[寸評]
じじい二人の頑固ぶりから起こる騒動記かと思ったら、まさにそのとおりの物語だったが、だからつまらないと言うことではなく、気楽に楽しむには十分よくできている。
銀行勤めの頃は職人の友を軽んじていたのに、今も変わらず自由な彼が羨ましいという国政の心情もこれまた定石通りだし、若者のために汗をかいたり、どの物語も新味は全然ないが、それでも面白い。
展開、話の間(ま)が絶妙で、続編期待。
カバーはいいが、挿絵は合わないと思うよ。
[寸評]
サスペンスフルでアメリカものらしい派手さのある犯罪小説に、親子、家族、親族のつながりなども絡めた娯楽作。
スティーヴン・キングの絶賛は相変わらず怪しいし、小説としてマッカーシーの「血と暴力の国」を引き合いに出すのもおこがましい作品だが、水準以上の面白さなのは間違いない。
特に後半の追い込むような展開はなかなかのものだ。
人物描写や関係性が少々書き込み不足で、登場人物へ思い入れるところまではいきません。
[寸評]
「爽やかな青春もの」でくくられてしまうような作品だが、作者らしい毒も少々は組み入れられている。
島の閉鎖性、狭い土地での人の関わり合いの温かさと冷たさ、地元民と移住者、網元と網子といった関係性が、類型的だがそれなりに描かれている。
素直で嫌みのない物語だが、4人にはさしたるドラマチックな出来事もなく、冒険に乏しい作品。
それでも終盤は、島の外、将来への希望と不安を抱える彼らの姿が素直に描かれ、採点は甘くなった。
[寸評]
戦国の世に都で出会った自由人二人と生真面目な一人の、交流と数奇な変転を鮮やかに描いた娯楽小説。
作者には珍しい歴史ものだが、人間同士のぶつかり合い、心の交流を適度なユーモアとアクションを交えてテンポ良く描く作者らしく、軽快かつ爽やかなエンタメものに仕上がっている。
愚息の行う辻博打の選択の確率の話も面白いが、とかく主君を裏切った謀反人として語られる明智光秀が魅力的かつ人間臭く描かれ新しい発見だった。
[あらすじ]
国政と源二郎は幼なじみで73才の今までずっと同じ町内に住んでいる。
国政は大学を出て銀行員になり、見合い結婚で2人の娘をもうけたが、妻は数年前に家を出て長女一家と暮らしている。
一方、源二郎は小学校もろくに卒業せず、つまみ簪職人に弟子入りし、独立後は仕事は気の向いたとき、口説き落とした女と結婚し、40代で妻が死んだ後は、町内のスナックでいい顔だ。
それでも二人は親友だ。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
レイ・ラマーはギャングの殺し屋。
今度の仕事を最後と決め、ニューメキシコ州のコロナド近くにやってきた。
コロナドはレイの生まれ故郷であり、結婚して子供を持ち、家族を養った場所だった。
もう10年も前、30代の終わり頃のことだ。
息子にはずっと会っていない。
今回の仕事は麻薬カルテルのブツを横取りすること。
ボスのメモは甥っ子のサンチェスを同行させ仕込んでくれるよう頼んできた。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
矢野新と青柳源樹、池上朱里と榧野衣花の4人は高校2年生。
瀬戸内海の冴島という人口3千人弱の島に住む彼らは、フェリーで本土の高校に通っている。
フェリーの最終便は午後4時10分のため、島の子供は部活には入れない。
そんな中、新だけは憧れだった演劇部に入り30分だけ出ている。
7月半ばの混み合う帰りの船内で、4人は島にIターンするという作家を名乗る男に声をかけられる。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
永禄三(1560)年の春、京の鴨川沿いに新九郎は潜んでいた。
彼は一三のときから八年間兵法修行に明け暮れ、京に出てきたがその日の食にも事欠く有様。
結局、闇夜に紛れて辻斬り同然の所行に出て食い扶持を稼ごうとしていた。
そんなとき辻博打を生業とする”愚息”と称する坊主に出会い、ことあるごとに図星を指される。
そして二人は、名家の出ながら今は落ちぶれた光秀と出会う。
[採点] ☆☆☆☆
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