第8節 未曾有の危機! 追い詰められる戦士たち

(画面)宇宙艇レネイドブーリーを正面から。アングルは同機に固定。地下に建設されている薄暗い人工建造物へ突入している様子。先ほど突入した入り口は後方へ光とともに遠ざかっていく。パラノイア戦闘機隊が後方から追いかけてくる。建造物の中は露出している金属製の柱がところどころに倒れるように出っ張っている。・・・巧みに柱をかわしてそれでも加速する宇宙艇レネイドブーリー。・・・左右両側から挟みこむように倒れている金属製の柱。90度機体を倒しながらわずかな隙間をすりぬける同機。すぐに体勢を元に戻してヘッドライトを点灯させる。後続のパラノイア戦闘機も次々と隙間をかわす。数機目のパラノイアが柱に接触。火花を散らして爆発する爆光もはるかかなたへ遠ざかっていく。
(効果音)複数の噴射音。接触音。遠くの爆発音。

(画面)宇宙艇レネイドブーリーを後方から追いかけるアングル。建造物内部空間は直線ではなく,途切れなく蛇行(だこう)している。右へカーブ。左へカーブ。一瞬,宇宙艇レネイドブーリーの姿がカーブの向こうへ見えなくなる。すぐに追いつき再び姿を現す同機。
(効果音)機械音。噴射音。

(画面)宇宙艇レネイドブーリー内部。コクピットのデスラー。
(効果音)機械音。噴射音。
デスラー「お嬢さん。お嬢さんの機銃もここなら効果を発揮するはずだよ」
(画面)後ろから正面へ向き直るフロール。
フロール「・・・なぜかとは訊かないぞ。腹立つからな。(機銃を発射する)」
(効果音)機銃発射音。

(画面)画面左側にフロールの斜め後ろ姿。風防ガラスの向こうのパラノイア戦闘機隊。・・・上下左右に動く機銃砲塔。狭い空間の中で限られた範囲しか動けないパラノイア戦闘機隊。フロールの放つ弾光に直撃されて崩れ落ちる金属製の柱。たまらず柱を避けて減速する戦闘機1機。他の戦闘機と接触。遠ざかる爆光。他の戦闘機がそれを追い抜く。
(効果音)直撃音。爆発。接触音。

(画面)スクリュー状に出張っている柱を避けるように右方向へ1回転する宇宙艇レネイドブーリー。
(効果音)機銃発射音。噴射音。

(画面)機銃の反動に歯を食いしばっているフロール。風防ガラスの外は不規則にかたむき,回転している。
(効果音)機銃発射音。

(画面)宇宙艇レネイドブーリーを左側面から。アングルは宇宙艇レネイドブーリーに固定。猛速度で左から右へ流れていく鉄骨群。後部機銃からはフロールの放つ弾光が発射され続けている。・・・アングルが右へ移動。・・・パラノイア戦闘機隊に固定。しかし,鉄骨とフロールの機銃攻撃に余裕がないのか,操縦に専念しているらしく機銃攻撃は希薄である。通過していくフロールの弾光。
(効果音)複数の噴射音。機銃発射音。

(画面)憎憎しげな表情のキーク。
(効果音)噴射音。
キーク「くそ。・・・ここは一体。どこなんだ・・・? どこへいくつもりだ・・・!」

(画面)キークの視界。つきず離れずの宇宙艇レネイドブーリーのエンジン噴射口。同機が鉄骨の柱をかわす。その直後に視界も同じ角度で鉄骨の柱をかわしていく画面。
(効果音)噴射音。鉄骨をかわした際の空気を切る音。

(画面)宇宙艇レネイドブーリーを正面から。たくみなバランスと角度で鉄骨群の間を加速している。・・・後続の1機のパラノイアがたまらず鉄骨に接触。一度接触すれば命取りである。たちまち周辺の鉄骨群にピンボールのように跳ね返ってばらばらになる。飛び散る破片をかわす戦闘機隊。戦闘機隊はすでに残り6機となっている。
(効果音)直撃音。爆発。接触音。
(BGM)M−34

(画面)宇宙艇レネイドブーリー内。コクピットのデスラー。
(効果音)噴射音。
デスラー「(パネルを見てから視線を上に)・・・お嬢さん。少しばかり船がかたむく。まあ,たいしたことはない」
(画面)いの字のフロール。
フロール「ほんとうだろうな!」
(画面)パネルの表示。サークルポイントに近づいている光の点滅。
(効果音)電子音。
(画面)コクピットのデスラー。
(BGM)M−34
(画面)上部パネルを操作するデスラーの左手。
(効果音)操作音。

(画面)宇宙艇レネイドブーリーを後ろから。エンジン噴射が弱まる。

(画面)コクピットのデスラー。

(画面)宇宙艇レネイドブーリーの正面。船首の2対のブースターが下方へロケット噴射。・・・船首が上方向へ持ち上がり,画面へ向けて船底を向ける。そのままの体勢で画面を手前へ通り過ぎていく宇宙艇レネイドブーリー。
(効果音)ブースター噴射音。

(画面)船首が完全に上を向いている宇宙艇レネイドブーリーを左側面から。慣性と重力によって少しずつ左下へ落下している船体。

(画面)同じく完全に下を向いてしまっているフロールの左半身の描写。さらに,いの字の横顔。
フロール「そらみろ。やっぱり嘘だ・・・!」
(BGM)M−34

(画面)コクピットが上を向いているデスラー。レバーを操作する様子。
(効果音)レバー金属音。
(BGM)M−34

(画面)内部空洞上部の鉄骨群の間に大きな穴が開いている。上部にぽっかりと開いている通路。

(画面)笑みを浮かべるデスラー。

(画面)フロールのアップ。
フロール「・・・全く! デスラーに操縦を任せてから,ろくなことがない・・・! イスカンダルの女王の言った通りだ・・・! しっかし,どうしてデスラーの周りには,いつもこんなに敵が集まってくるんだ・・・! (ここで急激にフロールのアップが宇宙艇レネイドブーリーと共に遠ざかって行く)・・・うわあ! 悩みはつきなあああぁぁぁ・・・! (遠くなっていくフロールの顔)・・・ぃ・・・」
(効果音)急激なエンジン噴射音。

(画面)人工建造物内部通路で船首を上に向けている宇宙艇レネイドブーリー。一気にエンジン噴射。加速して上部へその姿を消す。かわされて次々と今までの通路の奥へ通過していくパラノイア戦闘機隊。完全に肩すかしの状態。
(効果音)複数の噴射音。ドップラー効果。

(画面)上部通路内部を遠ざかっていく宇宙艇レネイドブーリー。豆粒となる。
(効果音)遠ざかっていく噴射音。

(画面)パラノイアコクピット。後ろを見るキーク。
(BGM)M−34

(画面)通路途中でホバリングするパラノイア戦闘機隊。すぐさま狭い通路で方向転換。逆方向へ戻る。先頭はキーク。
(効果音)加速音。複数。

(画面)上部開口へ次々と飛び込んでいくパラノイア戦闘機隊6機。
(効果音)加速音。複数。

(画面)上を向いているコクピットのデスラーの左横のアップ。

(画面)下を向いている機銃砲塔のフロールの右横のアップ。

(画面)上を向いているコクピットのキークの左横のアップ。

(画面)通路を上からのアングル。加速する宇宙艇レネイドブーリーが画面左側。下から追尾して上がってくるパラノイア戦闘機隊。機銃を撃ち続けている。巧みに弾光をかわす宇宙艇レネイドブーリー。かわされた弾光が多数,画面手前へ通り過ぎていく。宇宙艇レネイドブーリーからも後部機銃砲塔から弾光が発射され続けている。
(効果音)複数の機銃発射音。噴射音。多数。

(画面)後部機銃砲塔内部。画面下部にフロールの後ろ姿。その正面には風防ガラス越しにパラノイア戦闘機隊6機。・・・戦闘機の発射した機銃の弾光が相対速度で正面手前に接近してくる。迫る弾光。・・・右へそれる弾光。
フロール「(右へ)うぉ!」
(画面)連動。機銃の弾光が相対速度で正面手前に接近してくる。迫る弾光。・・・左へそれる弾光。
フロール「(左へ)うぉ!」
(画面)連動。機銃の弾光が相対速度で正面手前に接近してくる。迫る弾光。・・・上へそれる弾光。
フロール「(上へ)うぇ!」

(画面)真上へ上昇している宇宙艇レネイドブーリーを左側面から。弾光をよけているが確実に加速している。アングルが下へ移動。同じく上昇加速しているパラノイア戦闘機隊。6機。両者の間で機銃の弾光が飛び交っているが直撃はない。
(BGM)M−34
(効果音)機銃音。噴射音多数。

(画面)宇宙艇レネイドブーリー内部。パネルを操作しているデスラー。
(効果音)パネル操作音。噴射音。
(画面)パネルに表示される搭載ミサイルの表示。・・・6つの表示のうちひとつはブランクになっている。残り5つの表示のうちのひとつが赤く点灯する。
(画面)顔を上げるデスラー。
(画面)発射ボタンを押すデスラーの左手。
(効果音)小さなスイッチ音。

(画面)宇宙艇レネイドブーリー正面の全容。船首右側の発射管が開いてそこから1発のミサイルが発射される。吹き飛ぶ煙。
(効果音)ミサイル発射音。

(画面)宇宙艇レネイドブーリーが画面下部。発射された1発のミサイルが噴射痕を残しながらまっしぐらに通路を上昇していく。
(効果音)遠ざかる噴射音。

(画面)目を細めるキーク。

(画面)冥王星大気圏内。流氷が浮かび広がる海面。
(効果音)さざなみ。

(画面)さらに上昇していくミサイル。
(効果音)噴射音。

(画面)通路を上昇してくる宇宙艇レネイドブーリー。後続のパラノイア戦闘機隊。飛び交う弾光。
(BGM)M−34
(効果音)機銃音。噴射音多数。

(画面)宇宙艇レネイドブーリー内部。コクピットのデスラー。
(効果音)噴射音。
デスラー「(後ろを見やる)・・・もう少しの辛抱だよ。お嬢さん」
(画面)首が前のめりになっているフロール。
フロール「足がしびれてきた・・・。今度はほんとうだろうな・・・!」

(画面)キークのアップ。

(画面)冥王星大気圏内。流氷が浮かび広がる海面。・・・突然大きな轟音と共に吹き上がる巨大な水柱。流氷を突き破り海水が天高く舞い上がる。
(効果音)水の轟音。

(画面)通路を上昇してくる宇宙艇レネイドブーリー。後続のパラノイア戦闘機隊。飛び交う弾光。・・・突然ぶれる画面。
(BGM消える)
(効果音)機銃音。噴射音多数。空気を伝わる轟音。

(画面)冥王星大気圏内を航行している宇宙戦艦イメルディア。
(効果音)機動音。

(画面)宇宙戦艦イメルディアブリッジ内。左へ視線を向けるイメル。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(画面)振り返るレーダー士。
レーダー士「・・・WN方向にて爆発反応! 海面隆起! 自然のものではありません!」
(画面)まゆをひそめるイメル。
イメル「・・・海底の下から・・・? 何だ? 一体この地面の下には何があるのだ・・・?」
(画面)書類を持ってスタッフがイメルの前へ立つ。イメルは画面左へ後ろ姿。
スタッフ「・・・提督。判明いたしました。(書類へ視線)・・・この区域には,かつてのガミラス軍太陽系方面最前線基地の跡地があります」
(画面)あごに手をあてるイメル。
イメル「・・・なるほどな。・・・ということは,デスラーは廃墟と化した遺跡に逃げ込んだということか・・・。(スタッフへ)・・・金属センサーでその基地のレイアウトの概要を探れるか? 爆発地点からのデスラーの動きをシミュレートする。そのポイントへここから一気に空爆攻撃を仕掛けるぞ」
(画面)顔を上げるスタッフ。
スタッフ「・・・提督・・・。しかし,あの中にはデスラーを追っていったキーク副官の戦闘機隊がいます」
(画面)目を細めるイメル。
イメル「・・・地下深く潜られてしまっては通信もままならん。通信波圏外なのだ。生死の確認もできん。今の爆発で死んだかも知れん。ガトランティス量子論では,確認できずんば死んだものとみなす! 総員,空爆態勢だ!」

(画面)左へ進路をとる宇宙戦艦イメルディア。
(効果音)機動音。

(画面)通路を上昇してくる宇宙艇レネイドブーリー。後続のパラノイア戦闘機隊。飛び交う弾光。・・・ぶれている画面。
(効果音)機銃音。噴射音多数。空気を伝わる轟音。

(画面)宇宙艇レネイドブーリー内部。コクピットのデスラー。
(効果音)噴射音。それに混じって聞こえてくる不気味な空気の流れ。
(画面)視線を泳がせて耳をすますフロール。
フロール「な・・・なんだ・・・?」

(画面)はるか上へ伸びている通路。光が届かないため,さらなる上は暗闇に包まれている。小刻みに震える画面。
(効果音)空気の流れ。

(画面)冥王星大気圏内。海面を上空からのアングル。海底の底に穴が開いたように出現している巨大な渦潮(うずしお)。
(効果音)水の轟音。

(画面)デスラーのアップ。

(画面)フロールのアップ。

(画面)キークのアップ。

(画面)はるか上へ伸びている通路。
(効果音)空気の流れ。水の轟音。

(画面)宇宙艇レネイドブーリー内部。コクピットのデスラー。左手でレバーを操作する。
(効果音)噴射音。

(画面)はるか上へ伸びている通路。・・・そのはるか上から猛烈な勢いで流れ落ちてくる大量の海水。
(効果音)空気の流れ。水の轟音。

(画面)目をこらすデスラー。

(画面)通路の内壁すれすれを上昇している宇宙艇レネイドブーリーを船体上部からのアングル。猛速度で下方へ流れる内壁。海水に押されることによる猛烈な風圧が同機のバランスを崩しかける。
(効果音)噴射音。水の轟音。風圧。

(画面)大量の海水が迫ってくる。
(効果音)水の轟音。

(画面)青ざめているパラノイア戦闘機のパイロット。

(画面)歯を食いしばっているキーク。

(画面)大量の海水が迫ってくる。
(効果音)水の轟音。

(画面)目をこらすデスラー。

(画面)通路の内壁。・・・そこにぽっかりと開いている穴。

(画面)大量の海水が迫ってくる。
(効果音)水の轟音。

(画面)宇宙艇レネイドブーリー内部。コクピットのデスラー。両腕で思い切り操縦管を引き上げる。
(効果音)噴射音。
(画面)遠心力に引っ張られるフロール。

(画面)上へ続く通路をローアングルから。迫ってくる大量の海水の流れ。画面向かって左側すれすれの内壁に船底を向けて上昇していた宇宙艇レネイドブーリーが,逆さまの状態で右側の内壁の穴へ飛び込んでいく。
(効果音)水の轟音にかき消される。

(画面)パラノイアコクピットのキークもまた操縦管を引き上げる。

(画面)恐怖に凍りつくパラノイア戦闘機のパイロット。
(画面)パイロットの視線。迫ってくる大量の海水。かざしている自らの両腕。
(パイロットの声)うわあああ・・・! (途中で途絶える)
(効果音)水の轟音。

(画面)大量の海水に,たちまち押し流されていくパラノイア戦闘機隊。
(効果音)水の轟音。

(画面)海水が流れている穴の外側の景色を背に上下逆さまの状態で開口内通路を飛行している宇宙艇レネイドブーリー。
(効果音)遠ざかる水の轟音。噴射音。

(画面)今度は逆さまになっているフロール。
フロール「・・・あうあ・・・やっぱり嘘だったか・・・」

(画面)逆さまの船体を反転させ上下を元に戻して加速する宇宙艇レネイドブーリー。画面を通過して退場。・・・後方から追尾してくる1機のパラノイア戦闘機も同様。
(効果音)2機の噴射音。

(画面)パラノイアコクピットのキーク。
(効果音)噴射音。
キーク「・・・! (歯を食いしばっている」

(画面)宇宙艇レネイドブーリー内部。コクピットのデスラー。
(効果音)噴射音。
デスラー「(視線を上にして笑み)・・・ほう・・・」

(画面)回転のみの固定アングル。右から左へ猛速度で通り過ぎていく宇宙艇レネイドブーリーとパラノイア戦闘機。遠ざかっていく両機。
(効果音)噴射音。ドップラー効果。

(画面)海底に沈んでいる宇宙戦艦アンドロメダ。
(効果音)海底。

(画面)艦内医務室。多数の配線がつながれているアナライザーの全体像。
(効果音)電子音。
(画面)波状のラインゲージを表示している測定器。ハートマークの横の数字は62。血圧表示は80と50。体温表示は35.2。
(画面)透明シートの中のベッドに寝かされている綾乃。マスクにて酸素吸入が行われている。点滴のパックが傍らにぶらさがっている。シートの中にはまだ宇宙服を着ていない佐渡医師と島。他の乗組員はいないようだ。

(画面)鼻と口を覆うマスクをしている佐渡医師。マスクからは1本のチューブが出ている。
佐渡「(島へ)・・・シートの中の温度は16度です。これが限界ですね。体温は何とか回復しました。脈拍と血圧も低いですが。呼吸数も1分間に14回・・・。低温と低酸素にさらされていた時間が微妙に長かったようですがどうにか一命はとりとめそうです・・・。点滴は引き続き進めますが・・・ただ,このロボット君の機能がどこまでもつか・・・」

(画面)マスクをしている島。
島「(顔を上げる)・・・大丈夫か? アナライザー」

(画面)シートの外で頭部スクリーンを点滅させるアナライザー。
アナライザー「ダイジョウブ。ダイジョウブ。モリ サン ノ タメ ナラ エンヤコリャ」

(画面)マスクを向ける佐渡医師。
佐渡「島さん。しかし,いずれにしてもこのままでは乗組員全員がもちません」
(画面)島。
島「・・・先生。私はこれから機関エリアへ行きます。今,教授たちが水没した機関室内で有効なユニットを探してくれています。とにかく補助エンジンだけでも動いてくれれば,生命維持装置が回復します。そうなれば今後の手立てもつくというものです」

(画面)ためらいがちに顔を上げる佐渡医師。
佐渡「・・・もしも有効なユニットが見つけられなかったら・・・?」

(画面)黙っている島。

(画面)佐渡医師。
佐渡「島さん。無線通信のガミラス人のことはどう思います? ・・・ガミラス人が私たちを助けるなどと信じられますか?」
(画面)顔を向ける島。
島「先生。それは不確かな情報でしかありません。もちろん到底信じられることではないでしょうね。・・・ただ・・・」
(画面)佐渡医師。
佐渡「・・・ただ・・・?」

(画面)遠くを見るような島の表情。
島「・・・ただ・・・過去にひとりだけ,地球側についてくれたガミラス人を知ってはいますが・・・」

(画面)佐渡医師。

(画面)目で苦笑する島。
島「・・・彼が生きていたら,今のこの状況をどう思うだろうか・・・」

(画面)内部通路を飛行している宇宙艇レネイドブーリー。追尾しているパラノイア。交錯する弾光。
(効果音)噴射音。複数。機銃発射音。

(画面)宇宙艇レネイドブーリー内部。コクピットのデスラー。
(効果音)噴射音。

(画面)デスラーの視界。狭い通路のはるか先に光。・・・猛速度で後方へ流れていく上下左右の通路内壁。ぐんぐん接近してくる正面の光。

(画面)宇宙艇レネイドブーリー内部。コクピットのデスラー。顔に光が照らし始める。
(効果音)噴射音。

(画面)宇宙艇レネイドブーリー後部が画面下部。通路内壁が後方へ流れる。迫ってくる通路の出口。次第に光が大きく眩しく迫ってくる。・・・そして出口の光へ飛び込む同機。一瞬,白くなる画面。明順応にて光が薄れて出口の外の情景が明らかになる。・・・そこはかなり広いドーム状の空間。天井のガラススクリーンには太陽の光が弱く海の波の形状を照らし出している。フロアには海水が浸水しており,さらに奥にはスロープ状になっているフロアが浸水してきている海水の奥底へ沈み込んでいる。・・・アングルストップ。遠ざかっていく宇宙艇レネイドブーリーとパラノイア。弾光の交錯。
(効果音)噴射音複数。反響。機銃音。

(画面)宇宙艇レネイドブーリー内部。コクピットのデスラー。たくみな操縦。
デスラー「(笑み)ふふ。ヤマトめ・・・。かなり手ひどくやってくれたものだ・・・。まあ,なかなか面白い状況ではある・・・」
(効果音)噴射音。
(画面)機銃を撃ち続けているフロール。
(効果音)機銃発射音。
(デスラーの声)・・・お嬢さん。少し潜るよ。心配は無用だ。
フロール「(撃ちながら)・・・もう,あきらめている・・・! 手がしびれてきた・・・。限界・・・」

(画面)パラノイアコクピットのキーク。
(効果音)噴射音。機銃音。

(画面)デスラーの視界。迫ってくる海面。

(画面)接近してくる宇宙艇レネイドブーリーの前面。さらに接近。アングルが回転。画面左端に浸水してきている海面。宇宙艇レネイドブーリーの左舷描写。わずかに減速。海面に飛び込んでいく同機。広がる波しぶき。
(効果音)噴射音。飛び込む水音。

(画面)衝撃で機銃操作管から手を滑らせるフロール。
(効果音)轟音。
フロール「(前のめり)・・・あうあ!」

(画面)目を見開くキーク。

(画面)パラノイア正面。機体を傾けるも,フロールが最後に放った弾光が左翼をかすめる。火花。バランスを崩して右方向へ機首を回転させていく。画面から退場。
(効果音)弾光命中。エンジン不調。

(画面)気泡を引きずりながら海中を進行している宇宙艇レネイドブーリー左斜め正面。後方には揺らいでいる波間の光。
(効果音)海中。

(画面)バランスを崩しているパラノイア。・・・フロアへ接触。大破。
(効果音)エンジン不調。激突音。摩擦音。金属音。

(画面)気泡を引きずりながら海中を進行している宇宙艇レネイドブーリー左斜め正面。後方には揺らいでいる波間の光。・・・波間の外側でまばゆく光り輝く爆光。崩れる波間の光。揺らぐ海中。少しバランスを崩す宇宙艇レネイドブーリー。
(効果音)海中。こもる爆発音。

(画面)宇宙艇レネイドブーリー内部。機銃砲塔で両手をぶらつかせているフロール。
(効果音)遠い爆発音。
フロール「・・・ゑ?・・・」

(画面)コクピットで微笑するデスラー。
デスラー「ふふ。お見事」

(画面)冥王星大気圏内を航行している宇宙戦艦イメルディア。
(効果音)機動音。

(画面)宇宙戦艦イメルディアブリッジ内。前へ進み出るスタッフ。
(効果音)ブリッジ内機械音。
スタッフ「提督。不完全ですが旧ガミラス基地の,ある程度のシルエットレイアウトがそろいました」
(画面)うなずくイメル。
イメル「・・・よし! 空爆準備だ!」

(画面)海中の中を進行している宇宙艇レネイドブーリーを遠めから。画面右側には,かつて宇宙戦艦ヤマトを冥王星の海へ叩き落した巨大な砲塔が海中で静かな眠りについている。
(効果音)海中の推進音。

(画面)宇宙艇レネイドブーリー内部。コクピットのデスラー。後部座席からフロールがのぞき込む。
(効果音)内部機械音。
フロール「(見上げる)・・・ずいぶんと大げさな大砲だな・・・!」
デスラー「(笑み)・・・そうだね。大気圏内と水中で発生する射程距離と威力の反比例法則というものを全く無視した波動エネルギー砲だよ。設置場所をもう少し工夫していたら状況は全然変わっていただろうね」

(画面)巨大砲塔を通過していく宇宙艇レネイドブーリー。
(効果音)海中の推進音。

(画面)イメルのアップ。
イメル「・・・空爆開始!」

(画面)爆雷を投下し始める宇宙戦艦イメルディア。
(効果音)爆雷投下音。機動音。

(画面)爆雷攻撃を受けて爆発を放つ海面。爆発。爆発。
(効果音)爆発音。多数。

(画面)爆発による衝撃で海中でバランスを崩す宇宙艇レネイドブーリー。
(効果音)海中での衝撃音。多数。

(画面)さらに移動をしながら爆雷を投下する宇宙戦艦イメルディア。
(効果音)爆雷投下音。機動音。

(画面)宇宙戦艦イメルディアブリッジ内。艦長席のイメル。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(スタッフの声)・・・爆雷投下範囲,WNW方向からWNN方向へ・・・!
イメル「爆雷投下間隔をあけるな! 撃ち続けろ!」

(画面)海中でバランスを取り続ける宇宙艇レネイドブーリー。
(効果音)海中での衝撃音。多数。

(画面)ぶれる画面。宇宙艇レネイドブーリー内部。コクピットのデスラー。後部座席のフロール。
(効果音)衝撃音。
フロール「な・・・! 何だ?」
デスラー「まだ戦艦が残っていたね」
フロール「(デスラーを見る)・・・私たちを攻撃しているのか? 見えているのか?」
デスラー「・・・いや。恐らく,ランダム攻撃だね。私たちの動きをシミュレートしているんだろう」
フロール「あてずっぽか! そんなんで死んだら死んでも死に切れん・・・!」

(画面)移動しながら爆雷を投下する宇宙戦艦イメルディア。
(効果音)爆雷投下音。機動音。

(画面)海中でバランスを取り続ける宇宙艇レネイドブーリー。
(効果音)海中での衝撃音。多数。

(画面)宇宙艇レネイドブーリー内部。コクピットのデスラー。おもむろに操縦管を左へきる。
(効果音)衝撃音。

(画面)海中で左へ旋回する宇宙艇レネイドブーリー。
(効果音)衝撃音。

(画面)宇宙空間。冥王星宙域の地球艦隊。
(効果音)複数の機動音。

(画面)宇宙戦艦メッロ外観。
(効果音)機動音。

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。艦長席のベルナルド。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(レーダー士の声)・・・(ポルトガル語)・・・冥王星大気圏内にて再びエネルギー反応!
ベルナルド「(左へ)(ポルトガル語)・・・位置は?」
(画面)振り返っているレーダー士。
レーダー士「(ポルトガル語)・・・ワープ通信施設より半径3キロメートル以内です!」
(画面)目を細めるベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)敵艦隊の様子は・・・?」
(レーダー士の声)(ポルトガル語)・・・20万宇宙キロを維持しています!
ベルナルド「(思案する様子)・・・(ポルトガル語)・・・分からないな。どういうことだ・・・? 眼下の敵は一体何を攻撃しているのだ? ワープ通信施設を狙うならばとっくに攻撃を仕掛けているはずだ。(顔を上げる)・・・どちらにしても,とにかくこのまま容認するわけにはいかない。7番艦と10番艦は直ちに大気圏内へ再突入コース! 眼下の敵へ対処せよ!」

(画面)宇宙空間に停泊しているガトランティス第156遊動機動艦隊。20隻。
(効果音)複数の機動音。

(画面)駆逐艦ブリッジ内。艦長席に座っているガトランティス戦士。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(通信スタッフの声)・・・イメル提督より受電! 地球艦隊の9番惑星への干渉(かんしょう)を阻止せよとのことです!
艦長「(唇を噛む)・・・なぜ,こんなに手間がかかっているのだ・・・! キーク副官はどうしたのだ・・・! 地球艦隊とは戦火を交えないのではなかったのか・・・! (立ち上がる)・・・全艦隊,前進! 地球艦隊へ向かえ!」

(画面)前進を開始する第156遊動機動艦隊。
(効果音)複数のエンジン音。
(BGM)M−46

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。振り返るレーダー士。
(効果音)ブリッジ内機械音。
レーダー士「(ポルトガル語)・・・! 敵艦隊が接近してきます!」
(画面)顔を向けるベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・また牽制(けんせい)か」
(画面)レーダー士。
レーダー士「(ポルトガル語)・・・いえ! 今度は減速の様子は見られません! まっすぐに我らの射程距離内へ向かってきます!」
(画面)正面へ向き直るベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・各艦,待機解除! 艦載機発進!」
(画面)振り返るスタッフ。
スタッフ「(ポルトガル語)・・・冥王星への再突入は・・・?」
(画面)顔を向けるベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・タイミングが一致している。冥王星のエネルギー反応と敵艦隊の動きが連動している。孤立させるのは危険だ。引き返させろ。無人の基地よりも人の乗る宇宙艦を優先する! 前進! 波動砲発射準備!」

(画面)艦載機隊を発進させながら前進する地球艦隊。
(効果音)艦載機発進音。複数のエンジン音。
(BGM)M−46

(画面)冥王星大気圏内。移動しながら爆雷を投下する宇宙戦艦イメルディア。
(効果音)爆雷投下音。機動音。

(画面)宇宙戦艦イメルディアブリッジ内。スタッフが前へ進み出る。
(効果音)ブリッジ内機械音。
スタッフ「提督。我が艦隊と地球艦隊が交戦状態にはいりました!」
(画面)にらみつけるイメル。
イメル「そうか。仕方のないことだ。私が目的を達成するための時間かせぎだ。艦隊がどこまでもつか。随時,艦隊の残存艦艇数を報告しろ。艦隊が全滅する前にデスラーを殺すのだ。引き続き爆雷攻撃を続けろ」
(画面)スタッフのアップ。
スタッフ「・・・」
(画面)なぜか笑みを浮かべるイメル。
イメル「・・・復唱はどうした?」

(画面)冥王星大気圏内。移動しながら爆雷を投下する宇宙戦艦イメルディア。
(効果音)爆雷投下音。機動音。
(BGM)M−46

(画面)廃墟の施設内。スロープで沈み込んでいるフロアに浸水している海水。この空間にはまだ空気のある空間が残されている。・・・やがて海面にさざなみが立ち始めて白い物体がゆっくりと浮かび上がってくる様子。爆雷攻撃で,ぶれている画面。・・・海面から浮かび上がる宇宙艇レネイドブーリー。ヘッドライトで照らされる室内。
(効果音)衝撃音。連続。水音。

(画面)宇宙艇レネイドブーリー内部。上部パネルを操作しているデスラー。ぶれる画面。
(効果音)衝撃音。連続。
(画面)後部座席で外を見るフロール。画面左端にはデスラーの左肩。
フロール「・・・どうするつもりだ? デスラー」
(画面)コクピットでベルトを外しにかかるデスラー。
デスラー「・・・何とか呼吸はできそうだね。(外し終わって後方へ)・・・ここは基地内の対空攻撃センターだったところだ。まだ動力の反応が残っていた。あの野暮(やぼ)な戦艦に一矢報いることが出来るかもしれない」
(画面)ベルトを外し始めるフロール。
フロール「・・・そんなロマンチックだったか?」

(画面)宇宙艇レネイドブーリーの左側舷。エアロックハッチが外倒しに開いていく。・・・半開きの状態でデスラーとフロールが船外へ飛び出してくる。衝撃。ぶれる画面。さすがにバランスを崩すデスラーとフロール。
(効果音)衝撃音。連続。

(画面)ディスプレイが多く並んでいるセンターパネル。そこへ向かっていくデスラーとフロール。衝撃。ぶれる画面。よろめくふたり。ヘッドライトの光。
(効果音)衝撃音。連続。

(画面)操作パネルへ向かうデスラーの左半身。手前にはフロール。何度も計器類を操作するデスラー。衝撃。ふんばるふたり。
(効果音)衝撃音。連続。操作時の金属音。連続。
フロール「・・・動くのか? デスラー・・・?」
(BGM)M−46

(画面)アクティブになるディスプレイ。・・・そのうちの数基に様々な方向から映し出される宇宙戦艦イメルディア。室内に照明が照らされる。
(効果音)電子音。

(画面)宇宙空間。地球艦隊と第156遊動機動艦隊の攻防の描写。
(効果音)戦闘。

(画面)冥王星大気圏内。移動しながら爆雷を投下する宇宙戦艦イメルディア。
(効果音)爆雷投下音。機動音。

(画面)宇宙戦艦イメルディアブリッジ内。振り返るレーダー士。
(効果音)ブリッジ内機械音。
レーダー士「・・・! 動力反応を検知! WW方向! 0.05ガトランティスアワー!」
(画面)振り向くイメル。
イメル「(笑み)・・・ははは。見つけたぞ・・・! もぐらめ! (左手を伸ばす)進路転進! WW方向へ向かえ!」

(画面)左へ進路をとる宇宙戦艦イメルディア。
(効果音)エンジン音。

(画面)ディスプレイに映し出されている宇宙戦艦イメルディア。
(効果音)内部機械音。
(フロールの声)・・・デスラー! こっちへ近づいているぞ!

(画面)デスラーのアップ。操作している様子。・・・デスラーの顔の横へ顔を出すフロール。
(効果音)操作音。
デスラー「・・・近いよ。お嬢さん」
(BGM)M−46

(画面)操作しているデスラーの両手。
(効果音)操作音。

(画面)宇宙空間。航行する宇宙戦艦メッロ。
(効果音)エンジン音。

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。ベルナルドのアップ。
(効果音)ブリッジ内機械音。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・戦死した全ての戦友たちへささげる! 波動砲,発射用意!」

(画面)光を放つ宇宙戦艦メッロ艦首。
(効果音)充填音。

(画面)施設内。デスラーのアップ。操作している様子。・・・ふと何かに気づいたような表情。
デスラー「・・・(微笑)・・・ふふふ。まだ,こんなものが残っていたとはね・・・」
(BGM)M−46

(画面)冥王星大気圏内。接近してくる宇宙戦艦イメルディア。
(効果音)エンジン音。

(画面)操作しているデスラーの上半身の描写。横にはフロール。
(効果音)操作音。
デスラー「(かがみこむ)」
フロール「(視線をおろす)」

(画面)接近してくる宇宙戦艦イメルディア。
(効果音)エンジン音。

(画面)下部パネルに向かっているデスラーの右横顔。右手がテンキーを操作している。
(効果音)操作音。

(画面)接近してくる宇宙戦艦イメルディア。
(効果音)エンジン音。

(画面)下部パネルに向かっているデスラーの右横顔。右手がテンキーを操作している。
(効果音)操作音。
デスラー「・・・進路は地球に固定されているね。忠実な部下を持って,私も鼻が高いよ」
(画面)見下ろしているフロールのローアングル。

(画面)接近してくる宇宙戦艦イメルディア。
(効果音)エンジン音。

(画面)宇宙戦艦イメルディアブリッジ内。首だけ向けているスタッフ。
スタッフ「・・・動力反応ポイントまで,あと0.01ガトランティスアワーです!」
(画面)艦長席でほくそ笑むイメル。
イメル「ここまでだ! デスラー! (顔を左へ)・・・爆雷投下用意!」

(画面)下部パネルに向かっているデスラーの右横顔。右手がテンキーを操作している。
(効果音)操作音。
(画面)デスラーのアップ。
(画面)デスラーの右手。ダイヤル式スイッチを右へ回す操作。
(画面)デスラーのアップ。
(BGM)M−46
(画面)デスラーの右手。・・・ダイヤル式スイッチを左へ戻す操作。
(効果音)銃の安全装置が外れる小さな金属音。

(画面)うつむいているデスラーのこめかみに銃が突きつけられている。・・・向けられている銃口へ下から振り向くデスラーのアップ。

(画面)上から銃を構えているフロール。

(画面)銃口を通り越す視線で上を向いているデスラーのアップ。・・・微笑するデスラー。
デスラー「・・・ふふ。軽い戯れ事(ざれごと)だよ。お嬢さん」

(画面)デスラーの右手。ダイヤル式スイッチを右へ回す操作。
(効果音)操作音。

(画面)接近してくる宇宙戦艦イメルディア。
(効果音)エンジン音。

(画面)宇宙戦艦イメルディアブリッジ内。艦長席のイメル。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(スタッフの声)・・・動力反応ポイントです! 爆雷準備完了!
イメル「・・・勝った・・・! 勝ったぞ! あのデスラーを,この私が・・・! (左手を伸ばす)・・・爆雷投下!」

(画面)パネルに向かっているデスラーとフロール。
(画面)笑みを浮かべるデスラー。
デスラー「・・・あんな,ちっぽけな戦艦1隻にね・・・。まあ,出血大サービスといったところか・・・」

(画面)スイッチを押すデスラーの右手。
(効果音)小さなスイッチ音。
(BGM消える)

(画面)地響きを起こしている海底。
(効果音)振動音。

(画面)小波が震える海面。
(効果音)振動音。

(画面)海底に沈んでいる宇宙戦艦アンドロメダ。・・・振動が伝わっている様子。・・・岩から小石が落下していく。
(効果音)振動音。

(画面)水没している宇宙戦艦アンドロメダ機関室内部。水中で宇宙服を着て作業をしているアンドロメダ乗組員たち。・・・振動でわずかにバランスを崩す。
(効果音)振動音。

(画面)宇宙服のヘルメットの中で口をへの字にする穴井教授。
穴井「・・・な・・・なんじゃ? (海中で浮遊)・・・地震かいな・・・?」

(画面)海中でフェンスに並んでつかまっている島と土方機関長。
(効果音)振動音。
土方「・・・なんでしょうか。この地響きは・・・?」
島「・・・(上を見上げる)」

(画面)宇宙戦艦アンドロメダ医務室内。振動が伝わっている。点滴のスタンドを押さえる佐渡医師。ベッドには綾乃。
(効果音)振動音。
(画面)マスクを向ける佐渡医師。
(画面)頭部スクリーンを点滅させるアナライザー。
アナライザー「・・・ダイキボ ナ えねるぎー ハンノウ デス。ホウシャセイ ノウド ガ キュウ ジョウショウ シテ イマス」
(画面)まゆをひそめる佐渡医師。
佐渡「・・・放射性・・・?」

(画面)宇宙空間。第156遊動機動艦隊の残骸を目の前にしている地球艦隊。戦闘は終結しているようだ。
(効果音)複数の機動音。

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。左へ顔を向けているベルナルド。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(レーダー士の声)(ポルトガル語)・・・冥王星ワープ通信施設付近にて,巨大なエネルギー反応! 強くなっています!
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・どうなっているんだ・・・? 一体,あそこでは何が起こっているんだ・・・?」

(画面)振動している海底。
(効果音)振動音。

(画面)振動している施設内通路。水没している。
(効果音)振動音。

(画面)振動している施設内巨大砲塔。
(効果音)振動音。

(画面)冥王星大気圏内の宇宙戦艦イメルディア。
(効果音)振動音。機動音。

(画面)宇宙戦艦イメルディアブリッジ内。きょろきょろしているイメル。
(効果音)振動音。
(画面)イメルのアップ。

(画面)海面。
(効果音)振動音。

(画面)イメルのアップ。

(画面)震える海面。
(効果音)振動音。

(画面)イメルのアップ。・・・ふと,目を細めるイメル。

(画面)震える海面。・・・徐々に下から突き上げるように海面が盛り上がってくる。淡く赤い光がぼやけてくる。
(効果音)次第に大きくなる振動音。

(画面)目を見開くイメルのアップ。

(画面)海面の隆起が顕著(けんちょ)になる。赤い光も,はっきり見え始めて海面から赤い光線も放射する。
(効果音)次第に大きくなる振動音。・・・轟音が混じる。

(画面)恐怖の表情をみせるイメルのアップ。

(画面)海面が大きく渦巻き,表面の水分が急激に蒸発する。・・・そして,おもむろに海面を突き破るように出現する赤い巨大な火の玉。凹凸(おうとつ)のある表面は不気味な眩い赤い光を放ち,その大きさは宇宙戦艦イメルディアをはるかに凌駕(りょうが)。一気に上昇する火の玉。取り返しのつかない範囲の規模をほこってまっしぐらにこちらへ向かってくる。
(効果音)轟音。

(画面)顔中冷や汗をかいて絶望的な表情で,それでも硬直してしまっているイメルのアップ。喉をつまらせながら人生最後の叫び声を上げるイメル。
イメル「・・・! う・・・うわあああああ!」

(画面)画面の左下半分以上を占める巨大な火の玉。残りの右上半分を占めていく。その中のちっぽけな存在の宇宙戦艦イメルディア。火の玉に接触するかしないかの間隔距離で一瞬のうちに蒸発していく宇宙戦艦イメルディア。・・・画面のほとんどを占領する赤い火の玉は何事もなかったかのように画面を右上へ通り過ぎていく。
(効果音)轟音。

(画面)上昇して遠ざかっていく赤い火の玉。
(効果音)轟音。ドップラー効果。

(画面)宇宙空間。冥王星宙域の地球艦隊。各艦左舷を照らし出す赤い光。
(効果音)機動音。

(画面)赤い光にさらされている宇宙戦艦メッロ。
(効果音)機動音。

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。艦長席で立ち上がっているベルナルド。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(画面)ベルナルドのアップ。顔に赤い光が当たっている。

(画面)宇宙空間。冥王星の大気圏を抜けて,宇宙空間へ飛び出していく赤い火の玉。・・・遠ざかっていく。

(画面)ベルナルドのアップ。顔に赤い光が当たっている。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・何ということだ・・・。あれは・・・遊星爆弾・・・」

(画面)太陽系から遠ざかるように小さくなっていく最後の遊星爆弾。

(画面)宇宙戦艦メッロブリッジ内。振り返るレーダー士。
(効果音)ブリッジ内機械音。
レーダー士「(ポルトガル語)・・・遊星爆弾,遠ざかっていきます! 地球への可能性,0%!」
(画面)艦長席のベルナルド。顔を向ける。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・発射された位置を確認せよ。まだ残弾があるかも知れない。動力反応チェック。発射された原因を調査してくれ」
(画面)すでに計器類へ向かっているスタッフが振り返る。
スタッフ「(ポルトガル語)7番艦を偵察に向かわせます」
(画面)艦長席で軽く息を吐くベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・地球を破滅させた悪魔の爆弾だ。しかし,おかしなものだ・・・。何だ。この懐かしさは・・・」

(画面)旧ガミラス基地施設内。数基のディスプレイを見上げているデスラーとフロールの後ろ姿。
(効果音)内部機械音。
(画面)見上げているフロール。計器類を操作しているデスラーの正面。
フロール「(見上げたまま)・・・一体なんだ? あの赤いでっかいやつは・・・?」
(画面)列挙しているディスプレイが全てブランクになる。
(効果音)機械音消える。
(画面)引き続き操作しているデスラー。横にはフロール。
デスラー「(操作しながら)急がなければね。お嬢さん。今の発射で地球艦隊がこちらに気づいたかも知れない」
フロール「(デスラーへ)・・・気づくだろう。普通」
デスラー「(操作を終えてフロールへ)・・・セキュリティ・ブラインドと自爆装置をタイマーセットした。・・・地球の科学力ではもうこの基地を見つけ出すことさえできないはずだよ。自爆は1トライム後にセットしてある」
フロール「それはいつだ」

(画面)冥王星大気圏内を航行する冥王星艦隊7番艦の右正面。
(効果音)機動音。

(画面)7番艦ブリッジ内。計器類の光を顔面に浴びながら目をしかめるレーダー士。
(効果音)ブリッジ内機械音。
(画面)振り返るレーダー士。
レーダー士「(ポルトガル語)・・・艦長。申し訳ありません。金属探知センサーに何の反応も見られません。冥王星の地表,地下ともに遊星爆弾を発射するほどの施設も動力回路の存在も確認できません」
(画面)鼻の頭に右人差し指第2関節をあてる7番艦艦長。
艦長「(ポルトガル語)・・・どういうことだ・・・? (顔を上げる)・・・とにかく引き続き探索を続行しろ」

(画面)冥王星大気圏内を航行する冥王星艦隊7番艦の左後方。遠ざかっていく。
(効果音)機動音。

(画面)旧ガミラス基地施設内。スイッチを切るデスラーと横に並んでいるフロール。室内の照明が消えて宇宙艇レネイドブーリーの限られた範囲の光が後方から再びふたりを照らし出す。画面側に影ができるふたりの表情。
フロール「(デスラーへ)・・・自爆させるのか? この基地を」
デスラー「地下爆発だよ。お嬢さん。地表では単なる地響き程度にしか感じないだろう。・・・あいにくガミラスの科学力の粋を地球人に,ただで提供してやるほど私は寛大ではないのでね。(フロールへ笑み)・・・さあ行くとしよう。自爆装置は途中で解除できない。自爆するのはお互いに気が進まないはずだ」
フロール「地球の戦艦のエンジンユニットを持ち帰るんだぞ」
(画面)微笑するデスラーのアップ。
デスラー「ふふ。そうだったね。お嬢さん。あやうく忘れるところだった。大丈夫。時間は充分あるよ」

(画面)施設内。暗闇の水面。

(画面)施設内。暗闇の水面。・・・円形のさざなみが何重にも広がる様子。

(画面)鋭く視線を右へ走らせるデスラーの両目のアップ。

(画面)暗闇の水面から波しぶきをあげて立ち上がる黒い影。・・・影の中央から眩い光が発射される。
(効果音)水音。銃声1発。

(画面)フロールの右腰部分。デスラーの左手が乱暴にそれを払いのける仕草。
(効果音)衣擦れ。足音。

(画面)床を転げるフロール。壁に頭をぶつける。
(効果音)激突音。

(画面)立っているデスラーの上半身の描写。

(画面)しりもちをついたまま上半身を起こして頭をさするフロール。
フロール「(顔を向ける)・・・な・・・!」

(画面)水没しているスロープ状のフロアを手前に歩いてくる黒い影。水面が腰の高さから,ひざ,足首と徐々に低くなっていく。
(効果音)垂れる水音。足に引きずられる水音からフロアを歩く足音へ変化。
黒い影「・・・ふふふ! ははは! (こもった声)」

(画面)立っているデスラーの上半身の描写。

(画面)黒い影が,宇宙艇レネイドブーリーの発するヘッドライトの光へ近づく。・・・おぼろげながら輪郭をあらわにしていく黒い影。顔の口の部分から伸びているジャバラホースはさらに背中のタンクへ延長している。
(効果音)足音。

(画面)やぶにらみのフロールのアップ。

(画面)立っているデスラーの上半身の描写。

(画面)宇宙艇レネイドブーリーのヘッドライトの光に現れる黒い影の全体像。戦闘機服。顔にはゴーグルとジャバラホースのマスク。・・・おもむろにゴーグルを外して,口のマスクへ手をかける。
(効果音)立ち止まる。

(画面)マスクへ手をかけている影のアップ。・・・マスクを取って後ろへ投げる。左後方からのヘッドライトに照らされているその顔はキーク。右手には銃が握られている。
キーク「(笑み)・・・はははは! ・・・傑作だね! ガミラスのデスラー総統ともあろうものが,女をかばって無防備になるとはね! ずいぶんと,らしくないじゃないか! もしやと思って女を狙ったのが図に当たったね! お前を狙うよりはずっと確実だったってことか! やっと追い詰めたぞ。デスラー。この日を待っていた。せっかくの機会だ。冥土の土産(めいどのみやげ)に自己紹介してやる。・・・ガトランティス第156遊動機動隊副官参謀,キークだ! お前を仇(かたき)と憎む人たちを代表して,僕がお前に引導(いんどう)を渡してやる! 覚悟しろ!」

(画面)笑みを浮かべるデスラーのアップ。
デスラー「ふふ。死んだと思っていたのが生きていたというパターンか。もうどこでも使ってもらえない古ぼけた演出だね。さすがに兄弟だ。血は争えないということかな」

(画面)にらみつけるキーク。銃を構えなおす。
キーク「・・・やっぱり僕の通信は聞こえていたんだね。都合の悪い事に耳をふさぐなんて,全くお前らしいよ。デスラー。・・・でももうお前は僕の言葉を聞くしかない。お前はミル兄さんを殺したことを後悔しながら死んでいくんだ!」

(画面)正面から右へ視線を走らせるフロール。・・・ふと表情がくもる。

(画面)フロールの視界。デスラーの左足付近のフロアに,緑の鮮血が広がっている。・・・さらに上から落ちてくる鮮血。

(画面)顔色が変わるフロール。
フロール「・・・! デ,デスラー!」

(画面)立っているデスラーの上半身の描写。・・・アングルが下へ移動。デスラーの左わき腹の軍服に小さな穴が開いている。その周りを染めている緑の鮮血。徐々にその面積が広がっている。
(BGM)

(画面)面白そうにあごをあげる表情のキーク。
キーク「・・・辛いか。デスラー! 背中から撃たれた者の気持ちが少しでも分かったか! お前を貫いた(つらぬいた)銃弾はミル兄さんの怨念だと思え!」

(画面)立っているデスラーの上半身の描写。嘲笑するデスラー。
デスラー「・・・監視官ミルは女性を撃った最低人種だ。お前はその最低人種にも及ばなかった。そんなお前の銃弾くらいで私が動けなくなるとでも思っているのかね?」

(画面)動じないキーク。
キーク「強がりもどこまで続くかな? (銃口をさらに前面へ構える)・・・(視線を変えずに)・・・無駄なことは止めろ! フロール・レイム!」

(画面)床に腰を落としながら両手で銃を構えているフロール。

(画面)優越の表情のキーク。視線はデスラーへ変わらず。
キーク「ははは! お前の銃の腕前は分かっている! お前が僕に銃弾を当てるころにはデスラーはとっくに蜂の巣になっているぞ! それとも万が一の可能性にかけて撃ってみるか? (嘲笑)・・・あのちゃちな宇宙艇を見たときから指名手配中の政治犯がお前だということは分かっていた。(顔を向ける)・・・お前は殺さずに大帝閣下へ献上させてもらう。僕にもようやく運が向いてきたってことかな。はははは!」

(画面)床に腰を落としながら両手で銃を構えているフロール。
(BGM消える)

(画面)海中に沈んでいる宇宙戦艦アンドロメダ。
(効果音)海中。

(画面)水没している機関室。乗組員たちが宇宙服で活動している様子。
(効果音)海中。気泡。

(画面)海中でふと顔を上げるひとりの宇宙服。・・・クローズアップ。

(画面)後方へ振り向く宇宙服姿の穴井教授。

(画面)顔を上げているバイザーの中の沙織のアップ。

(画面)沙織へ近づいていく穴井教授の宇宙服。
(効果音)海中。気泡。
穴井「・・・どうしたんじゃ。沙織」
沙織「(穴井教授へ)・・・傷ついています・・・。おじい様」
穴井「(沙織を見回す)・・・どこぞ怪我でもしたのか?」

(画面)首を振る沙織。
沙織「・・・いえ。私じゃありません。おじい様」

(画面)しばらく見つめる穴井教授。
穴井「・・・ブリッジへ戻っていなさい。後はわしらでやる」

(画面)同じ機関室。作業している土方機関長と島。・・・おぼつかない泳法で,そのふたりへ近づいていく穴井教授。
(効果音)海中。気泡。

(画面)画面左に土方機関長。画面手前に島の後ろ姿。向こう側からたどり着いた穴井教授に視線を送る両者。
穴井「・・・島提督。これだけ探しても有効なユニットは見つからん。乗組員たちにも疲労の色が見える。宇宙服の酸素残量も残り2時間をきったぞい。もうそろそろここは,決断しなければならない時かも知れんぞ」

(画面)島のアップ。

(画面)顔を向ける土方機関長。
土方「・・・決断とは・・・」

(画面)双方へ視線を送る穴井教授。そして正面を見据える。
穴井「・・・乗組員全員が宇宙服のままで各自,海中を泳いでアンドロメダを脱出するんじゃ」

(画面)土方機関長。左に島。手前には穴井教授のヘルメット後頭部。
土方「・・・計器類の故障で,今アンドロメダが海中のどのくらいの深さまで沈んでいるかも分からない状況です。狭い範囲での活動ならいざ知らず,ここで一気に未知の距離を重い宇宙服で浮上となると,体力と酸素の消費量は生半可じゃない。大変危険です。脱落者が出るかも知れない。仮に運よく海面へ脱出できたとしても,冥王星の大気中では我々は生きられない。教授。その提案は無茶だ」

(画面)穴井教授。
穴井「・・・じゃが,このままでは確実な死が待っとるだけじゃ。水深はアナライザーに調べさせる。宇宙服の空間推進機能が浮上のアシストをしてくれるはずじゃ。ここでこれ以上の時間を浪費すれば,この提案も不可能になってしまうぞい」

(画面)何かを言い出そうとする土方機関長。

(画面)島のアップ。
島「・・・アンドロメダを自爆させるつもりなんですね。教授」

(画面)視線を往復させる土方機関長。
土方「・・・!」

(画面)しばし黙った後,苦笑する穴井教授。
穴井「・・・そうじゃ。機密漏えい(きみつろうえい)防止目的の自爆装置には独自の動力回路が設置されておる。今のアンドロメダでも起動可能じゃ。乗組員が脱出した後にこの自爆装置を起動させる。アンドロメダの通信手段が閉ざされている今,冥王星宙域にいる地球艦隊にわしらの存在と位置を知らせるには,もうこれしか方法がないんじゃ」

(画面)土方機関長。
土方「アンドロメダの爆発をのろしにして,地球艦隊の救助を待つと・・・」

(画面)見つめる島。

(画面)まぶしそうにまばたきをする穴井教授。

(画面)見つめる島。
島「・・・教授。自爆装置の独立した動力回路はその目的上,複雑な構造にはできません。カウントダウンは5分と決められているはずです」

(画面)うつむく穴井教授。

(画面)島のアップ。
島「その時間はあくまでも宇宙空間での脱出を想定したものです。大気圏内の,しかも海中から泳いで脱出するには5分では短すぎます」

(画面)顔を向けている土方機関長。

(画面)うつむいている穴井教授。

(画面)島のアップ。
島「自爆装置の起動方法はふたつあります。先ほどのカウントダウンタイマーでの起動と,もうひとつ。直接,艦内で自爆起動ボタンを押す方法です。この方法なら5分という時間には縛られ(しばられ)ません。しかし自爆は起動ボタンを押した直後に発生するので,ボタンを押した人間にはその艦を脱出する時間が残らない」

(画面)うつむいている穴井教授。

(画面)島のアップ。
島「教授。私は1年前にそれを実行した人間を知っています。私にとって,かけがえのない無二の親友でした」

(画面)うつむいている穴井教授へ顔を向けている土方機関長。

(画面)毅然(きぜん)と視線を送る島。
島「起動ボタンを押す役目ならばこの艦の艦長である私です。あなたではありませんよ。教授」

(画面)うつむいている穴井教授。

(画面)顔を向けている土方機関長。

(画面)見つめる島。

(画面)旧ガミラス基地施設内。宇宙艇レネイドブーリーのヘッドライトを背に,銃を構えているキークの全体像。足元には水たまりが広がっている。
キーク「(笑み)聞いたよ。聞いたよ。自爆装置,セットしたんだって? もう解除できないんだって? ははは。面白いなあ。・・・今,なんだかものすごく面白いこと思いついちゃったんだけどな・・・!」

(画面)気丈にもまだ立っているデスラー。その後ろで床面で銃を構えているフロール。

(画面)にやにやしているキーク。
キーク「だってさ。ほら。死んじゃっちゃうと何も分からなくなっちゃうっていうじゃないか。痛みも苦しみも何にも感じなくなっちゃうんだよね。それじゃ面白くなくなっちゃうと思っちゃうんだよね」

(画面)フロールのアップ。
フロール「(小声)・・・ちゃうちゃう,うるさいんだって・・・。犬かお前は・・・」

(画面)自分の勝利に酔っている様子のキーク。
キーク「やっぱり,ただ殺すだけじゃ駄目だよね。人間,死ぬ前ってさ,今までしてきた事全部思い出すっていうじゃない。やっぱ,後悔してもらいたいんだよね。・・・ああ。あんなことしなきゃよかったなあ・・・ってさ。・・・でもね。僕はお前を許さないよ。だってお前はミル兄さんを殺したんだから。後悔しても手遅れってやつさ。(斜め上の視線)・・・でもさ,死ぬ時間を待ってる時ってどんな感じなのかな。すごい緊張するんだろうな。心臓なんか,ドキドキしちゃったりなんかして・・・」

(画面)笑みを浮かべるデスラー。
デスラー「お望みなら,経験させてやってもいいが」
(画面)デスラーの右腰部分を後ろから。・・・気づかれないように右手を小さく振っているデスラー。
(画面)まゆをひそめるフロールのアップ。

(画面)高らかに笑い声をあげるキーク。
キーク「はははは! そんな,図々しいことは言えないよ。その貴重な経験は,つつしんでお前に進呈(しんてい)するよ。デスラー。・・・その代わりに僕はこのちゃちな宇宙艇をもらってあげるから。僕ってやさしいな。お前のことは生涯忘れないよ。デスラー。・・・さてと。そろそろ行こうかな。爆発しちゃうからね。(キッと視線を向ける)・・・フロール・レイム! 銃を捨ててこっちへ来い! 目の前でデスラーが死ぬところは見たくないだろう!」

(画面)床面で銃を構えているフロール。
フロール「・・・全く,礼儀を知らないやつだ・・・! (銃を下ろす)」

(画面)優越の表情のキーク。

(画面)目を細めるデスラー。

(画面)うつむいているフロールのアップ。・・・右上方向に鋭い視線。

(画面)銃を床に置きかけているフロールの右手。・・・いったん,床に置いた銃を,カーリングの要領で右斜め方向に強く滑らせる。

(画面)デスラーの上半身。・・・突然,画面下部へその体勢を退場させる。

(画面)目を見開くキーク。銃を構える。

(画面)回転しながら床を滑っていく銃。・・・かがんでいるデスラーの右後方へ。床に広げていたデスラーの右手にすっぽりと収まる。
(効果音)金属摩擦音。

(画面)銃を構えているキークが続けざまに発砲。1発。2発。3発。
(効果音)銃声3回。

(画面)受身(うけみ)と連動して床の上を連続回転するデスラー。弾光が彼を追うように床に着弾していく。
(効果音)銃声連続。着弾音連続。

(画面)銃を発砲し続けるキーク。
(効果音)銃声連続。

(画面)床に体勢を低くして,歯を食いしばって銃を下から連射するデスラー。
(効果音)銃声連続。

(画面)銃を発砲し続けるキーク。・・・彼の持っていた銃がデスラーの発砲した弾光に弾き飛ばされる。反動で右手を上げるキーク。
(効果音)銃声連続。鋭い金属音。銃声沈黙。
キーク「・・・! (しびれた右手)」

(画面)フロールのアップ。
フロール「・・・! (いの字)」

(画面)画面左に右手首を押さえてかがみこむキーク。・・・画面右側にデスラーの後ろ姿が入場。
(効果音)足音。

(画面)銃を構えて立っているデスラー。
デスラー「ふふ。聞いてもらいたいことが色々とあるのは結構だが,どうも少し長すぎようだ。私は,飽きっぽくてね」

(画面)右手首を押さえながら,鋭い上目づかいのキーク。

(画面)フロールのアップ。
フロール「(小声)・・・飽きっぽいのか・・・」

(画面)右手首を押さえながら,鋭い上目づかいのキーク。

(画面)銃を構えて立っているデスラー。

(画面)銃を構えて立っているデスラー。・・・突然,苦痛に表情がゆがむ。
デスラー「・・・! (体勢を崩す)」

(画面)フロールのアップ。
フロール「デスラー! (走り出す)」

(画面)床に崩れ落ちるデスラー。横から支えるフロール。
(効果音)ひざが床につく。衣擦れ。足音。

(画面)鋭い視線から,にやりと笑みを浮かべるキーク。
キーク「・・・へええ」

(画面)うつむいているデスラーを支えているフロール。

(画面)立ち上がるキーク。
キーク「・・・ははは! ガミラスの総統もしょせんは人間だったってことさ! その出血じゃ,もうまともに動けないだろう! この星系にはガミラス人なんかいないからな! 輸血もままならないさ! もう,お前は終わりだ! デスラー! (走り出す)」
(効果音)足音。

(画面)うつむいているデスラーを支えながら,片ひざをついてにらみつけているフロールのハイアングル。

(画面)波しぶきをたてながら宇宙艇レネイドブーリーにたどり着いて振り向くキーク。外倒しのハッチに下半身を滑り込ませる。
キーク「・・・でも僕が,その悩みを解消してあげるよ。デスラー! ここで吹き飛んじゃえば輸血の心配もしなくて済むだろう? ここを脱出する手段を僕が取り上げれば,あきらめもつくからね。フロール・レイムはお前にくれてやるよ。最後まで仲良くしてくれよ。僕はデスラーを倒した功績で,お前の分まで幸せに生きてあげるからね。これでお別れだ。お前も馬鹿だよ。ミル兄さんさえ殺さなければ,こんな目に遭わなくて済んだのにね。かわいそうに。同情するよ! じゃあね! (手を振って艇内へ入り込む)」
(効果音)波しぶき。

(画面)宇宙艇レネイドブーリーのハッチが閉まる。
(効果音)機動音。

(画面)うつむいているデスラーを支えながら,片ひざをついてにらみつけているフロールのハイアングル。

(画面)宇宙艇レネイドブーリー内部。コクピットに座るキーク。・・・見上げて上部パネルを操作する。
(効果音)内部機械音。操作音。高まるアイドリング。

(画面)フロールに支えられているデスラー。・・・顔を上げて震える右手で銃を発射する。
(効果音)銃声。

(画面)宇宙艇レネイドブーリー正面。跳ね返る銃の弾光。
(効果音)金属音。

(画面)宇宙艇レネイドブーリー内部。コクピットで笑うキーク。
(効果音)内部機械音。
キーク「ははは! 無駄なあがきだ! くやしいか,デスラー! はははは!」

(画面)フロールに支えられているデスラー。・・・顔をがくりと落とす。のぞき込む仕草のフロール。

(画面)宇宙艇レネイドブーリー内部。優越の表情でベルトをしめるキーク。下を向く。
(効果音)内部機械音。
(画面)目の前の操縦管の描写。
(画面)正面へ目配せしてから下を見るキークのアップ。
(画面)目の前の操縦管の描写。・・・キークの両手が操縦管を握ろうとする。
(画面)キークのアップ。
(画面)目の前の操縦管を握るキークの両手。

(画面)デスラーを支えて,彼をのぞきこんでいるフロール
(まばゆい光が不規則に彼女の顔を照らし出す)
(画面)デスラーを支えているフロールが光に向けて顔を上げる。

(画面)宇宙艇レネイドブーリー内部。コクピットで操縦管を握っているキークが激しく痙攣(けいれん)している。その体からは無数の光が放射され続ける。
(効果音)鋭い放射音。連続。
キーク「(断末魔の表情)うわああ! うわああああ・・・! (身をよじるが,操縦管を離せない)」

(画面)デスラーを支えているフロール。

(画面)宇宙艇レネイドブーリー内で身をよじり続けるキーク。放射する光とともにその身体から煙が立ち昇ってくる。
(効果音)鋭い放射音。連続。
キーク「・・・わあああああ・・・! (ごろごろ)」
(画面)キークの断末魔のアップ。目や口からも放射光が発されている。・・・白目をむくキーク。
(画面)キークを後方から。立ち上がってはいるが操縦管から手が離せていないらしく,不自然な立ち姿で身をよじっている。放射光と煙がこもる艇内。フロントガラスの向こうでは,デスラーを支えてかがみこんでいるフロールが外からその様子を傍観している。

(画面)デスラーを支えているフロール。
フロール「(いの字)・・・あら〜・・・」

(画面)宇宙艇レネイドブーリー内部。操縦管を握っているキークの動きが次第に弱くなっていく。
(効果音)鋭い放射音。連続。
キーク「・・・が・・がぐぎ・・ごが・・・」

(画面)外倒しのハッチを開ける宇宙艇レネイドブーリー左舷。・・・艇内から黒こげになったキークが出てくる。海水へ足を下ろすがバランスを崩しフロアの海水へうつぶせに倒れこむ。立ち昇る煙。
(効果音)水の蒸発する音。

(画面)うつぶせの状態で海面から顔を上げるキークの焦げた顔。・・・やはり焦げた両腕でフロアを引き寄せるように這い出してくる。
キーク「(歯を食いしばる)・・・で・・・デジュ・・・ラー・・・! (目を開けたままフロアへ頭を落とす)・・・ギュ・・・」
(効果音)フロアへ頭が落ちる音。

(画面)フロールに支えられるデスラーがゆっくりと顔を上げる。いの字のフロール。
デスラー「・・・お嬢さん。一体,何が起こったのかね?」
フロール「(デスラーへ)・・・思い出したことがあるんだがな。デスラー」

(画面)宇宙艇レネイドブーリー外観。
(フロールの声)・・・レネイドブーリーは私の専用艇として製造された船だ。もともと他の人間が操縦することは固く禁じられていたのだ。

(画面)宇宙艇レネイドブーリーコクピット。操縦管の描写。
(フロールの声)・・・セキュリティ目的でな。指動脈認証で,私と異なる指動脈を持つ人間が操縦管を握ると強力な電流が操縦管に流れるように設計されていたんだ。

(画面)下から見ているデスラーのアップ。

(画面)左方向を見ているフロール。
フロール「・・・あの無礼者は海水に濡れていたからな。さぞや辛かったろうに。・・・しかしそんなものがなくても誰もこの船に乗ろうとしなかったからこのセキュリティが発動したのは今初めて見たなあ。いやあ。すっかり忘れてた。(顔を向ける)・・・お前が操縦管を握っても何も起きなかったのは多分どこかが故障していたんだろう」

(画面)下から見ているデスラーのアップ。

(画面)再び左方向を見るフロール。
フロール「・・・多分,何かの拍子で直っちゃったんだな。接続回路を切っておかないとな。でないと今度は,お前が感電してしまう」

(画面)下から見ているデスラーのアップ。
デスラー「・・・お嬢さん」

(画面)顔を向けるフロール。
フロール「・・・ん? 何だ?」

(画面)下から見ているデスラーのアップ。
デスラー「(苦笑)・・・そういうことは出来るだけ忘れないようにしてもらいたいんだがね」

(画面)宇宙空間に浮かぶ青い地球。

(画面)星空をバックに日本自治区地球防衛司令部の外観。日本自治区は夜の10時半頃。

(画面)通路を右方向へ歩いている藤堂司令長官の右上半身。アングルは彼に固定。
(スタッフの声)・・・北海道地区,民間人地下都市移住98%完了!
(スタッフの声)・・・北陸地区は避難完了しました!
(スタッフの声)・・・九州地区,遅れています! 95%!

(画面)司令部センターの最上席へ立つ藤堂司令長官。少し,やつれてはいるが目はぎらぎら輝いている。横に立つ山南司令。
(効果音)施設内機械音。
山南「(敬礼)・・・お休みのところ,お呼び立ていたしまして・・・」
藤堂「(正面を向いたまま)いいよ。山南司令。つないでくれたまえ」
山南「(スタッフへうなずく)」

(画面)振り返っていた女性スタッフ。背中を向けてパネルを操作する仕草。
(効果音)操作音。

(画面)正面巨大スクリーン。真横に電子ラインが走り,ベルナルドが映し出される。敬礼するベルナルド。
(効果音)電子音。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・日本自治区防衛軍司令部へワープ通信伝達しています。映像と音声の確認・・・」

(画面)藤堂司令長官と山南司令。
藤堂「良好だ。続けてくれたまえ」

(画面)スクリーンのベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)確認完了。報告します。当艦隊および日本艦隊連合は,冥王星宙域へ進行してきましたガトランティス艦隊と軍事交戦。これを撃破いたしました。我が艦隊と日本艦隊の残存艦艇数36隻。沈没,航行不能および行方不明の艦は計34隻・・・」

(画面)藤堂司令長官と山南司令。
藤堂「・・・不意の事とはいえ,今回の有事については指示内容の不備も責任も感じている。過酷な任務をよくこなして生き残ってくれた。感謝しているよ,ベルナルド司令。このライブ通信は同時翻訳にて今現在,アンゴラ自治区やアフリカ連合をはじめとする地球連邦全ての司令部へ同時ネット中継されている。地球人類は貴官のこの通信に尋常以上の興味を示しているのだ」

(画面)スクリーンのベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・恐縮します。トウドウ司令。しかし我々は旗艦アンドロメダをはじめとする多くの艦艇を失ってしまいました」

(画面)感情を押し殺している藤堂司令長官。
藤堂「・・・残念な気持ちは私も痛感している。戦死した戦士たちのご家族たちへの言葉も見つけられない程にね。しかし,貴官らのおかげで今回の相手がガトランティスであることを確認することができたのだ。身体を張って貴官らはガトランティスを足止めし,その間に我々は充分な準備も進められた。そして・・・(視線を下げ気味に)」

(画面)スクリーンのベルナルド。

(画面)顔を上げる藤堂司令長官のアップ。
藤堂「・・・敵のイミテーションへ引き金を引く覚悟もだ。幻(まぼろし)を克服できなかったゼナ艦隊は壊滅した。しかし貴官らはそれを克服して生き残った。貴官らはすでに英雄なのだ」

(画面)高揚する様子のベルナルド。

(画面)藤堂司令長官と山南司令。
藤堂「・・・ガトランティス艦隊とイミテーション・ヤマトの存在のほかに,敵に関する何か新しい情報はあるかね。ベルナルド司令」

(画面)スクリーンの中で姿勢を正すベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・交戦の折に敵方の捕虜を捕らえました。当初は全員,堅く口を閉ざしていましたが,我が艦隊が攻撃を受けた際にそのほとんどが死亡。当戦艦メッロに3人を残すのみとなり,そのうちのひとりがこの味方からの攻撃に対し我々に失望の意思表示を示してきました」

(画面)藤堂司令長官と山南司令。
山南「(前へ)・・・捕虜は貴官らの尋問に応じたのか・・・?」

(画面)視線を中央へ戻すベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・はい。ガトランティス語に関しましては1年前の通信等のデーターにより,そしてさらに今回の捕虜への尋問にて80%以上の翻訳率を確保できました。(書類ボードを持つ)・・・では捕虜への尋問内容の結論を要約いたします。(ボードへ視線)・・・」

(画面)藤堂司令長官と山南司令。

(画面)見上げている女性スタッフ。

(画面)興味深げに顔を上げているスタッフの面々。

(画面)スクリーンの中で書類ボードを読み上げるベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・敵国家の正式名称は”帝星ガトランティス連邦”。敵の元首は冠名を大帝と称し,名前はズォーダー・・・」

(画面)藤堂司令長官と山南司令。
山南「・・・ズォーダー・・・? 確か去年の降伏勧告の際にもその名前が出たな」

(画面)スクリーンの中で再び書類ボードを読み始めるベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・先代のズォーダーは西暦2201年11月28日,宇宙戦艦ヤマトとの戦いで死亡。今現在は2代目とのことです。白色彗星は居住惑星ではなく,軍略目的による遠方移動式軍事要塞だったようです・・・」

(画面)興味深げに顔を上げているスタッフの面々。

(画面)スクリーンの中で書類ボードを読み続けるベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・今回の彼らの地球進行目的は,先代を倒されたことによる報復行為です。話し合いの場を持つことは一切考えていません。彼らは忠告も警告も通達さえも公使する意図は全く持ち合わせてはいないとのことです。目的はただひとつ。地球と地球人をこの宇宙から完全に消滅させることのみです・・・」

(画面)息を呑む女性スタッフ。

(画面)スクリーンの中で書類ボードを読み続けるベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・彼らの軍事的規模に関しましては,まず帝星ガトランティス連邦自体の規模から説明いたします。同国の所在位置は,我が太陽系を含む銀河系より14万8千光年遠方へ位置する島宇宙,大マゼラン星雲。・・・その約37%を領有する宇宙規模の大国家連邦だそうです・・・」

(画面)ざわめきが起こる司令部センターの全容。
(BGM)M−10
(効果音)ざわめき。

(画面)前へ進み出る山南司令。
山南「・・・大マゼラン星雲・・・! 当初の予想でのアンドロメダ銀河ではなかったのか・・・!」
(BGM消える)

(画面)顔を上げるベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・根拠はなかったはずです。それに捕虜はガミラスもヤマトのことも知っていました。同じ星雲内でのことはワープ通信レベルのネット回線で情報の開示と取得は容易だったようです。それが今回,ガトランティスが地球の存在を知るきっかけになったものとも思われます」

(画面)山南司令。
山南「・・・ヤマトとガミラスが戦っていたのを知っていた? ガトランティスは星雲内のガミラスとどういう関係にあったのだ・・・?」

(画面)スクリーンのベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・ガミラスの属する恒星サンザー系は大マゼラン星雲全体の29%を占めるどこからも支配されていない非統治エリアに属している恒星系で,それまでガミラスとガトランティスには直接の外交的国交はなかったようです。ですが,最近になってこの両国の間に非公式な接触事項が発生したと捕虜は証言しています。この大マゼラン星雲にはもうひとつ,”ウーム連邦”と彼らが呼んでいる巨大な軍事国家が存在しています。星雲の34%を領有している大国家です。当時,ガトランティスとウーム連邦は星雲の覇権(はけん)を争い,一触即発の冷戦状態にありました。両国家は互いに,にらみ合いを続ける反面,内政干渉にも非常に敏感になっていた。非統治エリアのサンザー系に関わることは星雲内の侵略行為だという絶好の大義名分(たいぎめいぶん)を相手国家に与えてしまう恐れがあったのです。だからガトランティスはヤマトとガミラスに対して表面的には傍観者(ぼうかんしゃ)としての立場を守っていた。しかしそれでもガトランティスは,そのような状況下でありながらも軍事的挑発ともとれる行為をガミラスに対して水面下で行っていたと言うのです」

(画面)静まり返るセンター内の全容。
(効果音)内部機械音。

(画面)スクリーンのベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・ガトランティスの時間の流れと地球のそれとを照合してみますと,それはちょうどイスカンダル作戦で宇宙戦艦ヤマトが地球を発進した時期にあたります。ヤマトの敗北がそのまま地球の敗北へつながる,それはまさにガミラスにとっては勝利目前の頃でした。なぜそのタイミングで内政干渉とも指摘されかねない危険を冒してまでガトランティスはガミラスに軍事行動を起こしたのか。その目的と理由です。初代元首ズォーダーにはこの頃からある野心が芽生え始めていたといいます。・・・実は,すでにこの頃からガトランティスは地球を狙っていたのです。大国が並び立つことにより飽和状態になり,身動きが取れなくなった大マゼラン星雲から飛び出して,銀河系にこの事態の打開を試みようとしていたのです。だからガミラスが地球に勝利して銀河系に移住されてしまうのはガトランティスにとっては非常に都合が悪かった。ガトランティスは星雲内のルビー戦線,サファイア戦線などに内政干渉ぎりぎりの境界線でガミラス軍と対峙することによってガミラスの力を分散させて地球との共倒れ(ともだおれ)を画策(かくさく)した。・・・正に漁夫の利(ぎょふのり)を得ようとしていたのです・・・。
つまり,この時ガミラスはヤマトと戦うのとは別にこの大国家連邦へも軍事力を割かなければならない状況にあった・・・」

(画面)さすがに呆然と聞き入る藤堂司令長官。
藤堂「・・・何ということだ・・・」

(画面)スクリーンのベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・これは私の意見ですが,当時もちろんガミラスもイスカンダルもこのガトランティスの真意には気づいてはいなかったでしょう。ゆえにイスカンダルが地球に科学力を提供し,ガミラスがガトランティスへ武力抵抗することによって地球とガミラスの間の力の差が微妙なバランスで接近してしまった。そもそもこれらの人為的な偶然がガトランティスにとって都合のいい状況を作り出してしまったのではないかと思われます。ガトランティスの唯一の誤算は地球の科学力にイスカンダルが絡んでいたことを知らなかった・・・。その誤算はファーストコンタクトの折にガトランティス自身が肌身に感じることになった訳です・・・」

(画面)詰め寄る山南司令。
山南「・・・それならば今回の有事は何なのだ! 貴官は今,ガトランティスの目的は地球への報復行為だと言ったばかりではないか! ・・・銀河系に事態の打開を求めるのならば,地球を消滅させるなどとはその目的自体があまりにも矛盾(むじゅん)し逸脱(いつだつ)しすぎている! しかも
大マゼラン星雲内で冷戦が起こっているならば,それほどの大規模な軍事力を銀河系へ向かわせることは,そもそも不可能なはずだ・・・!」

(画面)スクリーンのベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・そこで今回のガトランティスの軍事的規模の話です。確かに1年前はそうでした。あの時彼らが地球へ進行させてきた軍事的規模は白色彗星要塞と1個艦隊,巨大戦艦1隻のみです。つまりこの時はまだ先代のズォーダーがガトランティスを統治している時期でしたから星雲内の冷戦はまだ続いていたと思われ,この戦力が遠方攻略の最大のものであった。実際,この白色彗星要塞は星雲内でもかなりの戦績をあげていたとのことです。しかしそれはあくまでも初代元首の頃の話。・・・捕虜への尋問の要約に戻ります・・・。(ボードに視線)・・・捕虜が言うには,今回ガトランティスが銀河系へ進行する直前に2代目元首はウーム連邦と星雲内で停戦同盟というものを結んだというのです。(顔を上げる)・・・これが何を意味すると思われますか?」

(画面)藤堂司令長官と山南司令。

(画面)書類ボードを読むベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・ガトランティス初代元首と2代目との間に大きな政治方針の隔たり(へだたり)があると,捕虜であるガトランティス戦士は証言しています。軍事力によって星雲内で領土を拡大し続けた先代に対し,2代目元首は今現状の星雲内領土の安定化を図った。・・・つまりこれ以上の星雲内の領土の拡大は望まないという方針です。この方針が冷戦状態だった同じ星雲内国家であるウーム連邦に対して停戦同盟をとりつける大きな理由と説得材料になった。・・・つまり・・・」

(画面)聞き入っている司令部スタッフたち。さすがに手が止まっている。

(画面)スクリーンの中で顔を上げるベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・大マゼラン星雲では,すでに冷戦は終わっています。2代目元首にとって,はるかかなたの地球など領土安定の政策方針の中では何の利用価値もない遠方の一天体にすぎず,それは先代の単なる仇(かたき)であり,元首が国民に対してリーダーシップをとるための都合のいい道具にすぎません。ガトランティス国民にとって我々地球人は自分たちから指導者を奪った極悪非道の悪者としてしか映っていないのです。そして,もはや大マゼラン星雲内にガトランティス連邦を脅かす(おびやかす)軍事力は存在していない。ガトランティスはウーム連邦による後方の憂い(うれい)を停戦同盟の締結(ていけつ)によって排除しました。そのことによって今や2代目元首は,国民たちの強い支持を受けて星雲内のほとんどの軍事力を地球へ向かわせることが可能になっているのです」

(画面)宇宙空間に浮かぶ青い地球。

(画面)司令部センター内。誰も口を開く者はいない。
(効果音)内部機械音。電子音。

(画面)絶句している山南の傍らで静かに思案している様子の藤堂司令長官。
藤堂「(顔を上げる)・・・ベルナルド司令。地球へ向かってくる戦力の具体的規模は分かるかね?」

(画面)スクリーンのベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・捕虜はそこの部分だけは堅く口を閉ざしています。彼は今の母国の政治方針に対しての疑問は感じているものの,実際にこれから戦闘に参加する仲間たちの命に関わる内容だけは絶対に証言はしないと言っています。よって,これ以上の尋問による捕虜からの回答は得られないものと判断いたしました」

(画面)再び思案する藤堂司令長官。

(画面)藤堂司令長官を見やっている山南司令のアップ。

(画面)藤堂司令長官を後ろ姿からのハイアングル。全てのスタッフが振り返り,彼に視線を向けている。スクリーンには直立したまま言葉を待っているベルナルドの上半身が映し出されている。

(画面)藤堂司令長官のアップ。
藤堂「・・・(顔を上げる)・・・ご苦労だった。ベルナルド司令。命令を伝える。冥王星艦隊および日本艦隊全艦隊は冥王星基地を放棄。直ちに地球へ帰還してくれたまえ。貴官らは充分任務を果たしてくれた。これ以上の滞在は必要ないと判断する」

(画面)スクリーンのベルナルド。
ベルナルド「・・・」

(画面)まゆをひそめる藤堂司令長官。
藤堂「・・・復唱はどうしたのかね?」

(画面)直立するベルナルド。
ベルナルド「・・・(ポルトガル語)・・・まだ,帰還することはできません。トウドウ司令」

(画面)藤堂司令長官。
藤堂「命令に従えないというのかね? ガトランティス艦隊を撃破した今ならば撤退時に追撃される恐れも少ない。新しい敵艦隊がその宙域へ進行する前に動かなければ,貴官らの艦隊はまたその宙域から動けなくなる。すでにその艦艇数では新たな敵に対して持ちこたえることはできないだろう。貴官は部下の命を最優先に考えているとこの間言っていたはずだ」

(画面)スクリーンのベルナルド。表情をゆるめる。珍しいことである。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・命令の説明をしてくださいましたね。そのお心に応えて,私も説明させていただきます。我々はまだ任務を完遂(かんすい)していません。トウドウ司令。我々の任務は今回の敵の戦力を探ることにあります。我々はまだガトランティス本隊の実体をつかめていません」

(画面)藤堂司令長官。
藤堂「却下(きゃっか)する。直ちに帰還せよ。今ならば生きて帰ってくることができる。このままでは手遅れになる」

(画面)うつむいているベルナルド。顔を上げる。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・トウドウ司令。これは私個人の意見ではありません。冥王星艦隊,日本艦隊全ての戦士たちの考えなのです。確かに以前の私でしたら今のトウドウ司令の命令には何の躊躇(ちゅうちょ)もなく従ったでしょう。しかし,アンドロメダと合流し,シマ提督と話を交わして,敵と戦っているうちに私は・・・ようやく理解ができてきたように感じられたのです」

(画面)藤堂司令長官。
藤堂「理解・・・?」

(画面)穏やかな表情のベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・あの時のヤマト戦士たちの気持ちがです」

(画面)あおいでいるスタッフ一同。高い場所にいる藤堂司令長官と山南司令。
(BGM)M−12

(画面)スクリーンのベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・実は先ほど,遊星爆弾を見ました。恐らく戦闘の際での流れ弾か何かによる誤作動だったのでしょう。冥王星から発射されて太陽系とは逆の宇宙空間へ消えていきました。地球には直接影響はないと考えられますのでご安心ください。もちろん原因は調査中です。旧ガミラス基地でまだ生き残っている箇所があるかもしれません。でもその遊星爆弾を見て私はあの苦しかった時代を思い出したのです。・・・地下に潜んで,いずれは訪れる死への恐怖にさいなまれていた頃です。あの時の私たちは自分たちのことで精一杯でした。時を同じくして,唯一他人のために戦っていた宇宙戦艦ヤマトの戦士たちの気持ちを考えるゆとりなど到底なかった・・・」

(画面)女性スタッフのアップ。

(画面)スクリーンのベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・平和が戻ってきた時も私たちはやはり自分中心でした。そして苦しかったことも忘れて自分を過信していました。強力なハードウェアを手に入れたことにより,ヤマトの戦士たちにできたことは自分たちにもできると誤解していたのです。ヤマトよりも強いハードウェアを持つ私たちは,あの時命令を無視して反逆し地球を発進していったヤマトのことを逆に頭(ず)に昇っていると鼻で笑っていました。・・・地球を救ったことで,ちやほやされて高慢(こうまん)になり,あまつさえ上官の命令に従わなくなった天狗(てんぐ)だと・・・」

(画面)山南司令のアップ。

(画面)スクリーンのベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・トウドウ司令。それが今は分かるのです。あの時のヤマトの戦士たちの気持ちが,今は分かるのです。トウドウ司令。・・・彼らは守りたいものに逆らってまでも守りたいものを守ろうとした。守りたいものがたとえ自分たちを理解してくれないとしても,宇宙へ散っていった自分たちの仲間が命がけで守ってきたものを守り続けたかった。・・・ただ,それだけだったんです。・・・あの時,そのことに少しでも気づいてやれていたらと思うと・・・。まあ,今となってはそれも,はるかなる後悔ですが・・・」

(画面)ひとりのスタッフのアップ。

(画面)スクリーンのベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・実は私にも守りたいものがあります。それは他の戦士たちも同様です。あのカジカワ司令もです。だから私たちは今のトウドウ司令のご命令には従えません」

(画面)どこかの1室。ひとりの女性に抱かれて眠っている幼い女の子。

(画面)スクリーンのベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・今,カジカワ司令はイージス艦フユツキにて敵本隊偵察に向かっています。敵本隊の軍事規模を探るためです。私たちはカジカワ司令の通信をここで待ちます。私たちがここに滞在していれば敵の注意はこちらに集中します。フユツキを孤立させるわけにはいきません。カジカワ司令は必ず通信を送ってくると信じます。そして私たちは必ずその結果を地球へ中継します。それでこそ初めて我々の任務は完了と判断いたします。その暁(あかつき)には,遅ればせながらそちらへの合流をお許し願いたい」

(画面)藤堂司令長官。

(画面)スクリーンのベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・報告は以上です。不備があればどうぞ」
(BGM)M−12

(画面)藤堂司令長官。

(画面)スクリーンのベルナルド。

(画面)藤堂司令長官。
藤堂「・・・不備は・・・」

(画面)スクリーンのベルナルド。

(画面)表情をわずかに緩める藤堂司令長官。
藤堂「・・・不備はないよ。ベルナルド司令。貴官らの連絡と元気な姿を心待ちにしている・・・」

(画面)笑顔を見せるベルナルド。
ベルナルド「(ポルトガル語)・・・感謝します。トウドウ司令。では後ほど。・・・通信終わり。(敬礼)」
(スクリーン表示消える)
(効果音)電子音。

(画面)取り残されたように立ちすくんでいる藤堂司令長官と山南司令。
山南「(藤堂へ)・・・冥王星へ援軍の手配を・・・」
藤堂「(首を振る)・・・山南司令。それはできない。もはや事態は切迫している。連合艦隊の編成を今から変更するのは不可能だ。しかも敵がどういう動きをしているかも明確になっていない今,向かわせた援軍が空っぽの太陽系内で各個撃破の対象になる危険性もある。今,不用意に足並みを乱れさせれば取り返しのつかない事態が起こりかねないのだ・・・」

(画面)振り返っているスタッフたち。
(効果音)内部機械音。電子音。

(画面)藤堂司令長官のアップ。
藤堂「・・・守りたいもの・・・か・・・」
(BGM消える)

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第9節 冬月無残! ガトランティス超巨大艦隊遭遇