◎3月


越境の表紙画像

[導入部]

 陸上自衛隊の入木2尉は旧釧路空港への救援物資空輸任務として、輸送ヘリの警戒のため対戦車ヘリを操縦していた。 駐機した輸送ヘリに近くの林の中から発射された飛翔体が吸い込まれ、輸送ヘリは爆発した。 周囲にいた陸自隊員は爆風で吹き飛ばされ、地上部隊は混乱。 北東から不審車両四両が接近してきた。 射撃するが四両は止まらない。 ヘリへの攻撃は続き、入木と同乗する機長の古在1尉の座る前席が爆ぜた。 入木は機体姿勢を立て直す。

[採点] ☆☆☆★

[寸評]

 ロシア侵攻から十年、本国から見放されたロシア軍の生き残りや日本軍、警察特殊部隊、テロ集団、民兵などが入り乱れ無法地帯と化した北海道東部が舞台の軍事冒険小説。 冒頭から緊迫した戦闘場面の連続で、主人公のサバイバル行の緊張感は最後まで途切れないが、本書はけっして胸躍る冒険小説ではない。 文章は改行が少なく、哲学的で難かしいところも。 描写は緻密で、登場人物の会話も観念的なやり取りが多く、気軽に読み通せる本ではなかった。 ラストは大きな衝撃で終わる。


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