住宅型有料老人ホーム「サテーンカーリ崎宿 参番館」に新たな入居者が加わった。
長身で骨格も筋肉もがっしりして威圧感を与える旭(72)という男。
表情も言葉数も乏しく、とっつきにくい印象を他の入居者に与えた。
冬児(82)は旭を入居者たちのカラオケに誘う。
旭はT.M.Revolutionの「HOT LIMIT」を歌った。
旭は仁王立ちでたっぷりとした声量で歌い上げる。
歌が終盤にさしかかると、入居者たちは手元の紙片に何かを書き始めた。
(「老ホの姫」)
[寸評]
本の雑誌社による第一回北上次郎「面白小説」大賞の受賞作で不思議な世界を見せる。
全七編の短編集だが、中では老人ホームの姫ポジションを入居者が競い合う「老ホの姫」と、人身事故を起こした電車運転士がお祓いみたいな儀式に出る「命はダイヤより重い」が頭抜けて面白い。
「老ホの姫」の突飛な決着の付け方、「命はダイヤより重い」のギャル短歌は傑作。
この二編は四つ星クラスだが、ほかの五編はSF的な一発アイデア倒れという感じで、なんだこれはと首をかしげた。
[導入部]
[採点] ☆☆☆★
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