[寸評]
備前焼窯元の親子三代の確執、いびつな家族関係のドラマで、いかにも遠田潤子の世界が感じられる。
人間国宝の家で祖父と父、正反対の二人の間で育つ城の姿、愛憎半ばする心の動きがなかなかの凄みを持った描き方で迫ってくる。
荒廃した中に上手に女性を配していく点も良い。
終盤、一家の秘められた過去が明かされるが、そこから城の人間的成長が見られていくのも好ましい。
映像作家・兵藤が城にかける言葉は理屈っぽいし、備前焼そのものの魅力はまだ描き足りないと感じた。
2019年、ミシシッピ州のマネーという町。
デルロイ副保安官は指令を受け、ジュニア・ジュニア・ミラムの家へ向かった。
家には警察に通報したジュニア・ジュニアの妻デイジーが待っていた。
不要品交換会から子どもたちと帰ってきて夫を見つけたと言う。
奥の部屋ではジュニア・ジュニアだと思われる人間が頭蓋骨を押しつぶされ、有刺鉄線が首に巻かれ血みどろだった。
そして彼から3メートルほど離れたところに小柄な黒人男の死体があった。
[寸評]
昨年の私の年間BESTの1位に推した「ジェイムズ」の作者がそれより前に発表した作品。
白人惨殺死体のそばに黒人の死体。
それがモルグから消え、別の白人殺害現場に再び現れる。
FBIや州の特別刑事たちの捜査を描くミステリーかと思えば、やがてダークな怪奇ものの様相に。
そして18ページにわたって書き連ねられた、今までリンチで犠牲になった黒人の名前。
これで本作の主眼が明白になる。
ユーモア交じりにアメリカの恥を描く物語だ。
ブッカー賞最終候補作。
[寸評]
60ページほどの短編6編。
それぞれ独立した話だが、一部の登場人物が後の話に出てきたりしてニヤリとさせられる。
時代背景は終戦直後の混沌とした時代から昭和34年の皇太子ご成婚までで、モノクロ映画から天然色映画に徐々に移っていくような読み味だ。
各話はパイロット、貰い子、検閲、紙芝居、GHQの人体実験など題材も多彩で、文章がちょっと硬いが、しっかり楽しませてくれる。
幕切れは最後まで描かず、断ち切るような書き方で終わるがそれもすっきりとしている。
(※)書名の「かえん」の「えん」の漢字は環境依存文字で文字化けしてしまうため異体字で表示しています。正しくは表紙書影のとおりです。
[導入部]
[採点] ☆☆☆★
[導入部]
尾高慎二は、召集され大陸に渡り五年間服役した後に召集解除になって元の職場の新聞社に復帰し、そろそろ二度目の召集かと思っていたところで終戦を迎えた。
会社では航空部に属しパイロットだったがまもなく新聞社を辞め、山梨の実家に住んでいる。
そして東京のマーケットに荷を運ぶ“担ぎ屋”をしていた。
ある日、新宿の小屋でカストリ酒を飲んでいると二人の男が慎二を捜してやってきた。
一人は腰に短刀を差していた。
慎二は隙を突き逃げる。
[採点] ☆☆☆☆
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