[寸評]
暴力と裏切りの物語「その雪と血を」に続く邦訳作品。
緊張感を漂わせた簡潔な文章が心地よい。
裏切り者は地の果てまで追うという“漁師”と言う呼び名の麻薬業者のボスには凄みが足りないが、主人公に逃亡者の諦念を時折感じさせる描き方も上手い。
ノルウェー人とは異なる文化を持つ少数民族のサーミ人の描写も興味深い。
今回はハードボイルドな雰囲気の中にも暖かみのある話で、終盤の展開はまったく予想を裏切られたが、これはこれで良い。
[導入部]
少数民族のサーミ人が住むノルウェーの極北の地コースン。
ウルフ・ハンセンは真夜中にバスを降りた。
七十時間、千八百キロの逃亡。
千鳥足で歩いているマッティスという村人に出合い、ホテルや下宿屋があるか尋ねるが男は首を振り、集落の手前にある教会を指す。
仕方なく無人の教会に入り寝ていると、誰かが体をつついた。
クヌートという名の10才の男の子。
そして若くたくましい女が教会の掃除に入ってきた。
[採点] ☆☆☆☆