[寸評]
「柳生薔薇剣」に続くシリーズの第9作。
前作同様、痛快な剣劇と艶めかしさに満ちた奇想天外な物語。
序盤のこんな腑抜けた柳生十兵衛の描き方も見たことはないが、よくもこのような話を思いついたものだと感心するほどの奇抜さに驚き。
あまりに奇抜すぎて、後半、黒幕が登場して長々と説明が入ったところから、物語も文章のリズムも崩れてしまった。
緊迫感に欠ける、派手さだけの艶笑娯楽活劇になってしまいました。
[寸評]
快作ぞろいだった作者だが、新作にはこんな採点が。
騙しのテクニックは駆使されているが、いたるところに思わせぶりな場面を置きすぎ、それがまたちびりちびりと謎解きされる。
もういいから話をもう少し広げてくれ、と読んでいて思った次第。
物語自体はあまり気持ちの良い話ではなく、登場人物のどのキャラも好感が持てず爽やかさがない。
謎解きに重要な役割を果たす間宮助教授の描き方も間違ってませんか。
[寸評]
閉ざされた地域の中での殺人事件。
当然、登場人物も限られており、それぞれの描き方も丁寧で、中途半端な者はない。
ただ、滞在客のほか、用務員やコックまで、スタッフ全員をじっくりと描くので、読む側はちょっとつらい。
読みごたえのある作品であることは認めるが、途中の展開にもう少しアクセントがほしかった。
これだけ引っ張って事件の解明に至るきっかけが唐突すぎるし、あっけない犯人逮捕も残念でした。
[寸評]
その世界だけのルールに縛られた警察社会の中で、不正許すまじと突き進む正義漢の刑事、というだけなら嘘くさい話になってしまっただろうが、12億という巨額の裏金争奪戦が加わったことで俄然面白くかつ現実味が出た。
縄張り、出世、金と、欲望に取りつかれた者たちの、押され押し返しの攻防が飽きさせない。
県警はみ出し刑事の宮野のキャラは作りすぎだが、全編にわたって適度な緊迫感を保った娯楽作です。
[寸評]
国産探偵もので、主人公に洒落た台詞を喋らせようとする作品は多いが、そのどれもが何か読んでいて気恥ずかしくなるような、まるで似合わない服を着ているような感覚になってしまうものが多い。
その点で、本作はある程度成功していると言える。
少なくとも主人公に違和感、異物感は感じない。
物語は変化が少なく物足りないが、一作としてまとまっているのでそれなりに楽しめる。
ゾラの正体はちょっと無理があるか。
[あらすじ]
時は寛永4年(1627年)、柳生十兵衛は将軍家光の側小姓を罷免され、父にも勘当されて、柳生の庄でただ一人、怠惰な日々を送っていた。
ある夜、柳生若衆36人が星空のもと修練に励んでいるところに怪しげな念仏僧の一団が現れ、全員が斬り殺され、柳生新陰流の太祖石州斎の墓を暴き、遺骸を持ち去った。
十兵衛は急を知らせに江戸へ走る。
[採点] ☆☆☆
[あらすじ]
秋内は相模野大学3年生、自転車便のバイトに精を出している。
入学して最初の講義、隣に座ったカッコイイ奴と友人になろうと声をかけると、なんと女性だった。
それが羽住智佳。
友江京也という無愛想な友人のおかげで今は少しは彼女と話もできる。
ある日、大学の助教授の息子が犬に引っ張られて道路に飛び出し、車に轢かれるところを目撃する。
[採点] ☆☆★
[あらすじ]
イギリスはコーンウォール沖のカム島。
この島はホールカム家が16世紀から所有しており、現在は高級保養所としてVIPの滞在客を迎えていた。
作家のネイサン・オリヴァーはこの島で生まれたことから滞在の権利を持ち、年4回訪れていたが、その辛辣な性格から島のスタッフとの仲は険悪だった。
ある日、彼は島の灯台で首を吊った状態で発見される。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
14年前、警視庁が追っていた巨額詐欺事件の被疑者、森脇が本牧埠頭の海に死体で浮かんだ。
警視庁と神奈川県警が別々に捜査本部を立ち上げたが、詐取された12億円とともに迷宮入りしていた。
この秋、警視庁特捜班の継続捜査担当になった鷺沼は暇つぶしにこの事件を取り上げ、県警へ仁義を切って再調査を開始したところ、何者かに襲われる。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
探偵の頸城悦夫のもとに新たな依頼が。
依頼主はパリから帰国したばかりの志木真智子という美人。
タレントで都知事も務めたことのある法輪清治郎から、彼女の母が昔預けた”天使の演習”という美術品を取り戻してほしい、との依頼。
法輪は、世界的に有名なゾラという殺し屋に命を狙われているとか。
頸城は友人で、法輪清治郎の甥の法輪洋樹に会う。
[採点] ☆☆☆★
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