[寸評]
作者が得意とする過去と現在を繋ぐ謎の連鎖とそれに翻弄される人々を描くミステリー。
本作も、前半の薄皮をはぐように過去の出来事の真相が見えてくるあたりはサスペンスフルで、徐々に危険が増していく展開もドキドキさせられる。
それが後半になり、やや唐突なきっかけから話が急展開しだすと広がりに乏しく、終盤に進むにつれて逆にしぼんだ感じ。
ジュニアスという謎の人物や王室の内紛も馴染みがないので興味がわかず。
[寸評]
これはまた、ものの見事に、何度も、気持ちよく、かつ楽しくだまされた感じのミステリー。
殺人事件がひとつの物語だが、良いテンポと変化のある展開、登場人物たちも皆個性豊かで、素直なテーマ性まで併せ持つ娯楽作品である。
あれれ、そんなに上手くいくわけないぞ、というところもあるが、まぁエンタテインメントと見れば許せる範囲。
前回読んだ「シャドウ」も見事だったが、騙しのテクニックにさらに磨きがかかったようです。
[寸評]
陰惨な物語だが、とにかくエネルギッシュにラストまで引っ張っていく力技がすごい。
100ページを余して犯人を割ってしまった後は、一気呵成に緊迫した場面を続けていく。
本当にこの結末でいいのか、もう少し救いのある展開に持っていけなかったか疑問は残るし、登場人物それぞれの思い入れも強引な印象だが、とにかく息もつかせず読ませる。
定年間近い刑事の心情も書き足りないが、凄惨な闘いの場面は尋常でない迫力。
[寸評]
清水次郎長一家の森の石松こと三州の松吉と豚松こと三保の松吉をメインに一家の目まぐるしい曲折、転戦が描かれる。
彼らがどのように次郎長に惹かれ、任侠道の世界に入り、いかなる生涯を送ったか、400ページの中にそのすべてが盛り込まれていると言ってもいいほど。
無論ただその一生をなぞるような話ではなく、彼らの心情、時代背景も怠りない。
脇に回った大政、小政といった面々の描き方も中途半端にしていないのは流石。
[寸評]
とにかく自分が間違っていると思ったことは絶対に許さず、相手がやくざでも警官でも立ち向かっていく千賀子の造形は魅力あるが、少々展開がワンパターンで、もう少し変化がほしかったところ。
主人公が徐々に真相に迫っていくあたり、その名探偵ぶりは疑問だし、入れ込みようも激しすぎて肝心の姉弟の「最愛」の部分が素直に伝わってこないので、感情移入できない。
考え方や行動が極端な人ばかりが出てくるので疲れます。
[あらすじ]
1981年、アンバーはオクスフォード大学で、18世紀の謎の投書家ジュニアスの研究をしていた。
7月27日、彼はグリフィンと名乗る男にジュニアスの書簡集の件でエイヴバリーという遺跡に呼び出される。
そこで彼は幼い子供の誘拐とその姉が誘拐者の車に撥ねられる場面に遭遇。
それから23年。
プラハに住む彼のもとに当時の捜査官が突然訪れる。
[採点] ☆☆☆
[あらすじ]
盗聴専門の探偵の三梨は、老舗の楽器メーカー谷口楽器に雇われてライバルの黒井楽器を探っていた。
楽器デザインの盗用の証拠を掴むためだ。
夏川冬絵というやはり探偵をしていた女性をスカウトし、夜中に冬絵を黒井楽器に潜入させるが盗用の証拠は見つからない。
依頼主から、動きがあるとの情報を受け再度盗聴すると、黒井楽器内で殺人が。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
都内有数の進学校清和高校の剣道部主将、十川慧一は今日も東足立警察署での稽古の最後に師範役の鷲見巡査部長との三本勝負に挑む。
付き合っている女子部主将の広田杏子に、鷲見から面を取ったら思いを遂げさせてもいいと言われたからだ。
しかし今日も散々に打ちのめされてしまう。
杏子は金融業の家で家庭教師をしているが、そこへ強盗が。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
はるか彼岸の天上界から石松と豚松の二人は身を乗り出して明治維新後の地上の様子を見ている。
60才目前の次郎長が、一代記を執筆すると言う居候の男に昔話をしている。
石松(松吉)は三河国の東のはずれの村の百姓の息子。
両親は不仲で、松吉が8歳のとき火事で家は全焼、母は焼け死んだ。
松吉は、父と山に入り、炭焼きなどで食いつなぐ。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
病院勤務の小児科医、押村の携帯電話に警察から電話が。
姉の千賀子が頭に重傷を負い、救急病院に搬送されたと言う。
病院に急行すると、姉は意識不明の重体で、なんと頭に銃弾を受けていた。
姉とは18年ぶりの再会だった。
幼い姉弟を残して両親が死に、姉は伯母の家に、弟は伯父の一家に引き取られた。
折り合いが悪く姉は伯母の家を出た。
[採点] ☆☆☆
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