・・・さらにアングルが移動。地下へ進んでいく画面。そこには,かつて地球人類が命をつなぎ続けていた地下都市が3年前と変わらぬ姿を見せる。

(画面)その中のビルの高層階の窓へアングルが接近。・・・子供部屋のようだ。

(画面)机に向かって通信ディスプレイを操作している男の子を右横から。歳は10歳くらいか。ディスプレイに表示されている手紙を読んでいる様子。
(効果音)キーボードを操作する。
(画面)目を輝かせている男の子の表情。
(女性の声)・・・健太。
男の子「(後ろを振り向く)」
(画面)40歳くらいの女性がストローを傾けたオレンジジュースのグラスを盆にのせている。
(画面)笑顔を見せる男の子。
(画面)机の上にグラスを置く女性・・・男の子の母親のようだ。
母親「・・・また読んでいたのね。何度読んでも手紙の文句は変わらないわよ」
男の子「(ディスプレイへ向かう)・・・だってお父さんから,なかなか手紙がこないんだもん」
(画面)盆を抱く母親。
母親「お父さんの筆不精(ふでぶしょう)は今に始まったことじゃないでしょ?」

(画面)ディスプレイに向かっている男の子の右正面。左には母親。
男の子「・・・会いたいな。お父さんに」
母親「(ほだされる)・・・戦争さえ終われば会えるわよ。健太。お父さんは今地球のみんなのために働いているんだもの。少しくらい,その人たちにお父さんを分けてあげてもいいでしょ?」

(BGM)M−65
(画面)顔を向ける男の子。
男の子「・・・お母さん。僕ね。決めたんだ。僕,大きくなったら宇宙戦士になる。強くなって,お父さんや島提督みたいに,お母さんや地球の弱い人たちを悪いやつらから守ってやるんだ」

(画面)やさしい笑顔の母親。

(画面)ジュースを飲む男の子。
男の子「・・・ヤマトや,アンドロメダや,サツマみたいな大きな船に乗って宇宙に行くんだ。・・・僕,今度お父さんが帰ってきたら言うつもりなんだ」

(画面)少し首をかしげる母親。
母親「・・・お父さん,何て言うかしらね?」
(画面)笑顔の男の子。
男の子「大丈夫だって! だって僕,お父さんのことが大好きなんだよ。だからきっと賛成してくれるよ」
(画面)くすくす笑う母親。
母親「ずいぶんと,おかしな理由ね。健太ったら」

(画面)男の子の笑顔のアップ。
(BGM)M−65

(画面)全速力で宇宙空間を疾走しているイージス艦冬月。その後方からエネルギー砲の砲弾が複数,同艦をかすめている。しかしまだ直撃はない。かたむいて砲弾をかわし続けるイージス艦冬月。
(効果音)エンジン全開。弾道音。複数。
(BGM)M−65

(画面)イージス艦冬月を正面から。同艦の後方には無数のガトランティス艦隊が同艦を追いかけている。艦隊から砲弾が続けざまに発射されてイージス艦冬月をかすめる。
(効果音)無数のエンジン音。発射音。弾道音。

(画面)イージス艦冬月ブリッジ内。艦長席の梶川司令。
(BGM)M−65
梶川「通信班! 冥王星艦隊への通信はどうか!」
(画面)振り返る通信士。
通信士「・・・駄目です! 強力な妨害電波が発せられています! 通信波が送れません!」
(画面)歯を食いしばる梶川司令。
(画面)レーダー士。
レーダー士「敵艦隊集団は後方6万宇宙キロまで迫っています! 数は・・・数は・・・当艦のイージスシステムでは測定不能です! 1万か・・・2万か・・・!」
(画面)操縦士の緊迫した表情。
操縦士「相対速度は敵が上回っています! 追いつかれる! ワープ航法,間に合いません!」
(画面)生唾(なまつば)を飲み込む梶川司令。
梶川「・・・まさかこれほどの規模とは・・・! 通信班! 必ず冥王星艦隊へ通信するのだ! 敵本隊は我が連合艦隊の規模をはるかに上回っている・・・! とにかく何としてでも逃げ切るんだ! 全速加速! 妨害電波を振り切れ!」

(画面)イージス艦冬月左舷。・・・敵の砲弾が直撃。爆光を放って穴が開く装甲。
(効果音)直撃音。爆発音。
(画面)ぐらりとかたむくイージス艦冬月。
(効果音)きしむ金属音。

(画面)イージス艦冬月ブリッジ内。衝撃にスタッフたちの体勢が崩れる。オレンジ色の照明が一瞬消える。
(BGM)M−65
(画面)両手でふんばる梶川司令。照明が復活。
梶川「被害状況を報告しろ! (スタッフへ)主砲解放! 迎撃だ!」
(画面)操作パネルの前の砲術士。操作管を握る。
砲術士「・・・発射準備完了! 後方上下角フリー! 発射あ! (引き金を引く)」

(画面)後方の砲塔からショックカノンを発射するイージス艦冬月。・・・さらに敵の砲弾が同艦の艦下部を直撃。吹きだす火柱。
(効果音)発射音。直撃音。爆発音。

(画面)イージス艦冬月ブリッジ内。ぶれる画面。バランスをとるスタッフ。
スタッフ「・・・下部損傷! 大破!」
(画面)腕を振る梶川司令。
梶川「消火班を向かわせろ! (操縦士へ)・・・エンジン出力はどうか!」
(画面)必死に操縦管を握っている操縦士。
操縦士「大丈夫です! 出力は落ちていません! 敵艦隊との相対速度が減少しています! 敵艦隊の接近速度が鈍っています! 逃げ切ります!」

(画面)わずかに希望の表情を見せるスタッフたち。

(画面)振り返るレーダー士。
レーダー士「・・・本艦正面12時の方向にワープアウト現象が起きています! 距離1万宇宙キロ未満!」
(画面)目を見張る梶川司令。
梶川「なんだと・・・!」
(BGM)M−65
(画面)レーダー士。
レーダー士「艦隊反応! 突破できません!」
(画面)腕を大きく振る梶川司令。
梶川「面舵いっぱあい!」
(画面)操縦士の後ろ姿。
操縦士「おもかあじ! よおそろお! (操縦管を右へ)」

(画面)その艦首を右方向へふるイージス艦冬月。
(効果音)方向転換。急激な噴射音。

(画面)右へ舵をとるイージス艦冬月の艦尾を遠方から。その正面にワープアウトしてくるガトランティス艦隊。さらに右方向にもワープアウトしてくる艦隊。・・・さらに右へ舵をとるイージス艦冬月。右方向にワープアウトしてくる艦隊。・・・さらに右へ舵をとるイージス艦冬月。
(効果音)ワープ音。連続。複数の機動音。
(BGM)M−65

(画面)イージス艦冬月ブリッジ内。身体を震わせる操縦士。。
操縦士「囲まれた・・・!」

(画面)指を差す梶川司令。
梶川「(レーダー士へ)・・・突破コースを計算しろ!」
(画面)必死に計算を始めるレーダー士。
(効果音)操作音。

(画面)艦隊の前衛に宇宙戦艦ファスターゼ。
(効果音)複数の機動音。

(画面)宇宙戦艦ファスターゼブリッジ内。艦長席のファスト。
(効果音)ブリッジ内機械音。

(画面)右舷を見せているイージス艦冬月。後方からは無数の艦隊が迫ってくる。
(効果音)膨大なエンジン音。

(画面)イージス艦冬月ブリッジ内。振り返るレーダー士。
(効果音)ブリッジ内機械音。
レーダー士「・・・5時40分の方向! 下げ角42度のラインが手薄です!」
(画面)梶川司令。
梶川「取り舵いっぱあい! 5時40分! 下げ舵42度!」
(画面)左へ操縦管を倒す操縦士。
操縦士「とりかあじ! よおそろお!」

(画面)左舷を見せているイージス艦冬月。前方にはガトランティス第1遊動機動艦隊。213隻。
(効果音)膨大なエンジン音。

(画面)宇宙戦艦ヤマト第1艦橋内。唖然と見上げているゲーニッツ。・・・そして視線を後方へ。
(BGM)M−65
(画面)遠くの艦長席で頬杖をついて笑みを浮かべているレックの横顔。
レック「逃げる逃げる・・・。なかなか面白い見世物だね」
(画面)ゲーニッツのアップ。
(ゲーニッツの心の声)・・・あんなちっぽけな宇宙艦1隻に,第1遊動機動艦隊・・・?

(画面)後方からの砲撃弾をかわしながら転回するイージス艦冬月。
(効果音)噴射音。

(画面)イージス艦冬月ブリッジ内。操縦管を戻す操縦士。
操縦士「・・・下げ舵42度! 全速加速します!」

(画面)画面手前へ加速してくるイージス艦冬月。・・・ブリッジをかすめてアングルが回転。ぽっかりと開いている宇宙空間へ向かってエンジンを噴射させて遠ざかっていく。
(効果音)エンジン全開。ドップラー効果。
(BGM)M−65

(画面)イージス艦冬月ブリッジ内。オレンジ色の照明の中で目を輝かせている梶川司令。

(画面)何もない宇宙空間の描写。

(画面)イージス艦冬月ブリッジ内。計器類をにらんでいるレーダー士の表情。

(画面)何もない宇宙空間の描写。

(画面)・・・何もないはずの宇宙空間から突然,多数の魚雷が出現する。向かってくる魚雷群。
(効果音)魚雷音。

(画面)イージス艦冬月ブリッジ内。顔色が変わるレーダー士。
レーダー士「・・・! 12時の方向! 魚雷群! 数・・・!」
(画面)驚愕する梶川司令のアップが振り向く。
梶川「・・・潜宙艦だ! はかられた! 進路反転!」

(画面)イージス艦冬月の正面。魚雷群に見舞われる。必死の操艦でかわそうとするも,数発が同艦に直撃。爆発。右へ左へとぐらつかせる艦体。ところどころから火を放つ。直撃。爆発。
(効果音)数発の直撃音。きしむ艦体。

(画面)イージス艦冬月ブリッジ内。衝撃に耐え切れず,何人かのスタッフがフロアへ投げ出される。さらに衝撃。爆発。
(効果音)衝撃。きしむ金属音。悲鳴。

(画面)停泊して一斉に主砲を連射するガトランティス艦隊。
(効果音)発射音。多数。

(画面)一斉に射撃を開始する第1遊動機動艦隊。
(効果音)発射音。多数。

(画面)悲壮な表情のレーダー士。
レーダー士「エネルギー反応! 四方から!」
(画面)歯を食いしばる梶川司令。
梶川「・・・回避!」

(画面)四方からの砲撃に避けきれずに砲弾の直撃を浴び続けるイージス艦冬月。徐々に平行バランスがかたむいていく。
(効果音)直撃。爆発の連続。きしむ金属音。直撃。さらに爆発。
(BGM)M−65

(画面)ゲーニッツのアップ。
(ゲーニッツの心の声)・・・あの人は・・・サディストだ・・・。
(BGM消える)

(画面)イージス艦冬月ブリッジ内。照明が赤色の非常灯に変化している。艦長席から降りてきている梶川指令。衝撃。バランスを崩すが機器ボックスにつかまって踏みとどまる。すでにフロアから遠心力が発生し始める。直撃。さらに直撃。
(効果音)衝撃音。爆発音。
梶川「(倒れているスタッフをつかみ上げる)・・・立て! あきらめるな! 生きることをあきらめるな! 私たちは,ここに死ににきたのか! そうではないだろう!」
(画面)目を開けるスタッフ。
(画面)顔を上げる通信士。
(画面)椅子につかまり立ち上がるレーダー士。

(画面)仁王立ちの梶川司令。
梶川「帰るんだ! 生きて地球へ帰るんだ! こんなところで死ぬつもりか! あきらめるな!」

(画面)すでに艦体の所々から煙や火柱が噴出しているイージス艦冬月。・・・さらに砲弾が直撃。火を噴いて大きくかたむく同艦。
(効果音)直撃音。爆発音。

(画面)宇宙戦艦ファスターゼブリッジ内。軽く指を差すファスト。
(効果音)ブリッジ内機械音。

(画面)主砲を発射する駆逐艦。
(効果音)発射音。

(画面)主砲を発射する巡洋艦。
(効果音)発射音。

(画面)主砲を発射する戦艦。
(効果音)発射音。

(画面)四方八方から砲弾を浴びるイージス艦冬月。
(効果音)直撃音。連続。

(画面)イージス艦冬月艦内。爆発にて吹き飛ぶ乗組員たち。
(効果音)爆発音。

(画面)イージス艦冬月機関部。装甲がえぐりとられて部品が分解,破壊された機器と乗組員たちが宇宙空間へ吸い出されていく。
(効果音)爆発音。気圧の減少。消えていく悲鳴。

(画面)四方八方から砲弾を浴びるイージス艦冬月。
(効果音)直撃音。連続。
(BGM)M−62(スキャット)

(画面)イージス艦冬月ブリッジ内。大きな爆発が起きてスタッフや機械が吹き飛ぶ。
(効果音)爆発音。
(画面)フロアへ倒れこむ梶川司令。
梶川「(頭を押さえる)・・・レーダー! 突破コースを・・・! (顔を上げる)」

(画面)血まみれで倒れているレーダー士。操縦士。

(画面)顔を上げている梶川司令。

(画面)イージス艦冬月の主砲付近へ着弾する敵の砲弾。爆発。
(効果音)直撃音。
(BGM)M−62(スキャット)

(画面)操作管を握っていた砲術士が吹き飛ぶ。
(効果音)爆発音。

(画面)起き上がる梶川司令。
梶川「・・・! 大丈夫か!」
(効果音)爆発音。衝撃音。

(画面)倒れた砲術士を起こす梶川司令。頭から血を流している。

(画面)梶川司令のアップ。

(画面)開眼のまま絶命している砲術士。

(画面)歯を食いしばって下を向く梶川司令。・・・怒りに満ちた表情で顔を上げる。
梶川「(砲術士を寝かせる)・・・私は・・・私は,帰るんだ。約束したんだ・・・!」

(画面)四方八方から砲弾を浴びるイージス艦冬月。
(効果音)直撃音。連続。

(画面)(回想シーン)うれしそうに笑顔を上げる男の子。
男の子「・・・すごいなあ! あの島提督といっしょに出撃するの? お父さん,かっこいい!」

(画面)イージス艦冬月ブリッジ内。立ち上がる梶川司令。歩き出す。爆発。よろめく足取り。
(BGM)M−62(スキャット)
梶川「・・・健太・・・」

(画面)宇宙戦艦ファスターゼブリッジ内。軽く指を差すファスト。
(効果音)ブリッジ内機械音。

(画面)主砲の照準を合わせる駆逐艦。
(効果音)機械音。

(画面)主砲の照準を合わせる巡洋艦。
(効果音)機械音。

(画面)主砲の照準を合わせる戦艦。
(効果音)機械音。

(画面)穴だらけで,ぼろぼろに破壊されているイージス艦冬月。
(BGM)M−62(スキャット)

(画面)主砲発射管を握りしめる梶川司令。頭からの出血。
梶川「私は・・・私は・・・」

(画面)宇宙戦艦ファスターゼブリッジ内。笑みを浮かべる艦長席のファスト。

(画面)主砲発射管を引き上げる梶川司令。
(BGM)M−62(スキャット)
梶川「(にらみつける)・・・息子のところへ帰るんだ・・・! 息子が私の帰りを待っているんだ・・・!」

(画面)宇宙戦艦ファスターゼブリッジ内。軽く指を差すファスト。
(効果音)ブリッジ内機械音。

(画面)梶川司令のアップ。怒りの表情。
梶川「健太のところへ帰るんだ! じゃまをするな! ガトランティス!」

(画面)主砲操作管の引き金を引く梶川司令の右手。
(効果音)引き金。

(画面)イージス艦冬月の主砲からショックカノンが発射される。
(効果音)発射音。

(画面)宇宙空間をつんざくショックカノン。アングルが回転。その方向には宇宙戦艦ファスターゼ。
(効果音)弾道音。
(BGM)M−62(スキャット)

(画面)宇宙戦艦ファスターゼ正面。そのブリッジ付近へ接近していくアングル。そしてそのアングルを追い抜き,宇宙戦艦ファスターゼのブリッジ付近左舷下部へ直撃するショックカノンの砲弾。爆光。
(効果音)直撃音。

(画面)宇宙戦艦ファスターゼブリッジ内。衝撃。わずかに身体を突き動かされる艦長席のファスト。
(効果音)小さな衝撃音。
ファスト「・・・! (目を見開く)」

(画面)引き金を引き続ける梶川司令。
梶川「・・・待ってろよ。健太。お父さんは死なない。必ず帰る・・・」
(BGM)M−62(スキャット)

(画面)宇宙戦艦ファスターゼブリッジ内。髭を震わせるファストのアップ。

(画面)エンジンも完全に大破し,すでに動力のかげりもないイージス艦冬月。しかしなぜか,その主砲から発射され続けるショックカノン。
(BGM)M−62(スキャット)

(画面)宇宙戦艦ファスターゼブリッジ内。大きく右腕を前へ出すファスト。
(効果音)ブリッジ内機械音。

(画面)大きく照準を合わせる宇宙戦艦ファスターゼの4連主砲。
(効果音)機械音。

(画面)宇宙戦艦ファスターゼブリッジ内。右腕を右へ払うファスト。
(効果音)ブリッジ内機械音。

(画面)強い光を放っている宇宙戦艦ファスターゼの4連主砲のアップ。・・・その砲口から発射される強い光の砲弾が4条。
(効果音)大きな発射音。

(画面)引き金を引き続ける梶川司令。
(BGM消える)

(画面)宇宙空間をはしる4条の光の砲弾。
(効果音)弾道音。

(画面)引き金を引き続ける梶川司令。
(効果音)発射音。連続。

(画面)4連主砲の直撃をまともに受けるイージス艦冬月。・・・一瞬,その艦体がまばゆい光を放つ。
(効果音)直撃音。

(画面)引き金を引き続ける梶川司令。・・・強い光が全体を覆い尽くす。
(画面)男の子の笑顔。
(梶川司令の声)・・・健太!

(画面)・・・その艦体から,まばゆい爆光を放つイージス艦冬月。・・・次の瞬間,あとかたも無く木っ端微塵に大爆発する同艦。・・・光のリングが何重にも重なり,暗い宇宙空間を照らし出す。
(効果音)爆発音。

(画面)宇宙戦艦ファスターゼのブリッジの外観。爆光に照らし出されている。
(効果音)爆発音。機動音。

(画面)宇宙戦艦ファスターゼブリッジ内。その爆光をながめているブリッジスタッフたち。しかしそこからは何の歓声も喝采も聞かれない。ただ静まりかえっている。
(効果音)ブリッジ内機械音。

(画面)目を見開いて黙っているブリッジスタッフの若いガトランティス戦士。

(画面)艦長席に座っているファスト。軍帽と髭で表情は読めない。
ファスト「(低い声)・・・地球人・・・!」

(画面)徐々に爆光が消えていく宇宙空間。よほどすさまじい爆発だったのだろう。砕け散った残骸のほとんどは形が残っていない。

(画面)光を失って散乱している残骸を囲んでいるガトランティス第1遊動機動艦隊。
(効果音)複数の機動音。

(画面)宇宙空間。

(画面)冥王星と惑星カロン。

(画面)静かに停泊しているガトランティス第3遊動機動艦隊。178隻。
(効果音)複数の機動音。

(画面)冥王星宙域にて臨戦態勢を整えている地球艦隊。36隻。
(効果音)複数の機動音。

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。計器類から目を離さないレーダー士。
(効果音)ブリッジ内機械音。
レーダー士「(ポルトガル語)・・・敵艦隊動きません。・・・またも陽動作戦でしょうか?」
(画面)艦長席のベルナルド。顔を向ける。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・まさかな。今回の艦隊は我々の5倍の規模だ。小細工など何の意味もない。むしろ,余裕をもって我が艦隊の様子を見ているといった方が当てはまるだろうな。(スタッフへ)・・・捕虜を乗せた救命艇はどうか?」

(画面)直立するスタッフ。
スタッフ「(ポルトガル語)・・・ただいま,当艦を発進いたしました。敵艦隊へ向かっています」

(画面)地球艦隊の前衛(ぜんえい)の描写。宇宙戦艦メッロを背に画面手前へ接近してくる救命艇。
(効果音)噴射音。

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。見上げているベルナルドをはじめとするブリッジスタッフたち。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(画面)天井パネルには前方のガトランティス艦隊へ向けて遠ざかっていく救命艇のエンジン噴射の光が映し出されている。

(画面)画面左側から右方向へ通過していく救命艇。アングル回転。ガトランティス艦隊へ向かっていく。
(効果音)噴射音。ドップラー効果。

(画面)静かに停泊しているガトランティス第3遊動機動艦隊。
(効果音)複数の機動音。

(画面)ベルナルドのアップ。
ベルナルド「・・・(目を細める)」

(画面)救命艇右舷真横にアングル固定。・・・次第に近づいてくるガトランティス艦隊前衛。
(効果音)噴射音。

(画面)ガトランティス艦隊前衛の駆逐艦の描写。
(効果音)機動音。

(画面)ガトランティス艦隊前衛の駆逐艦の描写。・・・少しクローズアップ。
(効果音)機動音。

(画面)ガトランティス艦隊前衛の駆逐艦の描写。・・・主砲のアップ。こちらに砲口が向いている。
(効果音)機動音。

(画面)近づいてくる救命艇。
(効果音)噴射音。

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。見上げているベルナルドをはじめとするブリッジスタッフたち。
(効果音)ブリッジ内機械音。

(画面)天井パネルに映し出される爆発。

(画面)ゆっくりと,あごを引くベルナルド。
(スタッフの声)・・・(ポルトガル語)・・・救命艇,破壊されました!
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・諸君。優越感に浸っていいぞ。兵士の価値は地球軍の方が上だ」
(ブリッジ内の笑い声)

(画面)宇宙空間に浮かぶ冥王星。

(画面)海上でホバリングしている宇宙艇レネイドブーリー。
(効果音)ホバリング音。

(画面)宇宙艇レネイドブーリー内。黒い通信機器を操作しているフロール。
フロール「・・・おかしいな。確かこのポイントのはずだ。通信媒体へはこの周波数だったかな? ・・・生きていろよ。地球人。(操作)」

(画面)海中に沈んでいる宇宙戦艦アンドロメダ。
(効果音)海中。

(画面)宇宙戦艦アンドロメダブリッジの外観を海中から。
(効果音)海中。

(画面)宇宙戦艦アンドロメダブリッジ内。暗い非常照明のブリッジ内。点滅を繰り返しているアナライザー。
(効果音)アナライザー電子音。
(画面)宇宙服を着ているアンドロメダ乗組員たち。画面の一番手前で右ひざをフロアへついている沙織。

(画面)点滅を繰り返しているアナライザーの頭部の描写。
(効果音)アナライザーの電子音。
(アナライザーからの声)・・・NKLWVHIROG;IOANOAUO・・・。

(画面)沙織のアップ。

(画面)島のアップ。

(画面)点滅を繰り返しているアナライザーの頭部の描写。
(効果音)アナライザーの電子音。
(アナライザーからの声)・・・PEIYNERABTWP:TUOP]IWBJN・・・。

(画面)首をかしげる穴井教授。
穴井「・・・なんじゃい? 何かの声かいな? ガミラス語じゃなさそうじゃが?」

(画面)アナライザーへ顔を近づける沙織のアップ。
(効果音)アナライザーの電子音。
沙織「・・・(ガミラス語)・・・こちらは応答している。送信しているのは誰か? ガミラス人なのか?」

(画面)様子を見ている相原。
相原「・・・ただの雑音かも知れませんよ」

(画面)海上でホバリングしている宇宙艇レネイドブーリー。
(効果音)ホバリング音。

(画面)宇宙艇レネイドブーリー艇内。苦虫のフロール。
(効果音)電子音。
フロール「・・・まいったな。まったく意思の疎通ができないぞ。やっぱりガトランティス語じゃ駄目か・・・」

(画面)アナライザーへ顔を近づけている沙織のアップ。
(効果音)アナライザーの電子音。

(画面)宇宙艇レネイドブーリー艇内。通信ボックスを重そうに持ち下げるフロール。
(効果音)電子音。
フロール「・・・ガミラス語しか通じないな。こりゃ。・・・(後方へ)デスラー! ガミラス語で”こんにちは”って何て言うんだ?」

(画面)まゆをひそめる沙織。
沙織「・・・デ・・・?」

(画面)宇宙艇レネイドブーリー艇内。後部座席で目を閉じているデスラー。さしものデスラーも多量の出血ですでに意識を失っているらしく,フロールの問いかけにも応ずる気配が感じられない。
(効果音)電子音。
(画面)いの字のフロール。
フロール「や・・・! やばい! どうする・・・? (自分の頭をつつく)・・・考えろ。考えろ。何かいい方法は・・・」

(画面)まゆをひそめたまま,うつむいている沙織。

(画面)停泊しているガトランティス第3遊動機動艦隊。178隻。
(効果音)複数の機動音。

(画面)宇宙戦艦コタックの外観。
(効果音)機動音。

(画面)宇宙戦艦コタックブリッジ内。フロアに腕組みして立っているコーテク。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(画面)進み出る副官。
副官「・・・地球艦隊の布陣の詳細を報告いたします。・・・空母3隻。戦艦5隻。巡洋艦12隻。駆逐艦16隻。・・・計36隻。過去のデーターから見ますと戦闘機は空母に各130機ほど。戦艦には艦載機が60機ほど配備されているものと思われますので,700機足らずの戦闘機隊を有していると算段できます。いずれも我が艦隊の戦力には遠く及ばないものです」

(画面)鼻で笑って見下ろすように視線を送るコーテク。
コーテク「お前は肝心な戦力を忘れている。あの地球艦隊には5隻の戦艦が残っている。それならば俺たちは一時(いっとき)に5発の艦首波動砲を浴びる危険があるということだ。地球の宇宙艦は100パーセント波動エネルギー仕様なんだぞ。イスカンダル人が開発した門外不出の最強エネルギーだ。主砲ひとつにしてもガトランティスのそれよりは強力だということをその頭に叩き込んでおけよ」

(画面)たじろぐ副官。

(画面)笑みを浮かべるコーテク。
コーテク「ははは。心配するな。副官。。いかに俺たちのものよりも強い兵器を持っているからといって,目的を達成するのに有利になるとは限らないさ。考えてもみろ。お前はハエを落とすのに銃を使うか? ハエなんか平手打ちで充分だろう? それと同じさ」

(画面)副官。

(画面)自分の頭をつつくコーテク。
コーテク「・・・数の優位の意味をはき違えるなよ。副官。ここをもっとやわらかくしろって。先入観を捨ててかかれ。敵が自分たちよりも劣っているなどと思うな。むしろ優っているもんだと決めてかかれよ。そうすれば,敵の弱点を探そうって気になれる。・・・艦首波動砲の弱点は何だと思う?」

(画面)考える素振りの副官。

(画面)軽く頭を振って指を立てるコーテク。
コーテク「・・・いいか。まず標的への照準が合わせにくい。艦体全てが砲台みたいなものだからな。それと機動から発射するまでの時間がかかりすぎる。平均0.3ガトランティスアワーぐらいは軽くかかってしまう。しかもその間は主砲発射などのエネルギー攻撃は一切使用できないから敵の攻撃に対して完全に無防備になる。・・・そして何といっても最大の弱点は連続発射ができないということさ。だから地球軍も艦首波動砲を撃つときは相当の覚悟が必要になる。失敗すれば取り返しがつかないからな。艦首波動砲は一撃必殺の兵器だけに,その効果を最大限に発揮する環境が整わなくっちゃ宝の持ち腐れになりかねない」

(画面)振り返っているブリッジスタッフたち。

(画面)笑みを浮かべるコーテク。
コーテク「艦首波動砲は,まとまっているものにはめっぽう強いが分散している敵にはその威力の半分も発揮できない。しかも動きまわる敵に対して機敏(きびん)に反応できない。リカバリーも遅い。背後の敵には発射さえも難しくなる。つまり・・・」

(画面)コーテクのアップ。
コーテク「俺たちが動き回って地球艦隊を取り囲んでしまえば艦首波動砲など空気銃以下の存在に成り下がるってことだ。これが数の優位ってやつさ。よく覚えておけよ。副官」

(画面)冥王星宙域で隊列を整えている地球艦隊。36隻。
(効果音)複数の機動音。

(画面)宇宙戦艦メッロの外観。・・・アングルが回転。ゆっくりと艦底艦尾へ画面が接近していく。
(効果音)機動音。

(画面)宇宙戦艦メッロ艦内。艦外離発着エリア。作業帽をかぶっているスタッフが歩きまわっている。立体格納ステージには何段にも連なっているステージフロアに戦闘機が格納されている。
(効果音)艦内音。
(画面)ふたりのスタッフが話しながら歩いてくる。
(話し声)
(画面)ふたりのスタッフの上半身の描写。歩いている。
スタッフA「(ポルトガル語)・・・それにしても自分たちの仲間を乗せた救命艇を何の警告も発しないで撃ち落とすなんて,ガトランティス軍の兵士に対する扱い(あつかい)ってのはやっぱり地球人と全然違うんだろうな」
スタッフB「(ポルトガル語)・・・異星人には逆に地球人のジュネーブ条約が異質に感じるものなんだろうな。何かの罠(わな)だと思ったのかも知れない。まかり間違ってガトランティスの捕虜にでもなったら,えらいことだぞ」

(画面)ふと何かに気を取られるスタッフ。

(画面)スタッフの視界。彼らと同じ作業服と作業帽を身につけている男がひとり。少し距離をおいて,フロア内をふたりのスタッフたちとはすれ違う方向へ向けて歩いている。
(効果音)足音。

(画面)歩いているふたりのスタッフ。ひとりのスタッフが呼びかける。
スタッフA「(ポルトガル語)・・・おい! もうすぐ戦闘が始まるぞ! 戦闘機の整備の進捗(しんちょく)はどうだ?」
スタッフB「・・・(同じ方向へ顔を向ける)」

(画面)立ち止まる様子もなく,歩きすぎていく男。

(画面)ふたりのスタッフ。
スタッフA「(ポルトガル語)・・・。何だ。ずいぶんと無愛想なやつだな。(もうひとりへ)・・・あんなやつ,この艦にいたか?」
スタッフB「・・・(両肩をあげる」

(画面)海中に沈んでいる宇宙戦艦アンドロメダ。
(効果音)海中。

(画面)宇宙戦艦アンドロメダブリッジ内。暗い非常照明のブリッジ内。点滅を繰り返しているアナライザー。傍らにはかがみこんでいる沙織の姿。
(効果音)アナライザー電子音。

(画面)ソマリア・ギルが頭を振る。
ギル「(英語)・・・やっぱり,雑音だったな。このままここにいても酸素が減っていくだけだ。シマ提督の案に従うしかないだろ」

(画面)正面を見据えている島。

(画面)アナライザーの横の沙織がきびしく振り返る。
沙織「・・・(にらみつける)・・・あなたは,空間騎兵隊のくせに宇宙艦の自爆がどういうものか全くわかってないのね!」

(画面)目を丸くするソマリア・ギル。

(画面)前へ進み出る穴井教授。
穴井「・・・沙織・・・! よさんか・・・!」

(画面)にらみつけている沙織のアップ。
沙織「自爆装置のカウントダウンは5分しかないのよ! 一番最後にここを脱出する人には5分間しか時間がないの! これがどういうことかわかる!?」

(画面)ソマリア・ギル。

(画面)視線を右へ向ける南部。

(画面)視線を左へ向ける太田。

(画面)視線をまっすぐに向けている沙織。

(画面)スタッフたちの視線を一身に受けている島。

(画面)表情を和らげる島。
島「・・・大丈夫だよ。穴井測定士。私は確かに一番最後だが,アナライザーといっしょだ。彼の推進機能なら時間内に安全エリアまでの移動は可能だ。心配は必要ない」

(画面)佐渡医師に支えられながら見上げている綾乃。

(画面)立ちすくんでいる薮。
薮「・・・提督・・・」

(画面)視線を向けて,周囲を見回す島。
島「・・・私はクルー全員の命に責任を負っている。みんなの脱出をこの目で確認するまで安易に自分の命を粗末にはしないよ。心配するな。・・・さあ,もう時間がない。先ほどの説明通りに脱出作業を開始しよう。(沙織へ)・・・もう充分だよ。穴井測定士。(微笑)・・・ありがとう」

(画面)沙織のアップ。

(画面)島を見ていた相原が何気に視線を変える。・・・首をかしげる相原。

(画面)うつむきながら立ち上がる沙織。

(画面)各々(おのおの)身体の向きを変えて歩き始めるブリッジスタッフたち。

(画面)相原のアップ。
相原「・・・? (見回す)みんな,静かに・・・! 何か聞こえないか・・・?」

(画面)立ち止まる全ての宇宙服。

(画面)点滅を繰り返しているアナライザーの頭部の描写。
(効果音)アナライザーの電子音。
(アナライザーからの声)・・・jfiobhuop・・・(ガミラス語)・・・聞・・・えるか。・・・応答・・・ろ・・・。

(画面)ぴくりと顔を上げる沙織。背後のアナライザーを振り返る。

(画面)顔を向けている相原。

(画面)前へ進み出る土方機関長。

(画面)目を細める島。

(画面)驚愕の穴井教授。
穴井「・・・な・・・なんじゃと・・・」

(画面)アナライザーへ顔を近づけている沙織。
沙織「(ガミラス語)・・・聞こえている! 応答している! ガミラス人か?」

(画面)海上をホバリングしている宇宙艇レネイドブーリー。
(効果音)ホバリング音。

(画面)宇宙艇レネイドブーリー内。黒い通信装置と黒い翻訳機を両手で交互に動かしているフロール。
フロール「・・・(翻訳機を通信装置から離す)・・・ったく,ややこしいったらありゃしない・・・。えっと・・・。(翻訳機へ)・・・生きていたか。それはよかった。(翻訳機を通信装置へ近づける)」

(画面)点滅を繰り返しているアナライザーの頭部の描写。
(効果音)アナライザーの電子音。
(アナライザーからの声)・・・(ガミラス語)・・・生きていたか。それはよかった。

(画面)冥王星宙域で戦闘配備している地球艦隊。36隻。
(効果音)複数の機動音。

(画面)宇宙戦艦メッロの外観。
(効果音)機動音。

(画面)宇宙戦艦メッロ艦内。まっすぐに伸びている艦内通路。戦闘態勢の通路は必要最小限の照明に限定されているため薄暗い。通路の果ては,やはり薄暗く視界も限られている。しかしそこには明らかに何か動く影が見える。・・・近づいてくる影。
(効果音)足音。

(画面)艦内通路のフロアの描写。・・・画面に入ってくる人の影。
(効果音)足音。

(画面)艦内通路を歩いている作業服に作業帽を目深にかぶっているひとりの男を正面から。
(効果音)足音。

(画面)歩いている男を背後からのアングル。向かっている薄暗い通路の果て。アングルは男に固定。
(効果音)足音。

(画面)作業帽の男のアップ。帽子のつばに隠れて表情は分からない。
(効果音)足音。

(画面)歩いている男を背後からのアングル。向かっている通路の果てに,出入り口のオートドアが見えてくる。アングルは男に固定。・・・徐々に近づいてくるオートドア。・・・やがてドアの前に立ち止まる男の背中。引き放たれるオートドア。向こう側の照明の光が照らし出される。
(効果音)足音。ドアの開閉音。

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。開かれたオートドア。そこに立っている作業服の男。ごく自然にブリッジ内へ入ってくる。
(効果音)ブリッジ内機械音。話し声。足音。
(画面)戦闘態勢のため,各自の仕事に余念のないブリッジスタッフたち。

(画面)艦長席で,横に立っているスタッフと何やら話をしているベルナルド。・・・うなずくと,スタッフが敬礼してその場を離れていく。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(画面)正面に向き直るベルナルドのアップ。

(画面)艦長席から低い位置にあるフロアの正面にうつむいて立っている作業服の男。身体は正面を向いている。

(画面)けげんな表情のベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・整備スタッフか? 所属はどこだ?」

(画面)応えない作業服の男のアップ。うつむいている。

(画面)作業服の男を背後からのアングル。画面左端に。画面右には艦長席でにらみつけるベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・戦闘配備中である。作業が滞る(とどこおる)ことも滞らせることも許さん。どういう理由でブリッジまで上がってきたのか? 君の所属部署はどこだ? 答えたまえ」

(画面)うつむいている作業服の男。

(画面)にらみつけているベルナルド。

(画面)うつむいている作業服の男。
男「・・・第156遊動機動艦隊,第2爆撃機隊6号機パイロット。・・・(顔を上げる)」

(画面)驚愕するベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・! お,お前は・・・!」

(画面)作業帽の下で無表情のオサードのアップ。

(画面)海中を疾走している宇宙艇レネイドブーリー。
(効果音)海中推進音。

(画面)操縦管を操作するコクピットのフロール。
フロール「・・・あれか」

(画面)海中に沈んでいる宇宙戦艦アンドロメダ。・・・そこへ向かっていく宇宙艇レネイドブーリー。
(効果音)海中推進音。

(画面)コクピットのフロール。
フロール「・・・被弾したエンジン部のでかい穴・・・か。(顔を向ける)・・・おっと。あれだ」

(画面)海中。宇宙戦艦アンドロメダのエンジン付近。装甲板に大きな穴が開いている。
(効果音)海中推進音。

(画面)コクピットのフロール。
フロール「・・・なるほど。何とか機関部には潜り込めそうだな。(操作)・・・(後方へ)デスラー! あと少しだから頑張れよ! 死ぬんじゃないぞ! (正面へ)・・・って聞こえないか」

(画面)海中。宇宙戦艦アンドロメダのエンジン付近の装甲板の穴にゆっくりと接近していく宇宙艇レネイドブーリー。
(効果音)海中推進音。

(画面)水没している宇宙戦艦アンドロメダ機関室。数人の宇宙服が見上げている様子。
(効果音)海中。

(画面)海中。宇宙戦艦アンドロメダのエンジン付近の装甲板の穴へゆっくりと侵入していく宇宙艇レネイドブーリー。
(効果音)海中推進音。

(画面)向かって右側の島と並んで見上げている土方機関長。彼らを照らし出す光。
土方「・・・(視線を固定)・・・あれだ。(左腕を上げる)」
島「(同じ方向を見る)」

(画面)機関エリアの上部からゆっくりと降下してくる宇宙艇。ヘッドライトの光が画面を横断する。
(効果音)海中推進音。

(画面)コクピットのフロール。慎重に操縦している様子。

(画面)サーチライトを上に向けるソマリア・ギル。

(画面)宇宙艇レネイドブーリー内部。画面右側にコクピットのフロールの後ろ姿。フロントガラスの向こうには小さく光る一点のサーチライトの光。

(画面)ゆっくりと降りてくる宇宙艇レネイドブーリー。
(効果音)海中推進音。

(画面)見上げている南部。

(画面)相原と太田も並んで見守っている。・・・横に浮遊してくる薮。
薮「(ふたりへ)・・・見たこともない船ですよね。地球のものでもガミラスのものでもないような・・・」

(画面)ゆっくりと降りてくる宇宙艇レネイドブーリー。・・・徐々に視界へ大きくなってくる。
(効果音)海中推進音に逆噴射音が加わる。

(画面)コクピットのフロール。・・・左手でレバーを操作する。

(画面)減速を始める宇宙艇レネイドブーリー。波動シリンダー外観がヘッドライトに照らし出される。
(効果音)停止時の水流。

(画面)見つめている島。

(画面)減速する宇宙艇レネイドブーリー。
(効果音)停止時の水流。

(画面)やがて数人の宇宙服の前にゆっくりと降りてきて停止する宇宙艇レネイドブーリー。水流でわずかに身体が揺れる宇宙服たち。
(効果音)停止時の水流。

(画面)サーチライトを当てようとするソマリア・ギルを制する島。・・・ゆっくりと身体を浮かせて画面から退場。
(画面)顔を向ける穴井教授。
穴井「・・・島提督。いかん。どんな危険があるか,わからんぞ。・・・(後ろのクルーへ指示)」

(画面)停止している宇宙艇レネイドブーリーの右舷へ近づいていく島の後ろ姿。
(画面)宇宙艇レネイドブーリーを正面から。画面左側から近づいていく島の宇宙服。後から数人の宇宙服が続く。

(画面)宇宙艇レネイドブーリーの右舷の突起に足を伸ばす島。
(画面)突起部へかかる島の右足。

(画面)島のアップ。

(画面)島の視界。宇宙艇レネイドブーリーのフロントガラスをはさんで見える艇内の様子。明るい艇内のコクピットで操縦管を握ってこちらを見ているフロール・レイム・ズォーダー。
フロール「・・・(おもむろにふところに右手を入れる)」

(画面)島のアップ。

(画面)艇内のフロール。・・・ふところから小さな白い旗を出す。それを左右に振り始める。

(画面)視線を狭める島。

(画面)白い旗を振りながら,営業スマイルしているフロール。
フロール「・・・(満面の笑顔)」

(画面)目を丸くする島。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

第10節 全力射撃! 冥王星二連星会戦